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プロフィール
コメント数 1888
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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181.  T2 トレインスポッティング 《ネタバレ》 前作から20年、あのどうしようもないクズどもが中年になって帰ってきた!!前作をこよなく愛する自分としては、あの四人に再び出会えただけで感激ですわ。てか、20年も経ってんのにどいつもこいつも相も変わらずのクズっぷりに――シックボーイはヒモになってるおねーちゃんを使って美人局、スパットはヘロインが止められず相変わらずどん底生活、ベグビーはイタい性格が災いして長年の刑務所暮らし、そして前作でクズから脱却したかと思われたレントンも冴えない中年に――もう苦笑いしながら最後まで楽しまさせていただきました。何気にお遊び好きの女子高生だったダイアンが敏腕弁護士になっていたのも嬉しいサプライズ。ダニー・ボイルは歳とっても映像&音楽センスが全く衰え知らずですね~。なかなかナイスな続編の登場でございました。[DVD(字幕)] 8点(2018-04-25 23:11:30)

182.  ハクソー・リッジ 《ネタバレ》 良心的兵役拒否者としての信念から銃を手にすることを一切拒否、しかしながら衛生兵として多くの負傷兵の命を救った一人の男の姿を実話を基にして描いた戦争ドラマ。舞台となるのは第二次大戦中、日本国内では唯一大規模な地上戦が行われた激戦地・沖縄。監督は、私生活でいろいろと問題行動の多いメル・ギブソン。この人の思想信条や考え方、そして宗教観は個人的には嫌いなのですが、それでも映画監督としての才能はやっぱりピカイチなんですよねー。完成度は抜群に高いです、これ。前半、誰に何と言われようと銃を手にすることを一切拒否し、周りに迷惑をかけまくる主人公には同僚でもなんでもない観客の僕たちまでイライラさせるとこなんてホント巧い。「じゃあ兵隊に志願なんてするなよ!」と誰もが思うことでしょう。アンドリュー・ガーフィールドの頑固で変わり者キャラがばっちり嵌まっててなかなかナイスなキャスティングじゃないでしょうか。後半、壮絶な沖縄戦に突入してそんな頑固者の主人公が一転して英雄となり周りからの信頼を勝ち取ってゆくとこもカタルシスがヤバいです。なかなかよく出来た脚本と言えるでしょう。凄惨を極めた戦場描写も容赦がなく、地面にごろごろと転がっている無残な死体の中を自らの命を顧みずに走り抜けてゆく兵士たちからは一秒たりとも目が離せません。皮膚の焼けただれる臭いが今にも漂ってきそうな火炎放射器の炎、そこらへんに容赦なく散らかった剥き出しの内臓や千切れた手足、我先にと餌にありつく巨大なネズミたち…、リアリティに満ち溢れたそれらの描写には日本人としてとても胸に迫るものがあります。まあこの監督らしい一面的な描き方――例えば、襲ってくる日本兵が全員野蛮な狂信者として描かれているとことか、これを観たアメリカ人にまた原爆投下肯定論者が増えそう――は、相変わらずですけれども。それでも悔しいかな、日本人としてそんな微妙な部分も作品としての質が大幅にカバーしちゃってます。全編に貫かれるキリスト教礼賛描写も鼻につきますが、総合的な完成度はすこぶる高い戦争ドラマの秀作と言わざるを得ません。[DVD(字幕)] 8点(2018-04-05 03:25:32)

183.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 社会の片隅でひっそりと暮らす口の利けない女性と、アマゾンの奥地で捕らわれた謎の半魚人との一風変わったラブストーリー。印象的なシーンも多く、テーマも分かりやすく深い。そしてギレルモ・デル・トロ監督らしい、細部にまで拘った独創的な映像美が素晴らしかったです。水没した部屋の中で二人でダンスを踊るシーンは、最近観た映画の中でも出色の名シーンでした。個人的には『パンズ・ラビリンス』の方が好みだけど、こちらも充分楽しめました。8点![映画館(字幕)] 8点(2018-03-19 23:03:50)

