みんなのシネマレビュー |
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701. PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星(TVM) 《ネタバレ》 一見すると(既視感は脇に置いておくとして)ビジュアル的にはかなり頑張って作られていると思います。 海水温の上昇でプランクトンが死滅し、捕食する魚類が激減、結果海の食物連鎖の頂点に立つサメはエサ不足から人間を襲うようになる。氷河が全て融けて地球上の98%が海水に覆われるのかどうかは諸説ありそうですが、一応理に適っているかのように感じさせてくれます。サメたちのビジュアルも過去のサメ映画と比較して遜色はないと思います。使い回し感も然程感じることなく鑑賞できます。 つまりお膳立てはまずまずということです。が、そこはやはり低予算作品ならではの弱みと言いますか、じっくり見て行くといろいろ思い至ってしまいます。 深い海の上を泳いでいるはずなのに、どう見ても浅瀬で四つん這いになって泳ぐふりしているのがマル分かりだったり、カットの始まり部分で台詞の語り出しに微妙な間があったり、要は演出上の粗と言いましょうか。それでOK出すなよ、みたいな。 他にも脚本の問題なのかそもそものプロットの問題なのか、リーダーの博士が自己主張が強烈で人の話に全然耳を貸さない独裁者で感情移入出来なかったりとか、ロケットでCO2の削減装置?を打ち上げてたった半年で完全に水没してた自由の女神が上半身出すほど海面が下がるか?とか、そもそも世界観が狭過ぎて、いくら地球全体が水で覆われてるとは言えアメリカ以外の研究施設だって残ってるだろうに他との調整なしにたった1基しかないロケット打ち上げるか?しかもサメ電源で、とか。気になる点は多々あります。 そして、サメ映画としてのメインであるところの母ザメの正体がイマイチ不明瞭です。突然変異なんでしょうけれど、そこは「ありき」で話が進んで行きます。いきなり進化はないだろうに。 予想外の設定で驚かせてくれるある意味見応えのある作品ですが、あまりに緊張感が薄くシリアスなのかコメディなのかどういうスタンスをもって臨むべきか迷ってしまう作品。でも、結構好きなので甘めの6点献上です。[インターネット(字幕)] 6点(2023-09-11 11:23:49)《改行有》 702. グリーンランド -地球最後の2日間- 《ネタバレ》 問題を抱えた夫婦。愛くるしく賢く、しかし病弱な一人息子。突如襲い来る天変地異。必死に生き延びようとする家族に次々と襲い来る試練。そんな中、深まる家族愛。そして奇跡的に窮地を脱しハッピーエンドへ。デザスター作品の王道を行くような流れですね。 とは言え、一部の特権階級が生き延びようとし一般市民は置き去りにされる中、数々の苦難を奇跡的に乗り越え尊い犠牲を払いながらも主人公たちが生き延びる、みたいな単純に主人公ありき、何でもありの展開ではなく、本人が意図することなく政府に選抜された、いわば選ばれし人々である主人公家族が、思いもよらずふるい落とされ、それでも諦めず這い上がり生き延びるという展開に、地味ながら若干の目新しさを感じました。 ただし、基本はやはり王道の流れ。ハッピーエンドに持って行くには当然ですね。主人公は多少痛い目に遭おうと死んじゃあいけません。最悪でも妻子だけは助からなきゃ。こんな大災害を現実的に描き切ったら人類絶滅、地球壊滅、主人公家族どころか誰一人生き残れません。それじゃあエンタメ作品にはならないわけで、悲観的になるばかりで面白くも何ともないです。だから、これで良いのです。 敢えて不満を言わせていただければ、ラストシーンは不要な気がします。たった9ヶ月で太陽の恵みが大地に降り注ぎ、生き残った鳥たちが空で囀る?そりゃやり過ぎでしょう。だいたいからして、本当の苦難はこれから。復興には何世紀もかかるでしょうし、結局は復興ならず次の数ヶ月で人類絶滅、の可能性の方が大きいかも知れない。シェルターの扉が閉まり、地響きと轟音の中で場面が暗転し、静かなBGMを背景にエンドロールが流れる。