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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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561.  カジノ
やたら複雑なカジノの仕組みを流れるように説明する冒頭は本当に秀逸で、スコセッシという監督はダテに巨匠やってないなと感心させられました。この監督はあまり技術や手法には言及されない人ですが、何をどう見せるか、作品を見るうえでの基本知識をどの程度観客に与えておくかの計算を非常に緻密にやってることがよくわかります。デ・ニーロ&ペッシとのトリオも非常に安定感があり、作品全体の完成度は高いと言えます。ただしこの映画は既視感に溢れているのも事実で、束の間の栄光と挫折、傷つけ合うだけの男女、突発的な暴力、どれも監督が数十年間描き続けてきたものです。また監督の作風の悪い部分もきちんと継承しているのが困ったところで、いつもながらエピソードが連なるだけでクライマックスにかけて息切れをしてきます。スコセッシという人物の人間観は絶望的なまでに冷たいもので、悪い風が吹き始めると友達も家族も敵となって誰も助けてなどくれず、自分でピンチを切り抜ける頭を持った者だけが自力で逃げるという、人間に対する不信感しかないような作品ばかりです。そのような人間観のため作品全体に一本筋を通すような人間ドラマの存在しないものが多く、その結果ただエピソードが並んでいるだけにしか感じられないのです。主人公やその他の登場人物達が展開とともに成長したり、人物同士が触れ合うことで変わっていくという通常の映画には当然備わっているべきドラマ的な要素が完全に欠落しているのです。同様の傾向を持つタランティーノは遊びをふんだんに入れることでドラマの不在を完全に補っていますが、スコセッシの場合はそのような手段を持っていないのが問題なのです。各要素の完成度は高いだけにこれは残念。特に本作のシャロン・ストーンなどはスコセッシでなければ引き出せなかったであろう凄まじい演技を見せてきています。これぞまさに一世一代の大熱演で、デ・ニーロとペッシというオスカー常連コンビを完全に食ってるのがすごい限り。トータル・リコール→氷の微笑→硝子の塔→スペシャリストと演技など無縁な人だった当時のシャロン・ストーンにここまで委ねたスコセッシはやはり相当な目利きだなと思います。当時であればミシェル・ファイファー辺りでお茶を濁してただろう役柄を思い切ってシャロン・ストーンにやらせてみるってのが巨匠たる勘の鋭さなのでしょう。
[DVD(吹替)] 7点(2007-01-02 00:33:28)
562.  ソウ2 《ネタバレ》 
まぐれでヒットした低予算映画の続編はたいていロクなものがないのですが、本作はその珍しい例外。前作の公開からわずか1年で企画→脚本→撮影→編集→公開という凄まじいハイペースで製作されただけに前作の恩恵に預かっただけの駄作になるかと思いきや、前作と同等のクォリティを維持しているのに感心しました。一瞬たりとも飽きさせずハラハラさせっぱなしの演出は見事です。ジグソウの正体がわかっている以上本作に謎解きの要素は少なく、即別的な展開やスプラッタで内容のなさを補っていると言えなくもないですが、過剰なスプラッタがあってこそこのスリルは出せたとも言えるので製作側の姿勢に間違いはなかったと思います。ただし、前作の時点ですでに怪しかったジグソウの行動原理が本作ではさらに危なくなっており、「生の悦びを自覚させるためのゲーム」という体裁がほとんど崩壊寸前のところにまで来ているのは問題だと思います。自分の命を軽んじたり、倫理的に誤った生き方で人生をムダに費やしている者に生死をかけたゲームをさせ、生きていることへの感謝を再認識させるというのがジグソウの目的であり、そのゲームには被験者達の普段の行動を皮肉った仕掛けが準備され、苦痛に耐えてでも生き延びるか、そのまま死ぬかの二者択一を迫られます(セブンのジョン・ドゥと似てますね)。ここでポイントなのがジグソウの要求に耐えれば必ず生き延びる道が準備されているということなのですが、今回のサバイバルゲームには生き延びる道がなかったように思います。死ぬと予定されていた者は死ぬしかない展開でした。また、今回のゲームの最終的な目的は刑事を罰することにありましたが、この刑事が命を奪われねばならないほどの悪人だったとも思えないし。確かに彼は証拠をでっち上げて多くの人間を刑務所に送っており、その行動のツケを払わせると言うのならジグソウの行動も理解できますが、彼がかつて刑務所に送り込んだ犯罪者達をジグソウ自身もサバイバルゲームで罰する対象に選んでおり、つまり彼らが罪人であることはジグソウ本人も認めるところだと言えます。法で裁けない罪人を個人の裁量で罰したという意味ではジグソウも刑事も同じ行為をしたのに、なぜ刑事が処刑の対象になるのかという論理的な矛盾があります。2代目ジグソウが個人的な恨みをぶつけただけの話なら、それこそ説教キラー・ジグソウの名が廃ります。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-26 16:13:10)(良:1票)
563.  イーオン・フラックス(2005)