184.  アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 《ネタバレ》 ケニア、ナイロビ。スラム街の一画に佇む、何処にでもあるような平凡な一軒家。誰にも悟られることなく遥か上空からこの家を監視する“目”がある。一瞬にして目標物を破壊することが出来るミサイルを搭載した、その目とは、無人偵察ドローンだ。遠く離れたロンドンからその目を通して現地を観察するのは、英国対テロ特殊部隊パウエル大佐。イスラム過激派アル・シャハブのテロ行為を阻止することが彼女の主な任務であり、今回の作戦は六年間地道に追い続けてきた組織の幹部を捕獲するためのものだ。遠く離れたネバタ州からドローンを遠隔操作するアメリカ海兵隊や現地で実際に突入するケニア軍らの協力を得て、今まさに作戦を実行しようとしていたその時、パウエル大佐は予想外の事態に直面する。テロ組織の幹部たちが突如、アル・シャハブ支配地域に移動したばかりか、そこで自爆テロを実行するための準備をし始めたのだ。大規模な戦闘となるためケニア軍は動けず、テロを阻止するためにはドローンからのミサイル攻撃しかない。政府の制服組やアメリカとの緊迫の交渉の末、民間人の犠牲を払ってでも攻撃を実行するしかないという結論に達したその時、そのアジトの裏で何の罪もない一人の少女がパンを売り始めたのだった…。自爆テロを実行されれば最低でも80人規模の犠牲は避けられない。だが、そのために無垢な少女を犠牲にしてもいいのか。パウエル大佐はぎりぎりの決断を迫られる――。ヘレン・ミレンやアラン・リックマンをはじめとする実力派の役者陣が織りなす、この緊迫感に満ちた駆け引きは非常に見応えがありました。責任の押し付け合いばかりを繰り返す官僚や政治家、彼らに翻弄される軍事作戦の責任者、ドローンから実際にミサイルを発射するアメリカ軍の兵士、現地で危険な任務にあたるケニア人、正義の名の下にテロを実行しようとするイスラム過激派、そして何も知らない無垢な少女…。一つも先の読めない展開は最後まで緊張感を途切れさせることなく続き、まるで自らも議論に参加しているような錯覚さえ起こさせます。非常に考え抜かれた優れた脚本と言っていいんじゃないでしょうか。監督は、かつて南アフリカの悲惨な実情を無垢な少年の目線で描いた『ツォツィ』を撮ったギャビン・フッド。なるほど、この全編に漲るリアリティはこの監督ならではのものだったのですね。物語の最後、事態は悲惨な重たい現実を迎えます。何が正解で何が間違っていたのか――。明確な答えなどない現実を監督は容赦なく観客に提示して終わっていきます。なかなか深い問題を描いた社会派ドラマの秀作でありました。[DVD(字幕)] 8点(2018-03-16 01:31:30)

185.  マリアンヌ 《ネタバレ》 第二次大戦下のフランスとロンドンを舞台に、国際政治の非情な駆け引きに翻弄される一組の夫婦の愛と葛藤を壮大なスケールで描いたラブ・ストーリー。監督はエンタメ映画の巨匠ロバート・ゼメキス、夫婦役には美貌と実力を兼ね備えた人気俳優ブラッド・ピットとマリオン・コティヤール。もうこの三人がそろった時点で映画としての満足度は保証されたようなもの。実際、すんごく面白かったです!!大人の恋物語でありながらちゃんとスパイものとしてのサスペンスも失っていない。砂塵に覆われた車の中での誰もが見惚れるほどの情熱的な二人のベッドシーンにため息し、ドイツ大使の暗殺シーンではタイムリミットが迫る中での二人の緊張感にハラハラドキドキ。そして後半、スパイ容疑を掛けられた妻への愛と疑いの狭間で苦悩するブラピには素直に共感。そして最後、娘のために下した二人の決断…。なんとも切ない幕切れには涙せずにはいられませんでした。うん、充実した映画体験をさせてもらいました。8点![DVD(字幕)] 8点(2018-02-28 21:37:25)

186.  ソーセージ・パーティー 《ネタバレ》 お客様に買われて外の世界に出てゆけば、きっと天国に行けると信じて疑わない食品スーパーの陳列棚に並ぶ食品たち。だが、なんとしてもパンの割れ目に挿入されたいソーセージのフランクはひょんなことから真実を知ってしまい…。というドタバタをフルCGアニメで描くブラックコメディ。え、なんか普通に面白かったんですけど、これ。ヒットラーザワークラフトに追い出されてBBQコーナーに収容されたユダヤベーグルとか、密輸入品ばかりのメキシコ食品コーナー等々、けっこう際どい政治ネタも面白かったですし、ドラッグでハイになってるダメ男の末路なんて普通に笑っちゃいました。悪役がビデなんて反則だし、奴が最後に店員を操る方法とか悪趣味すぎて最高です(笑)。そしてクライマックスの怒涛の展開なんてもう爆笑。何気に、物語が神と人間という普遍的哲学のパロディとなってるのもいいですね。惜しむらくは最後のオチ。あの変なメタフィクション的展開は正直いらない。最後、悪徳の限りを尽くす地となってしまったあのスーパーマーケットには、やはり神の鉄槌を下してもらわないとダメでしょ。最後、悪徳の限りを尽くす地となってしまったあのスーパーマーケットには、やはり神の鉄槌を下してもらわないとダメでしょ。そう、ソドムとゴモラのように、ね。[DVD(字幕)] 8点(2018-02-04 23:26:09)(良:1票)

187.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 でっかい猿とでっかいトカゲ(あとクモやら鳥やらバッタやら笑)がひたすら戦ってるだけなんですけど、単純明快でめっちゃ面白かったっす!![DVD(字幕)] 8点(2018-01-01 22:06:22)

