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TAR/ター - simさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 TAR/ター
レビュワー simさん
点数 5点
投稿日時 2023-05-21 09:39:23
変更日時 2023-05-21 09:39:23
レビュー内容
 音楽もの&演技派ケイト・ブランシェット主演作という事で期待して観に行きました。
 ケイト・ブランシェットは主演をすると割と破滅的主人公をされることが多い印象だったので、わりと期待通り、圧巻の演技でした(その上、世界一と言って差し支えない美貌!)。
 あと演奏の音の方も、クラシックレーベルの老舗ドイツ・グラモフォンが大々的に出てくる関係で素晴らしく良かったです。
 作品の内容についてはぐいぐい引き込まれて、サスペンス・スリラーやホラー的な様相も帯びてくるのはサスペンスものとしてかなり面白かったです。

 一方「カウンター・カルチャー」「カウンター・カウンター・カルチャー」的に見える部分も多々あり、差別的価値観の話もあって、登場人物が偏った価値観を持ってるのは、そういう設定のキャラクターだから、で受け入れられたのですが、作り手側に差別的価値観があってそれを強調するために偏った演出をされてる、みたいなのがあると、それはプロパガンダ作品であっていかがなものかと。監督のインタビュー記事など見ると、監督自身は日本の作品は大好きでネガティブな印象を与えようと思ってそのような演出をしたのではなく、希望の象徴として見て欲しいみたいな話があり、そうか、と思ったりしました。

 個人的にわりとカチンときたのは、主人公がクラシック指揮者のTOPになっている状況で(現実にはそんな状況の人はおらず、過去百年のベスト指揮者100人には女性指揮者が一人も選ばれてないというくらい、クラシックの指揮者界隈というのは超絶差別的状況となっているので、まったく絵空事にしか見えないわけですが)、コンサートを開くときに古典的な作品はもちろん演奏するけれども、新しい曲も扱って未来の作品への投資もしてますよ、とアピールする点で、これはまあ、西欧では定番的に使われている偽善的スタンスで、演奏者は新曲などなくても昔の名曲を上手く演奏していけば食っていけるわけですが、それだと新たな作曲家が育たないので、投資として支援しておくべきという考え方があります。で、作中紹介では主人公TARはそういう作品もやってるよと言うけど、インタビューの後のジュリアード大学のオーディションシーンでは全く逆のスタンスを取るわけです。そちらの場面はアーティストは作品自体に向き合うべきで、作り手の属性に対する差別的認識で差別すべきじゃないという主張をされてそれはそれでいいんですけど、「作品自体に向き合うべき」という話で偉大なるバッハの作品を崇め奉るのは良いんですけど、それと同等に生徒の提示してきた現代曲にも真摯かつ公平に「作品自体に向き合うべき」であって、バッハの作品を持ち上げるために、直前に演奏されてた現代曲を不当に貶めてる表現が、「人種差別の問題」を強調するためにクラシック界隈で頻繁に行われている「現代曲差別」を不当に強調していて、それはどうなんだろうと思ってしまったわけです。

 そんな感じに、ある種の偏見なり差別認識をただすために、別の偏見や差別認識が作品演出から滲み出してくるところがわりとあって、主人公がスキャンダルで追われて東南アジアのあたりに飛ばされる演出も、描き方が前時代の未開地表現のようになっててアレでしたし、最後の曲も、普通に観ると狂気とかとんでもない状況の転身みたいに見えてしまいがちな演出をされてたと思うんですが、そもそもクラシック音楽の20世紀の発展を踏まえると、ロックやジャズみたいな新進の音楽が隆盛してきた関係で、もはやメジャーな音楽ではなくなった時に映画音楽や、アニメの曲や、エンドで出てきたゲーム音楽の世界の中で、本来のクラシック音楽の精神が引き継がれて生き延びたのだ、という歴史的経緯があるのですが、その「クラシックの正統的後継者」であるところのあの作品を「狂気」とか「恐怖の対象」であるかのように見せる演出は、クラシック音楽というものを根本的にバカにしてるようにしか見えないわけで、なんだかなあと思ってしまったわけです。

 あとまあ、クラシック音楽界隈だと楽器ごとに女性差別が大変だったりそうでなかったりするようなのですが、差別が大変と評判の指揮者にやっとTOPの音楽賞総なめのすごい人物が出てきて業界が改善されていくのではという期待をさせる状況ができたのに、こういう内容だとなあ、と残念に感じたりもしました。女性キャラクターだから清廉潔白であるべきでないといけないというわけじゃないですけど、この辺のスタンスからして総じて、本作の音楽ネタの扱いというのは作品演出のダシに過ぎない扱いで、同様のドラマチックな演出ができるのであればなんでも良かったんだ。クラシック音楽業界というものに対する愛はなかったんだ、としみじみ感じてしまったわけです。

 そんなところです。
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