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タイトル名 |
ノーマ・レイ |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2025-06-30 22:14:46 |
変更日時 |
2025-06-30 22:14:46 |
レビュー内容 |
社会派マーティン・リット監督の渾身の力作、彼の卓抜した演出力によってそれまでハリウッドでも目立たない存在だったサリー・フィールドに演技開眼させて、彼女にオスカー主演女優賞をもたらしています。彼はハリウッドのレッド・パージで業界追放された面々の一人だけど、ダルトン・トランボと比べても過小評価され過ぎだったんじゃないかと思います。アカデミー賞も『ハッド』で監督賞と脚色賞にノミネートされただけだし、本作も作品賞にはノミネートされたのに監督賞では無視、まだまだメジャースタジオがハリウッドを牛耳っていたころだし、やはり彼の社会派的な作風が嫌われていたんじゃないかな。 南部の紡績工場で、両親とともに働くシングルマザーのノーマ・レイ=サリー・フィールドがヒロイン。現代ではこんな紡績産業は米国には存在しないんじゃないかと思うけど、驚かされるのはその工場内の機械騒音の凄まじさ、おかげで事務所以外の工場内ではみな大声を張り上げて会話をしている。だからこそ、会社から追いつめられたノーマが”ユニオン”と書いた札を掲げて机に上がり、それを見つめる工員たちが一人ずつ機械を止めてゆき工場内が遂に静寂が訪れるあの名シーンが生きてくるのですよ。NYから来た組合オルグのルーベンも、確かにノーマを利用するだけの感はありましたが、好意を抱くようになりながらもノーマには手を出さず、無教養な女と侮っていたノーマから何かを学ぶことができたラストの別れも良かったです。また途中でノーマと再婚したボー・ブリッジス、ルーベンとノーマの関係を疑っても可笑しくないのに、イザコザはありながらも最後までノーマを支えるイイ人でした。 現代でもブラック企業問題は深刻ですけど、「働く側にも選択の権利がある」と自分が壊れてしまう前に転職することが一般的なアドバイスですが、たしかに職場の選択肢が少ない50年前のアメリカの田舎では労働組合が唯一の助け船だったのかもしれません。逆に言うと、働き方自体がここまで多様化した現代では、労働組合活動の意義が大きく変質してしまったんじゃないでしょうか。 |
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