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ボビーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

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21.  都会のアリス
これほど台詞が少なく、そして台詞をあまり必要としない映画は始めて観た。この映画は穏やかで美しい音楽や二人の息のあった素晴らしい演技や、数々の綺麗な風景など、台詞以外の部分がとても鮮麗されていて思わず見惚れてしまった。そしてストーリーは有りがちな設定だけど、その馴染みやすい平凡なストーリーは食い入るように観れてしまった。その中でも二人で取った証明写真をアリスが見つめ、笑顔になり、そして女の子らしい格好になったあの場面は、少女の“恋”の芽生えを美しく、そして繊細に描いていた。あの場面は、僕の一番のお気に入りのシーンです。そしてその後の展開は切なさがドッと込み上げてきた。大げさに言えば、片想いの恋をしている時の切なさになんとなく似ている。それほどラストは切な過ぎで、胸が苦しくなる。今も苦しい。この苦しさが消えるのに何日かかるかな?あぁ~苦しい・・・
10点(2004-09-28 22:57:13)(良:2票)
22.  東京物語
開始五分はとにかく穏やかだった。その五分と言う間に、日本映画の“静けさ”の本当の意味を知った。音楽はいらない、日常の音がただ静かに音楽のような役目になって、二人の会話を浮き立たせる。そして二人の穏やかな会話が心を和ませた。自分が持っているのにも関わらず、自分は持っていないと言って強情を張り、でも結局自分が持っている事がわかると、黙り込む。しかし妻は決して夫を責めない。その心の余裕、やさしさに感動し、泣きかけてしまった。二人は決して争い事を起こさず、無理もまったくせず、ただ自然に相手を想い合う老夫婦。優しさに満ちていた。そして僕の心は完全に癒され、幸せな気分になった。この時点で既に10点をつけると確信した。そして二人は東京へ。大都会、多人口、日本の中心へ。未知の世界へと足を踏み入れた二人だった。始めは子供達も親切に親を想い、見ていたが、徐々にその姿も雑になって行く。その姿はあまりにもあからさまで、僕自身、怒りの感情が爆発して、壁に穴を空けてしまうのを抑えるのにすごく苦労した。どうして親の気持ちを理解しない?親がどれだけ我が子を想い、どれだけ愛しているかなぜ解らない?親が何を求めて東京に来たのかなぜ気付かない?あまりにも辛く悲しかった。観続けているのが辛くなった。そんな中、血の繋がりのまったくない紀子だけがこの辛さ(暗さ)に光を灯していた。老夫婦を心から想い、優しく包み込む紀子。あまりの優しさ、親身さに涙が止まらなかった。血の繋がりはなくとも、まるで親子のような“愛”が老夫婦と紀子の間にはあったのに、実の子供と親の間には薄っぺらな形だけの親子のような関係のようにしか見えず、悔しさすら込み上げ、奥歯を噛締めても涙が止まらなかった。本当に親子の絆はこの映画のようにいつかは薄れてしまうのだろうか?そんなの辛過ぎます。悲し過ぎます。僕は絶対そんな大人にはなりたくない。でも、今はそうならない自信がある。それはこの映画を観たから。僕に親という掛け替えのない存在の大切さに気付かせ、深く考えさせる切っ掛けを作ってくれた。僕はこの気持ちを絶対に忘れない。僕に親の大切さを“映画”という形で教えて下さった小津安二郎監督に、感謝の気持ちと敬意を払い、10点を点けさせていただきます。僕はこの映画が大好きです。本当にありがとうございました。
10点(2004-08-23 15:17:13)(良:3票)
23.  近松物語 《ネタバレ》 