大コケぶりに妙な期待をしたのですが、実際に見ると意外とあなどれない作品だなと思いました。話がわかりづらく世間一般に認められる映画ではないと思いますが、映画好きや批評家から酷評を受けるほどのものでもないでしょう。とにかく映像美に感心。ブレードランナーからマトリックスまでSFといえば闇。テクノロジーの無機質さと闇は抜群の相性なのですが、この映画はそれを覆す試みをしており、かつ成功させているのです。雲ひとつない真昼間に緑いっぱいの庭園を走り抜けてSFを成立させているのです。また、通常のSFではテクノロジーを感じさせるマシーンや建造物が登場するものですが、この映画では代わりに小道具でそれを表現しているので独特な印象となっています。それらを見せる監督の美意識も大したもので、独特なデザインをうまく作品に取り込んでいます。外敵を感知するとトゲになる芝生や、足に手のひらを移植している暗殺者等の突飛なアイデアもダサくすることなく映像化に成功させており、なかなかセンスの良い人だなと感心しました。一方でストーリーはいまいち弱く、陰謀の根幹がクローン技術でしたなんてのはSFではよくある話で、またテクノロジーに生命の神秘性が追いつくというテーマもSFの常套句なのでアイデア自体は別段特殊なものではありません。また、脚本に舌っ足らずなところがいくつも目につきます。まずイーオンがなぜレジスタンス活動を行っているかの説明がないので、彼女がトレヴァーと心を通わせていく過程のドラマが引き立っていません。人類はたったひとつの都市に密集して暮らしているのに、イーオンは兵士をボコボコ倒せるような訓練をどこで受けたんだというそもそもの疑問もスッキリしないし。都市上空を旋回している飛行船が実はクローン製造工場だったというどんでんも、そもそもあんなものがどういう理由付けをされて飛んでたのかの説明がないのでどんでんになってないし。また、政府トップの暗殺があまりに簡単なのも納得できず、その上その暗殺犯がいとも簡単に逃亡し、しかも再びトレヴァーに接触しに行けちゃうという安易さは回避すべきだったと思います。とまぁ脚本には穴が多いのですが、これはビジュアルを見せるための映画なんだと割り切ってみると、バカみたいな話でビジュアルを台無しにせずきちんと硬派な印象を残しているので、良くはありませんがそれほど悪くもないと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-25 23:39:00)
564.  フライトプラン 《ネタバレ》 
力技の面白い映画でした。「飛んでいる飛行機という完全な密室で娘が姿を消し、機内の誰もが娘のことを知らないと言う」このようなとんでもない話をきっちりと映画の形に押し込め、かつちゃんとしたオチもつけてきた脚本のアイデアは非常に秀逸と評価できます。確かに「娘が誰にも見られていない」というトリックはあまりに杜撰で、ジョディ親子が機内の誰かと一言でもあいさつを交わしていれば崩壊する大変な危うさ。こんな無茶な計画はありえません。がしかしこの荒唐無稽な前振りありきでこれをどう料理するかがこの映画の味とも言えるわけで、できれば目をつむってあげるのがいいかと思います。スーパーマンを見て「そんなやつはいねぇよ」なんてつっこまないのと同じだと思ってあげてください。製作側もこの大きな欠点については十分承知していたようで、だからこそ97分というすさまじい短時間で観客に考える余裕を与えずに見せ切ったのでしょう。前振りが無茶すぎるということを除けばかなり良く練られた脚本で、これ以上は求められない完成度だと思います。ただし、監督の演出がいま一歩追いついていないような気はしました。ジョディ・フォスターをただワーワー騒がせるだけでなく、彼女の追い詰められた心境や中盤での迷いをより観客に伝えることも必要だったし、飛行機内という特殊な密室の特性を映像的に面白く撮れていないのも残念。特にジョディの描き方が終始平板だったのは致命的で、「こんな人が同じ飛行機にいたらやだなぁ~」と思わせて共感どころか反感を抱かせるような人物にしてしまったのは監督の計算ミスだったと思います。「娘は実在しないのでは?」という中盤のひねりも、ジョディの迷いの描写が薄かった為に映画全体におけるひとつの山の役割を果たしていなかったし。このすさまじい設定の映画を卒なくまとめているということで監督は十分に仕事を果たしたとも言えますが、デ・パルマやヒッチコックらはこれ以上に荒唐無稽な脚本を名作に仕上げていることを考えると、監督の采配次第では傑作になった可能性があったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-13 21:38:29)
565.  パーフェクト・ワールド
ゆったりしすぎて時に作品の足を引っ張るイーストウッドの演出がこの映画には実に合っています。時代をベトナム戦争前に設定したのも古き良きゆったり感を出したかったためだと思いますがその効果は抜群で、ほのぼの感のある追跡劇が独特で楽しいです。ブッチは脱獄したものの本気で逃げるという意識は薄いようで、自由人だからとりあえず監獄から出てみましたという「暴力脱獄」のルークや「大脱走」のヒルツに近いキャラクター。大スターが演じてきたこの種の役をケビン・コスナーが期待以上に演じているのはさすがで、当時世界最高のスターだった彼でなければ出せない味を見せています。また人質となる子役も実に巧く、子役らしいイヤミっぽさが少ないのが良かったです。子役といえばわざとらしいほど天真爛漫で、相手が悪い人でも明るい笑顔を振りまいて人間性が芽生えるきっかけを作るというのが定石ですが、フィリップはとにかくしゃべらないし、ブッチから何か聞かれても優柔不断にうつむいて首を動かすだけ。本当の子供は初対面の大人相手にハキハキしゃべったり、大人との会話をリードするなんてことはないので、この描き方はなかなか良かったと思います。この子の心を開いていく過程でブッチの人間性はよく伝わるし、ブッチと過ごした数日間でフィリップが成長していく様子がクライマックスの感動へつながっており、通常とは逆のアプローチが功を奏しています。一方でレッドのキャラが中途半端だったのは残念です。ブッチとフィリップが仮想の親子関係を築くという話がメインにある一方で、その裏事情として少年時代のブッチを監獄に入れたのはレッドで、レッドは彼なりにブッチのためを思って監獄行きに手を回したという因果なエピソードがあるのに、こちらの掘り下げは不完全でした。ブッチに対してレッドは相当複雑な思いがあるはずです。少年時代の彼を監獄送りにしたために人生を歪めたのではないかという贖罪意識があるでしょうし、またその一方でいい歳してなんでまだ犯罪者やってんだという怒りもあるだろうし、人生を見出せないまま悪い道にいる彼を心配する気持ちもあるでしょう。にも関わらずブッチに対する思いがほとんど描かれておらず、大変おいしいところを完全にスルーしてしまっています。他の要素はよくできており、これをきちんと描いていれば大傑作になったかもしれないだけに残念です。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-13 03:02:01)(良:2票)
