SCAT/くちずさむねこ(2007)

 

ジャッジ・ドレッド(2012)(2012年【英・南アフリカ】)

警察ドラマの枠組みを一切はみ出さないシナリオが渋い(あ、ミステリ要素はないですが)。
ここまでくると「冒険を避けた」っていうんじゃなく逆に「新たなチャレンジ」に見えてくるからフシギ。

そういう想いで観ていたので、ジャッジ同士が戦う後半、誰が誰かわかんなくなる画面の作りにビビビビッとシビレました。
ジャッジの制服は没個性の、お役所の、権力の象徴なので、あのわけのわかんない戦いは非常に正しい。ジャッジ・ドレッドはヒーローじゃない。法の番人でしかない。あの戦いが個人的な能力とか、主張の正しさとかの理由で決着がついたら、非常にガッカリだったでしょう。あのシーンではチームで動いた側が勝った。分断されて個別撃破された側が負けた。つまんないほど合理的な〆かたが、逆にすっごく渋くてはまりました。

画面上でのヒロインの立て方を考えてほぼ全シーンで作り込んでるな、っていうのはあにやんさんの評を読んで気付きました。ヒロインだけどルーキー、時として少年ぽくも見えるモノセクシャル、でも荒んだ空間では目立ちまくりのブロンド…付加されたいろいろな記号が、その時々で上手に使い分けられているのがGOOD。

難をいえば、閉鎖空間の話だからシナリオ上似てくるのはしょうがないとしても、できた画がホントもう似非カーペンターっていうか…ここはもう少しヨーロッパSF映画のテイストを真似るべきだったと思うんだなあ。あの空間は、監獄じゃなくてアパートメントなんでしょ、本来は。
カーペンター風ってのは最近じゃ珍しくなくなったけど、この映画に関しては安易なチョイスだったと思いますわ(音楽はややイケてた)。

PS.
と書いてから製作国を見てビックリ。
今や、アメリカ・オーストラリアが入らないでこのグレードができるんだ。
見てる間、イギリスとオーストラリアの合作だと思ってました。南アフリカって「第9地区」以来、着実にこのジャンルに食い込んできてるんだなあ…自分が最近映画から離れてしまったのを実感した次第。
1点UPさせて頂きますですよ。

PS2.
一日考えてみたんだけど、あのエンディングも相当渋いシチュエーションだなあ、と。
普通ならルーキー・アンダーソンの気持ちの機微を(オイラは、アンダーソンがもう「ジャッジが世界をよくできない」事を理解しているから徽章を返却したと見てます)汲んで「失格」と告げるエンディングか、何も考えないアメリカ人風な「オレと一緒にやって行こうぜ」的なノリで「合格」と告げるかなんだけど。
しばらく考えた後で「合格」っていうのは、どう考えても自分の気持ちを殺して職務としての答えを取った、つまり「彼女はジャッジとしてやって行ける。でもまあオレは彼女にこの職にはついて欲しくないんだけど、職責として答えるとすれば…」という逡巡しか考えられないんです。
間違いなく人間であるのに、人間性を否定する、この逆ロボコップなエンディング。
「英国スパイ物の系譜にあるお約束」っていえばそうだけど、芯からブリティッシュなヒネリだよなあ、渋いよなあ。
評価:7点
鑑賞環境:インターネット(字幕)
2014-08-17 10:32:00 | 実写作品 | コメント(0) | トラックバック(0)