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プロフィール
コメント数 893
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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12345
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1.  蛇の道(2024) 《ネタバレ》 1998年のオリジナル版と筋書きはほぼ同じ。 オリジナル版を難解にさせていた数学教師の設定から精神科医に変更されたことで、 分かり易く洗練された演出で生まれ変わったリメイクのお手本。 主人公を男性から女性に変更した理由。 凄惨な過去で心が壊れた女とその過去から逃げ続けようとする男たちの対比を、 循環性の象徴である"ウロボロスの輪"に例えたのだろう。 何度も読み上げられる娘の死、繰り返される復讐行為が廻りに廻って日常になっていく。 だが、男たちは馴れ馴れしく、常に都合の悪い話をはぐらかそうとする。 女は延々に廻り続ける生き地獄から絶対に逃がさない。 結末における芯の冷え切った台詞の数々がそれを象徴している。 オリジナル版と比べてダミアン・ボナールの影が薄く、 むしろ柴咲演じる主人公の掘り下げが増えたことを考えると合点がいく。 蛇のように低体温でじわじわ嬲っていく主人公の果てしない闇と虚無が視線から発せられるラスト。 全てが終わっても心穏やかに過ごせるわけでもなく、西島演じる患者のような末路を迎えてしまうのか。 復讐という名のウロボロスの輪に囚われ続けなければ生きていく理由を失ってしまうのかもしれない。 見ていて答え合わせしている感じは否めないが、 黒沢清の作風がフランス映画と親和性があり、ヨーロッパで評価されている理由に納得した。[映画館(字幕)] 7点(2024-06-14 23:11:22)
《新規》
《改行有》

2.  劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re: TVシリーズは視聴済みでこちらが日常系ギャグアニメなら、 劇場総集編はひとりの成長譚とバンド結成の青春物語としての側面を強く押し出している。 ただのTVシリーズの総集編として描くことはせず、 オリジナルの8話分の内容を92分でコンパクトに収めてしまったのだから、 テンポ重視で潔くバッサリ編集してキチンと「映画」として仕上げていた。 自分が気付かないだけで地味に新規カットは多数含まれているだろう。 映画ではあえて描かないことによって登場人物の背景に深みを持たせており、 劇場版が初見の人には逆にTVアニメを見たくなる仕組み。 ひとりに焦点を当てている分、青山吉能の超絶技巧による奇人変人ワンマンショーが一層際立つ。 唯一の取り柄を持った欠点だらけの日陰者にスポットライトを当て、 Z世代ならではのドライな空気をほのかに感じさせる、新たな切り口の音楽映画だ。[映画館(邦画)] 7点(2024-06-07 21:38:14)《改行有》

3.  ドリームプラン 《ネタバレ》 2年前に作品情報を新規登録しておきながら、ようやく重い腰を上げてレビューすることになった。 邦題を見れば白人のスポーツだったテニスの歴史に風穴を開け、 アメリカンドリームを掴んだウィリアムズ姉妹のドラマとして見ると淡々としすぎて物足りなさを感じる。 ただ、原題の"KING RICHARD"、つまり姉妹を育てた"暴君リチャード"の物語として 成功に至るまでのある種の歪みが本作の主題だろう。 姉妹が成功するのは既に分かっている。 それまでは彼の独り善がりで妄執に近い態度に誰もが関わりたくないと思ったはずだ。 常に綱渡りで彼のようなプランを作っても99%は成功しないだろう。 ただ、娘たちが貧困とドラッグに墜ちていく負の連鎖を断ち切るためであり、 日本以上に格差も差別も大きいアメリカの病みがある。 格差是正を訴えるより、自己責任で力づくで這い上がるしかなかった時代。 オファーを持ちかけられても安易に契約しない、性悪説で誰も信用できないのは弱肉強食のアメリカならでは。 時代を、人生を変えるには常に"正しい狂気"が必要だった。 その"正しい狂気"と言っても、最後は謙虚さが、聞く力が必要だ。 「試合に出たい」と練習し続けていたビーナスの声をついにリチャードは受け入れ、 どんな結末だろうとビーナスは試合に負けても勝負に勝った。 目論見通りなら、今までゲットーに生きていた黒人たちに光を与えたという意味で大きな一歩とも言える。 家父長制等、今でなら問題だらけの価値観に文句はあるかもしれないが、結果的に歴史を変えたのは事実だ。 ウィル・スミスはアカデミー賞授賞式でのひと悶着はあれど彼以外に考えられなかった。 ただ、彼のキャリアでのベストではなく、将来、より相応しい映画、役柄はあったと思う。[インターネット(字幕)] 6点(2024-06-01 00:36:28)《改行有》

