みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
8.《ネタバレ》 原爆の父オッペンハイマー博士の半生を描いた伝記映画。ユダヤ人である氏は絶対にナチスに先を越されるわけにはいかなかった。恐怖を抱えながら研究・開発に邁進するが、やがてヒトラーが自殺、そしてドイツは降伏した。先を越されるという懸念した事態は避けられたのに、彼は日本に対して核を使用するよう進言する。制空権を奪われ、連日の空襲で焼け野原と化し、もはや瀕死と呼んでいい国に対してだ。その後の世界において主導権を握りたかったアメリカの思惑によるものとされるが、政治家ではないオッペンハイマーがこの主張をしたのは自身の功績を国内外に示したかったからとしか思えない。科学者の性と言うべきか。それでいて、8月6日以降は急に罪悪感に苛まれ、より強力な水素爆弾の開発で競い始めた米ソに対しても、どうにか歯止めをかけられないものかと苦心する。矛盾するようで矛盾しない、実に人間らしい主人公をキリアン・マーフィーが好演。映画的にはだいたいこの辺りがピークかなと思うが、その後の赤狩りを背景とした戦いもアカデミー助演男優賞に輝いたロバート・ダウニー・Jr.の存在感もあり、なかなか見応えがあった。3時間だれることのない優れた出来。アカデミー作品賞も納得の一本だ。 【リーム555】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-04-01 20:46:56) 7.《ネタバレ》 歯車は回りだしたら止まらない。科学も政治も人類破滅の日も。今もその日に向けて着々と回っている。 長尺だがあまり飽きさせないとは思う。全体的にわかりにくい。まず公聴会のくだりがわかりにくい。登場人物が多めで見分けがつかないというか聞き訳がつかない。セリフだけで誰それがと言われても欧米の人名と実際の顔は対応が付かないよ。またカラーのシーンとモノラルのシーンの使い分けがわからない。誰かの解説に頼ればわかるようになるのだろうが、そうまでしたいとは思わないし、そうしないとわからないのであれば作り方の失敗と言える。ああいう愛人なら私も欲しい。 【ほとはら】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-04-01 19:29:36) 6.並行世界のように異なる時間軸が入り混じって描き出されるストーリーは、「事実」のあり様を敢えて意図的に混濁させ、多角的な“視点”と“認識”を創出している。 「原爆の父」として、特に我が日本にとっては、切っても切り離せない人物として存在するJ・ロバート・オッペンハイマーの目線と人生観を、一つの視点として描き出した本作は、紛れもない傑作である。そして、やはり日本人こそが、腰を据えて観て、様々な感情を生むべき作品だろうと思った。 瀬戸内エリアで生まれ育ったこともあり、広島の平和記念資料館や原爆ドームへは、何度も行ったことがある。訪れるたびに、人類が生み出した「業火」の残酷さに愕然とし、胸が掻きむしられるようだった。 そこに展示されているおびただしい数の残骸と残穢、その一つ一つに残る悲痛な記憶に、涙が止まらなかった。 そして、あの「爆弾」を生み出した人物の所業を呪わずにはいられなかった。 ただ、その当人のことを決して積極的に知ろうとしてこなかったことも、また事実だった。それは多くの日本人にとって共通する事実ではないだろうか。 この国で、戦後の現代社会に生まれ成長してきた者として、必然的に原爆投下の事実と、それがもたらした文字通りの“地獄絵図”は、子供の頃から学校の授業で、漫画で、映画で、写真で、そして被爆者の経験談で、繰り返し見聞きしてきた。 しかし、それをもたらした一人の科学者の人生模様と、彼が生きた社会及び世界の実態に対する認識はほとんど皆無だったと言っていい。 本作を観終えたあと、NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」のオッペンハイマー回を観て、彼が天才科学者として辿った人生の、その一端を垣間見た。 “一端”ではあるけれど、その人生を知って思ったことは、彼が本当に得たもの、最終的に心を埋め尽くしたものは、栄光でも苦悩でも無かったのではないかということ。 そんな都合の良い“言葉”では、彼が“生み出してしまったもの”に対する功罪は推し量れないと思えた。 