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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  プレッジ 《ネタバレ》 この映画をはじめて見たのは学生の時でしたが、当時は「淡々とした展開でオチも決まらない中途半端なサスペンス」という印象で、鑑賞したこともすぐに忘れてしまいました。しかし社会に出て人生経験もそれなりに積んでから再度観賞すると、人生というものを鋭く描いた生涯忘れられない作品となります。努力は美しいことである、正しい行為は正しい結末へつながっているというハリウッド的な思考回路を完全否定、いかに正しい目的のためであっても、いくら愚直に頑張っても報われないことはある、それが裏目に出ることだってあるという情け容赦のない、しかしリアリティのある物語です。 もし主人公ジェリーが浮かれ気分のままパーティーに留まりあの現場に行っていなければ、もし被害者家族に対して口先だけで対応し約束(プレッジ)などその場限りで忘れるような人物であれば、定年後の余生は順調に送れていたことでしょう。しかしジェリーはあの現場に立ち会い、被害者家族と話すという誰もが躊躇した役を引き受け、そして家族との約束を忘れない正しい警察官でした。そんな、正しくあることが最悪の結末をもたらすというこの皮肉。 また、ジェリーが個人としての幸せに身を寄せようとする時、事件の名残が彼の前に現れ、約束を思い出させます。念願だったメキシコ湾へのフィッシングへ旅立とうとする時、好みの雑貨屋を手に入れ穏やかな余生を目の前にした時、ロリ・クリーシー親子と疑似的な家族関係を築き幸福な家庭を手にしようとした時、ジェリーは事件の残像と遭遇して、幸福を掴む寸前で事件へと戻っていきます。通常の映画であればこうした残像は目的を忘れた主人公に正しい行動を取らせるための「サイン」なのですが、本作では主人公の人生を狂わせることとなります。 結末は衝撃的ですが、ただ観客にショックを与えて終わりではなく、人生の真理のようなものを突き付けているところに、他の映画にはない深さがあります。また、先述した「サイン」の扱いなど普通の映画であれば主人公が報われるような流れを示しておきながら、観客の先読みを利用してこれを裏切る脚本の巧さにも感心しました。 [DVD(字幕)] 8点(2009-12-16 12:58:31)《改行有》

22.  フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い 《ネタバレ》 優しいママに育てられ更生した元悪ガキ4人兄弟がママの死をきっかけに乱暴者に戻って復讐するという、男の男による男のための正しい映画です。葬式で兄弟が久しぶりに集まるシーンからして実に男描写がうまく、今はおとなしくしてるが目の奥にはワルさが活き活きと残ってるあの様子は実に絶妙。兄弟の絆やママへの愛情も冒頭の15分ほどでほぼ描き切れており、この辺は本当にうまいなと感心しました。ママは話の要でありながら登場シーンはほんのわずかしかありませんが、それでも兄弟が復讐に燃える動機となるには十分なほど彼女の人柄は伝わっているのです。この辺の出来がいいのでママのエピソードはもっと見たい気もしましたが、映画全体が湿っぽくなりすぎてテンポを妨げないようドラマを最小限にとどめている製作側の判断は正しかったと思います。荒っぽい下町の描写も類型的ながらもよくできており、出てくるやつがたいてい幼馴染みでいい歳したおじさんが「あいつはケンカ強くてよぉ」なんて言ってる様子は見ていて楽しかったです。世界中どんな国でも下町ってのはあんなもんなんですね。ちゃらちゃらしてる町の不良や若いチンピラを「本当のワルを教えてやる」とでも言わんばかりに4兄弟が痛めつける様子も実に痛快。男の見たいものが凝縮された素敵な映画です。がしかし、欲を言えば話のクライマックスをもっとエモーショナルにして欲しかったです。ママに加えて末の弟まで殺されて復讐に燃える3人が、多勢に無勢を承知の上で敵のアジトにかち込んでいくなんて展開にしてくれれば最強の漢映画となったかもしれないのに、そこそこトンチの利いたあの展開は話の流れにあまりそぐわないような気がしました。あんちゃんとボスの素手ゴロという決着の付け方は良かったのですが、ボスがあんちゃんと互角にやりあうってのも流れに沿ってないと思います。実力もないのに下の者に威張りまくるというキャラ設定だっただけに、今はカタギやってるが本当は死ぬほど強いあんちゃんにボコボコにされまくり、徹底的に情けない姿をさらす最期の方があのタイプには合ってたと思うし、今はツメを隠してる元不良が久しぶりに本物の実力を見せるカタルシスを味わうにもその方がよかったと思います。が、そんな不満も帳消しになるほど面白く、下町や不良の空気が気持ちよく、下町映画(そんなジャンルあるのか?)としては最高クラスの出来だったと思います。[DVD(吹替)] 8点(2006-11-03 20:54:21)(良:1票)