4.  関心領域 《ネタバレ》 「私たちはシステムに組み込まれている」。 その枠組みの中で劇的な展開が起こることのないホームドラマ。 主要人物がアウシュヴィッツ強制収容所の所長の家族であることを除けば。 『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせるBGMのみのオープニングで"音を観る映画"だと認識させる。 一枚一枚完成度の高い、硬質でスタイリッシュなショットの数々は不純物を取り除いた無機質さであふれ、 今まで排除されてきた不純物が遠くから見え隠れする。 それが壁一枚隔てた収容所の黒い煙であり、悲鳴であり、銃声であり、 川に流れ込んだ遺灰であり、日常に溶け込んでいる。 そんな生活を送っている家族は何を思って日々を過ごしていたのか。 現在そのレビューを書いている自分にも同じことが言える。 ウクライナとガザ侵攻のニュースが対岸の火事として日々流されている裏で、 日常化したアジアや中東やアフリカや中南米の紛争・内乱について現在ほとんど触れることはない。 それだけでなく、日本でも見て見ぬふりしている問題が点在している。 100円台で提供される菓子パンの裏で、 激務の果てにベルトコンベアに巻き込まれて従業員が死亡したパン工場での事故。 ペットブームの裏で人間の身勝手で捨てられ、殺処分される愛玩動物。 セーフティーネットから取りこぼされ、命を落としていく社会的弱者。 私たちはその問題を知っている。 だが、「何もしてあげられない」。 こちらにだって社会的立場があり、生活がかかっている。 きっと80年前の所長の家族も同じだろう。 オスカー・シンドラーのように人道のために踏み出せる人などたかが知れている。 かつてジャミロクワイのPVを手掛け一躍その名を知られたジョナサン・グレイザー監督はユダヤ人の血を引く。 アカデミー賞受賞時にイスラエルのガザ侵攻を非難したが、 ハリウッドの多くを占める同胞のユダヤ系映画人は彼のスピーチに一斉に猛抗議した。 「アウシュヴィッツで起きたことと、ガザで起きていることは全く別物だ」。 自分たちが恩恵を受けてきたシステムに背くことは今まで築き上げた所有物を犠牲にする覚悟である。 大量虐殺可能なガス室の建設が決まり、 「人としておぞましいこと」を自覚しているのかは知らないが、誰もいない通路で所長は独り嘔吐しかける。 それは最後に残された彼の"人間性"か。 博物館として現代の収容所に積み上げられた虐殺の痕跡を前にルーティンワークとして淡々と掃除するスタッフたち。 ニーチェ曰く、「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」。 80年後の世界を見つめる彼には裕福な生活を、愛する家族を守らなければならない。 異常さに耐え切れず、手紙を置いて密かに邸宅を出て行った所長の妻の母親が帰宅後に意識を切り替えるが如く、 自分もまた、悲鳴だらけのエンドロールから“普通の日常生活“へと取り繕うだろう。 「私たちはシステムに組み込まれている」。[映画館(字幕)] 7点(2024-05-30 21:49:13)《改行有》

5.  ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉 《ネタバレ》 「なぜ走るのか?」 その宿命を背負った少女たちが勝つための本能を剥き出しにした精巧な表情を浮かべ、 挫折、苦悩、絶望に足を引きずられながらも己の限界を超えて、目の前のゴールへ突き進む108分。 パースを駆使した粗削りな作画とダイナミックなカメラワークは臨場感にあふれ、王道の展開に高揚する。 そこには情熱と泥臭さと狂気があった。 あえて言えば、最後のレースシーンはもっと引っ張っても良かった気がする。 原作ゲームアプリをプレイしなくても、元ネタの競走馬を知らなくても十分楽しめる。 ただ、最低でもアニメシリーズも含めて押さえておくと本作品への思い入れは一層違ってくるだろう。[映画館(邦画)] 8点(2024-05-25 10:11:45)《改行有》

