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エスねこさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 644
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ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23593/
ホームページ http://kine.matrix.jp/
自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

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161.  ダック・シーズン
最初からお芸術エンジンがフルスロットルで炸裂。この時点で、ここの平均点である5点が確定したんですが…実はサッカーゲームのシーンは相当に笑ったし(場内でも爆笑者が数人ほど)、泡立て器や夢のシーンの笑うに笑えないシチュエーションとか、花瓶のカケラを集めながら語る一人芝居…けっこういい場面あるぢゃーないの。 ダメダメな感じでスタートしてから、いいネタを小出しに繋いでいくという「いつの間にか体に染み込んでくる」感じの不思議な映画です。知人がみんな口をそろえて「観客席の座り心地は札幌で最上」と言うミニシアター《蠍座》で鑑賞したのも相まって、とても心地よくエンディングを迎える事ができました。こういう「リリカルな脱力」ってモノはなかなか観れるモノではないので、大いに楽しませてもらいましたよ~ん。  ただ、マヌケな映像のバカっぷりを楽しみながらも、キチンと分析していく事もできる画になっているところが、善くも悪しくも《メキシコ映画》ですねえ。この秋くらいに気付いたんですが、メキシコの芸術映画の作りはドイツのソレによく似ています。理由は不明、でもジャーマン・シネマ系が好きな人なら乗れる要素は大いにありそうです。 脱力催眠波に捕われる事なく、脳をフル回転させて映像をねじ伏せつつ観るのが正しい鑑賞姿勢かと(笑)。
[映画館(字幕)] 8点(2006-11-23 23:34:21)
162.  ヅラ刑事
河崎実はバカ映画というジャンルすらも壊してしまったようだ。もはや『いかレスラー』の時の気負いすら捨てて、一切力むことのない自然体の最低映画(って何だソレ)を造ってしまった。 この映画を観ると確実に感性が死滅し、知能指数が下がる。ナチュラルに無設計の照明、巧いとか下手とかの次元とは違うヅラの操演、「脱構築」という言葉に疑念が生じるほどの義務感あふれるお約束コント、役者たちのまるで噛み合わない異次元間通信的演技、『太陽を盗んだ男』と『東京原発』の最大公約数以下まで省略されたシナリオ、とどめにブチ込まれる破壊的ムード演歌「悲しみはヅラで飛ばせ」の想定範囲外の挿入場所…エトセトラ、エトセトラ。 バカ映画の最底辺を掘り起こしたら何が現れるか、まだ世界の観客は誰も知らない。おそらく河崎実にだってわかってはいないだろう。その、開ける価値のないパンドラの箱を開けようとする「バカ以下」が、スコップの先に何かの感触を得た「カチン…」という瞬間、それがフィルムに焼き付けられていると思って相違あるまい。彼が掘り当てたモノの全貌は、まだどういうモノかはわからない。ここには、今までの脱力を超えた「何か」がある。今のところ、オイラにはそこまでしかわからない。  そんな映画の中で、一人だけ一所懸命演技している無名の俳優がいる。明らかにハリウッドのとあるバカ映画のとあるキャラクターを意識した演技で、その役には今までの河崎実ワールドにあり得ない、ベクトルの異なるバカ生命が吹き込まれている。 バカ以下の集団の中に、真摯な態度で一段高く浮くバカ。そんな『イシュタール』に通じるバカがオイラは大好きだ。そのキャラのために、9点を捧げようと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2006-11-08 23:41:24)(良:1票)
163.  恋する日曜日 LOVE ON SUNDAY(2006)
