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タイトル名 |
オッペンハイマー |
レビュワー |
ゆきさん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2025-05-14 12:39:12 |
変更日時 |
2025-05-14 14:46:54 |
レビュー内容 |
なんと豪華な俳優陣。 これだけの名優達が次々に画面に現れ、多彩な演技を披露してくれている訳だから、それを眺めてるだけでも楽しかったです。 主役が似合う存在のジョシュ・ハートネットに、マット・デイモンなんかが脇役として渋い魅力を放っているのも、こういったオールスター映画ならではの味わい深さですよね。 脇役陣に負けないだけの存在感と演技力を見せ付けたキリアン・マーフィーにも、大いに拍手を送りたいところ。
ただ、ストーリーに関しては…… 史実ネタのもどかしさとでも言うべきか、あちこちに「無理してる」感じが有ったりして、そこは残念。 女性問題や、原爆投下に賛成していた事など、主人公のオッペンハイマーを過度に美化していないのは好みのバランスなんだけど、それはそれで(こんな奴を悲劇の天才のように描かれても……)という困惑に繋がってしまうんですよね。 実験の成功や、原爆投下直後のオッペンハイマーの歓喜や煩悶は上手く描けていたと思うんだけど、その後に続く聴聞会は長過ぎて、バランスが悪いように感じられた辺りも残念。 ちょっと意地悪な言い方をしちゃうなら「原爆の開発や投下に比べたら、オッペンハイマー個人が共産主義者だとか反水爆主義だとか、問題のスケールが小さ過ぎない?」なんて、そんな風にも思えてしまいました。
後は、被爆描写に関しての問題が有り、これまた評価を難しくしているんですよね。 正直、鑑賞前の自分は「原爆に関する描写に、科学的、あるいは政治的な正しさを求めるべきではない」「映画は映画として楽しめば良い」くらいに思っていたんですが…… 鑑賞後には(あっ、これは流石に拙いな)と、掌返しをしちゃいました。 それは何も「やはり道義的に問題の有る映画だ」って結論に至った訳ではなく、単純に一つの作品として、被爆描写の弱さが完成度を落としてると思うんです。 だって本作ってば、オッペンハイマーが「原爆を投下した事を、大いに後悔する」って展開なのに、被爆描写が弱過ぎるだなんて、片手落ちも良いとこですからね。 中途半端に皮膚が剥がれる女性の姿などは「あくまでオッペンハイマーの妄想に過ぎず、現実の被爆者は更に悲惨である事を当時のオッペンハイマーは知らない」って事なんでしょうけど、それならそれで「後に現実は更に悲惨であった事を思い知り、苦悩するオッペンハイマー」っていう描写は必要だったはず。 悲劇を巻き起こした事に苦悩する主人公って映画なのに、その悲劇に関する描写が拙いっていうのは、流石に見逃せない欠点です。
大好きなクリストファー・ノーラン監督作ってだけでも贔屓目に見ちゃうし、主人公オッペンハイマーとグローヴスとの友情を示す場面なんかは流石と思わせる物が有ったのですが……絶賛するのは難しいですね。 映画という娯楽品、あるいは芸術品として優れた傑作という訳ではなく「米国映画にて、原爆の開発と使用を否定的に描き、表現の幅を広めたという点においては、意義の有る作品」「名匠と名優による豪華なオールスター映画」と、そんな評価に落ち着きそうです。 |
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