後はご想像にお任せします。そんな終わり方の方が良かったような気がしてなりません。 全体的には見応え十分な作品だとは思いますが、ラストシーンで1点マイナスです。[インターネット(字幕)] 6点(2023-08-09 23:19:58)《改行有》 703. ゲット・アウト 《ネタバレ》 人種差別の問題を直接的に提示した上で裏返して再提示するというシニカルなダークコメディ感には新鮮さを感じました。納得の伏線回収と出演者の強烈な演技、さり気ない中に瞬間的な恐怖を盛り込むという演出の数々など、各賞にノミネートされた理由も理解出来ます。 がしかし、何故かのめりこめなかった作品。全編通してのバランス感とでも言いましょうか、前半から中盤まで不気味さと緊張感を絶やすことはないのですが、何か冗長な印象を受けてしまう。私の集中力が低いだけなのかも知れませんが、正直言って退屈な展開でした。それが、終盤になって脳移植の話が明らかになってからは、さながらノンストップムービーとでも言わんばかりに一気に突っ走る。このスピード間の差が何とも居心地が悪かったです。 白人側の目的や手段が明示されれば後は無駄に溜を作るまでもない。一気にクライマックス!という流れは解るのですが、伏線回収が種蒔きよりもスピーディ過ぎて、観終わってから反芻しないと理解出来ない。それはそれで一つの手法なのかも知れませんし、これまた私の個人的な理解力の問題なのかも知れませんが、前半から中盤までのウェイトと終盤のウェイトのバランスが、今ひとつしっくり来ませんでした。 脳移植を一人秘密裏に執刀するマッドサイエンティストや、とんでもない力量の催眠術師、穏やかなようでいて狂暴に豹変して殺人を厭わない主人公、セックス依存症とも思われる多重人格的キャラの主人公の恋人、アホなのか鋭いのか最後まで判らない主人公の親友、脳を入れ替えても本来の人格が残存する魂論的解釈、等々、気になることは多々ありますが、展開と言うか流れと言うか、その辺りが一番受け入れ難く6点献上に留めます。 ちなみに、ハッピーエンドじゃないですよね?ちょっと殺し過ぎました。とどめを刺したりして。無罪放免は難しそうです。ダークと言えどもコメディだからスルー?[インターネット(字幕)] 6点(2023-08-03 12:42:41)(良:1票) 《改行有》 704. テイキング・オブ・デボラ・ローガン 《ネタバレ》 認知症の母親と介護する娘の二人世帯。症状の進行が介護者にも影響していくことを実証するようなドキュメント映画を撮影する医大生たち。という設定で物語はPOVで進みます。序盤は一体これから何が起きるのか、みたいな期待感も湧く雰囲気。 しかし、どうもアルツハイマーの症状にしては激し過ぎるんじゃない?みたいな状況になっていく。このあたりも必要以上にじらさないスピーディな展開に好感が持てます。 そして母親が隠していた秘密。ここで異常事態の発端となった事件が明かされます。そして一気に物語はオカルトの世界へ。オカルト風味になると最早何でもありの世界。本作では待っているのはヘビ地獄でした。 そうなんです、いつも思うのですけれど、悪魔モノとかオカルトものは結局何でもありになってしまう。だからこそ作り手はあの手この手でアイディアを出してくるわけですけれど、序盤の流れを生かしてサイコサスペンスにして欲しかったなぁというのが個人的な願望でした。 ただし、本作についてはストーリー的には成功だったと思います。過去の隠された事件。今や認知症となった母親が隠していた事件との関わり。連続殺人事件の犯人であった小児科医の野望は実は悪霊の野望であって、おそらくは悪霊は小児科医を利用していただけだったと思われ、事件を遮ったデボラが代わりに悪霊に乗っ取られてしまったこと。そして、悪霊の狙いは最後の犠牲者は生かしておいて憑依し、未来永劫世にはびこることだったのかもしれません。なかなかに恐ろしいストーリーです。 しかしながら、アルツハイマーを題材にする必要があったのかは疑問です。