みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
★11.《ネタバレ》 よく木下恵介の事を「お涙頂戴のクソ野郎」と言う人もいるが、「風前の灯」や「お嬢さん乾杯!」といったコメディを撮っている木下が好きな俺は褒め言葉の一つだと思っている。 ただ、今作に限ってだけは「お涙頂戴のクソッタレ野郎がっ!!!」と声を大にして同意したい。 子供の前だけで泣くのは立派に見えるかも知れないが、流石に何回もグチグチ泣き出されたら誰だって「あざとい」と思うわ。 あのクソ板前も言ってるだろうが「めそめそしないでしっかりしろよ」って。大事な涙は子供が出世した時にとっといてくれません?弟が観客の声を代弁してくれてるぜ「すぐに泣くんだ」とよ。 「二十四の瞳」は滅多に泣かなかったというに。 歌に始まり歌に終わる本作は、どんなに絶望的な状況でも情緒を忘れない木下が完全に情緒を投げ捨てる。 まずは強烈なファーストシーン。 ドラムの連打にニュースフィルムでも見るような戦後の混乱の様子。 青空教室、バラック、マッカーサー、うどんの食べたくなる情景。 そして画面を支配する重苦しさ。戦争によって全てを失い、残った子供たちを食べさせるために自ら闇に堕ちていく母親。だが皮肉にも彼女の頑張りは様々な屈折を経て失望と憎悪の対象に変わってしまう。冷めた親子関係、女の悲劇、男の悲劇、日本の悲劇。 徹底したリアルな会話がさらに拍車をかけて母親と視聴者の心を追い詰める。 母親はどんなに辛い目に遭おうと耐え続ける。そこには希望とも言うべき子供たちがいたからだ。尊厳が無くとも子供たちがいれば生きていける。ただその希望が離れてしまう時、彼女の体を支配するのは生存本能ではなく死だ。ヒロイン達に辛く当たる人々も、日々のストレスを誰かに吐かないとやりきれない。殴ったことを一応謝った板前はまだマシ。 サイレント映画のような魅せる事にこだわった描写も凄い。 男に体を辱められた様子を割れたガラスで表現する徹底ぶり。 ヒロインのストーリーと同時進行で娘の危険な恋も描いていく。 母に失望した娘、嫁に失望した夫、世の中に失望した者同士の情事。三つ巴の電話越しでのやり取り。親が親なら子も子供。飛び出した塾の外で一瞬笑みを浮かべふっと失望したかのような表情をする女の顔。 俺はこういう徹底的に暗い話は大嫌いなのだが、この恐ろしい出来栄えは評価しなければならないだろう。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-12-09 00:02:54) 10.《ネタバレ》 随所に実録映像、時事ニュース映像、新聞記事を挿入し、戦後日本の混乱期の世相を伝えている。一家庭が崩壊する姿を描いて、「日本の悲劇」とはいかにも大仰である。その意図は、個人の悲劇を「世の中のせい、政治のせい、戦争のせい」とみなし、個人の不幸の責任を国家が負うべきだと考えているのだろうか。そこまで極端でなくとも、責任の一端は国家や政治にあると訴えたいのだろう。結論から言えば、実録映像等などは一切不要である。戦争未亡人春子一家の悲劇を粛々と描けば、それはそのまま国家批判、世相批判につながるからだ。そもそも個人の不幸と国家を同一には論じられない。 主題は家庭の崩壊である。春子にすれば、戦後の混乱期の中、女手一つで二人の子供を育てるのに死にもの狂いだった。二人を盲愛し、その将来を心配する余り、我武者らに闇屋をやったり、売春めいた行為に走ったり、子供達を義理の弟夫婦にまかせて住み込みで旅館の中居になったり、相場に手を出したり、気が付けば海千山千、世間の裏表を知り尽くした女丈夫になっていた。娘にすれば、闇屋や売春行為などをする母親を到底許せるものではない。また、従兄に強姦された傷心から人を信じることが出来なくなってしまった。一方で不倫相手との逃避行にも惹かれる。息子にすれば、大学には行かせてもらったものの、医師になれる将来性は無く、老医師の養子に入るしかない。母の婚前交渉による妊娠は不潔である。客観的に見れば、母親が二人の子供と別居したことが最大の問題である。これにより二人は母親に見放されたと思い込んでしまった。電話や仕送りでは愛情は伝わらない。膝下において育てることが重要である。二人に去られたことで、生き甲斐を喪失したと感じた母親は咄嗟に鉄道自殺してしまう。娘も息子も生きているのだから、自殺するほどの境遇では無いと感じたので意外だった。同情の念は浮かばなかった。演技は達者なものの、主演女優に魅力がなく、終始退屈に感じた。