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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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21.  キングスマン 《ネタバレ》 ヘリの攻撃に始まり扉の開閉で締めくくられる死屍累々スパイ映画の快作。歴代のスパイものを彷彿とさせる遊び心と活劇性、そのエンターテインメントへの挑発もふんだんにブチ込む反骨精神。 「キック・アス」から本作でも描かれる親子・師弟関係・何処にも属さず己の道を突き進む強靭さ・復讐・乗り越えるものと受け継がれる意思。 ある者は自分を命懸けで救ってくれた者のために、ある者は自分に進むべき道を示してくれた恩師のために。 スパイという情報を集め、時に非情な選択を迫られる生きるか死ぬかの大仕事。どんな手段を使っても孤軍奮闘で目的を遂げようとするプロフェッショナリズムと魅力的な隠し武器たち。 洋服屋を重火器の詰まった秘密基地に、空を飛び交う飛行機が地上に留まり最前線基地に、酒を毒酒に、眼鏡を盗撮カメラに、傘を鈍器と射撃武器に、時計を麻酔に、指輪を電撃に、ライターを爆弾に、靴をナイフに、義足を刃に変えて全力で駆け抜けブッ殺し合う! ダイナミックお邪魔します&いらっしゃいませ一刀両断、盗んだ車で逆走チェイス、屋根から屋根へ飛び乗る逃走劇、傘で不良軍団フルボッコ、命懸けのスパイ養成学校、突然襲い掛かる水水水、犬に厳しいスパイ業界、犬に優しく裏切者にゃ容赦なし、壇上に飾られた“相棒”が覚悟を物語る、車を操るのは無駄な争いをさせたくないから。 教会から全世界、全人類、全性別が人種や言葉の壁を越えて殴り合う大スペクタクル!腕があったら取っ組み合い、木材があれば打ち下ろし、刃物があればドアを破壊し投げつけ、頭の中に爆弾あったら大爆殺!!!一体何回爆発すりゃ気が済むんだこの映画はっ!?(褒め言葉) ダイナミック不謹慎花火大会で俺の腹筋も木っ端微塵になってしまった。 鏡も人工衛星もブッ飛ばし、美女の穴の中にも潜りこ(ry 「ジェームズ・ボンド?ジェイソン・ボーン?」 「ジャック・バウアーさ」 夢も希望もなく生きていた不良少年が、生きる道を見つけたスーツに身を包むエージェントになっていく成長振り。エグジーが覚悟を決めた瞬間だ。でも根っこが変わらないところがいい。 スーツに返り血を浴びた後にその場で酒瓶を掴み女をくどきに行っちまうんだからwwwロキシーとのフラグなんてなかった。 あと訓練から裏方、ライフル抱えて援護射撃までこなすマーリンの頼もしさ&気遣い振りに惚れる映画です。[DVD(字幕)] 9点(2016-05-07 01:44:54)(良:1票) 《改行有》

22.  黄色い星の子供たち 《ネタバレ》 フランス人は、フランス革命の頃から同じ国の人間同士で差別し、告発し、殺し合ってきた歴史を持つ。 ある者は恐怖に屈してしまい、ある者は恐怖に抗うために戦うことを選んだ。 かつて赤狩りでアメリカを追われたジョゼフ・ロージーという男がいた。 彼はフランスでヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件(ヴェル・ディヴ事件)について「パリの灯は遠く」で描いた。そこには理不尽な暴力に対する抵抗と国を追われた者の共鳴があったのだろう。 そしてこの「一斉検挙(黄色い星の子供たち)」は、フランス人の女性ローズたちによる一つの告白なのだ。 「星」によって差別される日常から映画は始まる。 追い詰める側はあくまで仕事として、作業を繰り返すように政策を進める。まるで感情のない機械のように。ユダヤ人にしてみれば、彼らは自分たちを引き裂き暴力で屈服させようとした恐ろしいマシーンも同然。服をはぎとり、容赦なく殴り蹴ってくる。 彼らも人質を取られていたのだろう。だがそんなものは言い訳だ。だからこの映画にも追い詰めた側の葛藤はあまり描かれない。 「家族を人質にとられててね(棒読み)」 そうかそうか、テメえの面に一発ブチこまれて欲しかったぜ俺はよ。 ヒトラーも家族と団欒しながら何万の人間の四肢をもぎ首を引きちぎる政策を進めていく。 対して、追い詰められる側は感情豊かだ。 歌い、踊り、走り、語り合い、愛し合って。あの小さな子が走る度に軍人や警官に銃殺されるのではないかと何故かハラハラしてしまった。あの子は妖精のように場を和ませ、「この子だけは死んでほしくない」という活力を人々に与えていた。 ユダヤ人狩りは加速していく。公園や職場からの追放、警官隊の不気味さ、銃殺覚悟で生き延びろと叫び続けた御婦人、競輪場に家畜のように押し込められる理不尽さ、医者の無力さ、糞溜めの中に託される希望、消防士たちの勇気、貴重な配給食糧をブチまけてまで脱出者たちを送り出す子供たちの覚悟、走りゆく列車から力なく垂れる手、手、手・・・。 ローズさん、貴方は優しいね。生き残った人々の顛末は多少描いたが、死の描写は少なかった。 彼らを追い詰めた(自殺?何言ってやがる、追い詰めたんだろうが)人々のその後までは描かれなかった。 それ以上追及しなかったのは、あくまで生き延びた人々の体験に沿った映画だからなのだろう。 二度と会えないと思っていた人との再会・失神するほどの歓喜が肉体を突き抜けるほど、死んでしまった人々の分まで何がなんでも生きてやるという瞬間に勝るものは無かったのだと思う。[DVD(字幕)] 8点(2015-12-23 22:11:37)《改行有》

