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華岡青洲の妻 - Tolbieさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 華岡青洲の妻
レビュワー Tolbieさん
点数 7点
投稿日時 2012-10-22 22:59:56
変更日時 2012-10-22 22:59:56
レビュー内容
 何年も前に新薬被験者の登録をした時に、随分といろいろな妄想と、戦ったことを思い出す。もちろん、現在の試験は安全なのだろうけれど。
 そう考えると、麻酔という技術が、半ば伝説としてしか無かった頃に、失敗したら死ぬかもしれない実験に、体を提供するのは、並の精神力ではない。

 世界初の全身麻酔、と言う部分にはもちろん興味深さはある。しかし、スゴイと思うのは、母と嫁の被験者競争だ。子を溺愛して嫁に意地悪をする母、というのは、物語や幾人かの知り合いの話などで、聞くことはあるが、その張り合いが人体実験にまで及ぶというのは、大した狂気だ。
 この部分の、二人の狂気的な張りあいを見ると、人間の一念、思いの強さ、を恐ろしい思いを持って観てしまう。と、同時に、顔も見ずに嫁入りし、新婚生活をも姑にコントロールされてなお、人体実験を申し出る、お武家さんとは、大したものだとも思う。

 その人は、医者の家の美しい女将さんに憧れて、そこに嫁入りし、その美しい姑にいじめられ、さやあてのように被験を申し出る。まさしく「美しい花には毒があ」ったけど、そのおかげで「毒薬変じて薬とな」ったという、ことわざ通りのお話なわけだ。そういう意味では、これは『華岡青洲の母』でもあった話かもしれない。
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