6.  鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 《ネタバレ》 救いはない。 いや、この村には"死こそ救い"というべきだろうか。 弱者を搾取して支配し続ける社会はいつの時代も変わりはない。 それでも歪んだシステムに蹴りを入れて、新たな世代に希望を見せないといけない。 "ブロマンス"という男同士の特別な繋がり(≠同性愛)という概念があり、 2022年が『RRR』なら、2023年は『ゲゲゲの謎』がその象徴とも言えよう。 太平洋戦争の徴兵で上層部からの理不尽を目の当たりにした水木は、 誰も信用せず、強者に這い上がろうとする野心に満ち溢れた男。 だが、ミステリアスなゲゲ郎(=鬼太郎の父)の言動、哭倉村での数々の怪奇現象、 龍賀家の常軌を逸した因習によって自身の価値観を変容していく。 そこから熱いバディものに変化していくが、二人がそれほど暴れなくて物足りなさが残る。 胸糞悪い、ビターな展開がダメではなくて、そこからのカタルシスが弱い。 水木は哭倉村での記憶を消され、ゲゲ郎は呪いの依り代になって醜くなれ果て、 被害者でもあり加害者でもある沙代は無残に死に、何の落ち度もない時弥は時貞に肉体を奪われる。 幽霊族も外から拉致された一般庶民も製薬の材料として利用され、誰一人として救われない。 だが、弱者を顧みず、欲望の赴くままに食い物にしてきた外道にはいつかツケを支払わないといけない。 そうやって世の中は少しずつ変化してきた。 舞台から70年後の現代、ちょっとはマシな世の中になっただろうか? 完全オリジナルストーリーでありながら原点である『墓場鬼太郎』に繋がる構成といい、 スタッフの鬼太郎へのリスペクトが大いに感じられた。 原作そのままだと水木は散々な扱いを受けるようだがそこは一切描かず、 その後を視聴者に委ねるあたり優しさはある。 歪んだシステムに抵抗した登場人物たちが少しは報われて欲しいと願ってやまない。[インターネット(邦画)] 6点(2024-05-15 22:11:44)《改行有》

7.  生きる LIVING 《ネタバレ》 オリジナルは鑑賞済。 忠実なリメイクになっているものの洗練された造りになっており、 主人公と元同僚の若い娘との絡みはオリジナルと比べてくどくなくて良かった。 これはお国柄の違いだろうし、スタイリッシュな出で立ちのビル・ナイを起用したキャスティングの勝利だと言える。 葬儀後のグダグダな展開はバッサリ削り、上手く場面転換をしながら綺麗に"THE END"へと着地していく。 オリジナルのお役所体質への批判は最低限に留め、新人職員と若い娘の見せ場を増やして、 普遍的で誰にでも見易いヒューマンドラマに仕上げていた。 当然、オリジナルの凄みには及ばないかもしれないが、コンパクトにまとめたリメイク版を推す。[インターネット(字幕)] 7点(2024-05-15 22:01:20)《改行有》

8.  PERFECT DAYS 《ネタバレ》 小津安二郎を敬愛し、生前の出演俳優のドキュメンタリーを撮ったこともあるヴェンダース初の邦画作品。 平坦なトーンで劇的な展開がないのに飽きずに見せる。 築50年近くの安アパートから一日が始まり、公衆トイレの清掃員としてルーティンワークをこなし、 ささやかなことに喜びと幸せを見出していた寡黙で孤独な男が、 姪の来訪と少しずつ近づく終焉の数々に、その"満ち足りた日々"が崩れていく不安を感じ始める。 彼の過去に何があったのかは分からない。 公衆トイレの設備にきめ細やかな手入れを行うプロとしての誇りとストイックさに敬意を覚えるくらいであり、 自由を謳歌している浮浪者に慈しみを感じながらも、実は過去に向き合えず逃げ続けていただけなのか。 彼の穏やかで急ぎすぎない生き方に憧れても、どこかで「本当にそれで良いのか?」という疑問を抱く。 充実しながらも後悔しているような、達観もしているような心の機微を役所広司が体現する。 人生に上下はないかもしれない、間違いのない選択肢などないかもしれない。 見えていないだけで主人公のような人生を送っている人たちが近くにどこかしらにいるのだろう。 せめてやりたくない末端の仕事を誰かがしていることに感謝の気持ちを持ちたい。[映画館(邦画)] 8点(2024-05-15 21:59:56)《改行有》

