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リップヴァンウィンクルの花嫁 - かたゆきさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 リップヴァンウィンクルの花嫁
レビュワー かたゆきさん
点数 9点
投稿日時 2019-08-01 23:14:37
変更日時 2022-09-02 08:40:14
レビュー内容
自らの主体性というものを強く持ち合わせておらず、周りの人間によって何処かへと流されるままに生きているような若い女性、七海。社会が提示する「こうすれば君も幸せになれるよ」という空気感に抗うことなく、彼女は出会い系サイトで知り合った男性と恋に落ち、あっさりと結婚してしまう。だが、そんな七海へと忍び寄る怪しげな男、安室。彼の策略により、七海の幸せだと思われていた結婚生活は次第に綻びをみせるようになり、やがて彼女のちょっとした愚かな行動により全てを失ってしまうのだった。残酷な社会へとたった独りで放り出されてしまった七海を救ったのは、再び安室という謎の男だった。彼に言われるまま、七海は大きな屋敷の住み込みのメイドとして働き始める。同僚として一緒に働くことなった自由奔放な女性、真白と次第に仲良くなってゆく七海。だが、真白には誰にも言えない深い秘密を抱えていた――。現実なのか、空想世界なのか、都会の片隅にひっそりと開いた秘密の扉を開けてしまった可憐な女性、七海。彼女が辿ることになる摩訶不思議な運命をリリカルに綴る大人のための残酷なファンタジー。日本が世界に誇る天才映像作家、岩井俊二監督の新たな代表作とも言えるそんな本作、3時間にも及ぶ長丁場ということで今回気合を入れて鑑賞してみました。なのですが、そんな僕の先入観など軽く吹き飛ばすほどの傑作でした。もう全編に渡り、監督の映像センスが炸裂しています。ストーリーの見せ方もそれぞれのキャラクターの描き方も一切無駄がなく、何よりこの唯一無二のカメラワークが最後までとても心地よく、3時間を一切長く感じさせません。本当にセンスの塊ですね、この人。また、聖なる愚者とも呼ぶべき純粋可憐なこの主人公を演じた黒木華がまさに嵌まり役で、とても素晴らしかったです。夫により新居から追い出された彼女が、大きなキャリーバックだけを手に何処でもない場所を彷徨うシーンはあまりにも切なく思わず涙。そして後半、彼女が辿ることになる現実感のない展開も最後にきちんと説明がなされ、観終わった後、僕は更なる感動に包まれていました。素晴らしい!正直、観終わった直後はちょっと長すぎかなとも思ったのですが、思い返せば思い返すほどじわじわと心に効いてきて、この長さはやはり必然だったのだと改めて納得。真白も安室も考えてみれば酷いキャラクターなのですが、結果的に七海にこんな幸せな記憶を与えてくれた。こんな残酷で酷い社会でも、生きていればこんな素晴らしい出来事があるかもしれないと思わせる希望と再生の物語。僕にとって特別な作品がまた一つ増えてしまいました。
かたゆき さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-04-26ザ・キラー76.40点
バービー(2023)56.76点
2024-04-20ブラックアダム56.72点
2024-04-13エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス35.72点
2024-04-10すずめの戸締まり76.54点
2024-04-06月の満ち欠け65.60点
2024-04-03ハウス・バウンド66.00点
2024-03-30あのこと55.00点
2024-03-30ウェディング・ハイ65.71点
2024-03-23ベネデッタ86.50点
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