6.《ネタバレ》 英国BBCのテレビドラマシリーズ「SHERLOCK/シャーロック」は、海外ドラマ全盛の近年においても随一の傑作シリーズだと思う。
個人的に、海外ドラマはどハマリするのが怖いので敬遠しているのだが、今作に限っては、数年前にNHKで放送されたファーストシーズンの第一話を観た瞬間から、完全に“虜”になってしまった。
“現代版シャーロック・ホームズ”という題材自体は、よくありそうなものだったけれど、このドラマの場合は、原作を礎にしたキャラクター設定の“再解釈”と“キャスティング”が、奇跡的な程に素晴らしかった。
英国俳優ベネディクト・カンバーバッチが演じたシャーロック・ホームズは、アーサー・コナン・ドイルが生み出したキャラクター性をそのまま保ちつつ、ブラックベリーとラップトップを速やかに操る文字通りの“変人”、いや天才として「再誕」させていた。
それは、誰もが知っている“名探偵”であると同時に、誰も見たことがない“名探偵”の誕生だったとも言え、その矛盾的表現がキャラクターの秀逸なオリジナリティを表している。
そして、ホームズにとって切っても切り離せない「相棒」と「敵」の存在感が、このドラマシリーズの価値を更に高めた。
“ジョン・ワトソン”を演じたマーティン・フリーマン、“ジム・モリアーティ”を演じたアンドリュー・スコットの確かな演技力と存在感が、ベネディクト・カンバーバッチの稀有なスター性と相まって唯一無二の世界観を構築したのだと思える。
と、いうわけで、つらつらと止まらなくなるくらいにテレビドラマシリーズの大ファンなので、この“劇場公開作品”も当然期待大であった。勿論、映画館に足を運びたかったのだが、タイミングが合わず劇場鑑賞には至らなかった。
テレビ放映を待ってようやく鑑賞に至ったのだが、どうやら映画館に行かなかったことは正解だったようだ。残念ながら。
シリーズファンとして楽しめはしたが、あくまでテレビドラマの“番外編”であり、決して映画化作品というわけではなかった。
実際、劇場公開したのは日本だけのようで、本国イギリスではシーズン3とシーズン4を繋ぐスペシャルドラマという位置づけだったようだ。
大好きなキャラクターたちが、セルフパロディよろしく原作の時代設定の中で立ち回る様は、勿論嬉しいのだが、当然ながら秀逸なオリジナリティが薄れてしまっていることは明らかだった。
カンバーバッチの原作版ホームズ像も、違和感がなさすぎて“逆にフツー”という想定外のマイナス要因が生まれてしまっている。
ストーリーテリングとしても、“通常回”に比べて圧倒的に巧くなく、拍子抜けしてしまった。
まあしかし、これはこれとして、ファンとしてはシーズン4の放映が近づいていることが何よりも嬉しいわけで。
すっかり大スターになってしまったキャスト陣の再集結が楽しみでならない。