強烈にオススメ。 でも登録待ちの間に、ブログ他4ヶ所ほどでレビューを書いてしまった…もう書くことないや…って『ナイトウォッチ』と同じ状況だがや!  主演の水橋貴己は堀北真希と同じプロダクションみたいで、(容姿もあるでしょうが)実力を認められての抜擢なんだと思います。「弓道部員」という一部にコアなファンを持つ強気っ子萌え路線なので、序盤のセーラー服はあり得ないほどのミニスカート。一応「そんな映画じゃねーだろ」って突っ込んでおきますが。中盤からはGパンになるので安心して見られます(笑)。あと、弓道やってるキャラなので、何をする時でも背筋がピンと張ってます。このあたりがツボに入るかどうかで、後半の展開に乗れるかどうかが決まるかな。  シナリオは舞台化もできるくらいに切り詰められたシンプルな内容で、演者の力の見せ所です。ひとつひとつの台詞に、迷いや憤りや憧れや蔑み…いろいろな感情を込められる。メインになる若手俳優4人の力はオーソドックスで危なげな部分がなく、ナカナカです。若さのエネルギーに頼るような話じゃないですから、この安定感は心地いい。  映像面では長回しを多用。昼のシーンは全部自然光ですが、飽きは来ないかな。中盤で、お寺の境内にいる4人の会話がもつれ始めると、背景の木々が風で不気味に揺れ始めるんですが…タイミング狙っては撮れないはずだよなあ…タルコフスキーの『鏡』で似たようなシーンがありますけど、アッチより驚きました。他にも手堅いカメラの動きが楽しめます。あと、キスシーンは何かもうタル・ベーラ監督の映像みたいです。凄いぞ。  編集。終わり方は、オイラなら別の刻み方をするなあ…何となく「エンドクレジットを流しながら見せる映像を想定してたのに、諸般の事情で別にしました~」みたいな、八方美人的な感じでした。あくまで編集の問題ですが。長回しを見せるための緩急のつけ方は、とても気持ちのいいリズムになってました。  音楽だけが悪かった。21世紀の新たなる異化効果かもしれない(笑)。製作キングレコードでしょ…NHKドラマのBGMみたいなのが流れるのはちょっとどうかと。何もかもが10点なのに、ここで致命的になってしまいました。泣けてきます。 あ、BS-iでやってたというオリジナルTVシリーズのBGMなんすかね? 元版を見てるヒトには懐かしいのかなあ。
[映画館(邦画)] 9点(2006-10-17 23:22:11)
164.  死者の書 《ネタバレ》 
喜八郎に酷い点はつけたくないが、やはりここは…。 何しろやたらセルアニメやらブルーバックやらの技法が使われすぎで、「天下の喜八郎師匠がなんて事を~」と涙なしには観られない無統一な画面。音楽も安易に西洋楽器に頼りすぎ。旋法には風情があるけれど…。  問題の根は「作り込みすぎ」にあると思う。都の大路を行き交う群集、垣根を造る男たち、かしましい南家の女官たち…こんなモノをコマ撮りで全部アニメートしてたらどれだけ手があっても足りなくなる。そのしわ寄せが肝心の如来や大津皇子に集まってしまったんじゃないのか。最初に構想した画が壮大で、緻密すぎたんじゃないか…と思う。 その無残にもバラバラになった手法や、無駄に細部まで表現されたモブシーンは、それでもなお本作には必要な物だった。ラストカットでそれがわかる。この話はそもそも原作者・折口信夫が見た曼陀羅から着想され、最終的にいつらめの描いた曼陀羅を映して終わるからだ。喜八郎は映画全体も曼陀羅として、「奈良の都」という形で彼の宇宙像を完成させたかったのではないか。いや、そうする必要があったのだろう。  悲運の大津皇子が怨霊となって藤原南家のいつらめの前に現れる。学才ある彼女は経文を唱えてその邪心を押し留め、そして心に観えたものを具現化しようとして糸を紡ぎ機を織り、そこに成仏の姿を描く。即ちこれ曼陀羅…。 古代日本の土着信仰と仏教がせめぎ合う物語であり、同時に芸術の根源を描く物語。折口はどう意図したか知らんけど、川本喜八郎は万葉的で大らかな主人公に自分の創作姿勢を重ねたかったろう。 それが伝わる画面だったから、無茶を承知で作ったのがわかるから、点は低くなるがオイラはこの作品に愛情を注がざるを得なくなる。3点のマンダラだけど、10点の姿は何となく見える。その10点の画を愛するが故に、ここでは正直に、3点を献じたい。  余談だが、全体の語り口は遠い世界の物事を語るように引きに引いていて、これは上田秋成晩年の作『春雨物語』の世界に似ている。1~2話の「天津処女」「血かたびら」は薬子の乱の話で、時代も精神的な背景も本作に近い。喜八郎はきっと意識していると思うし、何より秋成と同じ場所に立って古代を眺めてこその光景じゃないのか。 できればもう一作、春雨の一編を映像化してもらえれば…と願ってしまう、我侭な自分がいた。
[映画館(邦画)] 3点(2006-10-15 21:14:35)
165.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