23.  ブラック・ダリア この話にデ・パルマというのは最高の組み合わせではないでしょうか。性と殺人が密接に絡み合うというテーマはこれまでのデ・パルマが執拗に描いてきたものだし、残酷でドロドロしてるんだけどなぜか上品という風格もデ・パルマでこそ出せる独特の味わい。この話をもっともうまく見せられる監督はデ・パルマであり、またデ・パルマの才能をもっとも発揮できるのはこの話であり、両者にとって理想的な出会いであったと思います。正直、この映画の脚本自体はそれほどクォリティが高くありません。まず話が入り組みすぎてわかりにくすぎ。かなり映画を見慣れており、映画文法やデ・パルマの手法を正確に把握できる者ですら、最初から最後まで集中していなければ理解できないほどわかりづらいというのは映画の脚本としては致命的。一般の観客では到底理解不能な話になっているのはさすがに問題だと思います。また、それほどわかりづらい話でありながら、謎解きの興奮が薄いのも映画の脚本としては失格。見ている人間の頭をさんざん悩ませながら、結局謎のほとんどはセリフで語られてしまいます。もっと動きのある謎解きにしてくれないと、映画でやっている意味が半減します。そんな完璧とは言えない脚本なのですが、かなり良いメンバーが集まったおかげで謎解き以外にも見るべき要素が加わった結果、映画としては救われたと思います。時に過剰に感じられるデ・パルマのテクニックがこの映画の雰囲気には良く馴染んでいて、饒舌なテクニックにより業の深い話を効果的に見せると同時に、テクニックにはある意味機械的な感触があるおかげで、必要以上に陰惨さを感じさせず話の風格を妨げさせないという、相反するふたつの効果を挙げているのは驚きです。また、ジョシュ・ハートネットとスカーレット・ヨハンソンのふたりが期待以上に良く、このふたりが出ているだけで画面が引き締まっていました。ヒラリー・スワンクに絶世の美人の資産家令嬢をやらせたのはミスキャストでしたが、確かに彼女の演技力にも見るものはあり、そこに期待してのキャスティングだったのだろうなと思います。そんなわけで決して完成された映画ではなく、見る者がどの要素に重きを置くかで評価の大きく変わる映画ではありますが、私としては大いに評価したいと思います。[映画館(字幕)] 8点(2006-10-28 15:22:31)(良:3票)

24.  フレンチ・コネクション 面白い!。定石通りの正当な刑事ものとしては、これを越えるのはちょっとムリではないかと思います。フリードキンというのはさすがドキュメンタリー出身というか、細部までリアルに見せることでこの映画は成功しています。全編ロケによりNYの殺伐とした雰囲気が味わえるし、各シーンをとにかくじっくり見せてきます。重要な情報を握っても張りこみには一晩をかけ、証拠を積んだ車を確保してもなかなかブツは見つからず、結局車の解体をじっくり見せられるわけです。タレコミ屋から情報を聞き出すシーンひとつにしたって、どんな状況でどうカムフラージュしながら接触するかまで丁寧描写。普通の映画なら「情報が入った」「証拠がみつかった」の一言で片付けられるシーンでも、実に事細かに描くことで捜査が活き活きとしてくるんです。そうした一連の描写が説得力を持たせてくれるおかげで、伝説のカーチェイスがさらに際立って見えてきます。まぁ私の個人的な意見としては、ハイライトのカーチェイスよりもシャルニエを尾行するシーンの静かな緊迫感が好きですけど。そして「これで終わり?」みたいな唐突のラストはいかにも70年代。「立つ鳥後を濁さず」みたいな潔さを感じました。それにしてもこの映画、かのスピルバーグが大ファンで、初のハードボイルドである「マイノリティ・リポート」ではかなり参考にしたとか。8点(2004-09-26 23:39:33)(良:2票)

25.  フェノミナン バリバリ男子校感覚の私、感動とか涙を嫌う私を素直に感動させた、直球勝負のいい映画です。「泣け、泣け」みたいな押しつけがましい感動が横行する中、こういうしっとりとした映画はいいですね。8点(2004-08-05 22:14:00)

26.  復讐するは我にあり 《ネタバレ》 長尺を一気に見せる抜群の構成力と演出力はすさまじく、また名優たちによる質の高い演技の応酬戦には圧倒されました。 狂気を隠そうともせず欲しいものにはすぐに手を出す巌と、信仰や家庭といった守るべきものを防波堤として欲求を抑え込もうとしている鎮雄・加津子は対の存在として描かれています。また、男に振り回される幸薄い女という共通点を持ちつつも、巌が死刑になり、かよが病死してくれれば鎮雄は自分のものになるという打算を持って生きている加津子に対して、どこまでも運命に流されるだけの非力なハルも対の存在として描かれています。まさに四者四様であり、見る人の個性によって誰に感情移入するのかは違ってくるように思うのですが、私はハルの物語にもっとも心動かされました。 ハルは日陰者の人生を送っていますが、それは母親が殺人者になってしまったためであり、根本原因に彼女自身の落ち度はありませんでした。彼女の落ち度と言えば、不遇を振り払うだけのパワーもガッツもなかったことと、おそらくは他人からの冷たい仕打ちに遭い続けてきた人生なのに、それでも誰かを頼りにしようとしたことでしょうか。 本編登場時、ハルは住み込みで働いているボロ旅館のオーナーの言いなりになることで、そのうち旅館を譲ってもらえるのではないかということを期待していましたが、どう見てもオーナーにその気はなく、決して与える気のないニンジンを鼻先にぶら下げられているという状態でした。当のハルもオーナーの腹の内には薄々気付いてはいるものの、目の前の淡い期待にしがみつき厳しい現実を見ないふりしておく方が、現状打破のためのリスクと労力を負担するよりも楽であるという無意識の判断をしていたように見えました。巌が現れた後も同様です。巌が見せる夢に盲目的にしがみつき、後に巌が詐欺師であることが分かっても同じ夢を見続けようとし、そのことがハルと母親の死に繋がりました。 ハルは徹底的に非力で愚かな存在として描かれるのですが、こうした弱さは誰にでもあるものです。現実を直視し必要な対策を講じるということは精神と肉体を大変疲弊させます。だから多くの人は、現在の平穏が今後も続くものと漠然とした期待を抱き、目の前の問題を見ないふりしようとします。この要素には私自身にも多分にあるため、ハルの弱さには大変共感できました。 他方で、主人公・巌の物語には感覚的に理解しづらい部分がありました。巌とハルの母親の会話や、逮捕後の巌と鎮雄の会話にて明言されているのですが、巌は父・鎮雄を殺したいほど憎んでおり、その屈折した感情が一連の反社会的行為に結びついていたとの解釈になっています。両者の対立はそれほど重要な要素であるにも関わらず、その憎しみの根源というものがよく見えてこないのです。何か個別の事例がきっかけということではなく、根本的な人間性が合わない、生き様を1mmも肯定できないという対立なのだろうことは何となくわかるものの、鎮雄の何がそんなに気に入らなかったのかがよく分からないために、肝心の巌の物語の通りは悪くなっています。[インターネット(邦画)] 7点(2018-07-04 18:46:37)《改行有》