188.  トレジャーハンター・クミコ 《ネタバレ》 東京の片隅で、お堅い金融機関のOLとして働くクミコ。もうすぐ三十歳になろうとしている彼女は、彼氏や仲のいい友達が一人もおらず同僚からも少し浮いた存在だ。唯一の同居人はうさぎのブンゾー。誰にも心を閉ざしひたすら孤独に生きてきた彼女のただ一つの心の慰め、それは90年代に公開されたコーエン兄弟監督の映画『ファーゴ』のビデオを何度も何度も繰り返し観ることだった――。そう、実話を基にしたというその犯罪ドラマの中で登場人物が埋めたという大金が、まだ実際に埋められていると彼女は本気で信じ込んでいるのだ。テープが擦り切れるほど何度も見返すうちに、いつしかクミコはその大金を手に入れるのは自分しかいないと本気で信じるようになる。やがて日常の様々なストレスに耐え切れなくなったクミコは、ある日、ついに行動にうつす。図書館で舞台となったノースダコタ州の地図を盗み出すと会社のカードを無断で使い、彼女は誰にも知られることなくノースダコタの凍てつく大地へとやってくるのだったが…。アメリカで実際にあったという日本人女性凍死事件を基に、神経を病んでしまったそんな一人の女性の孤独な旅路を淡々と描いたロード・ムービー。という設定だけ聞けば変なキワモノ系映画だと思われそうだけど(実際僕もそうでした)、これがどうしてなかなかの掘り出し物でした。主人公であるクミコは何らかの精神疾患(恐らく妄想型の統合失調症)を患っていると思われるのですが、この作品が優れているのは、そんな病んだ主人公目線で世界が描かれているところでしょう。他人から見ればどんなに荒唐無稽でイタい行動だとしても本人にとってはとても切実なのです。その切実さがちゃんと観客にも共感できるように撮られている。なかなかいいセンスだと思います。印象的なシーンも多く、前半の日本パートで描かれるクミコの鬱屈した日常生活、例えば剥き出しの黒いビデオテープをトイレに流したり電車の中にうさぎを置き去りにするシーンなど、異常としか言いようのない行動なのにどれも暗鬱な美しさに満ちています。一転してノースダコタ州に辿り着いてからの一面に拡がる奇麗な銀世界の映像も、クミコの心情の変化を的確に表していて感動的ですらありました。そんな今にも壊れてしまいそうなクミコという難しい役を静かに演じきった菊地凛子も良かったですね。客観的に見れば悲劇としか言いようのないお話なのだけど、人とは違う感性を持ったこのクミコという女性の切実さに僕は深く胸打たれました。人にとって希望とはなんなのか?終わった後もいろいろと考えさせられるなかなかの佳品と言っていいでしょう。[DVD(字幕)] 8点(2017-12-11 22:14:20)(良:1票)

189.  裸足の季節 《ネタバレ》 トルコの閉鎖的な田舎町で厳格な叔父に育てられる5人姉妹の抑圧された青春の日々を、息を呑むほどの美しい映像で描いた抒情的な作品。なんとなくソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』みたいな感じなのかなと思いながら今回鑑賞してみました。確かに彼女の作品の影響を色濃く受けているのですが、これはこれでなかなか面白かったですね。コッポラ作品にはない本作ならではの美質は、美しい映像の裏に適度に配された明確な政治的メッセージでしょう。すべての女性を男の都合のいい価値観の元に縛り付ける前時代的な考え方――結婚するまで処女を守り通すことが最上の貞節とされ、初夜の夜にわざわざ夫の家族がシーツが血に染まっているかを確かめに来るような――に対する怒りが、作品の通奏低音となって詩的で美しい映像にいいアクセントをくわえている。また美しい5人姉妹を演じた少女たちの自然な演技も素晴らしく、特に末っ子を演じた女の子が時おり垣間見せるきらきらと輝くような笑顔なんてとても良かったです。うん、なかなかの良品でありました。8点![DVD(字幕)] 8点(2017-10-08 23:54:18)

190.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 私の天使、天から落ちたひと――。1950年代のニューヨーク、まだ同性愛に厳しい保守的な思想が色濃く残っていたこの時代。デパート店員として平凡な日々を過ごしていたテレーズはある日、運命の人と出逢ってしまうのだった。相手の名は、キャロル。愛のない結婚生活に終止符を打ち、かけがえのない一人娘とともに新たな生活に踏み出そうとしていた美しい女性だった。人目を忍んで何度も逢瀬を重ねた二人は、ある夜、重大な決断を下す。「このまま何もかもを捨てて二人で旅に出ましょう。気の赴くまま、どこまでも西へと……」。離婚するなら娘の親権は渡さないと強硬な態度に出る夫、どうせすぐに自分の元へと戻ってくると言い張る横柄な彼氏。面倒なしがらみを一切捨てて、ただ運命の赴くまま西へと逃避行を続けてゆくキャロルとテレーズ。やがて、二人は女同士の友情を遥かに超えた運命の恋という名の美酒に溶けてゆく……。同性愛者でもあった人気ミステリー作家が別名義で発表した恋愛小説を詩情豊かに映像化した大人のラブストーリー。この映画の最大の美点は主役を演じた、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの二人の魅力に尽きると思います。社会の理不尽な仕打ちに抗うためプライドと美意識で必死に武装するキャロル、かたや自分の感情に常に忠実であろうとする若く美しい女性テレーズ。正反対であるがゆえ、またどちらも社会の中で生まれついてのマイノリティであるがゆえに、お互いの魅力に強く惹かれ合ってゆく二人。極めて純粋で情熱的な愛の形をこれほどまでに美しく演じた彼女たちの奇跡の共演に、最大限の賛辞を贈りたい。特に、二人が初めて身体を重ね合わせるシーン、僕がこれまで観たすべての映画の中でも比肩しうるもののない、もっとも官能的で美しいベッドシーンでした。もちろんそんな二人の複雑な心理を繊細に紡いだ、監督の演出力の高さも忘れてはなりません。女と女という狭い枠を超越する普遍的な愛の物語。至高の映画体験をさせてもらいました。8点。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-11 00:01:37)