566.  オープン・ウォーター 《ネタバレ》 
泳ぎの不得意な私としては相当怖い映画でした。サメが襲ってくる、クラゲに刺されるという直接的な恐怖以前に、だだっぴろい海のど真ん中に丸腰で放置されるというあの恐怖。ありそうでなかった題材をきっちり映像化したということでアイデアの勝利と言えるでしょう。映画的な演出をしてないように見せかけつつも、底意地の悪いラストをビシっとやってくる当たりの計算もうまかったと思います。とまぁ私は本作を十分に評価しているのですが、悪名高きブレア・ウィッチと同じミスを犯しているのはある意味致命的。海に置き去りにされる絶望感を観客の想像力で補ってもらうことを前提に映画を作ってしまっているのです。なので、私のように海底に足がつかなくなっただけで恐怖を感じる人間にとってはこの上ない恐怖映画であっても、そうでない人には退屈に感じられる仕上がりとなっています。ドキュメンタリータッチの中にもそれとなくひと工夫加えることを完全に怠っているのです。だだっ広い海に取り残されてることがわかる俯瞰ショットをひとつ入れただけで絶望感の描写は違っていただろうし、潮に流されている、体温が下がっている、海水は飲めないから脱水症状になるなど、おいしい材料はいくつも提示されているのに、その場限りのセリフで終わっているのが残念。サメだけでなくこれらの要素もラストに向けてじわじわと主人公達を襲ってくれれば、多くの人が怖がる映画になったはずです。また、ふたりの葛藤も薄味なような気がしました。この映画は特殊な状況に置かれた人の恐怖を描くという意味で心理スリラーに分類されると思うのですが、神経をすり減らす主人公達の描写が今一歩弱く感じました。生身の人間があの状況に放り出されればあんなに静かなことはないはずです。例えば海に置き去りにされたことに気付いてすぐの時点で、スーザンは遠くへ見えるボートへ泳いで行こうと言いますが、一方ダニエルは無理に動かずにこの場に留まろうと言い、その結果ボートに救われるチャンスを逃してしまいます。こうした二者択一の失敗は後の葛藤につながるのが映画の常套手段なのに、こんなおいしいエピソードが話に絡んでこないのはもったいない限りです。「サメに襲われる恐怖」もいいのですが、海に取り残されたということ自体を人間はどう感じ、どうリアクションするのかを丁寧に描いていれば、より多くの人が怖いと感じる映画になったはずです。
[DVD(字幕)] 7点(2006-11-05 13:36:37)(良:1票)
567.  ディープ・インパクト(1998)
地球に隕石が落ちてくると聞かされればド派手な映画を連想しがちですが、その実めぼしい見せ場と言えば隕石が落ちてくる1箇所のみであり、派手なシーンの連続というわけにもいかない厄介なテーマだと言えます。そんな課題に対してドラマパートに力を入れて終末感を煽ったのは正解で、無理に見せ場を盛り込んだ結果肝心の終末感をなくしてしまったアルマゲドンなどよりも余程映画として成立しています。実際に地球の危機が訪れた時に政府はどう対処するのかがよく考えられていて、隕石への対抗策を何段構えにも準備し、またパニックを押さえ込むための措置もきちんと講じられています。「給料や物価は現状で凍結しますので、生活はすべて今のままです」とまで大統領が言及していることには感心しました。また、絶望して辞任した財務長官からマスコミが政府の異常に気付くという展開も面白く、論理的によく練られた脚本だと言えます。映画において「リアクション」というのは大事な要素です。地球の危機を目前にした人々は何を感じ、どう行動するのか?これをテーマにしているので本作は質の高い映画となっています。どれだけ見せ場の連続であっても、それに対峙した生身の人間のリアクションをきちんと描けていない映画は大したものにはなりません。肝心の隕石衝突シーンにしても、津波に飲まれるビルの屋上には津波と逆方向に逃げる人影がきちんと描きこまれており、世界が滅びるとはただ物が破壊されるだけではなく、その下には怯える人たちが大勢いるということをわからせるのです。地球の危機をテーマにした映画は多くありますが、たいていのものに欠けているのはこの丁寧な描写だと思います。そんな充実した映画なのですが、後半になるとドラマパートにも穴が出てきたのは残念でした。誰をノアの方舟に入れるかは政府が厳正に決めたものなのに、その権利を個人の判断で勝手に譲渡し合ってるのは変だったし、それに付随して「私はここに残るからあなたは方舟に行きなさい」なんてドラマもくどかったです。生き残る権利を与えられなかったその他大勢の人々がパニックを起こすのならまだしも、ノアの方舟に入る権利を与えられた者が「やっぱり好きな人といっしょにいたい」だなんて言ってるんですから、非常事態という認識の欠けた人達が自己満足で騒いでるようにしか見えませんでした。
[映画館(字幕)] 7点(2006-11-05 01:08:36)
568.  インデペンデンス・デイ 《ネタバレ》 
