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タイトル名 |
ランド・オブ・プレンティ |
レビュワー |
wunderlichさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2006-08-20 13:07:24 |
変更日時 |
2006-08-20 13:07:24 |
レビュー内容 |
ラスト、叔父と姪が見たグラウンド・ゼロはただの瓦礫の山だった。物質に意味を与えるのは人間の想像力である。むしろ、グラウンド・ゼロをみて「なにか感じなくてはいけない」という強迫観念のほうが危険なのではないかと思う。それは、大きな力が起こした出来事に対して正面から取っ組み合うこと自体が、一人の人間がもつ判断能力を超えてしまっているからだ。原爆について描いたもっとも痛切な映画が「黒い雨」であるように、9.11についてもこの映画が参照されつづけることは間違いない。奇妙なことにどちらの映画も、「大きな危機」を乗り越えた人たちの「その後」を描いている。一方、ハリウッドでもそろそろ9.11を描いた映画が製作されているようだ。ハリウッド映画では、「大きな危機」そのものが中心的に描かれれ、「被害者」であるという印象を誇示するタイプの映画になるのだろう。でも僕たちが本当に聴き入るべきなのは、「被害者」として物質に過大な意味を負わせて「死者を代弁する」人々の声ではなく、「生き残った人」として「死んだ人の体験には届き得ない」ことを知りながらも「死者の声に耳を澄ます」ひとたちの言葉なのだと思う。 |
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