191.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 カトリック教会の神父による児童への性的虐待事件――。疑惑を摑んだボストングローブ紙の記者ロビーは独自に調査を開始する。事件に関わった弁護士、金銭的リスクを恐れてやむなく示談に応じた被害者たち、地道な活動を続ける被害者支援団体、多くの関係者に取材を重ねていくうちにやがて、とても信じられないような驚愕の事実が明らかとなってくる。児童への性的虐待を繰り返していた神父の数はボストンだけで約90人にものぼり、この教区を統括していた枢機卿も事実を把握していながら黙殺していたかもしれないのだ。「この件は必ず公にしなければならない。被害者のためにも…」。ロビーをはじめとするグローブ紙の4人の記者たちは、自らの生活を犠牲にして追及の手を深めていくのだったが…。強大な権力を有するカトリック教会内で明らかにされた一大スキャンダル。本作は、そんな忌まわしい事件の真相を決死の覚悟で追った記者たちの姿を実話を基にして描いた社会派ドラマだ。非常に地味な作品である。扱っている事件こそスキャンダラスではあるものの、ドラマの焦点はそこに絞られることなく、あくまでその後に起こった出来事をただ淡々と描写してゆくのみ。主人公をはじめとする記者たちにも特別な個性があるわけでもなく、魂を揺さぶるようなドラマティックな出来事が起こるわけでもない。ただひたすら地道に取材を重ね、隠された真実を明らかにしようという記者たちの姿がそこにあるだけだ。だが、これこそがより多くの人に伝えるべき本当の真実ではなかろうか。世の中には理不尽な出来事や人間の強欲や悪意が満ち溢れ、その陰で犠牲とならざるを得ない社会的弱者が大勢いる。でも、それだけではない。彼らのような人間もまた社会には――少数かもしれないが――存在するのだ。社会の片隅で誰にも気づかれず声にならない声で泣き続けている人々。そして見返りなど何も期待せず彼らを救おうとあらゆる手段を講じようとする人々。彼らの声に耳を澄ませることもまた映画の役割の一つだろう。なかなかの力作と言っていい。地味な作品ながら本作にアカデミー作品賞を与えたハリウッドもまだまだ捨てたもんじゃない。[DVD(字幕)] 8点(2017-06-30 00:20:39)(良:1票)

192.  ナイトクローラー 《ネタバレ》 生まれもっての偏屈な性格とプライドの高さから周囲の者とうまく馴染めず、社会の底辺を這いずりまわるような生活を送っていたコソ泥、ルイス・ブルーム。学歴も特殊な技能もなくまともに面接すら受けられなかった彼は、ある日、事故現場の凄惨な映像をカメラに収め、テレビ局に高値で売り捌く報道カメラマンという仕事と出会う。血まみれで横たわる被害者、銃を振り回す犯罪者、嘆き悲しむ家族たち…。人々の歪んだ好奇心を満たすために、瞬く間に消費されてゆくカメラの向こうの赤の他人たち。直感的に自分に向いていると感じた彼は、次の日にはカメラを買い求め、刺激的な〝画〟を撮るために夜の街を彷徨い歩くようになるのだった。持ち前の執念深さと冷徹な性格から着実に実績を上げてゆくルイス。新たに助手も雇い、厳しい視聴率競争に明け暮れるテレビ・ディレクターという顧客も確保した彼は、さらなる飛躍を図るため、人として踏み越えてはいけない一線を易々と越えてしまう――。人の不幸を食い物にして金を稼ぐそんなパパラッチたちの世界を描いているのだが、いやはや、これが実に面白い。ぎょろりとした目で訥々と持論を述べる気持ちの悪い主人公(ジェイク・ギレンホールがまさにはまり役!)に、最初は嫌悪感しか湧いてこない。だが、彼のそのプロに徹した仕事ぶりに、観客である僕たちももっと刺激的な画を求めてしまうようになるのだ。人の不幸は蜜の味とはよく言ったもの。最後など、彼の違法すれすれの計画がうまくいくようにと思わず応援してしまうほどだ。表向きは嫌悪感をあらわにしながらも、それでも本音では刺激を求めてしまう。人間とは罪深い生き物だとつくづく考えさせられてしまう。最後、この主人公に当然のように正義の鉄槌が下されると信じていた観客の期待を軽々と裏切る、後味の悪い展開も巧い。誰もが心に抱えているだろう闇を巧妙に突く、高度に考え抜かれた完成度の高い脚本だ。なかなか刺激的な映画体験をさせてもらった。この監督の次回作も期待して待ちたいと思う。[DVD(字幕)] 8点(2016-12-21 22:59:14)(良:1票)