【2011.12.9 レビューを変更しました】 これまでさんざんバカ映画だとこき下ろしてきた本作ですが、今回の鑑賞で考えを改めました。これは決してバカ映画ではなく、練り上げられた傑作シナリオを一般受けする形に味付けし直した作品のようです。エスねこさんが詳しく書いておられますが、この映画はキャラクター造型が抜群に優れています。私が特に注目したのがホイットモア大統領で、支持率が地に落ち、指導者としてのプライドも目標も失ってしまったダメ大統領として彼は登場します。決断力がなく、部下が言い争いをはじめても言葉ひとつ発することができない、記者発表も当然原稿を読み上げるだけ。デストロイヤー飛来から攻撃までには丸一日あったにも関わらず彼は初動を完全にミスり、数千万の国民と自身の妻の命を失ってしまいます。挙句の果てに反撃作戦も大失敗に終わり、貴重な兵力をも大幅に失ってしまう始末。そんな彼でしたが、妻の臨終を看取り、残された幼いわが子を見て「この子と、この子が生きる世界は自分が守らなければならない」と腹を括ったことから、リーダーの本分を取り戻します。リスキーな奇襲作戦に独断でGOサインを出し、世界中の残存兵力をテキパキとまとめはじめるのです。人類の存亡を賭けた一大作戦を前に、原稿ではなく自分の熱い思いをぶつけた演説のかっこよさは、映画史に残ると言っても良いでしょう。この役柄を、印象の薄い二枚目だったビル・プルマンに演じさせたキャスティングも絶妙で、彼がどんどんたくましくなっていく様は、この映画が優良なドラマ作品であることを証明しています。キャスティングで言えば、当時まだスターではなかったウィル・スミスを主演に据えた判断も神がかっています。彼の演じるヒラー大尉は、エリート軍人ではあるものの婚約者がストリッパーであるために出世の道が閉ざされつつあるという設定。しかし彼は婚約者とその連れ子を心から愛し、軍人としての夢よりも彼らとの生活を優先するという根っからの善人なのです。そんな彼の性格の良さ、常に前向きで一直線なところがエリア51に集まった負け犬達の心に変化を与え、やがて一大作戦を成功に導くこととなるのですが、これを演じるにはウィル・スミスは最適な俳優でした。今でこそ彼はスターですが、96年当時、大作経験のなかったウィル・スミスによくぞこの大役を任せたものだと感心します。
[映画館(字幕)] 7点(2006-11-04 19:54:08)(笑:2票) (良:2票)
569.  パニック・フライト 《ネタバレ》 
まさに良質のB級作品といった感じで、余分なものは省いて手際よく見せているのが好印象でした。感じの良い人から怖い人への変貌をとげるキリアン・マーフィと、それに怯えるレイチェル・マクアダムスはどちらもよくハマっていて、ふたりのやりとりだけで進む話をよく支えていました。このふたりのやりとりがあまりに良かったので、機内でのエピソードにもうひとひねりふたひねり欲しいような気もしましたが。一方で飛行機を降りてからのエピソードは作品全体のバランスからすると不釣合いなほど長く、暗殺計画に巻き込まれたヒロインという主題のこの映画において、暗殺を防いだ後の話をあそこまで長くやる必要はなかったと思います。逃げるに逃げられないというサスペンスをメインにしながら平然と場面転換してしまう無神経な映画は意外と多いのですが、残念ながら本作もその失敗を犯しているのが残念。究極に追い詰められた状況からいかにトンチを利かせて逃れるかがこの手の映画のキモなので、場面転換してしまうと一気にテンションが落ちるのです。ま、追っかけとなると途端に演出が活き活きとしてくるのはウェス・クレイブンらしいと言えばそうでしたが。機内の会話だけで展開するメインパートは「ただ撮ってるだけ」な感じ(そのアッサリ加減がこの映画では吉と出ていた)だった一方で、飛行機を降りての追っかけになった途端に演出が明らかにノリノリになってるのが面白かったです。ヒロインも人が変わったようになってるし。そんなこんな言いつつジョディ・フォスターの映画をふたつつなげただけのあんまりなタイトルの未公開作とは思えないほど充実しており、自信をもって人に勧められる映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-04 18:37:33)
570.  ジャーヘッド
前作ロード・トゥ・パーディションがいかにも優等生的でつまらない映画になってしまったので、その反省とばかりにサム・メンデスは本来の持ち味である斜めの視点で本質をえぐり取るという皮肉精神を取り戻しています。ディア・ハンター以降、戦争映画と言えば主人公が「俺は殺人行為をやったんだ」と悩み、戦争で抱えた苦悩を背負う作品ばかりになってしまいましたが、この映画は四半世紀ぶりにその傾向に風穴をあけるような面白い姿勢で作られています。主人公が厳しい体験の中で成長するわけでもなく、悲惨な現実の中で何かの教訓を学ぶわけでもなく、「戦争行ったけど特に何もなかった」ということがテーマの変な戦争映画です。上官に向かって「俺の手で敵を殺させてくれ」と兵士が泣いて頼むという常識はずれのシーンまであります。監督も自分の試みに自覚的だったのか、ドラマ路線の戦争映画として最高の評価を受けるディア・ハンターのビデオにポルノまがいの不倫映像がダビングされてるくだりがあり、一方で「戦争映画としては非現実的だ」との批判を受ける地獄の黙示録を見て兵士が最高潮に盛り上がったりと、「『これが本当の戦争だ』と言ってた今までの戦争映画だって所詮脚色されたもんでしょ?」とでも言わんばかりの挑発ぶり。確かにこの映画の異色ぶりは相当なもので、これまでの戦争映画がどれも判を押したように「悲惨の連続」だったのに対し、この映画が描くのは「退屈の連続」。延々と退屈が続きそこに生死を分ける一瞬が突然やってくるというのが戦場の実態のようですので、「生死」並に大きな要素でありながらこれまで映画が取り上げてこなかった「退屈」という側面をはじめてテーマにしたところにも、この映画の価値はあると言えます。ただしこの監督、挑戦的な内容を扱いつつも映像や語り口に良くも悪くも「えげつなさ」がないという特徴を元々持っており、アメリカン・ビューティーにおいては過激な内容をうまくまとめてさらっと見せる手腕が良い方向で現れたものの、戦争映画においては刺激不足の原因となり、後半に猛烈な長さを感じさせられました。また最初と最後のモノローグは完全に蛇足で、何か意味ありげなあのモノローグは「何もない」がテーマのこの映画の本質をかえって見えづらくしています。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-03 22:03:58)(良:1票)
