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タイトル名 |
質屋 |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-06-12 21:47:00 |
変更日時 |
2025-06-12 21:47:00 |
レビュー内容 |
かつて大学教授だったユダヤ人のソル=ロッド・スタイガーはアウシュビッツ収容所で妻子や血族と友人を殺されたが一人生き残り、今はNYのハーレムで質屋を営んでいる。アウシュビッツのトラウマに悩まされながらもカネしか信じないを信条にしてシビアな商売に徹しているが、実は質屋商売はハーレムの黒人ボス・ロドリゲスのマネーロンダリングの隠れ蓑なのだった。 いやはや、この映画のロッド・スタイガーの演技は度肝を抜かれるレベルです。幸せで髪の毛ふさふさだった頃の若々しいソルと、必要最小限しか喋らない陰鬱な質屋の親父となってしまったソルのギャップが痛々しいんです。その質屋の店内もやたらと金網で仕切られていて、その中にいるソルは未だに収容所に閉じ込められているみたいな感じです。唯一の店員であるプエルトリコ人のヘススにも、せっかく彼なりにソルを慕っているのに恐ろしくそっけない塩対応。「あなたはどうして腕に番号の刺青をしているんですか、ひょっとして秘密結社の会員なの?」と聞いてくるぐらいホロコーストに無知なヘススに商売の秘訣を尋ねられ、「まず、数千年が必要だ。その間古臭い伝説以外何も頼れるものはない…」とユダヤ人としての苦悩を語っているうちに声を荒らげてしまう、この映画で初めてソルが感情を表したシーンでした。そもそもヘススという名はJesusのスペイン語読みで、ラストでヘススがソルの身代わりのようになって死ぬのも、まるでイエス・キリストの最期みたいだし、ショックを受けて伝票刺しに自分の手のひらを突きぬかせるソルの行動も、十字架に磔にされたキリストみたいな感じです。ソルはアウシュビッツでも死なず「俺を殺せ!」とロドリゲスに反抗しても死ねない。もう生きる希望もないのに死にたいのに死ねないソル、「お前が生きたいと思った時に殺してやる」というロドリゲスのセリフのなんと残酷なことか… 実はアメリカ映画で初めてホロコーストをテーマにし、そして裸のオッパイが初めてスクリーンに映されたのがこの映画なんだそうです、実際のところ全然エロくはなかったですがね。まだヘイズコードが睨みを利かせていたころですが、ハリウッドとは縁遠かったNY派のシドニー・ルメットならではの快挙(?)だったんでしょうね。 |
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