27.  ブーリン家の姉妹 《ネタバレ》 「ヘンリー8世って離婚をバチカンに咎められ、逆ギレして英国教会を作った人ね」「ブーリン姉妹・・・誰?」という高校世界史レベルの知識で予習もなしに本作を鑑賞したのですが、それが正解でした。次に何が起こるのかサッパリわからないので終始ハラハラドキドキさせられ、ブーリン家の命運尽きたかと思われた後の、アンの娘は後のエリザベス女王でしたというオチにもびっくり仰天で、続いて『エリザベス』も見たくなりました。往々にして、歴史映画は史実を知らなければ楽しめない場合が多いのですが、本作は珍しくその逆のパターンをいっています。 上昇志向の強い長子が失敗し、無欲の次子がたまたま成功を掴むという兄弟・姉妹あるあるは興味深く感じました。人生とはそういうものです。また、失敗の経験から成功に対してより貪欲になり、目標達成のためには手段を選ばなくなったアン・ブーリンの性悪加減などはかなり怖く、彼女が本作のドラマ性やサスペンス性を高めていると同時に、カトリックからの離脱という英国史上屈指の大イベントの仕掛け人になったことへの説得力も与えており、歴史的事実と目の前のドラマをうまく融合させているものだと感心させられました。 演技派として認められようと必死だった頃のナタリー・ポートマンを姉役に、天性のカリスマ性で黙っていても巨匠との仕事が次々と舞い込んでいたスカーレット・ヨハンソンを妹役にあてたキャスティングも絶妙であり、この2人が作品を大いに盛り上げています。[インターネット(字幕)] 7点(2016-12-05 15:28:22)(良:1票) 《改行有》

28.  ファンタスティック・フォー(2015) 世評とは裏腹になかなか楽しめてしまい、自分の感性はどこかおかしいのではないかと気になってしまいました。 アメコミ映画ブームで様々な特性を持つヒーローが実写化されている昨今ですが、ゴム人間、透明人間、人間たいまつ、岩石男という冗談にしかならないメンツがチームを組む『ファンタスティック・フォー』実写化企画の難しさは際立っています。この点、2005年版は思いっきりマンガ寄りのおちゃらけ路線に振り切ることで娯楽作品としての体裁を作り上げてまずまずの興行成績を残したものの、まったく深みのない物語で批評家やファンからの敬意を勝ち取る事は出来ず、たった一本の続編が製作されただけで自然消滅となりました。対して仕切り直しの本作は徹底して暗く、荒唐無稽なキャラクター達を可能な限り本物っぽく見せるというリアル路線に振り切っています。アメコミヒーローのクロスオーバー企画が続々と製作されている中で、フォックスとしてはすでにブランドを確立している『X-MEN』とファンタスティック・フォーのクロスオーバーをどうしても作りたいという思惑があり、シリアスな『X-MEN』の作風との統一感を出すために本作もこの路線をとったのだろうと推測されます。 前作『クロニクル』にて「もし高校生が超能力を身につけたら、きっとこんな風になるだろう」というドラマを作り上げたジョシュ・トランク監督の真価は、本作の前半部分で見られます。テクノロジーへの憧れを持つリード・リチャーズの幼少期からの物語を見せることで、物質転送装置という非現実的なアイテムを違和感なく登場させているのです。後にファンタスティック・フォーとなる面々が被験者第一号となるまでのくだりもうまく説明されているし、超能力を身に付けた後の各キャラクターのリアクションや、現実世界との接点の持たせ方もよく考えられています。ヴィジュアル面においては、超能力を身に付けた者達が変異する過程がなかなかおぞましく、またドゥームが暴れる場面では過剰なほどの血が飛び散り、残酷描写からも逃げていません。あのメチャクチャな設定のヒーロー達で深刻なドラマを作れという要求にはきちんと答えられているのです。監督は作品をフォックスに取り上げられ、元は140分あったとされる本編をズタズタにカットされたり(予告編にあった場面のほとんどが本編に無い)、監督以外の者(噂によるとプロデューサーのマシュー・ヴォーン)が撮った追加カットを勝手に挿入されたりといった大変な目に遭わされたのですが、それでも作家性の片鱗を残せているのはさすがだと思います。 ただし、短い上映時間のほとんどは超能力を身につけるまでのドラマに費やされており、ドゥームとの決戦がやっつけで終わってしまうという点は残念でした。また、4人がそれぞれの能力を生かして強敵に挑むというチーム戦としての面白さも追求されておらず、見せ場については2005年版よりも劣っています。最終決戦の場所が無人の惑星というチョイスも悪く、ヒーローの活躍に必要不可欠なオーディエンス不在の舞台でラスボス戦をやっても盛り上がりません。そもそもファンタスティック・フォーはアメコミヒーローとしては珍しく素顔も本名も明らかにされている設定のヒーローであり、一般市民からの応援と尊敬が彼らの特徴のひとつだというのに、その一般市民が作品にまったく姿を現さないのではファンタスティック・フォーのドラマとして失格でしょう。 ま、肯定的に考えれば『X-MEN』の第一作や『バットマン・ビギンズ』だって見せ場の盛り上がらなさ加減はこんなもんだったし、本作については超能力を得る前のパートが作り込まれているので物語の基礎部分はしっかりとしており、続編を作ればちゃんとした娯楽大作になる可能性はあります。もし製作されればの話ですが。フォックスとの関係を見るに、ジョシュ・トランクの再登板は絶望的という様子ですが。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-08-08 20:06:54)《改行有》