こうした役柄は同情を引きやすい、可愛い手合いの女優が演じるのがよい。この母親にして娘が美人過ぎる。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-09-06 17:49:02) 9.冒頭の音楽や新聞記事、東京裁判の映像など見ていると、まるで新藤兼人か山本薩夫の社会派ドラマを思わせる。しかしそれはあくまで時代背景を表したもので、中身は戦争未亡人と二人の子どもの心情劇。親の心子知らずというか、世の中の変化に対応しきれない愚かな親心というか、やはり木下恵介ならでは物語である。 不幸は起こるべきして起こったとも思えるし、こういう不幸が拡がらないようにという願いにも思える。 しかし映画を正しく理解するにはやはり時代背景をもっと知らなければならないだろう。戦争の悲劇は多くの人の死だけではない。物資の不足は不法なヤミ商売を生み出した。配給だけでは食べていけないギリギリの生活、だますかだまされるかで運不運が分かれる戦後の混乱期。その不幸な時代に起こった悲劇の一つだということを認識しなければならないだろう。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-07-16 23:23:40) 8.突っ込んでいくといろいろ深い部分もありそうなのだが、この話の展開は、日本がどうのとか敗戦がどうのというよりも、各登場人物の個人の資質に依る部分が大なのではないだろうか。ラストシーンのインパクトにかなり頼っているような気がする。ただし、家族間のすれ違いや崩壊を正面からテーマ化したという点においては、今に至るまで類作はあまり見当たらず、その意味で貴重。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-06-17 23:34:16) 7.《ネタバレ》 生きていくためには自分を育ててくれた親をも捨て、男や金持ちの許に走る・・・・。これは、まさに敗戦によって過去を捨て去り、アメリカの傘下で生まれ変わろうとしていた当時の日本の姿そのもののように思えます。 正直言って、この子供たちは薄情でひどいし、母親は本当に可哀想です。でも、あれだけ支配欲が強いと子供たちが逃げたくなる気持ちもわからないではないですね。何ともやりきれない後味が残りました(最後の佐田啓二のセリフがまた無情でなんともまあ・・・・) 。 【TM】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-09-07 21:18:38) 6.《ネタバレ》 木下恵介監督と言えば日本人の優しさ、情感豊な作品が多いが、これはそんな木下恵介監督作品らしさの全く感じない何とも非情な作品です。ここまで徹底して非情に成り切っているのには深い訳がなくてはなれないであろうと観ていて感じるほどの冷たさ、とにかく出てくる人物がどこまでも冷たい。大事に育ててきた二人の子供に見捨てられる母、望月優子の演技の凄さ、子供達の為にしてきたことが子供達から反感の眼で見られ、挙句の果てに子供達に見捨てられる。こういう事は実際に、世の中にはあるであろう事実として、まずは考えさせられる。子供達に裏切られる母の苦しみを本当に理解していた者は果たしていたのか?佐田啓二だけが理解していたのか?人間なんて生きものは所詮は自分のことで頭の中はいっぱいなんだ。例え親だろうが、子だろうが親と子の関係など単なる親と子でしかないのだろうか?と我々に対して、訴えている。問いかけを行なっているような何とも観ていても人間の惨酷な一面が見えてやれきれない思いになる。時折、流れるニュース映像がまるでドキュメンタリー映画でも観ているようなリアリティーを生んでいることだけは間違いなだろうし、そういう映像を流すことで人間の人生なんて、ドキュメンタリーのようなものである。あの母親の人生、列車の中に飛び込み、自殺をはかり死んで行く母の人生の厳しさ、木下恵介監督が本当に言いたかったことは、人生は楽なことばかりではない。むしろ、苦しいことの方が圧倒的に多いのだ。望月優子演じる母親の自殺は我々、全ての人間に苦しくても自殺などしたらそれで終わりである。自殺したからって、何も報われはしないとこの映画を通して伝えたかったのではないでしょうか! 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-05-22 21:23:56) 5.