9.  ゴーストバスターズ/アフターライフ 評判芳しくないものの、そもそも一作目自体そこまで思い入れも記憶もないため、 "継承"というテーマとして見るなら案外悪くない。 孫娘が祖父の意思を継ぎ、オリジナルを撮ったアイヴァン・ライトマンが息子にメガホンを託す。 これほど胸躍ることはない。 '80年代の明るいノリを40年近く経った現代に再現させるのは難しいだろうし、 父親と違って人間ドラマを得意とするジェイソン・ライトマンの作風からすると、 こうなるのは大体予想通りというか。 家族のわだかまりを解く終盤の展開は分かっていながらもたいへんエモーショナルであった。 温故知新を体現した映画だったかと。 続編はかつて一作目を見たときのように勢いが落ちそうなので見ないかもしれない。 「新章がこれから」という期待感がこのシリーズには似合うと思うから。[地上波(字幕)] 7点(2024-04-08 23:19:00)(良:1票) 《改行有》

10.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 専門用語が次々に現れ、時系列を交錯させ、培ってきた技法を総動員させたクリストファー・ノーランの力作だが彼のベストではない。 恐らく半分以上は話を理解できなかっただろうし、あれほどの会話劇で本国アメリカで記録的な大ヒットしたことは、ノーランのブランドがなせる業なのか、核兵器を巡る世界情勢の重大な危機に関心が大きいのか、その両方だろう。 唯一の被爆国である日本にとって胸糞悪いのは事実で、戦争という熱狂によって人道・倫理観のブレーキが壊れ、戦場が兵器の実験場に変わり、新たな秩序と発明が生み出されていく。 戦場とは遠い世界でチェスの駒を操れそうな位置にあり、やがて自分自身も利用されて棄てられていく様が同じ天才学者を描いた『イミテーション・ゲーム』に通じるものがある。 国のエゴと利害の一致によって身動きできなくなっていく理不尽と葛藤と矛盾がオッペンハイマーに強烈なストレスとして画面に発露される。 広島と長崎の投下シーンが一切ないのは予め知っていた。 これは日本への配慮とも言えるし、挿入したとしても"オッペンハイマーとは何か"をぼかしてしまうので妥当とも言える。 英雄でもなく、悲劇の人物でもなく、功績と名誉を回復しても、これらは彼以外の大多数の所有物でしかなく、本人がどう思っているのかは知る由もない。 彼がいなくても、誰かが原爆を作り、どこかで投下されていただろう。 全人類を破滅させることができる発明が世に出てしまった以上、もう止めることはできない。 昨今に論議を巻き起こしているAIが世に出てしまったように。 現実、国の最高権力者という名の狂人が核兵器というキャスティングボードを握っている。 話し合いで解決できない相手に我々だったらどう向き合うか? もはや「核兵器について議論しない」という日和見な選択肢は残されていない。[映画館(字幕)] 6点(2024-03-30 23:12:00)《改行有》

11.  ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 《ネタバレ》 グダグダだった前作に比べれば、何とか持ち直したと言ったところ。 単品で見れば魔法界の最高権力者を目論むグリンデルバルトの野望を阻止するシンプルな筋書き。 魔法生物はやや置いてけぼりながら重要シーンで盛り込み、一応は幸福なひと時で映画を締めている。 冤罪で降板させられたジョニー・デップに代わり、マッツ・ミケルセンがグリンデルバルトを演じているが、 魅力的なヴィランを上手く引き継いでいると感じた。 しかしながら、主人公のニュートの影が薄く、ダンブルドアとグリンデルバルトの愛憎劇へと脱線していくのでは、 本筋のファンタスティック・ビーストである必要がないので次回は原点回帰して欲しいものである。[地上波(字幕)] 5点(2024-03-30 23:02:04)《改行有》