571.  ミュンヘン
本作製作当時、アメリカは対テロ戦争の着地点を見失いつつありました。フセインとタリバンを政権から引きずり下ろしたことで911の弔い合戦が一区切りできるかと思いきや、根本的なことは何ひとつ解決していない。それどころか、事態はより悪化しているのではないかという不安を抱え始めていたのです。同年にはリドリー・スコットが『キングダム・オブ・ヘブン』を発表し、「一度はじめてしまった戦争をこちらの都合でやめることはできない。好むと好まざるとに関わらず、アメリカは戦いきるしかない」という辛辣なメッセージを発していましたが、本作もこれと同じく、アメリカの厳しい現実を描いた作品となっています。面白いのは、そのどちらもが現代アメリカを描くためのモチーフとしてイスラエルをチョイスしていることであり、修羅の道に落ちてしまった国としてイスラエルを否定的に描いています。。。 本編は意外なはじまり方をします。選手村を襲撃しようとする黒い九月のメンバー達が、閉まっている門の前で困り果てています。どうやらこいつらは、明け方には門が閉められていることすら想定していなかったらしい。いよいよ襲撃を開始してもいちいち手際が悪く、何人かの選手を取り逃がしてしまいます。この時点では、黒い九月は洗練された組織ではなかったのです。これはイスラエル側も同様。事件への報復を開始した時点では主人公達は殺しに慣れておらず、銃を突き付けている相手が丸腰の民間人であってもビクビクしています。しかし、報復合戦が続くうちに両者とも洗練されていき、死体の数は増える一方。こちらの攻撃によって相手がより先鋭化し、さらに厄介な敵が生み出されるという負の連鎖に突入したのです。。。 そのうち、匿名の殺し屋だった主人公達にも死の影が迫ってきます。すっかり精神をやられた主人公は戦線を離脱するものの、いつか殺されるのではないかという恐怖は消えません。これは前半、文化人やビジネスマンにしか見えない相手をテロリストとして殺してきたことの裏返し。殺しの現場から離れても、職業を変えても、一度血で染まった者を敵は忘れてくれないのです。。。 本作公開から9年、スコットやスピルバーグの心配は現実化しました。アメリカはいまだに対テロ戦争をやめられないどころか、従来のイスラム諸国すら恐れをなすほどの危険勢力・イスラム国までが誕生する始末。今こそ見返すべき作品だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2006-10-30 02:21:58)
572.  G.I.ジェーン
公開当時、「白い嵐」との併せ技で「リドリー・スコットも終わったな」と世界が確信した作品ですが、今になって見ると意外とおもしろかったです。フルメタル・ジャケットとトップガンをあわせたようなお話のため、硬派なドラマとして見るべきか娯楽作として楽しむべきかがわからなかったのが公開時の失敗要因でしょうか。しかし「グラディエーター」以降花開いた監督の残虐路線を念頭に置けば、この映画に大したメッセージ性はなかったであろうことが伺えます。リドリー・スコットという監督はスピルバーグと並んでサディズムを感じさせる監督です。↓のパブロン中毒さんもおっしゃってるように、表現手段としてあえて残虐性を選んでいるのではなく、個人的な趣向としてやっていることを感じさせられるのです。しかしその性向はグラディエーター以降にようやく判明したものですので、オニールに加えられる必要以上に凄惨な拷問の意味に観客は戸惑い、一転して普通のアクション映画になってしまったラストの救出作戦に素直に興奮していいものかがわからなかったのです。一般の作品に登場する凄惨な暴力には何か意味を感じなければならなかったのが公開当時の常識であり、そういう意識で見ればこの映画はさっぱり理解不能。また本作はフェミニズムの立場に立ったお話でもありますが、同様に監督は本当にフェミニズムを描こうという意思はなかったでしょう。この監督は「テルマ&ルイーズ」という女性映画も撮っていますが、こちらも表面的な主張にのみとどまっていました。監督の興味は虐げられるものを描くことにあり、その題材として社会的に受け入れられやすい女性問題を選んでいるのではと思えるのです。カラー・パープル、シンドラーのリスト、アミスタッドと、こちらもなぜか虐げられる者のドラマを作りたがるスピルバーグと似たような性質を感じます。そんな監督の作品ですので、この映画にも大した意味はないのです。ただひたすら目の前の映像を見てればよろしい。そう思って見ると、ラストの救出作戦なんてトニー・スコットの映画みたいで興奮しますよ。そうそう、トニー・スコットとリドリー・スコットの力量の差って、恐らく変態性の差じゃないですかね。どちらも最上級の技術を持ってるわけですけど、やっぱり変態パワーが芸術家としてのリドリー優位の根源ではないかと。トニーは変態じゃないから普通の映画しか撮れないんですよ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-04-30 17:23:36)(良:2票)
573.  ローレライ
