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タイトル名 |
孤独な天使たち |
レビュワー |
かたゆきさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2014-05-05 11:57:40 |
変更日時 |
2025-05-14 12:55:06 |
レビュー内容 |
団体行動が苦手で学校でも浮いた存在である14歳の孤独な少年ロレンツォ。過保護で口うるさい母親から少しでも離れたくて、彼はある日、スキー合宿へと参加すると嘘をつき、いまは離れて暮らす父親の所有する地下室へと勝手に潜り込むのだった。誰も知らない自分だけの孤独なバカンス。水槽に飼育された蟻の巣をぼんやり眺めたり、お気に入りの音楽を好きなだけ聴いたり、そんな自由気儘な生活を謳歌しようとした矢先、彼の腹違いの姉オリヴィアが「何処にも行き場所がないの。お願い、中に入れて!」と強引に転がり込んでくる。がさつで無神経なそんな彼女に、当然のように出て行くよう告げるロレンツォ。だが、オリヴィアが麻薬中毒から必死に立ち直ろうとしていることを知った彼は、そのアルマジロの皮のように硬い殻で覆われた孤独な心を少しずつ開いてゆく……。都会の片隅、誰も知らない暗い地下室での数日間の姉と弟の屈折した交流を描いた、巨匠ベルトルッチ監督の約10年ぶりとなる待望の復帰作。いやー、齢70を過ぎて、まだまだこんなに鬱屈した少年の繊細な心理を瑞々しく描けるなんて、さすがはベルトルッチですね。そんなブランクを微塵も感じさせない、気品に満ちた青春ドラマの佳品に仕上がっておりました。舞台はほぼ薄汚れた地下室のみ、登場人物もほぼこの少年とその姉のみなのに、これまでのキャリアに裏打ちされたであろうその巧みな手腕に最後まで釘付けとなって観終えることが出来ました。最初はいけ好かない印象の姉が、実は夢破れた孤独な少女で、同じような境遇にいる弟と心を通わせることで、次第に外の世界へと目を向け始めてゆく自然な描写など、もはやさすがと言うしかない。病のせいで映画製作から遠ざかっていたというベルトルッチのこの10年間が、つくづく残念でなりません。 |
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