23.  菊五郎の鏡獅子 《ネタバレ》 フィルムセンターで鑑賞。 「鏡獅子(菊五郎の鏡獅子)」。歌舞伎を記録したドキュメンタリー。 提灯、ナレーション、入口、舞台、客席、幕が上がり花道が。菊五郎の女形、静止画が続く。菊五郎の男役、様々な役、鬘(かつら)、着物、扇を映していく。 演技の前の台本を読み、鏡の埃を羽箒で払う。   幕が上がり演目が始まる、演奏と歌、ロングショットとクローズアップの切り替え、菊五郎の女形による舞踊を8分も延々と映していく。 やはり同じ画面で同じような事を続けるのはどうにも退屈だ。時折視点が斜めになるだけ(それも同じ角度で繰り返し)。 舞台で見たら臨場感があって面白いのだろうが、映画で見ると舞台の良さは伝わらない。事にドキュメンタリーに徹して舞台に上がらず被写体を追わないのなら尚更。  踊りの後はようやく別の演技に・・・と思ったらまた踊り始める!いや、菊五郎の激しいステップは見るものを引き付け始める。 舞台を駆け抜け消えていく姿をカメラが追う!そして同じ道から現れる鏡獅子!全身を震わせて激しく舞い続ける、ドカッと段に座り、そこに現れる二人の女形の舞い、二人に肩を叩かれて獅子は飛び上がり、再び激しい舞いを始める。 雄々しく振り回される長大な白髪、獅子が段上にそびえ地面を蹴り、睨みをきかせて幕は下りる。[映画館(邦画)] 8点(2015-07-28 16:55:36)《改行有》

24.  Kids Return キッズ・リターン 《ネタバレ》 北野武のヤクザ映画は余り好きじゃないけど、「あの夏、一番静かな海」と「キッズ・リターン」は大好き。 少年から青年になっていく子供たちの多感な時期を描いた青春ドラマ。 この映画には色んな「あの頃の自分」がいるんだよな。 授業サボッてた奴、 真面目だった奴、 カツアゲされた奴、 されなかった奴、 見て見ぬフリをしていた奴、 スポーツやってた奴、 恋をする奴、 学校辞めた奴・・・色んな「自分」が見え隠れしている。 登場人物は一目見ただけじゃ印象に残らない奴も多い。 それを毎日会って話している内に馴染みになるように、じんわりと染み込ませてくれる。 大人になろうと一生懸命背伸びして、馬鹿やって、何をやっても長続きしない。 ただ、報われないだけが人生じゃない。 失敗から学んで別の成功をする奴だっているし、努力を続けて報われる奴だっている。 時折出てくるあの漫才コンビは良い例だね。 馬鹿にされてもプラス思考でコツコツ頑張り、夢を叶えた。 自分のために、誰かの夢になるために。 この漫才コンビはたけし自身を表現したものだと思う。 この話の下敷きは漫才師になった「たけし」自身と、 たけしが以前ボクシングに打ち込み始めた頃に東洋フェザー級チャンピオンとして活躍していた「関 徳光」のエピソード。 漫才師になった自分と、ボクシングに打ち込んだ関光徳。 そっからこんな爽やかな良い映画が生まれた。 「もう終わっちまったのかなぁ?」 「バカヤロウ、まだ 始まってねぇよ!」[DVD(邦画)] 9点(2015-06-25 17:48:05)(良:2票) 《改行有》

25.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 クルーゾーは「悪魔のような女」の方が好きだが、この作品も傑作。ねっとりした恐怖を味わうアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの問題作。 ストーリーは至極単純、職にあぶれた男たちが「金のためならなんだってやる」という映画。 金も無く餓死するくらいなら、死んでもいいから一時の金と食事にありつける仕事を引き受ける。それがこの街の男たちだ。 ファーストシーンから素晴らしく汚い(褒め言葉)出だし。虫の群れにそれで遊ぶチ●コ丸出しの子供。 一瞬「これ別の映画?」と戸惑ってしばらくすると、おっぱいの飛び出そうな女の子が酒場の床を拭いているではないか! よかった!フランス映画だった!!(安心するところがおかしい) 最初1時間はひたすら登場人物の掘り下げ。 この丁寧すぎる掘り下げが後の恐怖を盛り立て、尚且つ酒場での緊迫したやり取りや燃え盛る油田の描写など退屈させてくれない。 毒蜘蛛?そんなもん足で殺っちまいな! そして残り1時間30分に渡る恐怖の大仕事。 油田の火災にはニトログリセリンの大爆破が一番(どういう事なの) わずかな振動でも全てを吹き飛ばす悪魔の液体ニトログリセリン。 時限爆弾はまだ猶予があるが、今度の爆弾は何時でも運び屋を皆殺しに出来る。常に体にまとわりつくような粘っこい戦慄。 “橋”のスリリングな出来事からマリオとジョーのコミカルなやり取りで癒された。 もう完全にヒロインですジョーのおっちゃん。 仕事を受けた運び屋は二組、ニトログリセリンという爆弾は人の心も破壊するのか? しかしニトログリセリンは岩も破壊すれば、人の心の壁も破壊し、一時の安息も破壊する・・・恐怖を味わう間も与えずに。 爆風で吹き飛ぶ巻煙草、焼け焦げた爆発の跡の生々しさ、屍人の骸が眠る黒い沼、ぶらんぶらんの足、そして踏ん張る杭。 それでも男たちは仕事をやり遂げる。たとえ最後の一人になろうとも。 ただ一つ言えるのは、爆弾が人を殺すのでも、車が人を殺すのでもない。 それを扱う人間が一番の殺人者なのだから。 ・・・でも正直言わせてくれ。あんな終わり方したら恐怖を通り越して笑っちまうよ。だからこれだけは言わせて欲しい「クソワロタ」と。 何だったんだよ今までのカッコイイ主人公は。俺も思わず卒倒したくなったわ。俺の涙を返してくれ。 そんなワケで、俺はウィリアム・フリードキンの「恐怖の報酬」の方が好きです。[DVD(字幕)] 9点(2015-06-18 10:05:46)(良:1票) 《改行有》

