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タイトル名 |
ピアニスト |
レビュワー |
no oneさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2004-02-24 02:30:13 |
変更日時 |
2006-02-09 06:54:11 |
レビュー内容 |
主人公は、ものすごーくイタくて、滑稽で、コミニュケーションのど下手くそな人。悪い意味でオタクっぽくて、おそらくは人間関係の基本というものがわかっていなくて、ろくな友達も恋人もおらず、ポルノに耽溺して変態的な妄想をすることで生きている。日本人にも多そうなタイプ。
美男子に言い寄られて大チャンスなのに、最初は戸惑いのあまり拒絶して、相手が離れていくと一気に怖くなってすがりつく。人との距離の取り方が、全然なってない。イタいイタい。ほんとに痛い。
でもすっごく可哀そうでもある。現実の悲劇というものは大抵の小説や映画よりもかっこ悪くて、醜悪で、どうしようもなくまぬけだったりするものだ。同情する以前に引いてしまうような、心の歪み。ある種の人間は本当に辛いことがあると、幸福な人間には想像もつかないような変てこな方向に行ってしまう。まともに愛されたことのないゆえに心が崩れ、他人に嫌われ、そしてかえって愛されたいという願いばかりが膨らんでいき、さらにバランスを崩していく。
これが『電車男』なら、オタクが更生(?)してめでたしめでたし、というハッピーエンドだったけど、ミヒャエル・ハネケはそんな甘い結末を用意しない。もっとも幸福なオタクの人生が『電車男』にあるとしたら、もっとも不幸なオタクの人生がこの映画だ。 そして残念なことに、不幸な物語の方が現実には多いだろう。だって正直な話、こういう人が周りにいたら、自分でも敬遠するんじゃないかと思う(恋愛対象としても友達としても)。彼女のような人間を愛してくれる誰かが、この世に存在するんだろうか?
そしてまったく救われないラスト。変に聞こえるかもしれないが、自分はこの結末に監督の優しさを観たような気がした。だって、これが現実なんだもの。どこにでも孤独に苦しんでいる変人はいる。彼らが苦しんでいても普通の人々は見て見ぬふりをするか、バカにするだけで、手を差し伸べたりはしない。彼らはけっして救われない。監督はそんな彼らの苦しみを本当に理解している。
そして見て見ぬふりを決め込んでいるわれわれに、これでもかとばかりに見せ付ける――「お前ら、目を背けてんじゃねえぞ」、と。彼女のような人間と、彼女を侮蔑するか拒絶するかしかしない普通の人々。本当に醜いのはどちらなのか? |
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