最初のアニメで既に泣いてました。で、序盤のポール・ギャリコ風のリリカルな状況設定も素晴らしい。後半のスティーブン・キングっぽい展開も悪くなかった…でもね。 ポール・ジアマッティ起用は絶対ずるい。減点理由はほぼソレに尽きる。 現実を喪失する不安感が全然ない。かといって一直線にお話にのめりこんで行く快感があるわけでもなく、演技派ジアマッティのバランスに長けた巧演で、最後までとてつもない安定感がある。もうね、例えて言えばガブリエル・バーン主演で『宇宙戦争』撮っちゃいましたみたいな、ストーリーがブチ壊れるほどの安定感に満ちてるんですよ、彼って。この話の主人公はさ、クリストファー・ウォーケンとか、ビリー・ボブ・ソーントンとか、ああいう危うげな人にしようよ~。 とは言え後半、13Bの映画評論家が殺されるくだりで、監督は「いいか、オレはこれからの展開について批評家のレビューなんて気にしてないぜ。みんなそのつもりで観ろよ」と言い放っちゃってるワケで、コレをしっかりと受け止めて観た以上、オチに文句は言わない。あんたの心意気はわかったぜ、シャマラン。  童話作家の佐藤さとるがエッセイ『ファンタジーの世界』で書いたところによると、世の中のファンタジーは「ハイ・ファンタジー」と「エブリデイ・マジック」に分類されるとのコト。指輪物語とドラえもんですな。 本作はエブリデイ・マジックの枠組みにありながら、キャラクター達がハイ・ファンタジーを目指すという展開で、スティーブン・キング出現以降徐々に増えてきた物語形式になっている。この物語形式は、必ず、あるお約束のスタイルを使う。ホラーとして描かれるか、サイコノベルになるか、だ。本作の枠組で、いきなりハイ・ファンタジー風の魑魅魍魎を跋扈させても観客は物語の中へ入って行けない。オイラの見立てではあのモンスターはナシでもやれた思う。もしくはもっと後半に登場させるか。 「予言者」である韓国人のオバチャンの人間像も薄くて雑だ。ここは考え抜かれてああいう人物像になったと思うんだが、裏の裏を読みすぎ。ま、コレは彼女に限らず全部のキャラクターに共通だろう。後半の展開を考慮して、わざと人間性を薄くしたんだろうけど…それは悲しすぎじゃないか。 シャマランは、作品で言ってるのとは逆説的に、めっちゃ評論家の言う事を気にしてるのかも。人物設定をヒネリ倒しすぎっすよ。
[映画館(字幕)] 7点(2006-10-10 01:14:11)(良:2票)
166.  ゆれる 《ネタバレ》 
眼力の映画と言っていいですね。 父・伊武雅刀。叔父・蟹江敬三。兄・香川照之。弟・オダギリジョー。もしこれに渡辺謙が加わったら日本最強の眼力一家だ。オイラなら、こんな一族が経営する店には絶対近づかないぜ(笑)。 とにかく目で語れる役者を集めたので、演技はほとんど目でやってる。例の「智恵ちゃんお酒飲むとしつこいでしょ」ってシーン、全然目が笑ってなかったので先読みし過ぎて「兄がカマかけたのを弟が気付いて動揺し…」と取ってしまいました。香川照之やりすぎです。 裁判所の最後のカットや、ラストシーンの一瞬の表情の変化なんかは、彼の眼力なしでは意味不明になってしまう…けど、やっぱり演技過剰だったかも(笑)。ロシア映画みたいに、もっと仏頂面で逃げても良かったような気もします。作中、最も鬼気迫る「てめェ殺すぞ!」っていう香川照之の表情が、留置所面会室のガラスに映り込んだ顔だったのも、彼の眼力をもってすればこその大胆な演出でした(DVDで映るかな、コレ…)。 オダギリジョーは主人公なんで、香川照之ほど思い切った演技はやれません。なんで観客と映画とを繋ぐために、ちょっとオーバーアクトになっている。実はこれも残念でした。どうせ全部を明らかにしない映画なんだから、もっと無表情で演っちゃってよかったんじゃないかナ、と。 そういう中で、伊武雅刀が流石の貫禄というか極めて硬派。蟹江敬三の腹黒さと合わせ、この二人でハードボイルドの世界を構築してました。  あとロケーションなんですが、吊り橋の下の三人のバックが、それぞれ違う。このシーンの間ずっと同じモノの前に立ってます。智恵子の背後には巨大な岩が、弟の背後には木々の緑、そして川で遊ぶ兄の背後にはポッカリと開いた黒い洞窟…この絵が怖すぎでした。3人の心理がおっかないくらい出ています。  さてこの映画の最大の考えどころは「兄がラストでバスに乗るかどうか」なんですが、非常に微妙です。それまでの香川照之の目の演技から《兄・早川稔》という人物像を考える限り、オイラとしては「彼はバスに乗った」と思います。もちろん確信はありません。
[映画館(邦画)] 7点(2006-10-09 01:45:02)
167.  春の日のクマは好きですか?