《ネタバレ》 悲劇というより、世の殺伐たるを嘆いてる様かの内容。 他人を信じようとはせず、自分の殻に閉じこもる。 そんな世界観が作品内を支配していて、どうも好きになれない。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-05-06 12:13:34) 4.《ネタバレ》 戦時中の最中で自らの命とわが子を生すために、他人から罵倒されるような真似をしてまでも生き延びた女は、戦後の時代でも同じように生き続けた。そんな女に育てられた子どもは他人に馬鹿にされ、見下され、その結果女への恨みを募らせ始めた。確かに親を捨てた子どもたちも悪いが、子どもに対し恩着せがましい態度を取り続けた母親も悪い。だが、この作品の中でどちらのほうがより悪いというのは描かれていないし、実際、どちらにも同じくらい非はある。しかし、この物語の中で起きたような出来事はなぜ起きたのか、その発端を探れば原因は見えてくる。一言で言ってしまえば戦争のせいである。戦争さえなければ、あの家族には父親もいたし、親子が離れ離れに暮らす必要も無かった。娘が強姦に合うこともなければ、息子が勉学一直線で母親と縁を切るような事もなかった。だが、起きてしまった戦争に今更非難しても意味が無く、またあの親子を非難するのも違う。この作品はまさに、日本という国で戦争が齎した最も悲しい現実を描いたリアリズムの物語である。日本人だけでなく世界中の人々の目と心に残さなければならない真実である。これはまさに日本の悲劇だった。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-22 00:46:35) 3.《ネタバレ》 まさに悲劇。主人公は子供を想い、懸命に働いているのに、馬鹿な子供達は感謝もしない。寧ろ母親を恥のように考え蔑んでいる。生きることの厳しさも知らない馬鹿な子供達にはほとほと腹が立つし呆れるしで、イライラし通し。主人公はお人よしで善人。善人過ぎて尚更悲しい。冒頭に語られる予想通り、程度の差はあれ、どんどんこんな身勝手な子供達が増え続けている現代を考えるとまた悲しい。これだけ後味の悪い映画もない。なのに評価せざるを得ない映画もない。主演の望月優子さんがはまり役で本当に素晴らしかった。 【MARK25】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-18 20:47:19) 2.《ネタバレ》 絶対に忘れないと確信している一本。この後の「鑑賞後の後味」で、可能ならマイナス10点と投票したいと・・・感じてしまう一本でもあります。 【yoshi1900ololol】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-02-10 03:11:59) 1.冒頭、激動する戦後の出来事をニュース風のカットで矢継ぎ早に映し出す。本作では監督木下恵介の持ち味ともいえる叙情性は一切廃止され、非情なリアリズムタッチで展開されてゆく。望月優子演じる戦争未亡人である主人公の母親は、二人の子供達を育て上げるためなりふりかまわず必死で働く。しかしある日、料理屋の仲居の仕事に付きものともいえる男性客へのサービス現場を、二人の幼い子供達に目撃されてしまう。子供心としては耐え難い程のショックを受け、その事が大人になっても尾を引いてしまう。やがて冷たく無機質な性格に育っていく二人だが、老後を頼るうっとうしい母親をあっさりと捨て去ってしまい、思いも寄らぬ悲劇が待ち受けることになる。親の心子知らずというか母親にしてみると、子供達の為に死にもの狂いで生活費を稼いできたのに…。そんな悲劇的な母親役を望月優子はハマり過ぎともいえる演技を披露しており、それは鳥肌が立つほどである。また、このような悲劇的な出来事は将来珍しくなくなるということを、監督木下恵介は予見して訴えているかのようでもある。ところでこの映画では、母親に対する三人三様の若者の姿が描かれている。主人公の二人の子供達に対し対照的な性格で母親思いの流しの歌手(佐田啓二)、気性が荒く傲慢だが情に厚い若い板前(高橋貞二)…本作ではこの二人の存在がせめてもの救いとなっている。木下作品としては寓話とも受け取れる異色作だが、邦画史上確かな位置付けにある傑作です。 【光りやまねこ】さん 10点(2004-10-29 21:32:22)(良:1票)
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