ブラックホールの研究に傾倒し、時代の流れのままに原爆開発の中心に突き進み、文字通り世界の在り方そのものを変えてしまった男がたどり着いた境地は、あらゆる感情を呑み込まざるを得ない「虚無」そのものだったのではないか。 キリアン・マーフィーが演じたオッペンハイマーの瞳には、野心や後悔すらも呑み込む深い漆黒が広がっていた。それは奇しくもすべてを呑み込むブラックホールを彷彿とさせた。 実は鑑賞から一ヶ月近く経っても、なかなかこの映画に対する感想がまとめきれなかった。いろいろな感情が渦巻いて整理しきれなかったからだ。 題材故に、日本公開が随分と先延ばしになった経緯があるが、もし本作が日本公開に至らなかったならば、それこそあまりにも愚かなことだったろう。 繰り返しになるが、この映画は、世界で唯一の被爆国であり、原子爆弾による死屍累々の上に生きる日本人だからこそ、しっかりと鑑賞して、様々な感情を巡らせるべき作品だと思う。 劇中、ヒロシマ、ナガサキの惨状そのものを映し出さなかったことに対する是非が問われていたようだけれど、それを描き出さなかったことが、必ずしも本作の主題において無責任なことだとは思わなかった。 むしろ直接的な地獄絵図の描写がないからこそ、オッペンハイマーをはじめとする当時の全世界の科学者たちの宿命と、彼らを含む社会のエゴイズムと狂気の様が際立っていた。 そしてその全世界的に渦巻いたエゴと狂気こそが、彼らを踏みとどまる余地すらない無間地獄へと誘い、その地獄は今なお続いているとういことを、この意欲的な映画は雄弁に語り尽くしていたと思う。 原爆開発に限らず、歴史や人間の功績は、常に闇と光を併せ持つ。様々な“視点”によって、断罪と称賛はとめどなく入れ替わり続ける。 “毒林檎”をすんでのところでゴミ箱を捨てた男も、世界を滅ぼす力を持つ爆弾を生み出した男も、ただひたすらに科学に邁進した一人の人間なのだ。 そして人類は、今なお世界の終焉そのものを天秤にかけて、あまりにも危うい葛藤を続けている。 “毒林檎”は、今この瞬間も、アンバランスな天秤の片側でその重みを増し続けている。 果たして、人類は自ら生み出してしまったその禁断の果実を、ゴミ箱に捨て去ることができるのだろうか。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-03-31 22:17:15) 5.《ネタバレ》 長い、とにかく長い・・会話も長いが、見せ場もてんこ盛りで長い。 オッペンハイマーの人物像と太平洋戦争の時代のアメリカを丁寧に描いているが ここまでの物量が必要だったのだろうか・・? 女好きの下半身事情とか 原爆の開発研究課程の人間関係に、最初の核爆発実験シーンも 水爆を否定し共産主義を疑われて窮地に陥る後半の顛末も、もっと編集して 短くする事が出来た筈だし、普通の監督なら、制作スポンサーサイドから要求された筈。 今回は、大御所になってしまったノーラン監督のわがままを通してもらったのだろう。 しかし、長すぎて飽きてしまったのは事実だ。 どう考えても2時間以内の映画にできた筈。 だって大した中身が無いんだから・・ 核爆発による大量破壊兵器の問題は、被害が広範囲過ぎて、軍隊だけでなくその何倍もの 民間人が巻き添えになる皆殺し兵器だという点。 そして放射能による長く続く悪影響。 その現実を理解していながら、敵国に遅れる訳に行かず研究を急ぐ科学者チームのリーダーが その成功により、戦争終結し英雄扱いされる中で、急に冷めていき、更に強力な水爆の開発の 依頼が来たのを拒否。そして原爆開発チームの一部にソ連のスパイが見つかり、栄光の座から 容疑者へ転落し、女癖の悪さをも暴露され女房との仲も最悪になる終盤。 この物語を映画にするのに、あれ程の細かいエピソードを肉付けする必要があったのだろうか。 映画館を見渡すと、高齢者が多くて笑ってしまったのだが、かく言う自分も引退世代、 トイレが持つかどうか不安である。 実際隣の同世代の客は核爆発実験の後でトイレへ行き 戻ってきたが、ラスト30~40分を見ずに出て行ってしまった。 見るからに足腰の不自由な80代のお婆ちゃん、良くぞ耐えたものだ。(他意は無しです) 暖房効きすぎで暑過ぎる館内環境は、発汗でトイレ問題解決の為なのかと思ってしまった。 と言うわけで・・映画は長すぎてはイケないというのが、自分の判断基準の一つである。 それから気になったのは、ただのドラマシーンに大音響重低音の効果音はやり過ぎだ。 先日見た砂の惑星レベルの地響きと振動が、ドラマの中に何度も使われていて煩い。 1度ならまだしも、10回も20回も繰り返す演出は、インパクトを超えて嫌味になってる。 