193.  ザ・ウォーク 《ネタバレ》 1974年、ニューヨーク。完成間近の世界貿易センタービル、通称ツインタワー。当時世界最高の高さを誇ったこのビルで、誰にも成しえない偉業を達成した男がいる。男の名は、フィリップ・プティ。自称・世界最高の綱渡り師だ。そう、彼はその2つの超高層ビルの屋上にワイヤーを張り、命綱なしで横断することに成功したのだ。本作は、彼とその仲間たちによる狂気と紙一重のそんな無謀な挑戦をスリリングな映像で描いた超一級のエンタメ映画だ。ストーリーは極めてシンプル。エンドロールを迎えるまでの2時間強、この世界最高の危険な綱渡りを彼が如何にして成功させたのか、そこにどんなドラマがあったのか、ただその一点のみを描いている。偉業と言えば聞こえがいいが、彼らがやっていることは完全に犯罪行為。成功したからよかったものの、もし仮に彼が転落したりワイヤーが切れて窓硝子を割ったりでもしたら下手をすれば死人だって出たかもしれない。ただでさえ忙しい警察の業務を妨害したことも当事者にとってはたまったものじゃないだろう。でも、僕はそれでも彼らに成功してほしいと応援せずにはいられなかった。決行当日、様々な困難に出遭い一時は失敗を覚悟しながらも不屈の闘志でもって2つのビルにワイヤーをかけようとする彼らに、「それだけの情熱があるなら、もっと社会にとって有意義なことに活かせよ!!」という突っ込みなどまるで風に流される青空の白い雲のように霞んでしまう。ただ自分を待ってくれている人に心の底から楽しんでもらえたらそれでいい――。彼の無謀な情熱は、どこか映画作りのそれと似ていないだろうか。一人の男の馬鹿げた挑戦を最新の映像技術を駆使して何ヶ月、時には何年もかけて一本の映画に仕上げてしまうスタッフ及び監督の情熱とそれは根本的なところで繋がっている。フィリップと、稀代のエンターテイナーとして常にハリウッドの第一線を走ってきたロバート・ゼメキスの思いがオーバーラップするからこそ、観客である自分は思わず心揺さぶられてしまうのだ。クライマックス、ビルとビルの屋上にかけられた1本の弱々しいワイヤーの上へとフィリップが最初の一歩を踏み出すときの緊張感は、きっと映画が公開される直前の監督の緊張感と通じている。まさに、エンターテイメント・ショー。お金を払って観に来てくれた観客に最高の時間を過ごしてもらいたい、そんなゼメキス監督の表現者としての矜持に僕は最大限の賛辞を贈りたいと思う。[DVD(字幕)] 8点(2016-11-04 01:09:06)

194.  インサイド・ヘッド 《ネタバレ》 父親の都合でそれまで暮らしてきたミネソタの田舎町から突然、大都会サンフランシスコへと引っ越すことになった11歳の少女ライリー。ところが夢見ていた新居は薄汚れた狭いアパート、おまけに引越し業者の手違いで荷物は一向に到着せず、優しかったお父さんもお母さんもずっとイライラしっぱなし。おまけに転校した先の学校では新しい友達にもうまく馴染めず、ライリーの心はどんどんと沈んでゆくのだった。そんなライリーの頭の中をこっそり覗いてみると――。そこには常に天真爛漫なヨロコビ、いつもめそめそしているカナシミ、いつだって不機嫌なムカムカ、絶えず不安なことを考えてしまうビビリ、今にも噴火しそうなイカリ、そんな個性豊かな〝感情〟たちがライリーを見守っていたのだった。ところがある日、カナシミとヨロコビが頭の中の司令室から飛び出してしまう……。いまや3Dアニメーションの代名詞とも言えるピクサーの新作は、そんな一人の少女の頭の中を想像力豊かに擬人化した冒険活劇でした。自分、こういう少女の頭の中をファンタジックに映像化した作品に弱いんですよね~。記憶の貯蔵庫や映画撮影所のような夢製作現場、見ているだけでワクワク感が止まらないイマジネーションランド等々、彼女の頭の中がとても魅力的な舞台として視覚化されていてすんごく良かったです!ライリーの頭の中だけが舞台なのかなと思いきや、途中、お父さんやお母さんの頭の中も見せてくれたり(しかも、お母さんの頭の中はカナシミ、お父さんの頭の中はイカリがそれぞれ主導権を握っているところなんか凄くリアル)、ガムのCMソングがどうしても忘れられないと思ったら作業員が毎回司令部に戻していたりと遊び心も満載で大変グッド。特に僕は、近道として抽象概念の部屋に入った主人公たちがどんどんと単純化された二次元アニメになって最後は色と物だけになるという、ポップとシュールが渾然一体となったマジカルなシーンにもう痺れちゃいましたわ。ただ一つ不満な点を挙げるとすれば、物語で重要な役割を果たすビンボンというキャラクターが正直微妙でいまいち魅力を感じなかったところですかね。もうちょっと可愛くすれば良かったのに…、と思ってしまったのは僕だけなのかな。とはいえ、思春期に差し掛かった少女が如何にしてままならない現実と折り合いをつけ大人になってゆくのかという、考えてみればとても深いテーマをこれだけのエンタメ作品に仕上げてしまうピクサーの手腕にもはや脱帽です。うん、8点![DVD(吹替)] 8点(2016-08-22 23:55:16)