何かを書くと即ネタバレになりそうなので何も書けません。 もちろんジャンルは韓流恋愛コメディなんですが、「犯人探し」の物語として観ると豪快な技巧派ミステリになってます。アラが見つけられない。 20代向け映画と思わずに、40歳以上の人、見てください。実際、館内は韓流ファンのリピーターらしき叔母様・叔父様で埋まりきっておりました。実は、ターゲット層は予想外に広いのです。
[映画館(字幕)] 10点(2006-10-08 15:20:53)
168.  マッチポイント
うーん。うーん。うーん…。 『陽の当たる場所』ってのはまあ、そうかなあ。どっちかというと『死の接吻』みたいなドライさを期待してたんですが。あと序盤は、主人公の立場から猛烈にバラードのセレブリティ犯罪小説『コカイン・ナイト』を思い浮かべました。ソッチへ進んでくれると…ってウディ・アレンはやんないか。製作がBBCだけあって、ロケーションはいい場所押さえてます。そこは評価できる。スカーレット・ヨハンソンは何かダメだったなあ。熱演はわかるんだけどね。 結局、ラストのアレが政治的なメッセージになる点だけが評価ポイントになりますた。あえてイギリスで撮るからには言っておかねば、みたいな印象も受けますが…。 件の《運》については、あんまし…驚きがないからかなあ。コロンボが出てくれば吹っ飛んじゃう程度の、微妙な運でした。
[映画館(字幕)] 4点(2006-10-07 02:35:55)
169.  太陽(2005)
うっわ、ノルシュテイン実写化(笑)。 いやホント、あの幻想的な空襲シーンを見れただけでも「ロシア映画観たァ~」って気になります。もう美術に関しては文句のつけようがない。 スタニスラフスキー・システムをわかってる者としては、各人の役作りは役者本人の投影であるのがわかるため、安心して見る事ができました。もちろんオイラも桃井かおりの役の作り込みには首を傾げたんですが、もう少し考えてからでなければ結論は出せないような気がします(少なくとも、この映画独特の時間経過表現と、人間宣言後に皇后が登場する事を考慮すべき)。 そして音楽! バッハのチェロ独奏曲を世界で一番、重たく悩ましく弾いちゃうロストロポービッチ爺さんの演奏っすから、腹に響かないわけがない(CD持ってますけど、体力消耗するのでそうそう聴けません)。ちなみに音楽評論家・吉田秀和はバッハのチェロ独奏曲を「奏者と神のみが聴く、最も孤独な音楽」と評しました。まさにこの映画のモチーフです。他のBGM全体は基本的に無調音楽で、緊張感あふれる使われ方をしていました。こういう素晴らしい劇伴は今後も増えていって欲しい。というか、やれ(命令形)。  本作はレビューが大変だというのが予想できたので、事前にチェホフの『かもめ』『ワーニャ伯父さん』をセッセと読んでロシア演劇を予習してから劇場に向かいました。でも付け焼刃はダメですね。それぞれの演技が意味するものが、まだ観えてこない状態です。そもそもスタニスラフスキー方式で昭和天皇なんていう奇っ怪な人間像(いや人間以上ですらある)を演れんのか? …ってな根本的な疑問もあります。ここで表象される天皇=太陽像は、読み解くのがとてつもなく難しい。 オイラには、まだまだハードルが高かった「演劇作品」でした。ただ、美術・音楽・演出の力で何度も観れるモノに仕上がってますから、今後しつこくチャレンジする事になるでしょう。 今は、とりあえず目の前に展開されるモノのみを評価して、この点数で。
[映画館(字幕)] 9点(2006-10-07 01:33:47)
170.  バックダンサーズ! 《ネタバレ》 