12.  アメリカン・フィクション 《ネタバレ》 "黒人"に対して何をイメージするか? エディ・マーフィーやウーピー・ゴールドバーグを代表するひと昔前のコメディ俳優か、 はたまた『それでも夜は明ける』『ムーンライト』みたいな理不尽な差別に耐える健気な主人公か、 それとも貧困と銃とドラッグにまみれた屈強で粗暴なラッパーか。 ハリウッドから提供されたイメージはその一側面に過ぎない。 これらが白人だったら我々はどう見ていたのだろう? それなりの知識層で中流階級の売れない作家兼教師である主人公も黒人だ。 大学の職を追われた彼は、長年疎遠だった実家の家族に向き合うことに。 父は不倫して自殺、母はアルツハイマー病で、母を介護していた姉は急死し、兄は同性愛者と問題だらけ。 生活苦からヤケになってステレオタイプな黒人を題材にした三文小説を偽名で書き始めるも、 あれよあれよの大ヒットで映画化決定、文学賞最有力と自分でもコントロール不能になって…… というコーエン兄弟的な筋書き。 黒人への配慮がむしろ白人の免罪符になり、エンタメとして消費されていく皮肉。 それに気付かず、白人は素晴らしいと崇め、黒人ですら面白いと問題の小説に疑問に感じない。 ただただ酔えるなら三種類のジョニーウォーカーの中から安物でも構わない。 今日のエンタメ及びポリコレ産業に横槍を入れており、真実を明かす場面を敢えてカットすることで、 観客が何を求めているかを問いかけているように感じた。 でも悲しいかな、自分の創りたいものは商業でほとんど通らないし、それがウケるとは限らない。 何も見ていなかった世間知らずな坊ちゃんである主人公が現実を突きつけられ、 悲劇のステレオタイプな黒人イメージと折り合いを付けていく。 そんなクリエイターの悲哀、日本の漫画の実写化でもよく聞く話だ。 あのラストを見ると、今までの展開はどこまでが本当なんだろうか。 白人と黒人の関係が密なアメリカだからこその笑いでそのニュアンスをどこまで理解しているかは怪しいが、 マイノリティのジレンマを案外スルスルと見れる話術と仕掛けですんなり見れた。 ダークホースで脚色賞を取れるかもしれない。[インターネット(吹替)] 6点(2024-03-11 21:07:54)《改行有》

13.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 アカデミー賞授賞式が迫っていたので、今まで情報をほぼシャットアウトした状態でようやく鑑賞した形だ。 「いったい何を見せられているのか?」というバッドトリップ状態。 今までの宮崎駿は水で薄めただけで、宮崎駿の原液そのまま飲み干して体感せよと言わんばかりに。 ジブリブランドだからこそ宣伝なしで行けたと言っても良い。 人工の黄泉の国を左右するジェンガみたいに積み上げられた積み木。 一瞬で崩れたら全てが終わってしまう危うい、そのバランスによって世界は成り立っている。 その世界が無くなってしまったら、自分が持っている積み木でゼロから未来を積み上げないといけない。 タイトル通り、「自分で答えを見つけろ」という宮崎駿らしい内容であるが、かつての勢いはない。 太平洋戦争を舞台にする必要もないものの、多くの命が失われ、 倫理観も価値観も危うい時代が再び訪れることを予期してのことか。 これでアカデミー賞を取れたら凄いと思うが、"宮崎駿の遺作"になるかもしれないという忖度が働いているわけで。 私がアカデミー会員だったら間違いなく『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に投票する。[映画館(邦画)] 5点(2024-03-08 23:24:03)(良:1票) 《改行有》

