SCAT/くちずさむねこ(2007)

 

瀧の白糸(1933)(1933年【日】)

世間の映画館が全てデジタル映写機になり、35ミリフィルムの活弁付きで観られる最後のチャンスかもしれない! …という噂で観に行きました。
いやあ何でしょう、この、溜めて溜めて溜めてからドーンと襲ってくる甘美な世界は。女性世界の忠臣蔵みたいなもんですかね。

最初の馬車のくだりからもう、ドラマ的な幸せとこの物語の幸せが一致してないコトが明示されてるんですが、そのテーマが何度も何度も繰り返されてラストでの屈指の裁判シーンへなだれ込んでいく。隠し通した罪を告白するのが同時に最高の愛を告白する行為になっていくという、甘い、甘〜い悪夢世界。
徹底して瀧の白糸の主観でまとめ上げられた世界で、個人的には埋もれたサイレントのホラー映画『恐怖の足跡 ビギニング』(ディメンシア)を彷彿とさせる閉塞感に満ちていました(正直、観ていてかなりかぶりましたよ…オイラの独自感性だから普通の人は違うでしょうが)。だけど、この容赦ない展開とエンディングを持ってくるなら、少しの逃げ場も残さないこの展開はやはり圧倒的です。
一般的な映画では『裁かるゝジャンヌ』の影響が凄そうですね。少なくとも「引きとアップの使い方は当時のカメラ性能もあるから似た感じになるよなあ」って思って観てて、最後に裁判所の場面になっちゃうんで腰抜かしましたよ。ジャンヌほどシャープな絵にはしてないし、構図もシンプルじゃないんだけど、無地の壁とかを背景にして演じると似てきますね。そこで展開される演技とストーリーにはプロテスタント臭はなく真逆なんですが…。

最後に、活弁の麻生八咫氏の熱演で、ラストでは会場にすすり泣きの嵐が起こったのを書いときます。
サイレントは弁士がいるといないとでは30倍くらい感動が違うんだなあ、とまたひとつ勉強になりました。
一緒に観た忠治旅日記の方のレビューは、明日にでも(明日は同じ大河内傳次郎の『長恨』も観てくるし)。今日はもうホントおなかいっぱいで…。
評価:10点
鑑賞環境:映画館(邦画)
2015-06-13 16:57:54 | 実写作品 | コメント(0) | トラックバック(0)