古き良き日本映画。 半世紀も昔に、これほどまでに熱く、強い想いの伝わる、情熱的な日本映画が存在した事を、僕は始めて知った。前半、このストーリーが一体どういう方向に進んで行くのか見当がつかず、ただただ逃げるシーンばかりで胸がつまる想いだった。しかし、後半の入り、湖の上で船に揺られる二人の、真っ直ぐで強く、熱い想いを目にした後はもう、終わりへとあっという間に時間が過ぎて行き、僕自身高鳴る想いを感じた。引き裂かれる二人、離れる事が出来なくなった二人の強過ぎる想い、死に向かう事を幸せに想う二人。愛し合う事を許されない二人が結ばれる所は死後の世界だけなのだろうか?しかし、僕はそうは思えなかった。二人は短い時間しか愛し合う事が出来なかったけれど、二人の愛し合った時間は、千年に匹敵するほどの愛のように僕には見えた。そして、僕に愛し合う事の重み、愛と言う、目には見えないものの大切さを、映像美、音楽、役者達の演技など、数々の素晴らしい演出を融合させた“映画”と言う形で教えて下さった、溝口健二監督に感謝の意を込めて10点を付けさせていただきます。どうもありがとうございました。
[映画館(字幕)] 10点(2004-08-05 19:13:12)(良:4票)
24.  はつ恋(2000) 《ネタバレ》 
人は必ず死ぬ。でもそれを真正面から受け止める事は本当に辛い。この映画の主人公、田中麗奈演じる会田聡夏は母の思い出と初恋の手紙を見つけ、その相手を探し始めた。それはまるで母がこの世を去る事を悟っているかのようなに儚く切ない行動だった。あの行動の数々は多少、彼女の自己満足もあるだろうが、でもその自己満足的な行動が鍵となって“家族”という掛け替えの無い物の大切さに気付く事となった。主人公、会田聡夏の純粋な心や直向な優しさには終始感動しっぱなしで、ラストからエンドロールにかけての間は、もう、涙が止まりませんでした。僕はこの映画、ホント大好きです。なぜなら脚本だけでなく、出演者の演技やカメラワーク、さらにいくつもの美しい桜の様子が本当に繊細で、その桜の映し方や見せ方が本当に綺麗で感動的だった。そしてやっぱり久石嬢さんの最高の音楽。本当にこの映画の全てが僕にとっては完璧としか言えないです。はぁ~・・・なんて切ない映画なんだ・・・だけど、この切なさがたまらなく好き。切ないからいつまでも心に余韻を残し続け、いつまでもこの映画を思い続けられる。それはまるで初恋の記憶のように淡く切なく心に残り続ける。あぁ、なんて素晴らしいだ。僕には10点以外をつける事はできません。
10点(2004-04-11 18:45:17)
25.  アパートの鍵貸します
題名からはどんな映画なのかさっぱり見当もつかなかった。それどころかラブストーリーなのかさえ解らなかった。それでもいざ始まってみると、題名とラブストーリーの繋がりが見えてきて、ストーリーが進むに連れて、切なさから胸が苦しくなったりもした。映画で胸が苦しくなるなんて今まで味わった事がなくて、それだけでこの映画のもつ魅力というか、力を感じた。この映画は始まってから終わるギリギリまで、2人が結ばれそうな雰囲気があまりなくて、最後の最後でやっと安心できました。はぁ~・・・これが、LOVEなんだよなぁ・・・こんなLOVEしたいなぁ
10点(2004-03-27 18:46:12)(良:1票)
26.  椿三十郎(1962)
現在高校生のまだまだいたずらや遊ぶ事が大好きな子供のわたくし。この映画はそんな遊び心を擽る素晴らしい作品。好奇心を擽る椿三十朗の言葉。随所に盛りこまれた小さなギャグの数々。全てが楽しくて、画面から目が離せなかった。この作品はたった90分間。それ程長いとは言えない。でもその90分に3時間の『七人の侍』と比較できない程の感動と衝撃をうけた。この作品は遊びの要素と真剣で楽しめる要素がギッシリ詰まった、素晴らしい作品です。10点!
