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タイトル名 |
蜘蛛巣城 |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2025-07-12 22:18:57 |
変更日時 |
2025-07-12 22:29:06 |
レビュー内容 |
シェイクスピアの原作『マクベス』自体にもその気があるが、この黒澤版『マクベス』はもう黒澤明が撮った唯一のホラーと呼ぶに相応しいんじゃないかな。中世スコットランドの物語が、これほど戦国時代のお話しとして翻案されても違和感がないというのも面白いところです。やはりこの作品は、鷲津武時=三船敏郎と浅茅=山田五十鈴の壮絶という域に達している熱演がすべてでしょうね。三船の役作りというかメイクがこれまた迫力満点で、中盤以降の表情はほとんど眼ギマリ状態なんですよね。こいつも物の怪の一員じゃないかとすら思わせる山田五十鈴、最後には発狂してしまうんだが序盤の三船に主君殺しを唆す件なんかを観てると、まだ発作を起こすまでには進行していないけどすでに狂いだしていたんじゃないかとすら思えます。富士山麓に建造された蜘蛛巣城のセットがまた凄いですねえ、このセットは麓の御殿場市内からも見えたという巨大さだったそうで、もしこれが現存していたら重要文化財級の映画遺産だったと思います。黒澤明は特撮を使った撮影が嫌いで円谷英二とは疎遠だったみたいですが、本作では初めて彼と仕事をともにしたそうです。特撮を使ったシーンなんてあったっけ?と首を捻りましたが、終盤の蜘蛛出の森が城に迫ってくる映像が特撮だったんじゃないかと推察します。原作のバンクォーに相当するのが三木義明=千秋実になるのですが、マクダフに相当するキャラが登場しないので、原作で魔女の「女の股から生まれた者にはあなたを殺すことはできない」という予言の方はオミットされています。鷲津武時は最後に城主や三木義明の遺児が参加した軍勢に攻められて悪事が露見して味方に討ち取られてしまうわけですが、攻め手側のストーリーがまったく語られていないところは、自分にはちょっと不満でした。まあこれには尺が長くなるという配慮があったかもしれません。 とにかくこの映画は、「女は怖い」という一言に尽きますね。 |
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