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タイトル名 |
紙屋悦子の青春 |
レビュワー |
goroさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2007-10-01 00:43:08 |
変更日時 |
2007-10-01 00:43:08 |
レビュー内容 |
カメラは多く据えっぱなしの長回し、へたに揺れもせず、淡々と語る。音楽も付かず、柱時計の音が聞こえるだけ。もう無駄なものをとことんそぎ落として、まるでわれわれもそこに居あわせたかのように、まるで共有する昔の記憶をたどるように映画は語る。ことさらドラマティックな映像は一つもないが、かえって直截な心情が伝わってくる。ほほえましい情景の連続ながら、それがせっぱ詰まった状況に裏打ちされていて、有為の青年が特攻で死ににゆかなければならない理由が、いっそう不条理に迫ってくる。かといって、戦後史観からの声高で一方的な弾劾でもなく、一方ナルシスティックな反動でもなく、実際そこにあったような市井の人間の時間が描かれている。こんな戦争映画はほかに記憶がない。黒木和雄の到達したひとつの極致といっていいのだろう。 |
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