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タイトル名 |
離愁(1973) |
レビュワー |
tottokoさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2025-07-19 23:14:34 |
変更日時 |
2025-07-19 23:14:34 |
レビュー内容 |
終幕のロミー・シュナイダーの横顔。嗚咽と共に前に崩れ落ちたその表情を、私は生涯忘れることができないだろう。作品全編通して、初めて見せるアンナの表情だった。愛した男を破滅へと巻き込んだことへの慟哭のようであり、男が全てを捨てて自分を選んだことへの非常な驚きのようでもあり。 正直この映画を観るまでロミー・シュナイダーの魅力がよく分かっていなかった。本作のアンナ役は翳りを帯びた美貌が設定にハマったし、ナチスの役人の面前での強烈に息詰まるあの数分間の無言の表情演技は凄かった。男に「行って、早く」と言っていた。 苛烈な時代だから生まれた悲劇。一見するとのどかで美しい田園風景があっという間に反転して不条理な暴力絵図と化す。混沌と休息と阿鼻叫喚。その中で出会った二人。 出会いからすでに破綻しかない二人だとは分かっていたけど。分かっていたから、心配しながら見守った。そしてラストには考えうる限り完全な破滅が待っていた。 1940年という時代と、ロミー・シュナイダーとジャン・ルイ・トランティニヤン。そう、この二人でなければ。残酷な時代と美しい二人。忘れ難い名画のひとつ。 |
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