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ゆれる - アンドレ・タカシさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ゆれる
レビュワー アンドレ・タカシさん
点数 9点
投稿日時 2011-05-17 22:41:42
変更日時 2011-05-22 21:46:08
レビュー内容
法事で久しぶりに帰省した弟に、密かに恋慕していた女を軽々と攫われる兄。そのことを感付きつつも、まだ内側に秘めていた兄の憤りが、吊り橋で兄を拒絶した女の態度によって噴出する。そこに殺意があったかどうかは、自分には大きな問題では無かったです。あの状況に至る兄、弟、女の関係性だけでお腹いっぱいでした。真面目によく働くがモテないオーラを出しまくって女性に縁のない実家暮らしの兄。実家を顧みずにカタカナ商売で都会に暮らし、遊び人のオーラを出しまくる女好きな弟。そして、実家を出て一人で暮らしながらも地元を離れず、土地柄と日常への倦怠と抱える女。見かけは幼馴染みとしてバランスを取っていた関係性が、弟と女のセックスによって崩れる。具体的には、弟とセックスしたことで、兄への嫌悪感が表面化した女の態度の変化で崩れる。都会と地方、継いだ仕事と獲得した仕事、個性と能力、優越と劣等など、様々な格差が引き起こした崩壊とも言える。それを映像で暴いたこの監督の構成力に感心しました。その後の裁判は、兄弟の心情の検証でした。タイトルの「ゆれる」は肉親に対して抱く心情の幅を指した言葉です。幼少時は信愛だけで成立していた兄弟の関係が月日とともに薄れて行く現実。昔の映像を観て当時を思い出しても、崩壊した関係が元の鞘に収まるとは自分には思えなかった。しかし、兄がバスに乗るシーンを見せなかったのは「ゆれる」心が希望を掴む解釈もアリとする監督の優しさのような気がします。兄役の香川照之が発する緊迫感から目が離せなかった。過去に観た彼の出演作の中では、これがイチバンです。
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