10点(2004-03-17 17:57:13)
27.  七人の侍
冒頭の侍探しから、最後の合戦まですべてが迫力万点で凄かった。これほどスケールが大きくて、勇ましい日本映画があるなんて・・・驚き。そして全てが終わり、画面が暗くなった瞬間、鳥肌が立ち、身体の奥底からこみ上げてくるものがあった。そして、恥ずかしい事にこの作品を観終わるまで、僕はこの素晴らしい日本映画を名ばかりが一人歩きしている、ただただ有名なだけの平凡な作品だと思い込んでいた。しかし、僕の考えはまったくと言って良いほど外れていた。恥ずかしい・・・今思えば、自分の馬鹿さ加減に死ぬ程腹が立つ。そして、この作品が世界中に名を轟かしている理由を身をもって知った。間違いなく10点の作品。日本が世界に誇れる作品の一つである。まず、間違いない。
10点(2004-03-16 17:39:13)
28.  12モンキーズ
理解しきれなかった、でももう一度見たら面白いかも... (2013/11月変更/4点→10点)面白いよ。しびれるほど。
[DVD(字幕)] 10点(2002-12-12 17:30:41)
29.  8月の家族たち 《ネタバレ》 
家族は、小さな集団。そこには決まりごとがある。役割りがあり、ルールがあり、受け継がれている文化がある。社会の小さな縮図。それぞれが何かを誰かによって強いられ、決めつけられ、自由を得た奔放者にはそこでは白い目が向けられる。多くの者がそこに暑苦しさと息苦しさを感じていた。変化を求めていた。オクラホマの代わり映えのしない風景が延々続く地平線を見つめ、渇望する。変化は、家のいわば幹だった者が起こす。物語を愛したその者は、自ら身を投げた。そして集団は、均衡を失い、秩序を見失い、役割りから逃れていく。この物語の中に間違った者はいても、死に値するような者は出てこない。みんな必死に生きているだけだ。ぼくらと同じだ。
[映画館(字幕)] 9点(2014-04-25 05:05:25)
30.  キャビン 《ネタバレ》 
ホラーを観続けて良かったと、心底思った。まるでホラー映画からのご褒美かと思った。
[映画館(字幕)] 9点(2013-08-25 07:42:16)(笑:1票) (良:2票)
31.  エンド・オブ・ウォッチ 《ネタバレ》 
「この物語は真実である」という現実味を劇映画以上に感じさせようとするモキュメンタリーも、ハリウッドでは一般的になりつつあるように思う。「クローバーフィールド」や古くを挙げると「ブレアウィッチ~」などもあって、昨年度には「クロニクル」でモキュメンタリーが全米一位にもなっているのだから多分、ハリウッドでは珍しくなくなっているのかもしれない。その一方で本作が抜きん出て優れているのは、モキュメンタリーが多く用いる題材が「大嘘」に対し、本作が「現実味」のある題材を主題にしている点にあるように思う。たまたま撮ってしまった(モキュメンタリー)ものが現実味があることによって信憑性が増して、緊張感も膨れたのだと思う。上手く転がり過ぎな物語を中和もしているし、手法と主題は見事に合致している。考えているなーっと心底感銘を受けた。
[映画館(字幕)] 9点(2013-08-25 07:09:27)
32.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
夢の物語。一心不乱に美を追求する彼の思い描いた理想という名の夢。消えそうでも、断ち切れそうでも、夢を抱ける者は立ち上がれる。また、立ち上がらなければならない、と自分に言い聞かすことが出来る。夢に始まり、夢に終わる。 寝て起きて、見た夢を他人に語って面白がられることなんて殆どない。夢は自分にしかわからない。これは、夢を知る者しかわかるはずがない。全てが空想、ファンタジー。まさしく夢。
[映画館(邦画)] 9点(2013-08-25 06:31:10)
33.  トゥルー・ロマンス 《ネタバレ》 
夕焼けに染まる浜辺を歩く2人とちびっ子の姿を見ながら涙をグッと堪えて「ちくしょー、良い映画だ」って心底思い、彼らのこの先が平穏であることを願った。欲深さのない澄んだ心を持った2人が出会った瞬間、欲の為に必至こいている奴らは到底2人にはかないっこ無いんだ。これは起こるべくして起きた奇跡の話。でも、こんなステキな映画を撮れるトニーがもういないなんてあまりにも哀しいな。どうか、ぼくが死んだら「素晴らしい映画だった」って伝えに行きたい。
[DVD(吹替)] 9点(2012-12-21 01:48:49)(良:2票)
34.  デス・プルーフ in グラインドハウス