29.  ブルージャスミン 《ネタバレ》 優雅な生活を失った元セレブがお金では測れない価値(家族の愛情、友情、貧しいながらも人間味ある生活etc…)に目覚め、人間的に成長してめでたし、めでたし。こんな話だろうと思って見始めたのですが、これがまったく違う内容で驚きました。。。 まず秀逸なのが主人公の設定。彼女は里子として育てられており、生粋のセレブではありません。底辺の惨めさを知っているがゆえに、二度と貧乏には戻りたくないという思いが強く、さらには、自分は自堕落な貧乏人達とは違うのだという強い自意識が、転落後の彼女から柔軟性を奪っています。これは理詰めで考えられたうまい設定だと思いました。また、話の構成も優れています。本作は時系列がシャッフルされ、転落前と転落後が交互に描かれるのですが、最後の最後に明かされる転落の真相により、軽いコメディだと思って見ていたこのドラマが、実は底抜けに暗い愛憎劇だったことが判明するのです。同時に、主人公は自意識過剰でちょっと迷惑な人どころではなく、本物のキ○ガイだったことに気付かされてゾっとするのです。これは怖かったですねぇ。クライマックスも一切の救いなし。良くも悪くも無神経な妹は復縁した彼氏との新生活に夢中で姉のことなど眼中にはないし、ようやく再会できた息子は「頼むから自分に近寄ってくれるな」と言って主人公を突き放します。この先、彼女は野垂れ死ぬしかないのです。なんという暗い結末。。。 上記のような緻密さの一方で、どうでもいい部分についてはかなり荒っぽい端折り方がなされていることも興味深かったです。「信号待ちをしている時にたまたま見かけた」「街で偶然に再会した」、こんな感じでガシガシと話が進められていき、映画全体をコンパクトに収めるための取捨選択が適切になされているのです。こういう潔さはベテラン監督ならでは。[DVD(吹替)] 7点(2015-04-23 01:25:58)(良:1票) 《改行有》

30.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 新兵が補充されてから経験する地獄の一日という、デビッド・エアーの代表作『トレーニング・デイ』と同様の構造をとり、主人公は『プライベート・ライアン』のアパム二等兵を彷彿とさせる文系キャラ。映画の土台部分は凡庸であり、そこに際立ったものはないのですが、本作はディティールの面で大きな成功を納めています。実物のティーガーを走らせるという映画史上初の試みを成功させただけでなく、ティーガーとシャーマンの戦力差をはっきり描写できたという点でも感心しました。分厚い装甲と圧倒的な火力、シャーマン3輌を相手にしても有利に戦いを進めるバケモノとしてティーガーが描かれており、そのインパクトは『プライベート・ライアン』をも凌駕しています。。。 戦場の描写もかつてないものでした。ベトナム戦争以降の戦争とは違い、第二次世界大戦は悪の帝国を倒した正義の戦争としてアメリカ国内では位置づけられてきましたが、実際には第二次世界大戦だって地獄でした。ただ、テレビ中継がない時代だったため、本当に酷い部分を一般国民に見せずに済んでいただけのこと。本作は、その”本当に酷い部分”を容赦なく観客に突きつけてきます。それはスピルバーグの残酷絵巻とはまた違うアプローチであり、兵士達のモラルが崩壊していたことを克明に描写します。捕虜となったドイツ兵をヘラヘラと笑いながらいたぶり、ドイツの一般国民に対して粗暴に振舞う。生きるか死ぬかの戦場に適応するためには、兵士たちは他者への共感を捨てねばならなかったことの結果がこうした所業なのですが、これら一連の描写には残酷絵巻を見るよりも辛いものがありました。。。 以上、中盤までの完成度は素晴らしく、このままいけば戦争映画史上屈指の傑作になるのではと期待したのですが、ラストの戦闘で見事にコケました。部下の命を何よりも大事にしていたウォーダディが、その部下を巻き込んでまで負け戦に挑もうとした理由がまず分からないし、いざ戦闘に入っても戦術がメチャクチャ。戦車に篭城するという作戦なのに、車外に体を出して機関銃をバリバリ撃つとかおかしいでしょ。弾薬は事前に車内に入れておくべきだし。ドイツ軍もドイツ軍で、兵士を大勢殺された後になってようやく対戦車砲を出してくるという謎のタイミング。ドイツ兵はバタバタと死ぬのに、主人公たちにはほとんど弾が当たらないというご都合主義もカックンでした。[映画館(字幕)] 7点(2014-11-30 02:25:40)《改行有》