なよなよの戦争映画ですね。登場人物の感性や価値観は概ね現代のものであって、まさに極限状態だった戦争末期の潜水艦乗りらしい硬派なところが感じられませんし、ローレライシステムがまんま綾並レイだってってのも脱力。人命が奪われると少女がショックを受けるというきれいごとのために、敵を撃破するというアクション本来の醍醐味が大きく奪われているのが痛い限りです。クライマックスの海戦では、敵を殺さないようにわざわざ信管を抜いて魚雷を発射するというあんまりなことまで。あそこは大艦隊と生きるか死ぬかの大戦争をやって、敵艦をボンボン沈めて盛り上がるところでしょうに。より幅広い客層に訴えるため、恐らく意識的に男臭さを排除したのでしょうが、その結果、真剣に映画を見ている層を納得させる出来は放棄しているかのようです。 以上のようにダメなとこいっぱいで普段の私なら絶対認めたくないタイプの映画なんですけど、しかししかし、なぜかすんなり楽しめたので不思議でした。映画ってのは理屈ではなく個人的な感性を刺激するものなんだなぁとあらためて思いましたね。こんなことがあるから映画は自分の目で見続けなきゃいけないんだなと。アラは山ほどあるものの、確かに演出には一本筋の通ったものを感じました。さすがは腐ってもオタクというか、戦闘シーンでの視点やカット割は実に的を射ていて燃えましたとも。絵にしか見えないVFXはさて置いても、何を映すかという根本的なビジュアルセンスには良いものを感じました。ドラマパートに入ると話のテンポが突然落ちてつまらなくなるものの、その退屈さを切り裂くように突如メインテーマが高鳴って怒涛のアクションに突入するという話の切り替え方も良かったです。静と動のうまい組み合わせですね。このカタルシスのためにあえてつまらないドラマを間に挿入したのかと思えたほどでした。そんなわけで、樋口監督に只ならぬ可能性を感じた映画でした。
[DVD(字幕)] 7点(2006-03-25 15:23:41)
574.  アイランド(2005)
おもしろかったです。話はダレることなくテキパキと進んでいき、アクションの迫力は超絶。娯楽作としては十分に満足できる作品でした。あくまで娯楽作としては・・・。しかしこの映画、SFとしては大失格でしょう。「ブレードランナー」や「マトリックス」といった過去の傑作同様、出自を越えるための戦いという大きなテーマを扱っているにも関わらず、その重要な核心部分を素通りしてしまっているのですから。脚本のアイデア自体は非常に素晴らしく、アレックス・プロヤスやジョー・ジョンストンのようなSFを理解する娯楽監督、もしくはデビッド・フィンチャーやダーレン・アロノフスキーのような凝った映像と深遠なドラマの両立が可能な監督が撮っていれば、世紀の大傑作になっていたかもしれません。しかしマイケル・ベイでは・・・。この映画の監督にマイケル・ベイが内定した時点で、イヤな予感はしてたんです。「アルマゲドン」を見ればわかりますが、彼にはSF魂が決定的に欠けている上に、ドラマに悲壮感を持たせるという繊細なことのできる人ではないのです。地球が滅びるという絶対の危機においても、2時間半のどんちゃん騒ぎをやってしまった人ですから。そんな監督にクローン人間という重厚かつSF的なテーマを任せるということは、オースティン・パワーズの新作をロメロに撮らせてしまうようなムリを感じてしまいました。そして、その想像通りの仕上がりとなったのがこの「アイランド」なのです。素晴らしいアイデアに満ちた脚本をここまでズタズタにしてしまったことは残念でなりません。アイランド懸賞という画期的なアイデアや、蛾の存在によって世界観への疑念が決定的になるくだりなどは非常によく考えられており、深遠なミステリーとして撮れば忘れられないほどのおもしろさになったはずです。また、クローン人間にも記憶が宿っていたというくだりは、(映画では話の辻褄合わせ程度にしか扱われていなかったものの)作り物にも魂は宿るのだという感動的な解釈であったはずです。なのになぜ、よりによってこの脚本を頭空っぽアクションに作り変えてしまったのでしょう?間違いなくプロデューサー達の不手際ですね。監督にマイケル・ベイを選んだのもプロデューサーなわけですし、「小品でもいいから素晴らしい映画にしたい」という心を持ったプロデューサーに買われなかったことが、この「アイランド」という企画の不運なんですね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-07 23:06:51)(良:1票)
575.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
前半は本当にすばらしかった。ビグザムを思わせるトライポッド登場のシーンはすごすぎて爪先がつりそうになりましたよ。「激突」より、スピ演出の真骨頂は目線をまったくぶらさないことにありますが、その集大成とも言える名場面。「マイノリティ・リポート」前半の追跡劇といい、流れをもったアクション演出においてスピに勝てる監督はいないでしょう。そのぶん、スポットでの破壊力に欠けるのがスピの弱点。思えばスピルバーグ、彼は娯楽映画の王者とされながらも、今まで大量破壊映画を撮ったことがないんですよね。正直、私はそんなスピにスペクタクル描写ができるのだろうかという不安があったのですが、その不安は的中してしまいました。この映画には、「宇宙戦争」に当然期待される荒唐無稽なまでにとんでもないシーンってのがないんですよ。「ロストワールド」でも、せっかくT-REXをサンディエゴに上陸させながら、都市で暴れ回らせず郊外を散歩させるだけだったスピ。意図的にやってるのかと思うほど、彼はここぞというスペクタクルシーンを見せてくれません。軍隊総攻撃など、全然描写が足りませんでしたよ。軍隊がめっためたにやられるシーンまできちんとあれば、もっと絶望感が出たと思うんですけどね。一方で地下室の場面とかはムダに長すぎ。ティム・ロビンスの役が必要だったとはどうしても思えないし。ノコノコと宇宙人が出てくる必要もありませんでしたね。「ブーン」ってお時間のチャイムが鳴ると、すごすごとトライポッドへ帰っていく宇宙人さん達。観光に来たんですか?