195.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 『バードマン』――。それはかつて、スーパーヒーローものの走りとして世界的に大ヒットしたエンタメ・アクション映画だ。主役を演じたリーガン・トムソンは、世界的なハリウッドスターとなり人気を博したものの、それ以降はヒット作に恵まれず、いまや落ちぶれてくすぶり続ける日々を送っている。そんな彼が再起を賭け、主演・脚本・演出を担当した舞台劇をブロードウェイで公演しようと奔走するのだが、次から次へとトラブルが巻き起こり、現場は大混乱に。降板した共演者の代役に抜擢された若手俳優はその自由奔放な言動で現場を掻き回し、薬物中毒でリハビリ中の娘からは常に目が放せず、プロデューサーはいつも金のことで文句を言い、恋人からは妊娠を告げられる……。彼の神経はどんどんと追い詰められ、やがて彼が演じた〝バードマン〟が彼の頭の中で罵詈雑言を囁き始めるのだった……。そんな妄想と幻聴に苛まれる元人気俳優の狂乱の日々をシニカルかつパワフルに描いたブラック・コメディ。『ブラックスワン』の中年男性版とも呼ぶべき作品だが、いやはや、これが実に面白い。冒頭からまるでワンショットで撮ったかのようなカットの途切れない演出、主人公の躁状態を表すように絶え間なく鳴り響くドラム音、実生活を否応なく髣髴とさせるマイケル・キートンの鬼気迫るような熱演、そんな全ての物事が加速度的に盛り上がり、臨界点に達したところで急速に崩壊する彼の精神…。妄想と現実を巧みに使い分け、最後まで一切テンションを衰えさせずに突っ走っていくところなど、イニャリトウ監督の才が冴え渡っている。私生活を犠牲にしてでも優れた芸術を生み出したいという、矜持ある表現者なら誰しもが願う(?)思いと、そんな覚悟を嘲笑うかのように量産されるハリウッド的エンタメ映画との相克。芸術畑の批評家ですら、保守的な思想から公平な論評をしようとしない。いったい芸術とはなんなのか?最後、病室から飛び降りたと思しき主人公を大空に見つめる娘の笑顔は、たとえそれが表現者の生活を破壊し誰かの心を深く傷つけてまで生み出されたものであったとしても、それでも人は優れた芸術を求め続けるということを肯定的に表している。映画や舞台のみならず、全ての創作というものを深く考えさせられる、充実した2時間弱であった。[DVD(字幕)] 8点(2016-07-03 22:46:23)

196.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 「凄い!!ぶっ飛んでる!!でも、サイコーに面白い!!」この一言に尽きるんじゃないでしょうか。もうね、映画としては反則と言ってもいいくらい直球勝負の超バカ映画なんですけど、余分なものを一切排除してストーリーを徹底的にシンプルにしたおかげか、なんだか人間本来の生存本能をまざまざと見せ付けられたようなそんな凄みさえ感じさせる作品に仕上がってるんですよ、これ。そう、人間なんて所詮は動物!性欲、食欲、この二つこそが男の生きるエネルギー源!!それがあってこそ社会は繫栄する!そんな男社会の源泉とも呼ぶべき本能に徹底的に抗う女たち……。なんて、深い――、のか(笑)。でも、人間の歴史ってこんなことの繰り返しだったのかもしれないですね。とにかく凄い映画でありました。「女は子供を産む機械」とでも思っている男どもに徹底的に反抗するシャーリーズ・セロン、かっこ良すぎ!![DVD(字幕)] 8点(2016-05-25 23:09:50)