31.  プリズナーズ 物語はいろんな方向へと広がっていくものの、最後の最後でピタリと整合するという、実に頭の良い脚本となっています。とはいえ、論理的な整合性とリアリティとはまた違うことで、よくよく考えてみればかなり無茶な話ではあるのですが、その辺は監督と俳優陣の力量でうまく誤魔化されています。少なくとも鑑賞中には余計な疑問を持たずに済んだという点に、監督の見事な手腕が集約されています。。。 演技面では、ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールが各々得意とする役柄を演じているのですが、ひたすら泥臭いヒュー父さんが、優秀ではあるが飄々とした個性を持つジェイク刑事を生理的に受け付けず、それが警察全体への不信感にまで発展してあの凶行へと繋がっていくという一連の動線の作り方は素晴らしいと感じました。その俳優のパブリックイメージを利用して、ドラマ全体の説得力を高めているのです。他方、彼らとは対照的な役割を果たしているのがポール・ダノとメリッサ・レオ。あらゆる役柄を演じることのできる器用な二人は、善なのか悪なのか、被害者なのか加害者なのか分からない微妙な演技で観客を翻弄し続けます。こちらも良いキャスティングでした。[DVD(吹替)] 7点(2014-10-04 23:40:19)《改行有》

32.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 今やスタローンやセガールをも超え世界一の暴虐オヤジとなったリーアム・ニーソンが、アクション野郎・ジョエル・シルヴァーとのタッグで放つサスペンスアクション。1996年にシルヴァーが製作した『エグゼクティブ・デシジョン』とよく似たプロットなのですが、その後18年の間に同種の映画がいくつも作られたこともあって、脚本上の仕掛けはかなり高度に進化しています。次の展開はまるで予測できないし、犯人を当てることもほぼ不可能。それでいて、「そのオチはズルい!」と思わせるようなインチキもしておらず、なかなかよく練られた脚本だと思います。また、時に過剰となるシルヴァーのサービス精神も、本作では吉と出ています。ひとつのネタ、ひとつのシチュエーションに執着しすぎず目まぐるしく状況を変えていくことにより、観客に余計な推理をさせる時間を与えていないのです。ラストに思わぬスペクタクルがあったことも好印象でした。。。 さらに良かったのは、この企画にアクションもやれる演技派・ニーソンが加わったことであり、企画と俳優との間で見事な化学反応が起こっています。映画を振り返れば、主に事態を悪化させていたのは主人公の過剰な対応だったわけですが、ニーソンによる演技の説得力のおかげで、そのアラがほとんど目立っていません。また、乗客やパイロットから疑わしいと思われていた主人公が状況を反転させ、乗客を味方に付けるに至った演説場面でのニーソンの演技は非常に素晴らしく、脚本の要となる部分を演技で補強できているという点には感心させられました。。。 難を言えば、真犯人たちの動機や目的がさっぱり理解不能だったことでしょうか。また、彼らは爆破を控えた飛行機からパラシュートで脱出しようとしていましたが、戦闘機に追尾されている状況でパラシュート降下すれば、着地点で逮捕されて終わりでしょ。そもそも、旅客機にパラシュート降下可能なドアってありましたっけ?真犯人たちの言動にはまったく説得力がありませんでした。あと、爆発までの残り時間がデカデカと表示される時限爆弾はもうやめにしませんか?あんなバカみたいな見た目の爆弾を作る犯罪者やテロリストなんていないでしょ。[映画館(字幕)] 7点(2014-09-22 01:17:25)(笑:1票) 《改行有》

33.  普通の人々 二人の息子のうち、可愛がっていた方が死んでしまった家族の物語。兄の死や弟の自殺未遂といった映画的に美味しい部分は敢えて省略し、一家が平穏を取り戻そうとしている部分にスポットを当てるという、なかなか斬新な構成となっています。『ペーパームーン』で高い評価を獲得し、後には『スパイダーマン』シリーズを手掛けるアルヴィン・サージェントによる脚色が素晴らしく、本来はドラマティックではない物語が、非常にドラマティックな内容として描かれています。何が素晴らしいって、それまで機嫌良くしていた人間がさっと冷めていく瞬間であったり、何となく保たれていた日常の均衡が崩れる時の気まずさであったりというものが、抜群の臨場感をもって描かれているのです。例えば、祖父母も交えて家族写真を撮る場面。みんな勝手なことばかりを言って会話はまるで噛み合っていないのですが、それでも全員が笑顔で機嫌良く振舞うことで、場の空気は平穏に保たれていました。しかし、イライラを募らせた次男が怒鳴り声をあげたことで一瞬にして全員が凍りつき、「この場を何とか取り繕わなきゃ」と思っても適切な言葉が浮かんでこないという、あの場面の何とも言えない気まずさ。あるいは、冒頭の朝食の場面。母親が作った朝食を子供が食べないというありふれた場面なのですが、本作の母親は「食べないのなら捨てる」と言って、出来たてのフレンチトーストを流しに捨ててしまいます。この数十秒のやり取りで、この母親がキ○ガイだということが観客にはっきりと伝わる仕組みになっているのです。本作にはこの手の的確な描写が多く、ディティールの面で非常に成功した映画だと言えます。。。 レッドフォードは初監督ながら、地に足のついた演出でこの脚本を映像化しています。また、自身が俳優であるためか役者の動かし方もよく心得ていて、エキセントリックな役柄ばかりを演じてきたドナルド・サザーランドに気の弱い父親役を、有名なコメディアンであるメアリー・タイラー・ムーアに神経質な母親役を、演技歴の浅いティモシー・ハットンに繊細な次男役をやらせるという奇抜なキャスティングながら、各々から生涯ベストとも言える名演技を引き出しています。ただし、地に足がつき過ぎて一つ一つの場面が妙に長かった点は、本作の数少ない欠点。今回DVDで見たオリジナル版よりも、正味90分に編集された地上波放映版の方が面白く感じられました。[DVD(吹替)] 7点(2013-06-19 01:39:47)(良:1票) 《改行有》