問題のクライマックスもカタルシスなさすぎ。ウィルスで弱った宇宙人を10人程度の兵隊さんがバズーカで攻撃。「うちの町でもトライポッドを倒したんですよ」みたいな終わり方では、ねぇ。やっぱり、形勢逆転に乗じてこれでもかってくらいの地球側の大反撃が見られれば、お腹いっぱいにはなれたでしょうに。こうして考えると、「インデペンデンス・デイ」とかぶることを極端に避けてるような気がしてきますね。都市の破壊、宇宙人相手に歯が立たない軍隊&ラストの猛反撃。「宇宙戦争」と聞いて誰もが連想する見せ場が、この映画からはことごとく排除されています。意図的なまでに。まさか、これがスピにも目覚めた巨匠のエゴの結果だったら、それはちょっと残念ですね。彼には、最高の技術を持った映画少年であり続けて欲しかったんですけどね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-07-03 01:27:05)(良:1票)
576.  キングダム・オブ・ヘブン
リドリー・スコットってのは、良くも悪くも映像派ですね。まず良い点は、とにかくすべてのシーンが美しく、どのカットをとっても絵画のように綺麗。そしてあのとんでもない戦闘シーンのド迫力。確かに「ロード・オブ・ザ・リング」のヘルム峡谷戦やミナスティリス戦とかぶるわけですが、こちらの方がレベルが上ですね。CGで作ったのが丸出しの「ロード~」に対して、こちらは生身の迫力に満ちてました。2時間丸々戦闘シーンという「ブラックホーク・ダウン」を作り上げた手腕はダテじゃないのです。一方悪い点は、ストーリーテリングに明確な弱点がいくつかあることです。人間関係が複雑な割に拾い切れていない要素が多く、バリアンが亡くした妻子のことは後のストーリーにまったく影響を与えず、彼の複雑な親子関係も実にアッサリとしたものです。(「グラディエーター」もそうでしたが)主人公のロマンスに深みはなく、むしろ蛇足になってるような気もしました。「人を救うはずの宗教を巡って異教徒と殺し合う」という矛盾をテーマにしている割に登場人物たちに葛藤はなく、悪者は最後まで悪者、善人は最後まで善人でした。このテーマであれば、誰もが自分なりの大儀や正義を目指しているがゆえに戦いが起こるという話にした方がよかったと思います。と言うか、いまだに続いている宗教戦争の本質ってそれですよね。それぞれが正義だと信じているからこそ相手に対して不寛容となり、争いが起こってしまうと。しかしギーという明確な悪役を作ってしまったがために、話からその深みが奪われたように思います。これでギーも善人で、自分なりの信念を貫く人間であれば、戦争というものの本質をえぐった傑作になっていたかもしれません。それにしてもリーアム・ニーアムとジェレミー・アイアンズはかっこよすぎですね。「これぞナイト」という風格に満ちており、彼らが映ってる時には完全に画面を独占してましたよ。演技ができる俳優さんはいろいろいますけど、彼らのように風格を出せる俳優さんってのはあまりいませんね。あとどうでもいいことですけど、劇中「13ウォーリアーズ」で聞いたことのある曲が流れたので「まさかパクったんか」って気になってたんですけど、エンドロールにはちゃんと「バルハラ ジェリー・ゴールドスミス作曲」ってクレジットされてました。他の映画の音楽をまんま使うってこともあるんですね。ちょっと驚きました。
[映画館(字幕)] 7点(2005-06-05 00:27:47)
577.  エイリアンVS. プレデター
2大スターのコラボレーションはなかなかよく出来ており、破綻なくお話を進めていく辺りは、素直に「うまいなぁ」と感心しながら見ました。前半、なかなか両雄を見せなかったのも構成的には成功で、ついにあいま見えたエイリアンとプレデターの初戦には燃えに燃えましたよ。日曜洋画劇場で見まくった両雄のバトルはまさに夢の実現で、さらにエイリアンの酸性血液やプレデターのよく切れる刃物など、両シリーズでおなじみのアイテムも次々に大活躍。こういうのを撮らせるとポール・アンダーソンは天才的にうまいですね。自身がゲームおたくであるためか、この人はSFにおいてアイテムを使いこなすことがやたらうまく、これまでも数々の映画で世界のおたく達を納得させてきたのには確かな腕前があったおかげなんだと感心します。しかし、そのためか既存の世界観を飛び抜けるような爆発的な展開を準備することはなく、それが不満にもつながるわけです。なにせこれは「エイリアンVSプレデター」ですからね。それこそ「エイリアン2」と「プレデター1」を足したようなハイテンション映画を期待するもんです。両方ともかなりしつこい映画だったわけですけど、それにひきかえ「VS」はかなりアッサリとした映画だったので、なんだかちょっとガッカリでした。大興奮の初戦が終わってしまうと、あとはかなり普通に話が進んでしまい、「もう終わり?」って感じでした。あと、プレデターがかっこよくなりすぎです。第1作をはじめて見た時のプレデターの印象って、悪趣味ごくつぶし宇宙人だったんですけど、ここでは高潔な戦士になってました。シリーズでやってたみたいにヘンなポーズや雄叫びをあげなくなったし、お得意の不意打ちをあまりやらなくなってたし、劇中では「プレデター=肉食」とは呼ばれず「ハンター=狩人」と呼ばれてたし、デザインもザクⅡからハイザックくらい変わってたし。人類文明の創生に関わってたって話も、ちょいとやりすぎなような気も。シュワルツェネッガーに「なんてブサイクなやつなんだ」と言われたあの連中が人類史の親だってのは、かなりもかなり意外すぎますよ。やっぱりプレデターは理屈抜きの体育界系バカ宇宙人であり続けて欲しかったですね。だとすると、設定は「エイリアン2」みたいな血みどろの混乱にプレデターが血の匂いを嗅ぎつけ参戦、って話にしてしまった方がよかったような気がします。
7点(2004-12-21 05:59:31)
578.  マッハ!!!!!!!!
