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エル(1952) - すかあふえいすさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 エル(1952)
レビュワー すかあふえいすさん
点数 9点
投稿日時 2014-03-30 20:04:17
変更日時 2014-06-13 21:06:35
レビュー内容
最も狂っておらず、最も狂った作品。
同時にもっともエロくなく、もっとも官能的なブニュエル作品。

精神を病み、自分が正義だと信じ続け身を滅ぼしていく男の悲しきドラマ。「昇天峠」より強烈だ。
精神病の症例記録を映画化しようと思うのは、ブニュエルくらいか。それをスリリングなサスペンスのように魅せるブニュエル。

男は、礼拝堂で聖母のように美しい女性(脚)と出会ってしまった。歪んだ正義は独占欲となって彼女を束縛する。
他人への憎悪。嫉妬で荒れては、愛する女に許しを請う。教会の上から「俺がてっぺんで、下を歩く連中はクズだ!」と言わんばかりに軽蔑する。
遂には「俺の思い取りにならんなら、いっそ!」と愛する女にまで憎悪を向ける。階段の手すりをガンガンガンガンと叩き続けるシーンの狂気と怖さ。あらゆる事が思い通りにならない苛立ちと恐怖。
男の様子を見て怯える女よりも、男は何かに怯えているのだ。

女はそんな男から逃げる。こんなもん逃げたくもなるわ。
男は「俺のものにならんなら、ブチ殺してやる!」と街に飛び出す。礼拝堂で周りから嘲笑される幻覚に襲われる主人公。自分の何もかもが否定される絶望感、怒りは神父の首に向かう。
女が向かった新天地の不気味なくらいの平和が、後を引きずる。
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