くっっっっっっっっっっっそ、おもろいやないかーーーーー!!!!!ケツ、吹き飛ぶてっかてかのエロい足、女子パンチ、女子後ろ回し蹴りに、女子美脚踵落とし!序盤のガールズトークの不毛さゆえにラッセルに肩入れしてしまったが、2幕でも繰り返されるガールズトークでは女子たちのステキさに肩入れし、「またしても…嫌だ」って思わせてからのハイパーカタルシス!こんな馬鹿でエロクてグロい映画は法律で規制されるべき麻薬映画だ。観賞後、即座に二度目を観たのは言うまでもないわ。
[DVD(吹替)] 9点(2012-12-17 23:44:05)
35.  危険なメソッド 《ネタバレ》 
序盤からキーラ様の抑えられない”感情”が明解に「突き出る」。これはまさかと思い、いやまさかとおもっておりましたら、いやまさかまさかやはり男性器のメタファーでした。相変わらず解りにくい事をやって下さいますクローネンバーグ先生。科学を専攻しておられた先生の作品には、いつも”科学者的思考”が否応無く張り巡らされておりますが、今作はそんな先生の”潜在的な意識”と”画面上で起きている出来事”が完全に一致しておりますので、先生にとっては得意中の得意、あるいは真にやりたかった作品なのでは?と思わずにいられませんでした。ヒステリーに象徴される「行動」に出るものには必ず潜在的な深層心理が関係しているなんてのは、今でこそ当然ではありますが、当時はそんなこともなく、ヒステリーはただの病気でしたのでユングとフロイトの残した功績は現行の多くの分野に足跡を残していると言えます。そんなユングとフロイトの夢判断合戦の滑稽さ、終盤のやりとりの回りくどい批評合戦、そこにある自分を棚に上げる滑稽さは可笑しくも可哀想であり、またそこで対比して存在するザビーナの変化も映画的に見事に捕えておられます。彼女の勃起を抑えようとする様、あるいはケツを叩かれながら自分をしっかり客観視しようとする様には、元気になりそうになったアレもが引っ込みました。 そんな中枢の物語の基盤にある「潜在的感情」を比喩やメタファーを用いて描く点もやっぱりクローネンバーグ先生らしくもあり、こっちも先生の『潜在的テーマ」を探ろうとまるで先生になったような気持ちで必至で探らせて頂きました。非常に余白の多い豊かな作品であると共に、映画製作、映画鑑賞もまた登場人物の感情を知ろうとする心理分析だと改めて体感致しました。
[映画館(字幕)] 9点(2012-12-17 02:28:24)
36.  希望の国
園監督の作品をぼくは手放しで賞賛してしまう。客観性を若干欠如した無意識的な同調心が強烈にぼくの中に育成されている。発端は「自殺サークル」であの作品はカルト的に「やっている事」、つまり表層的な面を評価、あるいは揶揄する声が多い中でぼくは監督の"誠実さ故の強烈さ"に打ちのめされた。表層的に描かれている事が非常に直接的に強烈な意思を表現しているのにも関わらず、結果的に強烈さに目を奪われ、見過ごされている"内面"という構造そのものもまた現代的だったりするのだが「監督の祈り」を受け取り、己の気付こうとしなかった世界の側面に気付かされ、当時のぼくは感謝の思いで一杯だった。それ以降、監督が描き出す世界は、いつもぼくが見過ごしている世界の実情を間違いなく教えて下さってきた。それらにいつも驚かされ、感動させられ、勉強させられてきた。今回は、表層的なテーマと内面的なテーマが同一線状にある為、明確であると同時にある種の「押し付け」が感じられる。というのもこれまでは気付いていないことを能動的に感じ取ろうとする事で「観客が自発的に気付く」というのが園監督作品のある種の醍醐味だったが、今回のは見ていればわかる具体的な台詞等もある。つまり意図的にアピールしているとしか思えない。要するに「祈る」レベルではなく、それを「共有(もしかすると強要)」したいレベルで今回の作品は作られたのだと思う。園監督の焦りや憤りがあまりにも強過ぎる、もはやデモ行為と等しい作品だった。だから全体的に演出のあざとさに違和感があったのだと個人的には納得。空白(内面的テーマ)があるとすればお母さんの「帰ろうよ」という台詞が監督の真の願望、思想だったのではないだろうか。「自殺サークル」で言えば「あなたはあなたの関係者ですか?」に匹敵するほど能動的に自分自身を内省させてくれる。余白は圧倒的に少ないが、現代日本の著名な監督で唯一作品で意思表示をなさった監督に敬意を持たずにいられない。その誠実さ故の強烈さにやはりぼくは強烈に感動させれらてしまった。
[映画館(邦画)] 9点(2012-11-05 18:36:51)(良:1票)