14.  映画 ゆるキャン△ 《ネタバレ》 変化と不変、終わりと始まり。 いつもの緩やかな世界と付かず離れずの友人関係はそのままに、一抹の寂しさをまとっている。 大人になったからこそできるものがあれば、それ相応にしがらみも責任も伴う。 紆余曲折しながらキャンプ場を完成させていくプロジェクトX的な筋書きに、 アウトドアものならではのディテールが積み重ねられ、趣味への向き合い方の一つの答えかもしれない。 テレビアニメ未見でも話についていけるが、知っていれば分かる感慨深いシーンが数多く散りばめられていた。 彼女たちは10年後も、家庭を持っても、これからもきっと変わらないのだろう。[映画館(邦画)] 7点(2024-02-24 00:36:44)《改行有》

15.  落下の解剖学 《ネタバレ》 有罪か、無罪か? 自殺か、他殺か? そんなものはどうでも良くて、裁判によって暴かれる夫婦の拗れを中心に据えている。 親密な夫婦仲でも所詮は赤の他人。 交通事故による息子の視覚障害から始まる生活苦、作家志望の夫の嫉妬と余裕のなさ、他方では妻の成功、やがて… ある家族の一年間を断片的に見て、分かった気になって、 エンタメとして消費しているだけでしょ?と問われている気がした。 そう考えると筋書きは至ってシンプルで下手したら何も起こらない。 勝手に期待して盛り上がっている傍聴席の我々に対するフランスらしい皮肉が効いている。[映画館(字幕)] 6点(2024-02-24 00:16:57)(良:1票) 《改行有》

16.  スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 《ネタバレ》 スパイダーマン=ピーター・パーカーとは誰か?に対する一つの答え。 MCU作品というより、歴代スパイダーマン映画への気配りがされており、 トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドとの共闘だけでなく、 歴代ヴィランたちもウィレム・デフォーを始めとするオリジナルキャスト大集合でよく揃えたものだ。 一番盛り上がったのは彼ら一人ひとりが登場していき、一つに集束していくことだろう。 それ故に、マルチバース設定を使いたいがために、強引で余計な展開が際立ってしまった。 進路を理由にピーターが余計なことをしなければ何も起こらなかった話であり、メイ叔母さんはただの犬死に近い。 ヴィランの救済なんて、こちらの世界線には何の関係もありゃしない。 なので感動する展開も間延びした印象を受けてしまう。 狂いに狂った時空の歪みを修正するため、ピーターの再度の願いで彼自身、忘れ去られた存在になっていく。 アベンジャーズにいたことも誰も知らない。 自分自身に親友や恋人もいたことも誰も知らない。 孤独になったスパイダーマンは真の意味で"親愛なる隣人"としてスタートを切る。 ほろ苦さを感じさせるも重い宿命を背負う、スパイダーマンならではの完結編だった。[地上波(字幕)] 5点(2024-01-29 21:56:30)《改行有》

17.  ヴィーガンズ・ハム 《ネタバレ》 衝動的に殺した過激派ヴィーガンの肉を勘違いで売ってしまい、繁盛してしまう肉屋の夫婦。 グロはあれど臓物系・欠損死体なし、作り物感も強く、90分未満の上映時間でテンポ良く進んでいく。 さしずめ『スウィーニー・トッド』をもっと軽くポップに仕上げたブラックコメディ。 (どちらかと言えば、『シリアル・ママ』に近い)。 …と題材は面白そうだけど、期待が大きすぎた。 笑えるシーンはあれど、後半から失速して妙にシリアスになってしまったのが原因。 元から冷めているようで次第に狂気を帯びていく妻に、殺人に葛藤していく内に戻れなくなっていく夫。 経営も結婚生活も破綻寸前で、過激派ヴィーガンの言動と嫌味な同業者夫婦に一線を越えていく説得力はあるけれど、 もっとコメディに振り切っても欲しかった気がする。 ラストの一言である「ウィニー」に全てが詰まっている。 心臓病を抱え不遇な境遇を持った善人であり、彼の死で止めるか、エスカレートしていくかの分水嶺だった。 過去の発言を悔い、価値観の異なる人たちを理解して歩み寄ろうとした娘の彼氏もいたが、 夫婦にとって肉付きの良い女子供すら食糧としか見ていない皮肉。 極端なヴィーガンも問題だが、その逆も同レベルでしかない。 カニバリズムによる食欲減退で菜食主義者になりそうなメタな構図を鮮やかに切り取る。 元々胃腸が弱く、お腹に溜まりやすいので肉は消極的だが、思想を押し付けず、黙って命を頂くとしよう。[インターネット(吹替)] 5点(2024-01-27 12:48:10)《改行有》

