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タイトル名 |
親鸞 |
レビュワー |
かっぱ堰さん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2025-06-14 21:31:54 |
変更日時 |
2025-06-14 21:31:54 |
レビュー内容 |
吉川英治の同名小説を原作にした映画で、同年の「続 親鸞」と合わせて前後編になっている。宗教がらみの映画だが真面目に見た。 原作全部を映画化したわけではなく、この映画では原作全体のうち「去来篇」と「女人篇」だけを扱っている。幼少時に比叡山に入った主人公が初めて山を下り、社会の実相に心痛めるとともに初めて女色に惑わされる話になっている。なお主人公が最初から「親鸞」と呼ばれているのは明らかに変だが映画なので仕方ない。
物語としては原作に沿った形で展開し、変えた点もあるがそれほど違和感はない。 この映画で感心したのは、主人公が極めて純粋で真正直な奴だったことである。その人格のまま妥協も逃げもせず、真正面から考えて悩んで突き詰めていった結果として一宗を興したというなら納得できなくもない。 また「最も苦しみ戦うのは女色を禁ずるの戒め」とのことで、まずはそこを何とかするのが若い主人公にとってのテーマになるが、それにしても純情な男女の様子には笑わされた。プレゼントの礼を言われた姫が恥ずかしがって隠れたとか、宮中でも臆することなく冷静で怜悧な主人公が、好きな女性のことになると理性を失って逃げ出すなども微笑ましい。恋慕の情という最大最強の悪魔が襲来して仏壇に縋ったところで、怪獣が出そうな音楽が流れたのは笑った(音楽:伊福部昭)。 原作の主人公はあまりに貴族的で秀才でご立派すぎて正直好きになれなかったが、この映画では若い頃の話ということもあって結構好感の持てる人物像だった。
以下個別事項: ・京都市左京区に「雲母坂」という場所があることを知った。ストリートビューで「親鸞聖人御旧跡」の石柱が見える。 ・映像面では、目隠しをした主人公が暗中で姫の姿だけを見た場面が印象的だった。背景で歌われていたのは鬼ごっこ用の歌ということだと思われる。 ・御所の歌会始で詠まれた歌が市中の流行り歌になっているというのは面白い。この場面は、主人公が後に布教のための田植え歌を作った話につながるのかも知れない(この映画には出ない)。 ・大盗賊の一党は悪人ではあるが簡単に人を殺すことはなかったようで、諸外国と違ってさすが日の本は仏法の国だと思わせる。 ・婆様が蛇に噛まれたのは映画独自の場面である。慕えば慕うほど仏が遠のいていく、という台詞は切実な感じを出していた。現代に人々を救う仏はあるのかと思うが、今では阿弥陀仏など大衆向けに作られた架空のキャラクターだという説もあり、そもそも何に救われるのかがわからなくなっている。 |
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