197.  ジョニーは戦場へ行った 《ネタバレ》 第一次大戦中、爆弾の直撃を受け、何年にもわたって寝たきり生活を余儀なくされたアメリカ人将校、ジョニー。しかもその顔面は砲撃で抉られ、目・耳・鼻・口はおろか両手両足さえ失ってしまい、もはや肉の塊と化していた。病院の人目のつかない一室に閉じ込められ、軍の実験目的で辛うじて生きながらえさせられていたジョニー。だが、周りの人間は誰一人として気づいていなかった。そんなもはや人間と呼ぶのさえ躊躇われるほどの哀れな姿となった彼にも、ちゃんと意思や記憶が残っており、一人ぼっちの暗闇の世界で必死になって助けを求めていたことを――。映画は、そんな芋虫のような姿となった現代の彼をおどろおどろしいモノクロ映像で描き、反対に彼の記憶の中や夢うつつの世界を鮮やかなカラー映像で交互に綴ってゆく。本作を観て、自分がまず真っ先に思い浮かべたのは江戸川乱歩の『芋虫』だった。乱歩が苦痛と快楽を極限までグロテスクに描きたかったと後に述懐する『芋虫』は、皮肉なことに左翼思想家に反戦小説と持ち上げられたことで発禁処分となったが、この作品は反対に反戦思想から出発しながら苦痛と快楽の極限をもっともグロテスクに描いた芸術作品として特異な価値を得ているのが面白い。あらためて言っておこう。これは純粋な意味での〝反戦映画〟ではない。この作品は乱歩の『芋虫』と同じく、極限状況での苦痛をマゾヒスティックに描きながら、そこに逆説的な生への賛歌を込めた極めて芸術性の高い変態映画である。最後、芋虫となった自分を見世物として多くの人の好奇の視線に晒してくれ、さもなくば殺せと懇願する彼の願いは究極のマゾヒズムの表明なのだ。どんな極限状況でも人は生きるために快楽を求めるという極めて〝まっとうな〟人間賛歌とも言えよう。ジョニーが夢の中で彷徨う幻想描写も細部までクオリティが高く、特異な芸術作品として未だその価値を一つも失っていない。映画史に残る傑作と言っていい。[DVD(字幕)] 8点(2016-05-02 22:07:19)

198.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 「戦地ではアメリカ兵が毎日死んでるのに、ここじゃ誰もそれを話さなさい。戦争自体ないみたいだ。みんな、自分のことしか考えていない。向こうじゃ戦争やってるのに、みんなケータイ使ってのほほんと暮らしてる。ここじゃ俺は場違いだ。君がなんと言おうと、仲間のために俺はイラクへと戻る」「ねえ、あなた、これは私たちの問題よ。あなたの血圧は普通のときでも170/110もあるのよ。これは異常よ。ねえ、身体だけじゃなく、心も帰ってきてほしい。もう、イラクには行かないで、お願い、子供のために…」――。アメリカ、テキサス州。生まれ育ったその地で、ロデオやデートとただぼんやりと毎日をやり過ごしていた青年、クリス・カイル。だが、ある日、テレビのニュースでテロ直後の映像を見て衝撃を受ける。「国のために尽くしたい」。天啓を得たように、彼はすぐさまアメリカ軍随一の精鋭部隊シールズに入隊するのだった。厳しい訓練を乗り越え、有望な狙撃者となったクリスは、妊娠したばかりの妻を残し、イラクへと派遣される。来る日も来る日も敵を、時には女子供の命でさえ奪い続けてきた彼は、いつしか同僚から〝レジェンド〟と呼ばれる英雄になるのだった。だが、そんな異常な日々を生きてきた彼の精神は徐々に蝕まれ、次第に妻との関係もギクシャクしてゆく…。実話を基に、イラク戦争で幾多の敵の命を奪い続けてきた英雄的スナイパーの生き様を重厚に描き出す戦争ドラマ。名匠イーストウッド監督の、実話を基にしながらもちゃんと観客の胸を打つ物語として再構築してみせるその優れた演出手法はもはや神懸り的ですね。映画が終わり、無音のエンドロールが流れるまでの2時間強の間、緊張感を一切途切れさせずに見せきるその手腕は見事としか言いようがありません。特に、主人公の好敵手となるスナイパー、ムスタファとの息詰まるような心理戦はそんじょそこらのエンタメ映画よりドラマティックで素晴らしかったです!まるで自分も何度もイラクへと派遣されたような気にさえなりました。でも、そこはやはり『ミリオンダラー・ベイビー』や『グラントリノ』を撮ったイーストウッド監督、手放しでアメリカを礼賛するわけでもなく、戦争の負の側面を徹底的に強調する反戦映画とするわけでもない、そのストイックなまでに冷徹な姿勢は深く考えさせられるものがあります。兵士が戦わなければテロリストはテロを繰り返すだろうし、世界各地で行われる残虐行為もなくならない。誰かがやらなければいけない。でも、正義と信じていたアメリカ兵もいつしか非人間的な行為へと染まっていく…。そして、帰国し家族とともに幸せに生きることを選んだ彼を待ち受ける非情な運命…。答えなど永遠に出ない問題に翻弄される人々の苦悩を、この老監督は慈悲深く見つめています。とても優れた物語でした。8点。[DVD(字幕)] 8点(2016-04-06 22:33:39)(良:2票)