37.  パーマネント野ばら
ようやく拝見。これは本当に大変素晴らしい。まずリアリティラインの圧倒的な実在感による破綻しない物語の説得力が、至極の余韻を生み出している。夏木マリさんも小池栄子さんも、池脇千鶴さんも、みんな「クヒオ大佐」同様、あとちょっと演出間違っていたら「嘘っぱち」だった。序盤から突き抜けに明るくテンション高めで、菅野美穂さんの素性とその周辺を軽快なテンポで説明していく。ただその説明も説明台詞など物語の進行を鈍重にするような手段は取らず、的確に省略と凝縮を用いてスマートに描いて行く。このスマートである事が決定的に効果覿面。序盤のその構成で観客はそうであると「思い込む」。つまり序盤の構成、あるいはその一見穏やかそうに見える世界の全てが、後の「事実」の伏線としての存在理由も兼ねているというこの重層的な構成。す…すげぇやん。序盤が明るければ明るいほど、結末での落差が尋常ではない。吉田大八監督の奥行きある表現を描き出す演出力に心底むちゃ脱帽。「クヒオ」「桐島」と同様、今作も「願望=妄想」演出が美しかったが、と同時にそこにある儚さや尊さが残酷な形で浮き彫りになるのは痛々しくて、苦しくて心砕かれる。生きる事の痛みを誠実に描こうとしている。吉田大八監督の作品に関して共通しているのが、最も重要な部分を「隠している」点にある。監督が言いたい事を登場人物が語ることはなく、観客の能動的な姿勢によって初めて「見えてくる」という点。そもそも、芸術の読解方法は能動性なわけだから当たり前なんだけど…ま、それはいいとして。テーマはあまりにも日常的で我々が日々感じている事なのだが、それがあまりにも日常的過ぎるが故に見過ごしてしまっている、この普遍性。あと最後に。ラストカットのその前のカットがファーストカットの対。つまり現実や期待や夢がこぼれ落ちていくメタファーがテーマも暗喩している。構成が匠で美し過ぎる!!
[DVD(邦画)] 9点(2012-10-17 13:26:46)(良:1票)
38.  SHAME -シェイム- 《ネタバレ》 
「17歳の肖像」「Never Let Me Go」そして「Drive」と、あまりにも輝き過ぎていて直視するのも堪え難いC・マリガンの美しき裸体が拝めるとあって、固唾をのんで拝見したが、その感想は見事なまでに期待を裏切られた。垂れ下がり、締りのない胸。スマートとは対極を示すかのようなボディーライン。絶句だ。だが、それすらも複線なのだと、クライマックスで激情的に感じ得た。ファスベンダーは性に溺れているが、その発端は一切描かれない。依存症は、何かへの反動、あるいは逃避で始める事例があるようだが、彼は一体なぜ性から抜け出せなくなったのか?それが今作の核たるテーマだと思わずにいられなかった。まず、彼は社会的になに不自由無く暮らしている。お金はあり、容姿端麗できっと学歴もあるだろうし、会社では多々結果を残しているに違いない。彼には欠点という欠点が表層的な部分では一切無いと言っても過言ではない。そんな彼の姿勢は、これもまた何処か機械的に、何かを隠しているようにも見えてならない。つまり、“性”と“社交的振る舞い”は等しく「何か」からの反動、逃避であることは彼の姿を見ていればそれとなく理解出来てくる。「SHAME」社会的に彼が最も隠したい“SHAME”とは?クライマックス、彼はゲイプレイの末に3Pをする。彼の表情は快楽に溺れているように見える。そのバックでは妹の声がする。彼はその声から逃げるように、紛らわすかのように激しく腰を振る。そして絶頂の瞬間に彼が見せるあの悲痛な表情。彼は真に望む相手とのそれができない事を理解している。だがそれを理解していても、捨て去れるわけではない。むしろ離れようとすればするほど、それは否応無く彼を苦しめる。社会的に依存症と比べ物にならない程軽視されるであろう彼の願望。それは家族にも、当然社会にも知られてはならない想いだ。それから逃れる事なんて彼には出来ない。望む事を唯一で来た序盤の彼の涙がそれを克明に物語る。あまりにも許されない、あまりにも美しすぎる”SHAME”。素晴らしい。
[DVD(字幕)] 9点(2012-10-16 20:43:28)(良:2票)
39.  アタック・ザ・ブロック 《ネタバレ》 