26.  恐怖の報酬(1977) 《ネタバレ》 ウィリアム・フリードキンの映画で唯一面白いと思えたのが、皮肉にも世間での評価が低いクルーゾー版「恐怖の報酬」だったとは。 いや、この作品こそ俺が求めていたウィリアム・フリードキンの映画だったのだろう。 それに、俺はクルーゾー版の「恐怖の報酬」におけるラストに大きな不満があった。 最初から最後まで退屈する暇も無いくらい最高の映画だったのに、あの幕引きだけは納得いかなかった。 あとどうでもいいんだけどさ、クルーゾー版のピチピチタンクトップにマフラーだけの格好が好きじゃない。熱いのは解るが、上半身まっぱの方が涼しいよな?中途半端に肌にくっついてて気持ち悪くないの?何て事を思ってしまった。 モチロン「悪魔のような女」は文句なしの大傑作です。 登場人物の掘り下げはクルーゾー版は人間ドラマしての面白さがあったし、フリードキン版はドキュメンタリー風の味わい。 他のフリードキン作品は、そのリアルタッチが真面目すぎてちょっと退屈に感じてしまった。けど、今回はダルむ事無く終始退屈する事が出来なかったんだ。 淡々とポンコツのトラックをチェーンナップする描写。爆弾を運ぶトラックは、下手をすれば運び屋の棺桶となる。その棺桶になるかも知れないトラックを黙々と整備していく様子に痺れる。 命にかえてもやり遂げなきゃならない事がある。金のため、夢のために。 そこにはジャン=ピエール・メルヴィル作品のようなプロフェッショナル集団しかいない。 嵐の中の渡橋シーンのスリル。橋が崩れ落ちるか落ちないか、渡り切れるのか渡りきれないのか。嵐のように吹きすさぶ風と猛烈な雨が、彼らの集中力や体力も奪っていく。、 クルーゾーは徹底的に渇いた砂、風、重油のねっとりした緊張。 フリードキンは湿り気というか、肥沃なジャングルや雨風、流れる血、濡れた刃が心臓を刺すような怖さ。正にクルーゾー版とは水と油。 例えば、中盤の渇いたニトログリセリンから流れる湿った部分。濡れた部分が「パンッ」と爆発する瞬間。クルーゾー版では固形とか液体といった部分にまで立ち入らなかった。 徹底的に渇ききった環境で液状なのは容器に入れられたニトログリセリンであり、重油であり、それに恐怖して流される汗だけ。それがクルーゾーの映画。 一方、クルーゾー版は散々濡れまくった後に渇いた大地を駆け抜ける。 最後の最後、クルーゾー版とは違う結末に俺は惹かれる。 未だに追われる不安と行く宛も定まらない者。受け取った“手紙”がその者の行き先を決める。そして現れる“追う者”たち。 主人公の運命は・・・暗示される未来は生か死か。そんな感じのラストが気に入っている。[DVD(字幕)] 9点(2015-06-18 09:58:47)(笑:1票) (良:3票) 《改行有》

27.  奇跡(1955) 《ネタバレ》 「奇跡(御言葉)」の題でも知られる作品。 俺個人は宗教を否定する「怒りの日」の方が好きだが、この作品が「裁かるゝジャンヌ(裁かるるジャンヌ )」に並ぶドライヤーの最高傑作である事は確かなのだろう。 「裁かるゝジャンヌ」は神格化されたジャンヌ=ダルクを一人の人間として描き抜いたが、この映画に起こる奇跡は神の仕業か、あるいわ人の言葉が起こした奇跡なのか。それは見る者に委ねられ、その瞬間を貴方はワクワクしながら待てるのか、あるいわ苦痛を伴いながらも待てるのか。少なくとも、劇中の人間たちの神に対する信仰は何処か薄い。 丘を登り神のお告げか何かを待つもの、それを諦めてくれる事を待つもの、家族の帰りを待つもの、希望と焦りを抱えながら医者を待つもの、荷物を運ぶためにその時を待つ漆黒の馬車、椅子に座って最後の別れあるいわ奇跡を待つものたち。時計の針も誰かが再び動かしてくれる事を待っている。 のどかな農村風景、動物の鳴き声でいつものように起きる人々。青年が窓を開けると、小高い丘に階段で登っていく男の後ろ姿。 青年たちは丘を登った男の後を追い、それを窓から見守る家族。風でなびく丘、そこから見下ろすように何かを語り始める男。男は部屋の中でも火の灯された蝋燭を持ち、同じような語りを続ける。それを優しくそっと消し、家族にコーヒーを振る舞う。どうやらこの光景は家族にとって日常風景になってきているらしい。 彼はこの後も何度も何度も同じような語りを繰り返す。その積み重ねが奇跡へと繋がる。 蝋燭は室内を照らすため、死者を弔うため。 凶事を知らせる馬車の疾走。 哀しみが満ちた空間、馬の嘶きが時間の経過を伝える。薄いカーテンが窓から注ぎ込む強い光を和らげる。 重く結ばれた指がある“言葉”によって開かれる瞬間・・・!少女の唇も微笑を浮かべ、重く沈んでいた眼に光が蘇る。 冒頭でも神か人間の奇跡かは観客に委ねられると書いた。 ただ、俺個人は人間が起こした奇跡だと信じたい。たとえ本当に神様がいたとしても、その言葉を伝えられるのは人間だけなんだから。時計の針を動かし生命を与えられるのは・・・。[DVD(字幕)] 9点(2015-06-18 09:05:43)(良:1票) 《改行有》