34.  ファイト・クラブ 《ネタバレ》 デヴィッド・フィンチャーの前作『ゲーム』と同じく、物質的には満たされている独身男性がカルトにハマっていく物語です。『ゲーム』はかなり荒削りな内容でしたが、一方本作はより洗練されていて、映画としては俄然面白くなっています。空虚な毎日に嫌気がさしてはいるが、かと言って反発すべき敵も目指すべき目標も見当たらず、生きている実感を得られない主人公の姿などは、多くの方が共感できるのではないでしょうか。また、社会に飼いならされていた主人公が徐々に常識を逸脱していく前半部分には、爽快感すら宿っていました。フィンチャーによる演出も絶好調で、哲学的な説教を合間に挟みながらも、見事なテンポで話が進んでいきます。これほど深く、かつ見やすい映画も珍しいのではないでしょうか。。。 俳優陣も完璧です。役作りが過ぎてイヤミになりがちなエドワード・ノートンの演技も、本作では適度に抑制が利いていて極めてナチュラルです。一方、ブラッド・ピットは堂々たる存在感。大スター・ブラッド・ピットにしか演じられない役柄を演じきっており、彼のスターオーラが遺憾なく作品に活用されています。かつてのピットは鼻持ちならないアイドル俳優と見られており、同性からの支持はほとんどなかったのですが、本作をきっかけに男性ファンをも取り込み、同世代の俳優の中では突出していたトム・クルーズに比肩する人気を得るに至りました。それほど、本作のタイラー・ダーデンはかっこいいのです。フィンチャーもブラッド・ピットの扱いには慣れたもので、難しいところはノートンにやらせながらも、美味しいところではちゃんとピットを目立つようにしています。この采配は見事なものです。。。 残念なのは、後半があまりに飛躍しすぎるということ。社会からはみ出すだけでは満足できず、社会そのものを破壊しようとするに至っては、共感の度合いがぐっと下がってしまいました。後半では演出のテンポも悪くなるし、タイラー・ダーデンの正体が判明した時点で映画が終わってもよかったのではないかと思います。。。 なお、現在では傑作と評価される本作も、公開時には興行的に失敗し、批評的にも苦戦しました。その時にぶつけられた悪評についてはプレミアム版DVDに付属しているブックレットに評論家の名前付きで載っているので、映画の価値を見抜けなかった評論家達の恥ずかしい言動も併せて楽しむことができます。[DVD(吹替)] 7点(2013-06-03 22:18:26)(良:2票) 《改行有》

35.  ブロンソン トム・ハーディのカメレオンぶりが凄すぎます。それは役作りや肉体改造が凄いというレベルを超えてしまっており、もはや完全に別人。『BLACK&WHITE』や『裏切りのサーカス』を見ればわかる通り、本来、この人はかなりの二枚目なのですが、本作ではそんなイケメンの面影が完全に失せてしまっています。全盛期のデ・ニーロをも超える程のなりきりぶりには恐れ入りました。本作がきっかけでハーディはブレイクし、今や2代目マックス・ロカタンスキーを任されるまでに成長しましたが、本作での演技を見れば、評価されて当然の俳優であることがよく分かります。。。 ハーディと同じく、現在では売れっ子となったニコラス・ウィンディング・レフンによる演出も絶好調です。コメディにもシリアスにも寄りすぎない独特の温度感を終始維持できているし、高い映像センスによって「目で楽しませる映画」にもなっています。『時計じかけのオレンジ』とも『ナチュラル・ボーン・キラーズ』とも違ったスタイルの犯罪者映画を確立しており、今後、本作が犯罪者映画の新しいひな形になる可能性もあります。。。 以上、演出と演技のレベルの高さは大きく評価できるのですが、全体としては「傑作になり損ねた映画」という印象です。モンスター級の犯罪者の生き様が描かれるのみで第三者の視点がまったく存在していないため、映画と観客との間にあるべき共感の接点が出来上がっていないのです。監督と俳優の技見せ映画としては大いに楽しめますが、残念ながらドラマとして得られるものはそれほど多くありません。[DVD(字幕)] 7点(2012-12-14 12:08:43)《改行有》