そしてエンディングがまたイマイチ。科学者の名前を付けた映画なのに、どんな人生を 終えたのかは描かれない。 名声を失った後に、核戦争の未来を想像するシーンで 終わりって・・ 中途半端感が大きい。 てな事で、この映画に高得点を付ける気にはなれなかった。アカデミー賞で話題だけど そこまで優れた作品かと疑問が残る。 この長さの映画なので、セルかレンタルで自宅鑑賞を強く推奨します。 で気が付いたら、自分の投稿も長過ぎでビックリ。 追伸・・日本語字幕の文字が、かつてない大きな文字でした。それだけ会話の中身が 重要な社会派ドラマ映画なのでしょう。 その新しい試みは賛同しておきます。 【グルコサミンS】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-31 20:16:04) 4.《ネタバレ》 専門用語が次々に現れ、時系列を交錯させ、培ってきた技法を総動員させたクリストファー・ノーランの力作だが彼のベストではない。 恐らく半分以上は話を理解できなかっただろうし、あれほどの会話劇で本国アメリカで記録的な大ヒットしたことは、ノーランのブランドがなせる業なのか、核兵器を巡る世界情勢の重大な危機に関心が大きいのか、その両方だろう。 唯一の被爆国である日本にとって胸糞悪いのは事実で、戦争という熱狂によって人道・倫理観のブレーキが壊れ、戦場が兵器の実験場に変わり、新たな秩序と発明が生み出されていく。 戦場とは遠い世界でチェスの駒を操れそうな位置にあり、やがて自分自身も利用されて棄てられていく様が同じ天才学者を描いた『イミテーション・ゲーム』に通じるものがある。 国のエゴと利害の一致によって身動きできなくなっていく理不尽と葛藤と矛盾がオッペンハイマーに強烈なストレスとして画面に発露される。 広島と長崎の投下シーンが一切ないのは予め知っていた。 これは日本への配慮とも言えるし、挿入したとしても"オッペンハイマーとは何か"をぼかしてしまうので妥当とも言える。 英雄でもなく、悲劇の人物でもなく、功績と名誉を回復しても、これらは彼以外の大多数の所有物でしかなく、本人がどう思っているのかは知る由もない。 彼がいなくても、誰かが原爆を作り、どこかで投下されていただろう。 全人類を破滅させることができる発明が世に出てしまった以上、もう止めることはできない。 昨今に論議を巻き起こしているAIが世に出てしまったように。 現実、国の最高権力者という名の狂人が核兵器というキャスティングボードを握っている。 話し合いで解決できない相手に我々だったらどう向き合うか? もはや「核兵器について議論しない」という日和見な選択肢は残されていない。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-30 22:40:46) 3.トップバッターと2番手の方々に補足して感想と鑑賞の心得を書かせていただきます。 まず、英語圏では今までに千冊を超える原子力・原子爆弾開発関連の書籍が発刊されていてそれはあたかも日本で戦国時代から安土桃山時代や幕末についての歴史本が詳細な考証がなされた書籍から歴史的人物の発言などのフィクションを連ねたものまでが読まれている様に似ています。だから本作品中で科学者の誰かの名前が発せられると、書籍や百科事典などで知っているその人の面影に近い登場人物をスクリーン上に探すのが英語圏の鑑賞者なのです。例えばエドワード・テラーですがゲジゲジ眉毛でアクの強い系イケメンのこの人が水爆を巡ってオッペンハイマーと対立するのは冷戦時代になってからでロス・アラモスではテラーは理論計算部の部長に自分ではなくハンス・ベーテが選ばれたことでオッペンハイマーを逆恨みし、水爆開発関連でベーテが 2024年現在唯一のノーベル賞受賞者になっていることもマンハッタン計画の科学者で唯一21世紀まで生きた(2003年没)テラーにとって痛恨の記憶となりました。作品中、キラ星のごとく原子爆弾・原子力開発関連でノーベル物理学賞と同化学賞を受賞した科学者のそっくり俳優が登場して名前も出ています。この作品の一つの見方として、理化学事典などに付属しているノーベル賞受賞者と其々の業績を見てできる限り理解しておくとわかりやすくなります。原作の「American Prometheus (邦題: ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者)」も筑摩書房から邦訳が出ているので公立図書館などで購入してもらって一読するといいと思います。