28.  キサラギ 《ネタバレ》 この映画を再見しようと思ったキッカケは何だっただろうか。 脚本の古橋良太なら「三丁目の夕日」で感動し、 監督の佐藤祐市ならカーリング映画「シムソンズ」の面白さに心打たれた事がキッカケだった。 それに「シムソンズ」でも佐藤祐市と組んだカメラマン川村明弘の仕事振りに心を揺さぶられたからなのです。 「キサラギ」の窮屈さが苦手という人にも開放的な「シムソンズ」をオススメしたいし、心の中をさらけ出しつくす「キサラギ」か人間の善良さを信じ抜く「シムソンズ」か。好みが分れるのも無理はないだろう。 いずれも“嘘”をひっぺがして“真実”をさらけあう面白さ。 俺はこの映画に対して散々罵ってきた。あなた方は「一貫性がない」とか「手のひら返し」とか、散々に私を罵る事でしょう。 それを覚悟で、俺はこの映画を見直し素直に面白いと思えた感動のもと、この映画のレビューを再び書いていきたいと思うのです。 エレベーターでふと現れた独りの男。何もない屋上、回る鉄の音、室内の異様な“暗さ”。 その暗い理由も、クライマックスで“真実を語る”ように煌く星々を際立たせるための漆黒だった。 匿名掲示板という偽りの自分、直接顔を合わせる時も“仮面”を被ったまま。一人、また一人集まるアイドル(偶像)に魂を奪われた人々。 クールを装う男、流される男、話に置いてきぼりをくらう男、明るすぎる男、何かを押し殺しているような男たち。 織田裕二「いいじゃないですか~」 「踊る大捜査線」では「真下正義」として活躍したユースケ・サンタマリアの鉄仮面。 パーティー気分だった主催者に対して、他の人間は真面目に追悼。でも何処か冷めた様子。 その理由も伏線。泣く男と冷めた男たちの違い。初見時の俺は、その辺の巧さを見逃し、完全に忘却していたらしい。 この映画は脚本の映画だ。確かに再見して映画的演出が冴え渡っているシーンが多いのがよく解ったが、やはりクライマックスの“あの瞬間”を盛り上げるために脚本が頑張っているのです、セリフの一つ一つで頑張っている映画です。 その一つ一つをより鋭く効かせる映画的演出の数々。 カチューシャという遺品、コレクションという火種、出入りは自由だが“ある瞬間”には閉ざされ密室を作り上げる。窓の外の雨、一触即発の緊張。 ド突き合い、ナイフ、右手に輝る切っ先、指紋でベッタベタになる遺品たち。 それに中々ハッキリ写されないアイドルの顔。 「シムソンズ」もまた主人公が憧れるアイドル的存在に影響を受ける作品だった。 あの映画は最初から顔や行動をハッキリと映していたが、この映画は“あの瞬間まで”徹底的に顔を映さない。 腹痛のせいで事情を中々掴めず除け者にされる塚地。この映画の“デブ”は最初憎悪の対象として描かれる。 あの頃の俺「貴方ちょっと黙ってて!」 初見時の俺は、その空気に犯されていたらしい。何故あれほど塚地に殺意がわいていたのか何となく理解できた。 だって農家なのに腐ったりんごパイ食って腹下すの?なんて思ったりしてさ。 本当にウザかったのは真下正義の方だったのにね。 あと警察仕事しろ。 今は後半で“化けの皮を引っぺがして”大活躍する塚地の演技力を賞賛したい気分だ。 「嘘だっー!!!!」と思わず叫び「何でもいいや」と諦めながら。 ほらおまえらヌード(幼女)だぞ喜べ。 回想を語るアニメーションは「シムソンズ」の頃から登場。 散乱する食い物、手紙、ストーカー、モヒカン、クッキー、エロムードになる照明、ダンボール、キャンドル、椅子を掴んでぐるぐる。 ここまでセリフばかりだなあと思っていると、あのクライマックスの素晴らしさで一気にもっていかれる。 黄色いクッションが“スイッチ”になり、満点の“星空”が語る真実!!彼等は嘘をついていなかった。 俺は何故このシーンを見逃していた!?おおおあの頃の俺のクソ馬鹿野郎があっ!! そんな俺のように初見時と再見時で印象がガラリと変わったという体験がある貴方。 ラストの如月ミキと一緒に踊って嫌な気分を発散してしまいましょう。[DVD(邦画)] 9点(2015-06-12 00:27:35)《改行有》

29.  キートンのカメラマン 《ネタバレ》 キートンの傑作は数多くあるが、俺が一番好きなキートンはこの「カメラマン」! 他のアクションが凄い傑作群に比べると地味な印象を受ける人もいるだろう。でも俺は群衆に始まり群衆に終わるこの映画が大好きなんだ。 まずキートンの出で立ちからして面白い。ベレー帽を被り、使い古された三脚付きカメラをまるで機銃でも抱えるように持ち運ぶ。三脚は容赦なく人に襲い掛かるし事務所のガラスも割ってしまう凶器と化す。 それを支える可愛らしい二人の“相棒”とのやり取りも楽しくてしょうがない。 一人は冒頭偶然出会ったニュース班務めの美しい女性で、情報面から彼の孤独な闘いを支える。 もう一人は街中で偶然出会ったちっこくて素早い気の利く可愛い奴だ。傍らでここぞと言うときに助けてくれる頼れる存在。 冒頭出てくる戦場で命をかけるカメラマン、だが人の住む都会でニュースを追うカメラマンたちも命懸け。 何も無い広場をあっと言う間に埋め尽くす人の群れ!津波のように押し寄せるスペクタクル、そんな場所で出会った女性を追ってキートンは街角カメラマンからニュースを追う記者へと変わっていく。 彼女もまた彼の優しさに同情して良い情報を流してくれるが、失敗が続いて中々上手くいかない。それでも諦めず次に進もうとする無邪気さ。彼女とのデートはとにかく愉快だ。 バスに乗ろうとするが押しのけられ必死でバスの外にしがみ付く、落ちても全力で追いかけ飛びつく。 プールの脱衣所でおっさんと揉みくちゃになるシーンは爆笑。 マーセリン・デイの水着姿は可愛くて色っポイ。こりゃ男どもも群れを成すわな。 終盤のマフィア同士の熾烈な抗争を掻い潜り暗黒街を駆け抜けるシーンも凄い。 心強い“相棒”と共にカメラを回し続け、落としたナイフをもう一度握らせ殺し合わせたり柱が倒れようがマフィアに機銃やナイフで狙われようがそれを全力で回避しつつ撮影を続けるカメラマン魂。 それでも報われない努力、でも報われなくたっていい、惚れた女のために暴走した船が水上を裂くように走る現場に飛び込む勇気。 「蒸気船」の時といい、何も言わずにすぐさま他人のために行動できるキートンはカッコ良い。 その真実をスクープした“相棒”の存在!キートンが他者に助けられるという人間臭い一面も見せる面白さ。総ての真実が明かされた後、まるで二人を祝福するかのように現れる人々の群れ。[DVD(字幕)] 10点(2015-06-10 18:49:11)《改行有》