36.  フォレスト・ガンプ/一期一会 《ネタバレ》 本作は、インフレ率を考慮すると後の『スパイダーマン』や『ダークナイト』をも超える興行収入を叩き出しているのですが、アニメでもスペクタクルでもないヒューマンドラマがここまでの数字を出した例は後にも先にもこれ一本のみ。今回、十数年ぶりに鑑賞してみたのですが、確かにこれはアメリカ人から熱狂的に支持されて当然の映画だと感じました。。。 本作の舞台となる60年代から70年代にかけて、アメリカはまっぷたつに分裂していました。大統領を含む政治的リーダーはしょっちゅう命を狙われ、公安組織は市民のデモ隊に対して容赦なく暴力を振るうという世相であり、それはもはや内戦状態とも言える有様でした。そんな時代を反映するかの如く、このドラマには二人の人物が登場します。国家に対して従順なフォレスト・ガンプと、反権力に生きるジェニー・カランです。通常の映画であれば反権力に身を置く者が主人公とされるところなのですが、本作では権力に寄り添うフォレスト・ガンプが主人公となっています。そして、ガンプが堅実に生きた結果としてアメリカン・ドリームを手にする様は、あの時代のアメリカ社会の肯定を意味します。これまで真っ暗闇として描かれてきた60年代から70年代のアメリカは、本作によってようやく復権したというわけです。一方、反権力のジェニーはと言えば、ガンプやババが戦場で命を張っている間、仕事も勉強もせずに仲間と遊び呆けて暮らしています。彼女は権利ばかりを主張して義務を果たすつもりはないという身勝手な生き方をするのですが、それは反権力とかプロ市民に対して一般人が持つ反感を見事に具現化したものです。自堕落な人生のツケを払わされるかの如く、彼女がエイズで命を落とす様は、もはや勧善懲悪の世界でした。。。 以上の通り、本作は強烈な政治性を帯びているのですが、コメディを得意とするロバート・ゼメキスの演出によって程よくマイルドに落ち着いており、アメリカ人以外でも楽しめる仕上がりとなっています。あき竹城みたいな東洋人を連れて久しぶりに姿を現したダン中尉が、爽やかな笑顔で「俺にもフィアンセが出来たんだ」と言う場面なんて、涙が出る程笑ってしまいました。また、ノンフィクションものを得意とするエリック・ロスによる脚色も見事であり、歴史的事実とファンタジーとの間で絶妙なバランスをとっています。[DVD(吹替)] 7点(2012-10-17 01:55:08)(良:3票) 《改行有》

37.  プロメテウス 《ネタバレ》 IMAX3Dにて鑑賞。初挑戦ながらリドリー・スコットは見事に3D技術を使いこなしており、3D料金を払う価値のある映像に仕上がっています。この辺りの柔軟性、技術に対する積極性は、さすが巨匠といったところです。。。 本編もまた、良くも悪くもリドリー・スコットの映画でした。とにかく映像美は完璧で、VFXの使い方も完璧。『アベンジャーズ』でコテコテのCGを観た直後だっただけに(あれはあれで楽しいのですが)、ロケーションとVFXが違和感なく融合し、あたかもそこに存在するかのような映像のリアリティには驚かされました。『ブレードランナー』以来30年ぶりのSF映画ですが、この監督のセンスはまったく衰えていません。その一方で、脚本はかなり適当。『エイリアン』の登場人物が7人だったのに対して本作の登場人物は17人に増やされているのですが、不要な人間が何人もいます。特に要らないのが科学者グループで、専門性を発揮することもなくただワァワァ騒いでいるだけ。肝心の研究・調査は同行したロボットがたった一人で進めているという有様であり、これならば科学者グループを丸ごと切ってしまい、代わりにプロメテウス号の操縦クルーを主人公にしてしまった方が映画全体のまとまりが良かったように思います。創造主に会えば寿命を延ばしてもらえると思ったウェイランド社長や、せっかく育てた人類文明を滅ぼそうと考えたエンジニアの行動原理は理解不能であり、これらについてはより突っ込んだ説明が必要だったように思います。製作スケジュールに余裕がなかったためか、スコットは映像表現に全精力を注いで物語は二の次・三の次としているようです。ジェームズ・キャメロンのような完璧主義者とは違い、ある程度のところで割り切ってしまう適当さがスコットらしいと言えます。。。 人類の起源とエイリアンを結び付けようとするそもそものアプローチが、個人的には好きではありません。「出会ってはならない二つの種族が出会ってしまったことによる悲劇」というオリジナルシリーズのアプローチの方がしっくりきます。[映画館(字幕)] 7点(2012-08-26 01:28:24)(良:2票) 《改行有》

38.  5デイズ 「ドリブン」を大コケさせて以降は小規模なサスペンスアクションを細々と撮ってきたレニー・ハーリンですが、久々のアクション大作である本作では堂々たる演出力を披露しています。現役のヘリや戦車がバンバン登場するスケールの大きな見せ場のまとめ方は手慣れたものだし、アップと俯瞰の使い分け、援軍が到着するタイミングなど、アクション映画の基本となる演出力はまったく衰えていません。トニー・スコットやマイケル・ベイ同様、ある程度以上の予算規模の企画の中にあってこそ、この人は才能を発揮できるようです。アクション大作としてはとにかく満足の仕上がりでした。あくまでアクション大作としては。。。本作を鑑賞する上で頭に入れておかねばならないことが2点あります。それは、本作がグルジア軍の全面協力で撮影されていることと、レニー・ハーリンは歴史的にロシアからの被害を受け続けているフィンランド出身であること。本作は徹頭徹尾反ロシアの姿勢で作られており、国際問題を学ぶ社会派作品として鑑賞すると、大きな間違いを犯します。確かにロシアは傍若無人な国家ではあるのですが、本作の内容はあまりにグルジア寄りで、フェアな姿勢で作られてはいません。グルジアと南オセチアの関係にまったく言及していないし(グルジアは被害者であると同時に、加害者としての側面も有している)、南オセチア紛争の最初の一発はグルジアから放たれたことが国際的な認識であるにも関わらず、「ロシアの攻撃が先だった」というグルジア側の一方的な主張が採用されています。ロシア軍の残虐ぶりも低俗に誇張されており(南オセチア紛争で残虐行為を行ったのは南オセチア義勇軍なのですが、本作ではあたかもロシア軍が残虐行為を行ったと勘違いさせる描写がなされています)、80年代に香港で量産された反日映画と同じ類の作品として鑑賞するのが正しいと思います。[DVD(吹替)] 7点(2012-04-23 11:58:46)(良:1票)