18.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 山崎貴は苦手な監督だ。 『ALWAYS 三丁目の夕日』『STAND BY ME ドラえもん』のような感動ポルノ並みのゴリ押し、 『リターナー』みたいにハリウッドの名作SFアクションのパッチワークでそこに新たなオリジナリティもなく。 未見のドラクエ映画でいろいろやらかしたことも知っている。 その本作がアメリカで、 クリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』の姉妹作に近い立ち位置の絶賛を受けており、 モノクロ版をきっかけに鑑賞することにした。 既にレビューにある通り、過剰にウェットな人情ものが迫力ある容赦ないCG演出と上手くマッチしており、 モノクロによって監督特有の作りもの感が軽減されているのも大きい。 余計なものが削ぎ落され、見易くなったとも言える。 それでも人間ドラマと演出にもう少しドライさは欲しかったし、 中盤で死んだヒロインが実は生きていたというご都合展開はどうかと思ったけどね。 もちろん不穏な要素が隠されているのは分かったし、初代ゴジラとの間にもう一本続編を作るかもしれない。 まあ、つまり言えることは、悔しいが良作ということ。 8点でも良かったが、結末が分かってしまう脚本&ミスマッチでクドいドラマパートに-1点、7点献上します。[映画館(邦画)] 7点(2024-01-12 23:12:28)《改行有》

19.  RRR 《ネタバレ》 『トップガン マーヴェリック』と並び、2022年を代表する洋画ということで今更ながら鑑賞。 実在した二人の独立運動家が空白の4年間に出会っていたらを描いた、究極の"ファンタジー"であり、 ブロマンスものとしても共闘胸熱アクションが次から次へと繰り広げられ、3時間がそこまで長くない。 盛り上がりが延々と続いて、最終決戦が物足りないジレンマはあるけど。 "ファンタジー"と称した通り、史実にないインド総督を倒して歴史改変している。 (スコット総督は流石に架空の人物だがモデルはいる)。 そのためイデオロギーは感じなくもないが、あれだけ現実離れした展開ばかり続いたら、 重いテーマなどどうとでもよくなってしまう。 一応綺麗にまとまっているものの、続編の世界を見てみたいと思わなくはない。 ツッコミどころ満載を力業でエンタメに昇華させたS・S・ラージャマウリに拍手。[インターネット(字幕)] 7点(2024-01-01 20:29:24)《改行有》

20.  劇場版 SPY×FAMILY CODE: White 《ネタバレ》 描かれている内容はいつものSPY✕FAMILYです。 劇場版のため、相応のスケールになっているものの脚本が大味すぎる気がする。 第一印象としては映画クレヨンしんちゃんを少々シリアスにスタイリッシュにしながらも適度にギャグ多めと。 『暗黒タマタマ大追跡』『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』ぽさが随所に見られる。 タイプFはともかく、スナイデルとドミニクとルカがボコられてそのまま退場は消化不良。 末路等もう少し掘り下げて欲しかったなと。 ロイドもヨルも立ち回りが凄すぎて、アーニャに隠す素振りも見せず、 三者三様、互いに正体がバレてもおかしくないのに。 ロイドの異動危機や浮気疑惑や伝統菓子がクーデターに絡むには弱めで、 早い段階で解決かあちらから自滅という形で収束。 フォージャー家以外の準レギュラーは顔見せ程度のちょっと台詞があるくらいで(フィオナはやや優遇)、 興行成績次第ではシリーズ化を見込めることも視野に、彼らの活躍は次回に持ち越しかもしれない。 そういう意味であえて腹八分目でこれからを手探りしているとも言える。 世界観とキャラクターの最低限の説明があるため、原作及びTVアニメ未見の人でも楽しめるだろうし、 一種のお祭り映画やファンムービーとして見ても作画もアクションもクオリティが高い。 とは言え、一本の映画として見るなら期待値を下げて見ることを勧める。[映画館(邦画)] 6点(2023-12-29 01:16:51)《改行有》

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