1.実録ドラマシリーズ(と個人的に名づけているジャンルなのであるが)としては意外と格調を保っており出来は良い方ではないかと思う。ミュージカル「キャッツ」などの作者として名高いT.S.エリオットと、その妻ヴィヴィアンの数十年に渡る異様な結婚生活を描き、日本人としては思わず「智恵子抄」を思い出さざるを得ない内容。結婚前から精神を病んでいたヴィヴィアンと、結婚生活を維持しようと無理な努力を重ねる痛いトムの純情は、この不幸が彼を立派な作家へと育てたのね、という説得力に溢れている。イギリスの田園地帯を舞台とした美しい映像、衣装やセット、いかにもな雰囲気一発モノではあるが普通に覗き見趣味を満足させてくれる。マゾっけたっぷりなウィレム・デフォーの「痛い」個性が際立つ一篇。ミランダ・リチャードソンの狂った眼差しは上手い。オトナがなんちゃってな格調高い雰囲気を欲した時には、こういう作品もいいんじゃないかと。