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タイトル名 |
愛の嵐 |
レビュワー |
哲学者さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2004-06-22 14:56:49 |
変更日時 |
2004-06-22 14:56:49 |
レビュー内容 |
展開が遅くてイライラするが、思想としては深い映画。男女の閉じた2者関係である純然たる性愛は、多数の利害関係からなる社会の中に、けっして生き延びる場所を与えられない。ダーク・ボガードとシャーロット・ランプリングの性愛は、かつて収容所の中でも異物だったし、大戦後の社会でも異物になるほかない。ボガードの旧ナチ仲間にとって、ランプリングは消すしかない危険な証人なのに、しがないホテルの夜勤ポーターのボガードは、彼女を本当に愛しているんだ、なんてガッカリするような世迷い言を言う。ランプリングは、今では著名な指揮者の妻という恵まれた境遇なのに、再会したボガードに魅入られたようにつき従ってしまう。ボガードにとってもランプリングにとっても、性愛は、自分の生きている状況から自分を弾き出してしまう異常な力として出現してくる。けっして育てることの出来ない性愛、というコンセプトは、日本では、心中物という形式を与えられている。愛を讃える西洋でも、同じコンセプトが生きていることが分かる。原題の「Il Portiere Di Notte/ The Night Porter」は、「夜を運ぶ人」という意味にもなる。ボガードとランプリングが運んでいる夜は、この世に場所を持たない性愛という心の闇。で、二人は殺されるしかなかったわけ。映画として傑作とは言いかねるけれど、テーマの深さに敬意を表して8点。 |
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