まずこの作品を語る上で欠かせないロジックとして挙げられるのが、昨年8月にイギリスで発生した暴動です。この暴動に参加した多くの人が、低所得者公営住居に住まざる得ない“チャヴ”と称される若者たちでした。親に頼らず自らの力で生きなければならない子ども達が不の連鎖の中で成長し、見た目は大人、中身は子どもの状態で育ってしまい、あのような痛ましい暴動が起きてしまったのかも知れません。作中の序盤で彼らチャヴ達は同じ団地に住む住人から「モンスター」と称され、見下されていました。当然と言えば当然でナイフをチラつかせて他人の生活を脅かすわけですから、しかるべきリアクションですしこの台詞も本当に気が利いててNice!!そんな彼らのそれらの行為に動機付けとして見えるのは、社会からはみ出し、見捨てられてしまったがゆえの「identityの喪失」があり、「個の存在」を主張し、認めさせたくなるのは理解できます。また、はみ出し者たちのトップにいる男に認められる事も彼らにとっては重要で、存在意義をどうにかこの瞬間に留めていたように見えました。そんな彼らが「真のモンスター」と遭遇するわけです。最初は、ゲーム感覚で楽しいアトラクションに挑むような軽い心持ちでいた彼らも「理由のわからない」虐殺に恐怖し、ただひたすらに逃げ回ります。奴らを前に人としての上下関係が失われ、「襲う」側だった彼らが「襲われる」側の気持ちを知るわけです。黒いその立ち姿は離れていても認識できるほど恐ろしい存在であった彼らが真に黒い相手と対峙した瞬間、牙の恐ろしさを想像力によって感じ得、他者の存在を認識するのです。それは本来月日を掛けて徐々に会得して行く感情なので、瞬く間に感じ、急成長した彼の姿は一見あざとくも映るでしょうが、ぼくにはあまりにも感動的で、ズキズキと心に染みました。仲間の痛みを想像し、これまで襲って来た人々の恐怖を想像し、これから奪われようとしている未来を想像し、主人公モーゼが立ち上がるのです。純粋無垢に、ただひたすら自らの過ちの重みに突き動かされ、恐怖に足を止める事なく左右の足をひたすら前へ、そして未来への喪失の予感が彼の走りを加速させ、離すまいと強く手を伸ばす。メタファーに包まれたクライマックスの映画的なSlow Motion最高!本当に面白かった!! 
[映画館(字幕)] 9点(2012-07-30 12:35:29)
40.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
あの重苦しい雰囲気漂うあの部屋の壁。凹凸が影を作り出し、薄らと碁盤目状に見えてくる。誰が“もぐら”なのかが浮き彫りになるまでのドラマには、男たち(スパイたち)の潰し合いの葛藤がある。相手の手の内を想像し、裏をかくように悟られまいと忍ぶ姿。そこは恐ろしく濁っていた。顔を着けて泳ぐのが憚れるのと等しく、そこは信用ならない奴らのいるところであることを暗示している。モノトーンのグレーを基調としたように、そこは憶測と不明解な状況が蠢いている。スマイリーとそこにいる人間たちの特徴無き特徴が、彼らの物悲しさすらも表現している。というなんだか、馬鹿みたいな評論家の文章になってしまうのもこういう表現方法がこの作品のテイストを分かりやすく説明できるような気がしたからです。また、原作は未見ですが、確実に映画ならではの表現が散りばめられているような気がしてならないのです。まずは上記にも述べた色調、そして最も面白いのは「チェス」を彼らに見立てて表現しているその構造がお見事です。あの部屋を碁盤とした場合、彼らは駒でしかなく、国家によって操られ、消えて行くのです。敵と見なした仲間を消し去り、トップの座に付くスマイリーのあのラストの表情。無表情ではあるけれど、あの朗らかにも取れるスマイリーの表情は唯一のスマイルと言っても過言ではないように思えました。果たして正義とは?悪とは?仲間とは?多くのことを観客に投げかけつつ、そして最後に描かれるのは、真に信じていた友による裏切りの淵に沈んだプリドーが、最終的に少年ビルに投げかける言葉が「哀しき駒になるな」という切なる願いにも見えました。それはとてと普遍的で、今日のぼくらにも届きうる強い想いを感じ、またこの映画がこの一点に向かい集約されていたことがわかったあの瞬間、鳥肌が立ちました。お見事です、素晴らしい!!※鑑賞前に事前に大まかなストーリーと登場人物の情報を入れておくのもありだと思います。本国では過去にテレビドラマ化されていたり、根本的に大変有名な原作であるため、多くの人にこの作品の大前提の理解があったことが評価される要因の一つにあるのは間違いないだろうと思いますので、鑑賞前にパンフレットをご購入されるのをオススメします。ちなみにぼくはそうしました。
[映画館(字幕)] 9点(2012-05-27 23:15:12)
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