30.  キッド(1921) 《ネタバレ》 「犬の生活」の進化版とも言うべき傑作。 病院から出てくる赤ん坊を抱いた母親。彼女は頼るはずの子供の父親に“忘れられて”しまい、子供を育てる余裕もないほど追い詰められていた。腹を痛めて産んだ子供を育てたい母性、それを守るために愛する我が子を手放し他人に託さなければならない自分の無責任さ、不甲斐なさ、無力さへの葛藤。 いや、一番の原因はテメえでタネを蒔いた事も焼き捨てちまうようなクソ野郎の方だ。 母親も後悔先に立たず、イスで彼女が祈る間にも運命は赤ん坊を車から引き摺り下ろしてしまうのだ。普通の映画ならあの強盗2人が情が移り赤ん坊を引き取るなんて展開も面白いだろう。だが、さらに一難を経る事で赤ん坊は運命的な出会いを果たす。 上空からゴミが捨てられる日常、まさか赤ん坊まで上から捨てられたのかと勘違いしても無理は無い。 チャップリンも面倒くさいからではなく情が反応する故に赤ん坊を他人に任せようとしてしまう。だが預けられる母親も赤ん坊一人に手一杯、押し付けんじゃねえやと傘でメッタ打ち。オマケに警官が睨み付ける。この作品の警官は結果的にチャップリンと赤ん坊の絆が深まるような事しかしない。それを知らない警官は幸か不幸か解らない。 チャップリンはいっそ下水にでも捨てちまおうか、なんて一瞬思うがやっぱり赤ちゃんは可愛いくてしょうがない。情が移り「ジョン」という名前を付けて大切に育てる覚悟を決める。 月日が経ち成長したジョンと共に行う窓をめぐる“仕事”の日々。悪いと解っていても食わせるためだ背に腹は変えられない、後は父ちゃんに任せろと言った具合にせっせと治しては一緒にジョンの面倒見てくれそうな嫁探し。でも警官の人妻には手を出すなよ。 生活は貧しくても、寒くたって良い。一緒に食事をして過ごせる小さな幸せさえあればいいのだから。 一方で成功を収めた母親の捜索や街の住民との親子喧嘩、迫り来る保健所の恐怖と二重三重に絡んでくるドラマ。 愛するわが子のために警察を振り払い屋根の上を駆け抜けるシーンは熱い!ジョンも悲しそうな顔で“父親”を叫び続ける。 宿での別れ、深い哀しみが見せる“天国”の夢、悪魔のささやきと夢の中まで追ってくる警官の悪夢。いや、彼は悪夢からチャップリンを救い出すキューピッドだったのかも知れない。昨日の敵が今日の友となる瞬間の感動。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-26 06:37:40)《改行有》

31.  霧の中の風景 《ネタバレ》 「旅芸人の記録」より好きな作品。一切退屈しなかった。 初期の短編「放送」を思わせる軽快な部分も多いし、同時に地平線の彼方に消えてしまいそうな儚さも肌身に感じさせる。ロングショットとクローズアップの構成もほど良い。 冒頭、幼い姉弟が濡れたアスファルトの夜道を駆けて来る。 どうやら二人は先を急ぐらしく、電車に向かって駆けていく。電車の前で人々が通り中々向こうに行けず、ようやく行けると思ったらドアは無情にも閉じられる。 姉のヴーラは、しょんぼりして駅を後にする電車を見つめている。 ヴーラ1人ならともかく、弟のアレクサンドロスの事を思うと無理に人の群れを掻き分けるのは危険に思えたのだろう。実に弟想いな姉ちゃんだ。 二人は、顔も知らない父を探しにあてのない旅に出ようとしている。 2度目は電車に乗る事に成功するが、切符を買う金も満足にない二人は無賃乗車で列車から降ろされてしまう。 バスの兄ちゃんが凄く良い兄貴でさ。ヴーラは、その優しさと疲れた弟を思ってバスに乗り込む。 浜辺での360度パンが美しい。旅芸人の人々と交流し、バイク青年とヴーラたちは一旦別れる。 その次に出会うトラックの運転手の野郎がロリコンクソ野郎で。 布一枚でしきられた荷台、ヴーラの髪は乱れ、手に付いた血が情事を物語る。ヴーラは、女の子から“女”になってしまう。それでも、彼女は静かに涙を流し黙って耐えるのみ。髪は下ろしたままだが、以前のように髪を結ぶのは止め、帽子を被って“隠す”事を選ぶ。どれほどの苦痛が彼女にあった事だろう。 誰にも頼らず、誰にも訴えず。いや、少なくともアレクを守ろうとしているのと同時に、アレク、そしてバイク青年を心の支えにして彼女は耐えたのだろう。 劇的な再会、そしてヴーラが心を開き、青年の胸の中で声を出して泣きじゃくる場面、バイク青年からの想いを断りハイウェイで別れるシーンは何度見ても切ない。 ヴーラも覚悟を決め、弟のために切符代を盗んでまで再び電車へと乗り込む。 夜の川辺で、サーチライトが照らす中を潜り抜ける二人。一瞬響く銃声が、緊張を奔らせる。 霧がたち込める朝方。霧の晴れた先に待つものは・・・本当に素晴らしい映画だった。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:31:55)(良:1票) 《改行有》