一日経って、全面書き直し。前のはブログに移しました。 もうテレビを持たない生活が10年になるんで気付かなかったけど、これテレビドラマ1シリーズの内容の2時間圧縮版だな。逆にそこが評価できる点か。  この話は、キャストが先にある。脚本はそれぞれのキャストを想定して書かれているし、ロケ地が限られてる事から言って、かなりの早撮りだと思う。監督・脚本はテレビドラマの出身(しかも本作が映画1作目)だし、身内を引き連れての企画だったのは想像に難くない。 だが、それだけの映画じゃない。最大の特徴は、それほど本格的には踊れない4人の女優をメインにしつつもラストまで引っ張るために、キャバクラステージみたいな舞台や、ドサ回りや、途中の解散などで「外し」のシチュエーションを延々連発する点。ダンスを見せる部分は確かにあるが、決して話の主軸にはならない。いきなり10年をすっ飛ばす全体構成も、客の期待を裏切るための仕掛けだと思う。「逆に見せない事が素晴らしい」と思えてくるようなシチュエーション作りに腐心しているせいで、とてつもなくアイロニカルな、別の言葉でいえば「バカな映画」になっている。 だからこそ快感が得られたんだと思うし、これはTV見ない歴十数年のオイラみたいなヒネクレ者でなきゃ面白いと思わないかもしれない。描かれるのはダンスそのものではなく、プロデュースやステージ設営からイベントまでの流れの「ステージの再生浄化」。ちょっとTV向きの企画ではないだろう。監督の、それなりのメッセージがそこにあるんだろうが…評価する人は限られるだろうなあ。  オイラ的結論。これは見応えのある「バカみたい映画」です。どこまでも観客を裏切り続けるという意味で。
[映画館(邦画)] 8点(2006-10-05 15:23:36)(良:1票)
171.  日本以外全部沈没
バカ映画を新たな高みに押し上げたその功績に、10点。 この映画の予告編を見た時には、歌唱力も演技力もないアイドルが「私、脱ぎます!」と言った瞬間を思い出しました。そして本編を実際に見終わった今では、スポーツ紙風の「巨乳解禁! いままで着ヤセだった? 衝撃のスーパーボディ」という見出しが脳内で踊っております。 断言しますが、昨日までは河崎実はオイラ的映画界で無価値だった。今日からは違います。 そのバカ度が、ハリウッド映画の歴史に刻まれる(か、完全黙殺される)ほどの凄い高みにまで達しているからです。  あまりに危険…いやバカすぎて、上映したのと同じ内容でDVD化される保障はありません。今のうち映画館で見ておく事をオススメします。  ●追記:この映画でこそルー大柴の濃い演技(主人公の職場の編集長希望)が光ったと思うんだけど…彼が出なかったのだけが残念だなあ。
[映画館(邦画)] 10点(2006-09-26 19:14:10)(良:1票)
172.  大列車強盗(1903)
過去のエジソン社のフィルムを漁ってみると、本作の「最初の劇作品」という評価が間違いなのがわかる。コレ以前に戦争映画もあったし、チャップリンの原型みたいな作品もある。処刑シーンを再現した残酷映画もあり、トリック映像もあり、1891~1901 という時代はアメリカ映画にとって百花繚乱、要するに何でもアリだった。 全ては過激な競争の結果である。ハードメーカーであるエジソン、リュミエール、ミュートスコープの三つ巴の戦いがあった。ソフトメーカーはこの三者以外にメリエス、パテ、ゴーモンらが加わった。加えてハードを販売したいエジソンは、安い興行料金でキネトスコープ上映を普及させたい興行主とも衝突した(一作25セントで覗かせたらしい…ニッケル=5セント)。 この泥沼の戦いの中から様々なビジネスモデルが立ち上がっては倒れ、それに沿った作品が生まれては廃れていく。どれほど熾烈な争いだったかは、百年後(1991~2001)のパソコン戦争を思い出せば理解できなくもない。ジョブズが敗退しビル・ジョイが下野しリーナスが理想主義に走る中で、全てをビル・ゲイツが握る結果になったのは、リュミエールと同じ視野だったからだろう。  全ての戦いが決着し、リュミエールのキネマトグラフが勝利を確定していた 1903 年。『映画』は安いお金で、誰もが楽しめるという姿になった。ニッケルオデオン時代の到来だ。ソフト側のあらゆる試みもここに決着を見る。客寄せのための、個人志向の強いケバケバな人体切断も映像奇術も役目を終え(ポルノは結局役目を終えないが)、エジソン社は新たな時代の幕開けとするために「観客」のための作品を作った。ハード競争での敗北を認め、「これからは上映の内容で勝負しよう」と宣言した。それが『大列車強盗』という作品の持つ、歴史的な意味だと思う。  この一連の流れは考察に値する。映画史は同じ事を繰り返していないだろうか。後のVHS対ベータの時代がスプラッタ映画ブームに重なる事。いまネット配信の熾烈な争いの中で、見るからにヤバいCG映画ばかりが出回り始めている事(いや『アンデッド』は評価してるよオイラは)。 『大列車強盗』を懐古趣味に走らずじっくりと鑑賞すれば、ブームに流されざる一本の竿とする事ができる。そうして欲しいと切に願う。10分だしね。 ●追記:いや、いつか改定します…本作の歴史的位置付けはそんなに甘いモンじゃないな…。