199.  肉(2013) 《ネタバレ》 アメリカの小さな田舎町で慎ましく暮らすパーカー家は、偏屈で変わり者の父親と情緒不安定な母親、年頃を迎えた美しい姉妹である長女のアイリスと次女ローズ、そしてまだ食べ盛りの幼い長男ロリーという何処にでもいるような平凡な5人家族。ところが、彼らの周りではここ20年の間に不可解な失踪事件が相次いでいた。ある日、そんなパーカー家の母親が不慮の事故で亡くなってしまう。哀しみにうちひしがれる家族だったが、「こんな状態だが、2日後は〝子羊の日〟だ。いつも通り決行する。これから、これまでママがやって来た役は長女のアイリスに任せる」という父親の宣言の下、彼らはとある儀式の準備に入るのだった。新たに失踪する町の若い女性、かつて自らの娘も失った年老いた医師は、そんな怪しげな家族の真相を探ろうとするのだが……。殺人と人肉食という狂気の伝統を受け継ぐそんなパーカー家の恐ろしい4日間を静謐な雰囲気の中に描き出すサイコ・サスペンス。この奇を衒ったような邦題と、パッケージに書かれていた「注意!この作品には、ショック映像に耐性のある方以外には耐えられない危険な映像が含まれています」との煽り文句に、きっとこれは『マーターズ』系のトンデモグロ映画だと覚悟して鑑賞。なんですが、これがちゃんと撮られた王道のゴシック・サスペンスで、僕のそんな先入観はいい意味で裏切られました。うん、普通に面白かったです、これ。配給会社の「とにかく多くの観客に映画を観て貰わなければ」という思惑は分かるのですが、それでもこの本編とは掛け離れた邦題と宣伝の仕方はどうかと思います。さて、肝心の内容なのですが、これが僕の好みを良い感じでビシバシ突いてくる、全編にわたって不穏で淫靡な雰囲気に満ち充ちたアンモラルな作品でございました。いやー、もうこの一家のとち狂った感じ、なかなか良いですね~。特に、主役である美しい2人の少女が纏う淫靡で怪しげな魅力に僕はすっかりやられちゃいました。長女が森で愛する男と結ばれていたら、そこに唐突に父親のスコップが振り下ろされ娘の胸の上に血がボトボトボトってトコなんかもう監督のセンスが冴え渡っています。他にも、この姉妹が初めての〝行為〟に臨もうと地下室に向かうシーンだとか、このきょうだいが3人並んでベッドに横たわるシーンだとか、随処にデカダンスな抒情性が漂っていて久し振りに次作が楽しみな才能に出会えたように思います。うん、思わぬ掘り出し物でした。それだけにこの奇を衒ったような邦題が残念でなりません。[DVD(字幕)] 8点(2015-08-16 14:41:12)

200.  ニンフォマニアック Vol.1 《ネタバレ》 「聞いてくれる?十代のころ、私は仲間たちとある会を作ったの」「どんな会だ?」「ファックと好色でいる権利の会よ。みんなで一緒にオナニーとかするの…。恋人は持たない。同じ男とは2度とヤらない。私たちは反抗的だった」「そうか…。で、そんな君たちは何に反抗してた?」「愛よ」「愛?」「そう、愛。愛なんてくだらないものに取り憑かれたこの世の中と闘っていたの」――。雪が舞い、冷風吹き荒ぶ寒い冬のとある夜。〝男〟は、道端に痣だらけになって捨てられたある〝女〟を発見するのだった。救急車も警察も要らない、ただ温かい紅茶が飲みたいと願う彼女を〝男〟は躊躇うことなく家へと連れて帰ってくる。〝女〟の名前はジョー。自らを生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”だと言う。雪が降り積もる音まで聞こえてきそうな静かな部屋の中で、ジョーは〝男〟にこれまでの性にまみれた自分の人生を赤裸々に語り始めるのだった…。人間の愚かさや社会の不条理をその冷徹なまでの視線で持って見つめ続けてきた鬱映画の巨匠ラース・フォン・トリアー監督の最新作は、そんな人間の性の醜さをシニカルに描いた意欲作でした。いやー、相変わらずこの人は人間、及び人間の生きる源泉であるはずのリビドー(性衝動、性欲)が嫌いなんでしょうね。なんだか中二病をこじらせた挙句にオナ禁している日本の若い男と精神構造的に似ているような気が…(笑)。でも、本作はそんな自分の言ってしまえばしょーもない悩みをまるで自己戯画化するような視線があって素直に面白かったです。きっと、そんなニンフォマニアであるジョーの話に、倫理観を一切持たずに耳を傾ける聞き手の男は、トリアー自身の投影なのでしょうね。観終わって、僕は遥か昔に読んだ18世紀フランスの自然主義文学の大家モーパッサンの代表作『女の一生』の中に出てくる神父のことを思い出してしまいました。その神父は、とても厳格で保守的でセックスこそが諸悪の根源であると妄信していて、道を歩いていた妊娠中の普通の雌犬を「この淫乱め!」と蹴り上げてしまうのです!馬鹿ですよね。セックスは人間が生きる上での重要な営みであるけれど、だからといって誰彼構わず何処ででもセックスするのは許されない。だから人は、その中間に倫理観という線を引くのだけど、この線引きの位置がいつの世も曖昧なものだから人間は何処までも愚かで社会から不幸な現実はなくならない…。そんな曖昧な線引き(もしかしてその位置を愛と呼ぶのか?笑)なんか完全に無視しちゃっているジョーのセックス遍歴の旅路は観ていて爽快ですらありました。そんなセックス大好きっ子だったジョーが最後に呟く衝撃の発言…(笑)。Vol.2も期待して観てみようと思います。[DVD(字幕)] 8点(2015-08-08 01:56:51)

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