32.  君と別れて 《ネタバレ》 クローズ・アップがくどいのと後年の作品に比べるとやや荒削りだが、俺はその荒さも含めて好きな作品だ。 水窪澄子の可愛らしさと美しさを見ているだけでも飽きない。 眼鏡を取ったら結構美人の姉さんも。 走る学生たちが画面を横切るファースト・シーン、女性達のセリフから彼らが不良だと読み取れる。 しばらくほとんどセリフが無い。 空の財布を見て金をこっそりやる母の優しさ。 息子の義雄は母の仕事を馬鹿にされ虐められたからなのか心が荒れ不良に身を堕としている。 「お母さんの子だもの お酒くらい飲めるよ」のセリフはグサりとくる。 それでも母の道具にナイフを投げる事を躊躇う葛藤も見せる。穴の空いた靴下を墨で塗るシーンは笑ったが切実である。 言いたい事は解るが、やや説明不足なのが残念。 母親が死に急ぐ描写も説明が足りない。息子と馴染みの客、両方の心が離れようとする事への焦りからだろうか。 ま、そんな男も出会ってそうそう「温泉行こうぜ」とやらしい手つきで誰彼かまわず女に手を出そうとするエロジジイですけどね。 一瞬でも出てくる橋。橋は成瀬映画を象徴するシンボルでもある。 照菊が義雄に「自分が何のために生きているか」を“告白”しに行くシーン。二人を乗せ鉄橋を駆ける電車は、水窪澄子が語ろうとする真実に“接近”していく。そして母親が働く料亭の橋は、息子と母親、そして水窪澄子を繋ぐ架け橋でもあるし、やがてくる“別れ”すら暗示している。 そんな義雄の心を改めさせようと語りかける水窪澄子の面影は、後の高峰秀子を思わせる。 高峰秀子は、彼女の後継者でもあるのだろうか。 水窪澄子演じる照菊が幼い弟や妹のために働く。 電車の中で水窪澄子が出ていた明治のチョコレートが気になる。 畳み掛けるカットの繋ぎで海を背景に字幕をのせるシーンにはドキッとする。 「義雄さん一紹(一緒)に行ってくれる?」 一瞬見せる本気の表情、美しい手。 義雄は母や照菊のために不良仲間から抜ける事を決める。死んでもやり返さない覚悟で。だが母の悪口だけは許せなかった。 庇う照菊、一瞬見る走馬灯・・・それでも生きる勇気を選ぶ照菊。 ただ、「アイツさえいなければ」なんて「本当は死にたいけどみんながいるから仕方なく生きてやるのよ」的なセリフはちょっと怖い。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:31:46)(良:2票) 《改行有》

33.  キートンのセブン・チャンス 《ネタバレ》 恋愛とシュールなギャグ、そしてラストにかけての凄まじい逃走劇! 「バスター」の名に恥じない疾走感と破壊力、そして本物の愛について考えさせられるキートン映画の傑作の一つ。 金融ブローカーの仕事に失敗して破産寸前のキートン。 そこに舞い込んだ父の遺言。喉から手が出るほどの莫大な遺産、期限までに結婚しなければその宝の山も手に入らない。 財産欲しさに女性という女性をナンパしては惨敗を期していくキートン。 人を金で買えても心までは買えない。 愛ではなく金のために動くキートンに心から振り向く女性なぞいないのだ。 ただ一人キートンの中身に惹かれ愛していた女性の心も理解できずに。 笑わない、泣かないの感情の起伏に乏しいキートンだが、彼は体の動きで豊かな感情を伝えてくれる不器用なパフォーマーでもある。 顔も背もコンプレックスの塊だが、それを個性として武器にして戦うその精神力。 チャップリンがユーモアと愛情、ロイドが勇気、キートンはアクション! 俊敏な運動神経だからこそ成せるアクションの連続で魅せる俳優なのだ。 人間の本能に動きで語りかける、キートン映画の醍醐味ここにあり。 とうとう最終手段として新聞広告で結婚相手を募集する事にしたキートン。 その邪さがキートンに悲劇となって降り掛かる。 数百人にも集まった大量の女性、女性、女性!老若美人、貴婦人、醜女とよりどりみどりの大津波。キートンも流石に怖くなって脱走。それを追う烏合のレディース。 群衆の力強さと恐ろしさをまざまざと見せつけるスピードと破壊力! キートンも全力疾走! クレーン車に中ずり、荒い地形を高速で駆け下り岩まで追ってくるなど、キートンのポテンシャルの高さが成せる命懸けの走りだ。 その過酷さを肉体だけで表現するその役者魂、震えるね。 大量の岩に追われて逃げてるんだけど、最終的にはそれを逃げるんじゃなくて避けるという発想!逃げてばかりじゃ勝てない、正面から見切ってやるぞという心の強さが良い。もう金のためじゃないよ。自分を愛してくれる人の気持ちをやっと理解して、やっと自分の愛を告白するんだと必死。時間までにたどり着かなきゃ、彼女を失うも同然。服もボロボロで息を切らして愛する女性の元へとたどり着く。金なんてどうでもいい、ただ愛が欲しい。そして迎える大団円。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:25:01)(良:1票) 《改行有》