[インターネット(字幕)] 5点(2006-09-23 11:05:24)
173.  アルティメット
こないだの札幌国際短編映画祭に『イージー・マネー』というフランス映画が来てました。たかが短編と言うなかれ、全編危険なアクション満載の、ローラースケート公道チェイスムービー。フランス人の、スタントへの身体の張り方を目の当たりにして、鱗が剥がれ落ちちゃいました。  で、気になったのがコイツなんですよね。 スタントなし、ワイヤーなし…とくればトニー・ジャーですが、同じ謳い文句のフランス映画があるという。その名も『アルティメット』! …うっわー投げてるタイトルだわ…いやスミマセン、観に行く前は情報もなくてホント眉唾だったんですよ。蓋を開ければ「ガタイのいい白人俳優がスタントなしで格闘する」というカッチョコいいアクション、加えてキレのいい演出、シナリオが醸し出すブラックで爽快な笑い…まさに直球のフランス大活劇でした。 欧州作品とは言え、リュック・ベッソン製作の映画。しかも展開はスピーディだし、とんでもないアクションやるし、ダレる暇がない。なんで公開が2年も遅れたんだろう…『ヤマカシ』がコケたんで、宣伝材料がなかったのかな…。  もう上映は終わったに等しい状態だけど、いずれDVDで見かけたら、以下の人種は一度は手に取って見るべきですぞ。   1)『マッハ!!!!!!!』ラブ!な人   2)『エスケープ・フロム・LA』を鼻で笑って許せる人   3)「白人のカラテは遅くて全然ダメだわ」と信じて疑わない人   4)ベッソン流の極悪な官僚組織を久々に見てみたい人 オイラは全部あてはまるのでおなかいっぱい、大満足でした。 このスタッフで次もなんかすっげー奴作って下さい。セッセと観に行きまっせ~。  ●注意:IMDb のトリビアによれば、「アクションの9割はワイヤーを使っていない」との事で、確かにワイヤーなしでは物理的に不可能なアクションも一部ありますです。
[映画館(字幕)] 7点(2006-09-19 02:55:43)
174.  X-MEN:ファイナル ディシジョン 《ネタバレ》 
うわ、アリですかコレ! 原作・上田秋成! 思いっきり『雨月物語』第一話「白峰」ベースの戦闘。ウルヴァリンの台詞が西行の歌に重なり、すっげー泣かせてくれます。んでクライマックスの最後のシーンで、月をバックに雨を降らせたダメ押しには思わず拍手してしまいました(場内で一人だけでしたが…みんな雨月読もうよ面白いんだから…)。もちろん製作陣の「わかって引用してるんだよ~ん」っていうサインなんですな。  ちゃんとした評価としては、大黒柱の抜けちゃった作品&最終話という重責からか、監督は目立った仕事をしてません。推測ですが、マーヴェル社のスクリプターが描いた絵コンテをそのまま実写にしてる? アングルは今までの映画にないほどアメコミ的でした(作家性ゼロですが…)。実写とアニメの中間に位置するヒーローコミックとして観るべき絵作りですね。ただどうしてもアップが多くなっちゃうので息抜きできないのが厳しいところ。 テーマ的には、不運にもこのシリーズが背負ってしまった(だって1作目は2000年公開)「制御できないアメリカのパワー」についての様々なエピソードが積み重ねられ、コミックから少し深化した群像劇として、かなり劇的な語られ方をしていました。だからミスティークやマグニートーの「ケリのついた」後にほとんどセリフがなかったのが残念ですが、その分、活躍中に見せる演技が強烈。