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極限水域 ファースト・アフター・ゴッド - かっぱ堰さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 極限水域 ファースト・アフター・ゴッド
レビュワー かっぱ堰さん
点数 2点
投稿日時 2018-06-04 21:25:53
変更日時 2022-05-14 13:25:17
レビュー内容
第二次世界大戦中のソビエト海軍の潜水艦長の話である。原題の“Первый после Бога”は英題と同じ意味で、邦題だけが誇大広告気味になっている。
劇中の潜水艦基地はフィンランドにあるとのことで、あえて特定するとすれば1944/9/19の休戦協定により海軍基地として租借されたポルッカラ半島のことかと思われる。劇中ではフィンランド語を話すフィンランド人やスウェーデン語を話すフィンランド人?が出ており、”HOTELLI”の看板とか製材所の喫煙禁止表示もフィンランド語のようだった。ちなみにフィンランド語/フランス語/スウェーデン語?の台詞の直後に音声でロシア語訳を被せていたのは非常に聞きづらい。
戦争映画としては、艦船の映像はそれなりに見えるがほとんど架空の戦記のようで、最後のドイツの大型艦など名前が変で排水量も半端な数字である(後述の客船に合わせたのかも知れないがあまり意味はない)。また最初の攻撃で輸送船を撃沈した意図はわかるとして、その後はどういう理由で潜水艦が出撃していたのか不明瞭だったが、それは邦訳がまずいせいもあるかと思われる。どうも基本的な軍事用語がわかっていないらしい。

ところで外部情報によると、主人公にはモデルになった実在の英雄がいたようで(cf.「ヴィルヘルム・グストロフ (客船)」)、要はこの人物を顕彰するのが目的の映画と取れる。しかしこの人物が英雄だと観客が自然に納得するよう作られているわけでもなく、初めから英雄扱いなのをそのまま受け入れろと要求されるだけである。
また片思いの少女も浮いた感じの人物で、出番が少ない割に全部見ていたかのようにナレーションまで担当していたが、実際主人公のことなど何もわかっていないのにFIRST AFTER GODなどという勝手な思い込みが痛々しい。まあそれは仕方ないとしても(まだほんの子どもらしいので)そんなことが主人公の顕彰につながるわけでもない。
どうも半端で独りよがりな映画のようで突っ込みどころが多いのは困る。そもそも難民船でも引揚船でも平気で撃沈して恥じることのないソ連潜水艦など称揚するわけにはいかない(cf.「三船殉難事件」)。

なお若干面白かったのは艦内に「ケマルチュク」というのが住んでいるという話で、要は単なるホラ話だろうが、この後もこの潜水艦が生き延びていくとすれば都市伝説的に語り継がれていくのかも知れない。ちなみに劇中潜水艦(S-113)のモデルになったと思われるS-13は1954年に退役している。

[2022-05-14追記] 難民船を撃沈して悪名の高い潜水艦長を、忘れた頃になって引っ張り出して英雄扱いしようとする魂胆が気に食わない。最初は穏便にと思って4点を付けていたが今回改めて点数を落としておく。日本人も「三船殉難事件」や樺太(「氷雪の門」1974)や満州やシベリア抑留などのことを忘れてはいない。残った点数はケマルチュクの分だ。
なおそのケマルチュクКемарчукとはこの潜水艦だけにいるのでなく、“目に見えない乗員”として船乗りの間で共通認識になっているのかも知れないと思ったが、今回改めて調べてもネット上に情報が少なくわからないのは残念也。この映画で見た限りでは、勤務中に寝てしまった奴がいた場合のおとぼけや揶揄に使うもののようでもある。
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