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1. マリー・アントワネット(2006)
美術と衣装が楽しみだったのだが、その点では満足できた。しかし、見るところは、美術と衣装しかなかったので、途中で退屈してしまい、最後まで見るのに努力が必要だった。どうしたらこう薄っぺらく作れるのか、不思議なくらい。
気の合う友達と徹夜で遊んで、美しい景色の中、いっしょに日の出を眺める、という青春映画につきものの場面などは、いい雰囲気だったのだが、ふつうの少年少女が18世紀フランスのコスプレをしてるみたいだったのも確か。
凡庸な人間が、時代の転換期に、その表舞台に居合わせてしまった悲劇、というところか。[DVD(字幕)] 4点(2007-12-30 16:44:08)《改行有》
2. マラソン(2005)
チョ・スンウの演技のすばらしさは、まず最初に言っておかなければならないだろう。わたしは、身近に自閉症の人や知的障害を持った人と接したことはないので、ほんとうにそれらしいのか、ということは断言できないのだが、ほかの映画の少しクールな印象のチョ・スンウとは、まるで別人だったということは、はっきりいえる。
母親役のキム・ミスクもほとんどノーメイクで、生活感がよく出ていた。まあ、生まれついた美貌はそれでも隠せないが。息子のために必死で生きていながら、孤独にさいなまれている様子がひしひしと感じられたのはさすが。
雨が降りしきる中、幼い息子の手をかざし、ふたりともびしょぬれになりながら、「雨がざーざー降ります」という言葉と、手のひらに受ける雨の感覚とを結び付けようとする母。『奇跡の人』かよ、と思ったのだが、その後何度も出てくる、手のひらに雨を受ける、手のひらに風を受けるシーンを見ると、言葉を使うことによって、社会の側に障害のある子を引き寄せる、という以上の意味があることがわかる。
「がんばる障害者」をほめたたえる、みたいなのは好きじゃないのだが、そういう「美談」が持つ臭さを、母親のエゴを描くことによって、うまく回避している。音楽がちょっと狙いすぎのような気もしたが、まあ「感動作」には違いないんで、そのへんはしょうがないかな。
人にものをあげる、もらう、というやり取りの中で、相手との距離や好意を計る、という、この社会のお約束の外にいる主人公。決して他人から食べ物をもらわない、という母親のしつけが痛々しい。それだけに、主人公の練習に伴走して、いっしょに倒れこんだコーチに、水をわたす、という行動が、大きな意味を持つのである。
映画というのは、登場人物の心情を言葉以外の方法で見せるものだ。言葉で心情を表現することがむずかしい主人公だからこそ、走る主人公の目から見た、すぎさっていく風景を輝かしく描くことで、彼の喜びが伝わってくることこそが、この映画の最大の成功だと思う。
ラスト近くのファンタジックなシーンは、『ビッグフィッシュ』のラストを彷彿とさせた。全体に笑いも多く、歓喜を描いて終わる映画である。泣けるシーンもあるのだが、それを期待していくと、肩透かしかもしれない。
脇もみなよかったが、弟役のペク・ソンヒョンのみずみずしい演技が印象的だった。[映画館(字幕)] 8点(2007-08-19 23:33:53)《改行有》
3. マイ・ビッグ・ファット・ウェディング
《ネタバレ》 ギリシャ系アメリカ人の女性が、WASP の男性に恋をし、結ばれるまでの紆余曲折を描くコメディ。
原題は "Greek" という言葉が入ってるが、邦題にはそれが抜けている。
親や親戚は、同じギリシャ系との結婚を望んでいる。なにかというと一族が集まり飲めや歌え、「すべての言葉はギリシャ語に起源がある」というトンデモが持論の濃ーいおとうちゃん。。。。コメディとはいえ、わたしのように在日韓国人の、とくに女性なら、身につまされ、なかなかシャレにならない映画でもある。
主人公はふつうにアメリカの教育を受けているのだが、親の指示で子供のころからギリシャ語の課外教室に通い、そこそこ言葉もできる。「他の友だちは、ガールスカウトに行ってるのに、ギリシャ語より、わたしもそっちに行きたい」と、子供のころは思う訳なのだが、後年自分の子供を持つと、やっぱりギリシャ語を習わせる。このあたり、なんかうらやましく見ていた。
彼女と結婚するために、恋人の男性がとった手段は、「うーん、そうしないと、やっぱりムリなんかい?」ということで、ちょっとわたしには割り切れない感じだったが、マジョリティの男性という、二重に強い立場の側が、マイノリティの女性に歩み寄る、という点では、これでよかったのかも。[DVD(字幕)] 8点(2007-07-25 15:49:16)《改行有》
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