佳境を崇徳院発動(笑)でビシッと決める事を想定して、怨念を炙り出すシチュエーションが多かったのが、常連メンバーを一本芯の通った演技にしていました。 手にしてしまったパワーを捨てる事ができない弱さ、人間らしさが、観客の心を自然とX-メンたちから離します。ローグと、天使ボーイのエピソードが巧くそのあたりを括ってるかな。そして、今までは「敵」だったマグニートーの論理が、俄然と現在のアメリカ人にかぶってくる。人間から一歩離れた場所にいるスーパーマンとの立場の違いを(おそらく戦略的に)意識した結果の流れだと思います。これはアメリカ人の心象風景として培われてきたコミックの底力と言えるんでないかな(日本怪談で決着するけど)。 だからこそこの作品は、極めて正直に世界へ頭を垂れる結果になった。オイラには、「私たちが手にした力は、どうしても捨てる事はできません。ごめんなさい」と聞こえます。
[映画館(字幕)] 9点(2006-09-18 17:28:58)(良:3票)
175.  佐賀のがばいばあちゃん
ばあちゃんなら、こんなオイラに「映画館なんか行かんでよか。何年か待ってればテレビでタダで見れるけん」とか言いそう。 実はネタ的な笑える映画を想像していたんだけど、猛烈な地元の愛情に支えられて作ったのが一目でわかるエンドクレジットでした。原作の知名度高いんでしょうね、地元は。でもシナリオは相当ひどい。カットし過ぎだし、エピソードをただ連ねてるだけだし…役者それぞれの人物の作りこみで救われてるけど、みんなの愛がなかったらばあちゃんでも拾わない映画になってるよ。省略しないで、TVシリーズとしてキチンと描くべき内容だと思いました。まあ、そうなる可能性は十分あるかな。  いつかTVでタダで見れるようにして、ばあちゃん喜ばせてやってください(ってあの家テレビも持ってなかったけど…)。 ●追記:衣装とセットもひどいんだよな。確かに古いけど、お屋敷だよあの家…服も布団も白くてピンとしてるしさ。仕方ないので脳内で置き換えて観ました。 ●追記2:違う、吉行和子のあの堂々とした演技は、没落旧家のソレだわ…。ええー? そういう話なの? そして町中の人たちが見せるばあちゃんへの隠れた気遣い…ばあちゃんのメンツへのこだわり…意外に隠れた深いドラマが設定されてる? やっぱ6時間以上のTVシリーズで観たいなあ…。
[映画館(邦画)] 7点(2006-09-15 21:24:39)
176.  カルメン(1948)
初リタ・ヘイワース。いっやあ惚れますね~あのアバズレっぷり! いま GyaO で配信されてるんですが、動画特有の画面の暗さでちょっと残念。総天然色のテクニカラーなので、できればDVDが望ましい鑑賞環境でしょう。  …で。 とんでもねー映画です。『カルメン』を観始めたつもりなのに、途中から「なんじゃこりゃああ~っ!」ってひっくり返って悶絶するコト請け合い。だってスペインの話なのに、途中から風景がメキシカンになっちゃうんですよ! 後半はドン・ホセと追撃隊の銃撃戦なんかもあって、ほとんど西部劇です。豪快で爽快な翻案でした。 でもそこが『カルメン』の奥深さというか、どれだけ風景が変わっても物語の本質は同じ。史上最多の映画化数を誇るストーリーってだけはあります(リタ・ヘイワースは史上15番目のカルメンなんだとか…)。 リタが独立してプロダクションを起こした時の第一作ですから、顔ぶれは知り合いで固めたんでしょうか、ドン・ホセには盟友グレン・フォード。過剰に朴念仁なドン・ホセを演じ、リタとの相性は非常にシンクロ度が高いというか演技過剰なリタ版カルメンの魅力を引き立てるのに成功しています。 こんな凄いアレンジを施して壊れない物語ってのも凄いですが、確信犯的にそういう改変をやって、自分たちの魅力を最大限に引き出す脚本を手にしたリタ・ヘイワースの製作力も素晴らしいんじゃないでしょうか。  …余談ですが、フラメンコを踊る時のカルメン描く構図は、必ずパノラマ的なロングショット。群集に囲まれて踊り狂う彼女はなかなか絵になってます。でも足元が映らないんだなコレが。 リタ、怒らないから正直に言ってごらん。フラメンコ踊れないんだね…?
