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プロフィール |
コメント数 |
304 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
つたない文章力で自分なりのレビューを心がけます。映画館で観た作品は自然と評価が高くなりがちです。 |
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1. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 あの時あの人と結婚していれば、繋いだ手が反対だったら、8月6日もう少し早く広島に帰っていれば...。
問題の大きさや深さは比べ物にはならない。
でもそれは現代の日本に生きる自分と何も変わらない、尽きる事のない後悔と良かったの連続。そしてそのどちらとも割り切れない感情。
あの時違う学校に入っていれば、告白していれば、あの会社に就職していれば。
それが「自分で選んだ道の結果=径子」であるか、「流されて辿りついた場所=すず」であるかは分からない。
結果がどうであるにしろ、2017年私は今いる場所で今ある現実を生きていく。
人生に対する普遍的なメッセージもさることながら、それを語る語り口も鋭くスマート。
同一アングルのショットを経時的に映すことで、街並みの変化を捉え、食事の内容や食卓を囲む人々の変化を通して、戦況、社会情勢を語る。
そしてその食事を摂るという行為が、そのままどんな状況であっても「生きる」という強烈なメッセージをも提示している。それは、他の日常生活動作を通じても伝えられる。荷物を持ち上げ運ぶ、歩く、走る、話す、洗濯をする。そして自然である草、木、空、水、虫、鳥。
それら全てが細やかに身体性を伴い実在感を持って描かれる為、生の尊さがより際立つ。
そして主人公すずの魅力。すずにとっての絵を書くという辛い現実を和らげる行為、生きていく術。それは周り(周作や晴美や水原)をも動かし癒していく。それを為す右手は失くしても、頭の中で自由に絵を描いていくその姿はあまりにも強くたくましく、優しかった。[映画館(邦画)] 10点(2017-01-15 22:45:13)(良:2票) 《改行有》
2. 恋人たち(2015)
《ネタバレ》 問題が解決したわけではない。状況が好転したわけでもない。
世間には相変わらず偏見も差別もあり、不条理な出来事が溢れている。
でもふと顔を上げた時に空が青く綺麗だったり、今まで理解し合えなかった厳しかった人の人間らしさ、優しさを垣間見たり。
誰かの何げない一言が何故か心に響いたり。
食べ物が美味しかったり、心に残る良い映画を観たり。
多くの悪い出来事の中に少しだけある悪くない出来事に心を動かされながら、今日も何とか生きていく。[DVD(邦画)] 8点(2017-01-04 19:46:00)(良:2票) 《改行有》
3. ゴーン・ガール
《ネタバレ》 普遍的なものである男女関係、もっといえば他者との関係に深く切り込んだ作品。社会、他者からみられている自分(テレビを通してのエイミー像)とあるがままを出した自分(ニックの前での姿)。たいていの人間は虚像に苦しみ苦悩するものであるが、エイミーはそれすら逆手に取りニックに対するそれと同じように世論を支配し手玉にとってしまう。そのすがすがしいまでの本能をむき出しにした姿、人間の業すら支配下においていしまう様には神々しさすら感じてしまう。それと同時に女性に対する畏怖を抱かずにはいられない。
人間の恐ろしさ、異常さと同時に崇高さをも感じさせる傑作だった。[DVD(字幕)] 9点(2015-07-13 18:06:32)(良:2票) 《改行有》
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