わたしは十年ほど前に原書で読んだので人物のフォローに問題はありませんでした。テラーの件がそうですが、本作品では時間軸に沿っていないエピソードがかなりあります。米空軍がカムチャッカ半島(だったか)上空でソ連の核実験の痕跡と思われる放射線量上昇を検知したくだりなど実際と5年はずれています。その上に「滝田栄(最近では松本潤)の家康」ように意図的に実在の人物とイメージを変えてもいます。オッペンハイマーの妻のキティと愛人のジーンは容姿もキャラも逆になっていてこれが助演女優賞を受賞出来なかった理由かもしれません。わたしとしては広島に原爆が投下された直後の一般アメリカ人の熱狂に加えてオッペンハイマーの内面の悲しみや葛藤が理解されればこの作品が作られたことと日本で上映されたことに意義があると思います。オッペンハイマーは紛れもなく原爆の父、エドワード・テラーは水爆の父、エンリコ・フェルミは原発の父でわたし的には オッペンハイマー + フェルミ = プロメテウス なのですけれど本作品ではフェルミは顔出しもクレジットも無いような存在だったのが残念でした。でもこれ以上話を複雑にしないためにはまあ仕方ないです。 【かわまり】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-03-30 00:30:08) 2.《ネタバレ》 コ~レは、無理だ……(フツーに『TENET』より多分無理……)マンハッタン計画の推移はともかく、オッペンハイマーの戦後の成り行き⇒特に聴聞会とか議会のアレコレとかは、余りに情報量が多すぎて初見ではとても処理し切れませんです。私は毎度のコトではあるのですが、下調べゼロで観る映画じゃあ(そもそも)なかったですかね…… なので、再見不可避⇒いったん暫定レビューとしておきますが、ちょっと考えた末その場合は今後、点数は7・6・5=(多分)面白い・(多分)普通・(多分)イマイチ、のどれかに丸めておこうと決めました。その上で今作は、初回ですが例外的に暫定8点でも好いかな~と少し迷ったのですケド、いったんやはり7点にしておきます。ポジティブな方のその理由は、ゆーて(3時間の長尺なのに)トンデモなく高密度⇒で正直あっという間のエンディングで、シンプルに楽しめたか否かと問われたら完全に前者だったってコトですね(⇒ナンとかカンとか2時間に押し込めた!て凡庸な作品なら幾らも観てきましたケド、ソレを3時間でやってる…てヤツは、その時点であんまし観たコトねーな…て思っちゃったので)。他方、ネガティブな方の理由としては、前提知識が無いコトの影響もあるでしょーが、最も肝心だと思われるオッペンハイマーの人間性の描き出しの部分が、妥当なモノなのか&掘り下げも深いのか浅いのか、という非常にコアな観点からも(恐らく)ワタシ適切に掴み切れてない…という感覚がかなり強かったコトですかね。重ね重ね、知識を入れて再見して更新します(⇒多分劇場ではもう観ない…サブスクに出てきてから…) 【Yuki2Invy】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-29 23:59:55) 1.《ネタバレ》 IMAXで鑑賞。 圧倒的な説明不足により全体の半分も理解できませんでした。 SFならいざ知らず史実映画でこれはマイナス評価をつけざるを得ない。 終盤、名誉回復したオッペンハイマーの受賞パーティで、テラーを睨みつけるエミリー・ブラントに唯一人間らしさを感じた。 彼女が助演女優賞を取らなかった事が唯一残念。 4/24、2度目の鑑賞。もうじき我が街のIMAXシアターはコナンに全て奪われるので。 初見ではさっぱり理解できなかったが2度目では逆にほぼ理解できた。 登場人物の多さとセリフの多さについて行けなかったが、ストーリーの概略が分かっている2度目ではまごつく事がほとんどない。 この映画はその意味でサブスク向きかもしれない。私みたいに定年退職後のヒマな年寄りは劇場で2度見ることに抵抗がないが。 が、2度見ても意見や感想にアップデートする事は特に無かった。 この映画がアカデミー賞を取るのなら「インターステラー」で取って欲しかった。 エミリー・ブラントがアカデミー賞にはふさわしい。 【ぴのづか】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-29 21:03:10)
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