39.  プライド/運命の瞬間 公開時は高校生だったのですが、従軍慰安婦も南京大虐殺もバリバリに信じていた当時の私は本作の内容に激しく憤り、「こんな映画は駄作に決まっている。死んでも観るものか」と固く心に誓ったものでした。当時の日本は私のような心境の人間が圧倒的多数を占めていたようで(表現者であるはずの山田洋二までが「プライド」上映禁止運動に参加するという異常事態)、2011年のDVD発売までの10数年間、本作は封印作品に近い扱いを受けていました。しかし時代は変わるもので、「日本って言うほどは悪くなかったんじゃ?」という疑念とともに本作はシレっと復活。かつては「死んでも観るか」と固く誓った私もアッサリ誓いを撤回し、死んでもどころか10年そこそこで本作を鑑賞するに至ったのでした。。。そうして鑑賞しての感想ですが、これがなかなか面白いのです。理由は簡単、題材が面白すぎるのです。弁護側が提示した3000もの証拠は理由もなく却下され、一方で歪曲や捏造に溢れる検察側の証拠はロクに検証もされずにどんどん通っていく。ならばと弁護側が検察側の矛盾点を追及しようとすると、「後で答える」との返答で終わらされてしまうという理不尽にも程がある魔女裁判が繰り広げられたわけですから、これをドラマにしてつまらないわけがありません。開始から2時間は時間を忘れるほど映画にのめり込みました。しかし、物語が裁判を離れ、東条英機やパール判事のプライドにフォーカスするラスト40分に入ると、映画は一気に息切れを起こします。東京裁判のみで突っ切ってしまえば面白かったのに、インド独立運動などを入れてしまったために視点が分散してしまったのです(そもそも本作はパール判事の伝記映画の企画だったわけですが…)。とはいえトータルでは満足度の高い作品であり、本作を頭ごなしに否定する人は自分の目で映画を観ていない人だと思います。「東条英機を擁護するなんて言語道断」と思う人も、映画を見れば意見が変わるはず。日本の側に非があるのなら検察側はその悪事を淡々と暴いていけばいいだけなのですが、実際の東京裁判では検察側が日本の悪をまともに立証できず、判事と検事の超絶連携プレイで7人を絞首刑にしたという法の精神完全無視の結末を迎えたわけです。なお、監督・脚本を務めた伊藤俊也氏は東映労組の戦闘的な委員長として知られたバリバリの左翼。左翼の目で評価しても東京裁判は狂っていたというわけです。[ビデオ(邦画)] 7点(2012-02-25 05:36:09)

40.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 撮影・編集は凝りに凝っており、技術的には非常にレベルの高い映画です。題材選びも面白いし脚本も素晴らしいので良く出来た佳作には仕上がっているのですが、惜しいところで傑作にはなりきれていないという印象です。この監督は登場人物を冷めた視点で描く傾向があり、傲慢な大富豪を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ではその傾向が吉と出ていましたが、若者の成長物語でもある本作では、この冷たさが時にアダとなっています。監督自身がキャラクター達を愛していないのでドラマはエモーショナルな抑揚に欠き、劇中さまざまな事件が起こってもどこか平板な印象を受けるのです。本作で例外的に感情が爆発するのは主人公エディが家出をする序盤なのですが、これは監督自身の経験を元にしているため。監督は映画以外の物には関心を抱けない人物であり、そのため学生時代には成績も悪かったようなのですが、彼の母親はそれを許さず口汚く罵られる日々が続いたとか。そんな過去を主人公エディにも追体験させたため、映画全体から浮いてしまうほどにあの場面だけが突出して生々しいのです。。。 本編で注目すべきはダメ人間達の生き様です。オヤジであるジャックをはじめポルノ一家の面々は「自分達は映画という作品を作っているのだ」という一点に人間としてのプライドをかけています。自分達は監督・俳優であって、裸だけが売りの人間ではないというプライドを。しかし劇中劇を見ると、悲しいほどにこのプライドが滑稽に感じます。セリフはすべて棒読みだし、演出も編集もボロボロ。無能な人間が寄り集まって「俺達はダメじゃないんだ」と傷を舐め合っているようにしか見えません。エディは裸以外にも取り柄があるはずだと信じてポルノ一家を飛び出しました。性描写のみに特化したAVを撮れと言われたジャックは「俺はフィルムメーカーだぞ!バカにするな!」と激怒し、激しくこれを拒否しました。しかし、結局彼らは裸の世界に戻ってきます。他に生きる場所がないことを思い知ったからです。唯一、ドン・チードル演じるバックはポルノ業界から脱出することに成功しますが、それは神がかった幸運のおかげであって彼が無能であることに変わりはありません。一家が再集合するラストをハッピーエンドと見る向きもありますが、ポルノという閉じた世界に居場所を見出さざるをえないエディ達の姿は、むしろバッドエンドと考えるべきでしょう。 [DVD(吹替)] 7点(2011-10-29 21:14:27)《改行有》

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