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すばらしき世界 - 目隠シストさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 すばらしき世界
レビュワー 目隠シストさん
点数 9点
投稿日時 2022-01-01 00:00:00
変更日時 2022-01-01 07:30:26
レビュー内容
ネタバレあります。未見の方はご注意ください。

自然災害、不慮の事故など、本人に責任が及ばぬ原因で終わる人生もあれば、己が生き様の帰結として迎える必然の最期もあります。後者を選択できた者は、その結果が好ましかどうかに関わらず「幸運」に違いありません。三上の最期は唐突かつ遣り切れぬものでしたが、明らかに後者と考えます。それに見方を変えれば、これほど幸せな結末もありません。生活苦もなく、辛い闘病生活も経験せず、悲しんでくれる人がいる、泣いてくれる人がいる。これ以上何を望みましょう。彼は周りの人々に恵まれました。もしかしたら人生の前半で使わなかった運を、ここで一気に使ったのかと思うほど。もちろん、身寄りのない三上が短期間で濃密な人間関係を築けたのは、彼の人間性に魅力があったからに外なりません。広い空の下で死ねたこと。彼が迎えた人生の結末は、最善でなくとも、最良のものだった気がします。
生い立ち、セーフティネット、犯罪者の社会復帰。シリアスな周辺要素を孕みながらも、物語は一人の男の日常生活を淡々と描くスタイルです。どこで終わっても成立したでしょう。それこそ後味よく希望を抱かせるエンディングを用意することも容易でした。しかし西川監督は「けじめ」に拘った気がします。それが「人生」を描く責任。西川監督の過去作を見てもわかるように、その真摯な姿勢は一貫しています。良いところも悪いところも、好都合も不都合も、全て描く。でもその視線には人間に対する絶対的な肯定感が見てとれます。それを「愛」と呼ぶのかもしれません。だから私たちは西川監督に魅了されるのだと思います。タイトル『すばらしき世界』は幾ばくかの苦みを含みつつも、皮肉ではありません。
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