ヒジによる打撃の恐ろしさを全世界に知らしめた、これぞアクションの新境地。田舎の純朴なカンフー青年が都会のヤンキーを蹴散らすってのは、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、リー・リンチェイ以来の王道。トニー・ジャーよ、あなたも続くのです。
7点(2004-11-27 15:50:32)(良:1票)
579.  ショウタイム
なんと、DVD版はエディ・マーフィの吹き替えが下条アトムでした。かつてはエディといえば下條アトムの声でした。「エディ・マーフィのものまねやります」と言って、下条アトムのあのしゃべり方のマネをはじめる中学生も大勢いたほどメジャーだったあの吹き替えですが、最近では旧作ですらその組み合わせを見ることが少なくなってたところです。しかし、その素晴らしい組み合わせを21世紀になって突如見ることができるとは!感動しました。エディがしゃべり出すたびに爆笑してしまいました。下条アトムのあの心の入っていない、いかにも口先だけのしゃべり方が、エディのキャラに非常にマッチしているのです。その吹き替えのおかげか、今回のエディ・マーフィにはえらい笑わせてもらいました。カメラをチラチラ見ながら臭いセリフを言うシーンのヘタさ加減なんて、「エディ、やっぱりあんたはプロだぜ」と見直しましたよ。一方、デ・ニーロの演技とは思えないイヤそうな顔もさすがで、「さすがはアクターズ・スタジオ!」と見直しました。て、あれはリアルにイヤそうでしたけど。しかしまぁ、この映画は本当にふざけて作ったとしか思えない出来なのでいいんです。ウィリアム・シャトナーが出てきて、「あんな大根役者は見たことがない」とまで言うんですから。ホント、いかにもアメリカ人なおふざけなんですよ。敵のペラペラ加減にしたって「バッドボーイズ」を遥かに上回っており、添え物にすらなっていません。だいたいあんな特殊な銃を街中で撃ちまくっては、「私が犯人です」と言ってるようなもんです。そんな感じで、真剣に見てはいけないんですよ、これは。要するに、「リーサル・ウェポン」よりも「刑事ジョー ママにお手上げ」のつもりで見るべき映画なんです。そんな気持ちで採点をすると、下条アトム効果もあって7点を付けさせていただきます。
7点(2004-11-18 22:05:58)(良:3票)
580.  アイ,ロボット
「アニマトリックス」の「セカンド・ルネッサンス」と同じようなお話でした。思えば監督のアレックス・プロヤス、彼は黒コートでカンフーをきめ、2丁拳銃をアクロバティックに撃ちまくるというアクションスタイルを「クロウ飛翔伝説」で発明し、偽りの世界に救世主が現れるというSF物語を「ダークシティ」で見せましたが、それらの要素は「マトリックス」に完全移植され、しかもウォシャウスキー兄弟の手柄と見るのが定説のようになっています。そんな悲劇の人プロヤスが、「マトリックス」へのあてつけとして作ったようにも思えるのがこの映画です。話どころかビジュアルも「セカンド・ルネッサンス」に似ていること、要するにこれも救世主誕生の話であること、そしていつものプロヤスらしさがないことです。プロヤスは常に斬新なビジュアルを見せてきた人なのに、これには新しさがまったくありません。「マイノリティ・リポート」みたいな未来で「猿の惑星/征服」みたいな事件が起こる映画ですからね。ロボットの扱いは「AI」みたいだったし。プロヤスってことで期待した私はちょっとガッカリでした。しかしそんなサムシングを除いて見れば、映画自体はよく出来ていると思います。見せ場を詰め込むだけの普通の大作に終わらず、後半に向けてうまく話をまとめていくなぁって感心しましたから。ゴミの島に投棄された旧ザクみたいな連中が、「人間が危ない」とか言って律儀にもウィル・スミスを助けに出てきて、しかも新型によって無惨にも破壊されるシーンなんて、「AI」に出てきた気持ち悪いだけのロボット達より数千倍感情移入できました。博士を父と慕うサニーの男気にも燃えました。どうせならこれにロボット軍団VS警官隊とか、ロボット革命軍に大型作業ロボットも加勢とか、ウィル・スミスを筆頭としたサイボーグコップスの大暴れとか、考えうるやんちゃをもっとやってくれれば盛り上がったんですけどね。 
7点(2004-10-25 23:25:06)(良:2票)
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