34.  キートンの蒸気船 《ネタバレ》 これはね、もうアレですよ。終盤の台風が直撃するクライマックスはキートン映画最強の部類。 キートンがあんなにカッコ良く見えたのは久々だぜ。 「蒸気船関係無いやん!」と思っていたらビックリ。なるほど取って置きの切り札として船を利用するアイデアが秀逸。 そんでもって最後の最後まで海に飛び込むキートンはカッコ良かったぜ。最高。 これに匹敵する蒸気船映画はジョン・フォードの「周遊する蒸気船」だけやね。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:33:32)(良:1票) 《改行有》

35.  ギルバート・グレイプ 《ネタバレ》 ラッセ・ハルストレムの最高傑作は「HACHI 約束の犬」なのかも知れないが、やっぱりハルストレムはのどかな田舎で起こる騒動を描いた映画が一番落ち着く。「やかまし村のこどもたち」とか「ショコラ」「サイダーハウス・ルール」「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」とか。 冒頭に登場する長い道は、家族という“鎖”から解き放たれ、旅人が大地を歩みはじめる事を待っている。 知的障害の弟アーニー、夫の死のショックで肥満になってしまった母親、それの面倒を見なければならないギルバートたち兄妹。そのストレスを晴らそうと、不倫を受け入れるギルバート。 自分の母親を「鯨」呼ばわりする彼だが、本当は家族を守りたいと一生懸命。必死に自分を押し殺して生きようとしている。 そんな彼を解き放とうとする様々な出会いや事件。 アーニーの行動がギルバートの鬱憤を爆発させ、不動の母を大地に立たせ歩ませる。 妹の“中指”に車の“バック”で返事?するシーンは爆笑。危ねえなあもう。 首の無い状態で腰を振り続けるカマキリを想像してしまって泣いた。色んな意味でオスを「ごちそうさま」ですかそうですか。 男を喰らう母親もいれば、我が子のために死を選ぶ母親もいる。 グレイプを刺激するベッキー。 帽子を被った可憐な少女かと思えば、帽子を取ればボーイッシュで活発な女性に。 多くを語らないベッキーママも粋な事。 不倫に奔る母、 愛する子のために恥を捨てて行動する母、 娘を静かに見守る母・・・様々な母親がギルバートたちを囲む。 終始何処かコミカルだが、終盤はシリアス。 喧嘩と仲直り、別れの前の交わり、そして“火葬”・・・しがらみから解放されたギルバートたちは、愛する者と共に果てしなき大地へと旅立っていく。 メッチャ良い映画やんけ。 ダーレン・ケイツが幼い頃に体験した両親の離婚。家族が死ぬのと同じくらい彼女にはショックだったのだろう。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:29:07)(良:1票) 《改行有》

36.  キッスで殺せ! 《ネタバレ》 「Remember Me(私を忘れないで)」だって?忘れたくても忘れらんねえよって傑作。 ロバート・アルドリッチはフィルム・ノワールでも多くの傑作があるが、コレは「何がジェーンに起ったか?」と並んで最高傑作の一つ。 ファースト・シーン、初っ端から路上を走る女。 ワケ有り女を拾って車が走り出すと同時にクレジットがズラズラ画面を上っていく。強烈なオープニングだ。 女の荒い吐息は、まるで性向でよがるような荒さすらある。 ミッキー・スピレインの原作「燃える接吻を」のセックスと暴力を盛り込んだハードボイルドの世界観を、アルドリッチ流の“えげつなさ”で描かれる。 SF的な要素を持ったフィル・ノワールは「アルファビル」や「ブレードランナー」等も該当するだろうか。 とにかくこの映画はよく壊す、よく歌う(クラシック)、よく叫ぶ、よく殴る(後ビンタ)、よく死ぬ。取り合えず酔ったまま運転すんなよ。 ヒッチコックの「汚名」も酔いどれイングリッド・バーグマンがぶっ飛ばしてたな。 「三つ数えろ」張りに女性がウジャウジャ出てくる。ドイツもコイツも謎を秘めて。 女性じゃないけど“va-va-voom(ババブーン)”ことニックのオッチャンも癒し。 そんな女たちを主人公のマイク・ハマーは、常に冷めた眼で見届けていく。 ハマーは「Remember Me」というメッセージだけを頼りに黙々と仕事に取り掛かる。だが、たらしだ。 探偵の武器は銃弾の代わりに鉄拳が飛ぶ。 ポップコーンと鉄拳を3発打ち込む、階段での“追い討ち”は本当えげつない。 地道な調査の影でうごめく暗殺者たち。 次々に“人生から”ノックアウトされていく敵や知人、そしてハマーが追う“ヤバ過ぎる”探し物。 ボクシング場に立ち寄るシーンすら、この映画の鉄拳の飛びようを象徴する。 浜辺でのシーンは「アハハ待てよコイツ~(バキドカ)」という風にしか見えねえ。あーあ手錠にしないから・・・片手で何したんだよハマー。 ベッドでのやり取りは最高だったぜ。だから悲鳴(爆) ところであの“黙秘”のシーンも笑っちまったよ。 終盤の演出は完全にホラー映画というか、SFというかとにかく怖い。そんな場面すら冷めた眼差しで見届けられるハマーは何なんだよ。 ともあれ、衝撃的なクライマックスが拝める映画だった。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:11:22)《改行有》