[インターネット(字幕)] 7点(2006-09-06 04:08:15)
177.  恐竜100万年
完全に見くびってました。すごいよすごいよ! セリフのないのは当然として、テキトーさ加減も手抜かりなく全体に配分されてるし、ストーリー滅茶苦茶だし、BGMもテクスチュアがあったりリズムだけだったりしてポリシーがなく、映画前半で「常識」というモノがブチ壊される。もはや全編異化効果と言っていい(いやー、そしたら無意味なんだけど…(^^;)。この破壊力は並みじゃない。印象が一番近い作品を挙げろと言われたら、迷わず『スーパー・マグナム』と答えるね(笑)。  余談を交えながら…。 原始時代の祭祀を描写して物議をかもした前衛バレエ音楽『春の祭典』。コレを分析した指揮者ピエール・ブーレーズは、「少しづつずらして配置されたリズム細胞によるテンポの攪乱、その効果によって音がリズムから切り離されて自由になる」…とまあ大体こんな感じの結論を導いたんですが、この論文が書かれたのは記憶では本作のちょっと前。難解だったこの曲の音楽的意味が明快に解き明かされ、音楽界を震撼させました。 で、『恐竜100万年』の製作スタッフがこんな論文読んでたとは思わないんだけど、感触はすごい似てるんですよ。『春の祭典』を聞いた時の呪術的な浮遊感に。だから、オイラ的にはオチャラケながらも原始の真髄を映像化してしまった『ナンチャッテ春の祭典』に見えてしまいました。  まあ一言でまとめれば「果てしなくサイケでプリミティブ」ってコトです。極めて60年代的ドラッグ・ムービー。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-05 06:34:37)(良:1票)
178.  幻遊伝
あれ? この作品の鑑賞環境って「映画館(邦画)」? 「映画館(字幕)」? 悩ましいモン作りやがったなあ…。  さて。この映画は子供向けだし、シナリオ破綻してるし、「時間旅行」ではなく「前世に送られた」という民俗学的設定なので、突っ込む気がなくなるほど大陸的で大味でした。オイラがこの映画を評価するのは「田中麗奈」。この一点のみ。 そもそも彼女が第一目的で観に行ったワケですから…でも冒頭はしっかり裏切られた気分になりました。ま~~ったく可愛くない。演技もかなり大味。対する父親の大杉漣もゆっくり喋るもんだから間が悪いのなんの。心中「絶対3点つけちゃる!」と拳を握り締めたのはまあいいとしまして…複数の主要人物がひとつ屋根の下に集合するまで、失望感でガックリ来ていたのは間違いありません。 でもそこからが違った。いや最初から日→日中バイリンガル→完全中国語…と少しづつ言語面の変化は訪れていたのですが、主人公・小蝶が当時の服装に着替えてから、ガラリと変わりました。 演技が、完全に中華活劇のアレなんです。カンフー映画のヒロイン。口を大きく開けてカツゼツはハッキリ、演技も大振りで、表情に至っては日本人と思えないほどクルクル変わる。そこでやっと冒頭のヘボい演技が「中華活劇の中で描かれる日本人」を演じていたんだ、というのが理解できた次第。  日本の演技メソッドと中華圏の演技メソッドを、一作の中でここまで自在に使い分けた女優は寡聞にして知りません。身振りや顔つきまで中国人になった田中麗奈は、日本的美を離れて、華人として美しい。しかも台湾生まれ台湾育ちの小蝶は「中華~日本の間にあるグレーゾーン」の住人であって、2民族の間に様々な中間点がある事を演技で示してくれている。これでシナリオが大人向けだったら、素晴らしい国際色を出していたと思います…残念ながらコレはキョンシー映画でしたがネ。 田中麗奈なら将来、今までにない劇的な解釈の李香蘭を演れる(断言)。そして彼女を三娘役に迎えれば『一輝まんだら』の実写化だって不可能じゃない(まあ脱ぐ気があれば、ですけど…)。 ふたつの文化に根ざした、ふたつの美学。それを「ふたつ」と見ずに、両極・中間を自由自在に飛び回る彼女の姿こそ、名前通りの小蝶でした。どこまでも自然体で、因習に澱まず、美しかった。次の大きな何かへの予告編でした。
[映画館(邦画)] 7点(2006-09-04 01:30:06)(良:1票)
179.  キートンのマイホーム(文化生活一週間)
不覚。初めて観るのに全てのネタを知っていた…有名すぎるんだよねコレ。 何も知らなけりゃ笑えたんだろうなあ。 相変わらずキートンとは巡り合わせが悪いみたいだ。
[インターネット(字幕)] 6点(2006-08-31 01:11:26)
180.  奇蹟のイレブン-1966年北朝鮮VSイタリア戦の真実-
なぜ、なぜこんなに泣ける…? こんなに爽やかな気持ちになれる…?
[DVD(字幕)] 9点(2006-08-30 02:45:57)
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