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海を飛ぶ夢 - かたゆきさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 海を飛ぶ夢
レビュワー かたゆきさん
点数 8点
投稿日時 2020-09-08 00:40:18
変更日時 2022-03-10 09:46:23
レビュー内容
海水浴中の事故によって首から下が一切動かせなくなり、以来寝たきりの生活を余儀なくされたラモン。家族や支援者たちに支えられながら26年もの間、そんな辛く不自由な日々を過ごしてきた彼は、最近ある願いを抱くようになるのだった。それは、自らの尊厳ある死――。「誰にも迷惑を掛けず、静かに自分の人生の幕を閉じたい」。法律的な問題をクリアするため、ラモンはこの問題に詳しい女性弁護士フリアを雇う。何故自分が死を望んでいるのか、どうしてこのような障碍を負ってしまったのか、自らの率直な想いをやって来たフリアに語り始めるラモン。次第に彼は若き日の情熱的な恋の思い出や、長年書き綴ってきたという自作の詩まで披露するようになる。いつしかお互いに特別な感情を抱き始める二人。だがフリアもまた、自らの身体に秘密を抱えていて……。長年の寝たきり生活から自ら死を望むようになった、ある一人の男の秘めたる想いを淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。若き日のハビエル・バルデムがそんな尊厳死を選択せざるを得ない障碍者を演じ、幾つもの賞にノミネートされたという本作、今更ながら今回鑑賞してみました。監督は、ヒット作を連発しノリにのっていたころのアレハンドロ・アメナーバル。〝尊厳死〟と言う非常に重いテーマを扱いながらも、このラモンと言う男の純粋なラブストーリーとしてこの物語を捉えているのが良いですね。変に説教臭くなったりお涙頂戴物語になることなく、最後まで彼の一途な思いに寄り添うような気持ちで観ることが出来ました。特に彼が、想像の世界で空を飛び海を越えて愛しい女性の元へと向かい、そして自らの腕で抱きしめるというシーンは出色の名場面。監督のその演出力の高さには驚くほかありません。物語の後半、この彼女もまた脳に疾患を抱えていることが分かります。そう、フリアも近いうちに身体が動かなくなり、そればかりか記憶すらもなくしてゆくのです。そんな二人がベッドで寄り添いながら、ともに死を誓い合うシーンなどとても切ない。そして、彼らがそれぞれに辿ることになる運命。果たしてその結論が正解だったのか。もちろん人生に明確な答えなどあろうはずもなく、いろいろと考えさせられるその結末に僕は思わず涙してしまいました。生きることの辛さと切なさ、そして愛おしさがぎゅっと凝縮された密度の濃い秀作と言っていい。
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