37.  北国の帝王 《ネタバレ》 「アクションは必ずしも殴る蹴るや銃を撃つ必要は無い」という事を証明するシンプル・イズ・ベストな傑作。 無賃乗車を繰り返すホーボーと、それを阻止し列車を守ろうとする鉄道員の戦いを描いたアクション映画。 冒頭からニワトリの奪い合いで始まり、経験豊富という感じの男がいそいそと列車に乗り込み、ソレを見たマーヴィンのニワトリを奪おうとしていた青年が彼を追って列車に乗り込む。 その青年の気配に気付いたか、車掌のような男は彼らが乗り込んだ車両に鍵をかけ閉じ込めてしまう。 列車が動き出し、中の2人は会話をはじめる。車掌の仲間達が待ち受ける駅に近づけば近づくほど青年は焦り、もう一人は狂ったフリをして意外な行動にでる。 冒頭から対象は呼吸をするように動き続け、緊張感を持続させる事で駅に着くまでのスリルを極限まで高めている。 その後のマーヴィンとボーグナインのどちらが勝つかと賭けるところの斬新なカット、それを巡る男達の狂気の場面。イスごと叩き付ける場面が示すように、ボーグナインは客の安全を守るというよりはその思いが暴走し本来列車を補助する道具を凶器に変えて襲い掛かる。 まあ、ホーボーたちの無賃乗車がいきすぎれば鉄道会社が倒産しかねないからね。手をこまねいてもダメだし、彼のようにやりすぎてもマーヴィンのような“大者”を惹き込んでしまうのだが。 一方で、ホーボー仲間として協力する筈のマーヴィンとキャラダインも知らず知らずの内に互いの脚を引っ張り、やがて決別の時が訪れる。キャラダインに「薄情野郎」と言われてあたりを見回し「俺?」と返すシーンは爆笑。 仲間というより「あくまで利害の一致で協力していたに過ぎない」というドライな人物像は初期から貫かれてきた。本当に友情を結んだ例もあるけど、基本的には利害の不一致が起きれば争いになるのがお約束みたいなもん。 この映画は水も象徴的に出てくんだよねー。 マーヴィンが水で体を清めたり、霧や雨の中を走る列車の雰囲気、給水タンクに刻まれた文字、ホーボーを焼く蒸気。 視界が悪い中ホーボーたちの罵りと対向車とのギリギリのすれ違い、何度も列車に挑むマーヴィン。 急ブレーキの怖さを実感する場面は戦慄を覚えた。ラストの一騎打ちも熱い傑作![DVD(字幕)] 9点(2015-01-11 19:33:29)(良:1票) 《改行有》

38.  キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 《ネタバレ》 壮大な鬼ごっこ映画「Catch me if you can(できるもんなら捕まえてみろ)」。 「007」が英国諜報員と犯罪組織の鬼ごっこ映画だった事を思うと、「インディ・ジョーンズ」シリーズも鬼が捕まえては逃げたりの繰り返しがあった。 今回は「インディ」みたいな「お約束」なんてない、実在したフランク・W・アバグネイル・Jrの事件を映像化したのだから。 「007」がシリアスとギャグの融合体だったように、この映画もレオナルド・ディカプリオがノリノリなコメディ映画だ。 オープニングのアニメーションから既に追いかけっこが始まり、クイズ番組のゲスト紹介みたいな映像が流れる。 航空副操縦士の“アバグネイル、”小児科医の“アバグネイル”、弁護士の“アバグネイル”・・・。様々な職に成りすまし、警察まで騙くらかして莫大な金を稼いでいく。父親譲りのアドリブやハッタリ・ジョークを駆使してどんな困難も掻い潜る。クリームがバターになるまで粘りに粘る。 総ては何もかも失った父のため、そして母のために・・・。最初は家族が元に戻りささやかな幸せを手に入れられればそれで良かったのだろう。 だが、知ってしまった金の味、女の味、愛情・・・家出少年の旅と犯行はどんどんエスカレートしていく。 「007」並のたらし&絶倫(ry サングラス付き眼鏡ってなんか良いよね。 親想いの手紙が仇になる瞬間、芽生えた愛情で女を置いていきたくないという葛藤・・・気が付けば、総てを失った自分がいた。 だが、ここで終わらないのがアバグネイルだ。 親を一目見ようとトイレから脱走してしまう凄さ。 騙す側から暴く側に変わっていく姿。 そこには良き友人を手に入れ精気が蘇った男はいても、総てを失い絶望に暮れる男の姿はもうなかった。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:31:30)(良:1票) 《改行有》

39.  機動戦士ガンダムII 哀・戦士編 《ネタバレ》 前回に比べると音楽の使い回しが気になったし、戦闘時の演出もTV版と比べると音楽がイマイチ。ストーリーも詰め込みすぎだけど、ミハルのエピソードを無理矢理でもねじこんでくれた富野ありがとう。カイとミハルの会話は映画の方が何か好きなんだよね。 「哀・戦士」の曲をジャブローの戦闘で流すのも好きだ。燃えるね。ハモンさんの最期を安彦絵で見れただけでも良しとしよう。[DVD(邦画)] 8点(2014-12-28 19:38:55)《改行有》

40.  機動戦士ガンダム 《ネタバレ》 総集編としての色合いも強い劇場版。安彦が書き直したシーンは良いけど、TVとの差が激しすぎる。特に最初の1,2話は安彦が描いているにしてはちょっと荒っぽくも感じていた。やっぱり動きを優先していたからだろうか。 それでも新規のBGMはTVの特色も活かした素晴らしさがあって、ガンダムが機動してザクを撃破するシーンは劇場版の方が好きなんだよなあ。スピード感があるし、一部とはいえ描きなおされたガンダムがサーベルをじりじりコクピット部分に刺していくシーンが良い。性能のおかげとはいえとはいえ初陣で2機も撃破してあの容赦の無さ。こりゃ監禁もされるわ(笑) ストーリーは重要な繋ぎやホワイトベースのクルーが段々打ち解けていく部分もちょっと雑でギスギス具合が強調されている感じ。ワッケインとの話は新規でたっぷり見たかったなあ。でもワッケインの「寒い時代だと思わんか?」ってセリフは好きだ。 それに極め付きはギレンの演説!TVの方が力が入っていたと思うが、演説とラストシーンまでの流れはコッチの方が高揚感があって好きだね。[DVD(邦画)] 8点(2014-12-28 19:33:49)《改行有》

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