製作者は、シンプルにオカルトもの、悪霊モノにせず、更に一枚仕掛けを施したかったでしょうか?今の時代、あまりに身近になってしまった深刻な疾病を、しかも、最も課題となっている家族との関係を入り口に置いたことは、個人的には好ましくないと思っています。 もうひとつ、ドキュメンタリー映画の作成というシチュエーションだからといって、POVにする必要があったのでしょうか?ありがちな「いい加減にカメラ止めろよ!」と突っ込みたくなるような出来栄えではないものの、何故正面から描かずPOVに頼ったのか?そこもどうにも腑に落ちず、結果6点献上に留めておきます。[インターネット(字幕)] 6点(2023-07-31 21:44:19)《改行有》 705. Melanie Martinez: K-12 《ネタバレ》 ヒロインは、個性を受け入れることなく画一的に行われる学校教育に不満を持ち、そんな学校は破壊してしまえとばかりに画策する訳ですけれど、画面全体を彩るパステルカラーの世界には不思議な浮遊感があって、独特の哲学的とも思える詞が綴られる楽曲の数々や子どもとも大人とも思えてしまう様な不安定感たっぷりのヒロインの雰囲気とも相まって、作品全体に独特の世界観が醸し出されています。 決して理屈ではなく、あくまでも感覚的なものとして、ミュージシャンならではのメッセージが伝わって来る印象です。 ヒロインが物語の展開とともに次第に大人っぽくなっていくあたり(表情から子どもっぽさが抜けたり、衣装の露出度が増したり)から、彼女が一歩ずつ成長していく過程が感じられ、それ故ラストシーンで目の前のドア(学校システムから抜け出る)をくぐることを躊躇う彼女の表情からは、実はまだ子どもの世界に留まっていたいという悔しさのようなものが感じられました。 一風変わったミュージカルですが、映画というよりステージで繰り広げられる音楽ライブを鑑賞しているかのような感覚で楽しめました。[インターネット(字幕)] 6点(2023-07-05 22:27:37)《改行有》 706. 15キリングス 《ネタバレ》 この作品で語られて行く物語は、70~80年代にロンドンで起きた事件と酷似しているように思われるのですが、ネットで検索する限りでは「実話」という記載は確認できませんでした。同事件をベースにした映画・TVドラマは他にあるのですが本作はそのラインにはないような? さて前置きはそこまでとして、本作では一貫してシンプルかつリアル、半ばドキュメンタリ―的に連続殺人犯の行動が語られて行きます。基本的には、面会している脳科学者の医科学的解説をなぞるように彼の行動が語られて行くという構成で、それ故にサスペンスドラマでありながらもドキュメンタリー風に感じさせられるのだと思います。 主役のスティーヴ・ボンジョルノという方は他作で拝見したことはないのですが、かなり恐ろしい雰囲気を醸し出していて、脳科学者を演じるマリア・オルセンさんも只管訥々とサイコパスの脳について解説していて恰も本物の科学者のようであり、そのあたりもドキュメンタリー風味を強くしている要因と思います。 個人的に残念だったのは、150人に1人がサイコパスというところで纏めてしまったあたりで、サイコパス=殺人者のように受け取られかねないのでは?という部分です。ドキュメンタリーのようでありながらあくまでもフィクションという作品であることが、医科学的な深掘りを必要としなかったといったところでしょうか?[インターネット(字幕)] 6点(2023-06-28 12:57:11)《改行有》 707. ナイト・チェイサー 《ネタバレ》 主人公は意志弱過ぎな上に基本身勝手過ぎ。親友(悪友)もどうしようもない人物に描かれ過ぎていてどちらにも感情移入は出来ませんでした。更にはヒロインもイマイチと言うかどうでもいい感じ。 そんな訳で、本来は得体の知れないタクシードライバーからの逃避行をハラハラドキドキしながら観ていたいところですが、逆にタクシードライバーの方に声援を送りたくなるぐらいでした。 とりわけ面白くない訳ではない作品、と言うかツッコミどころも非常に多く(そもそもいくらスマホの位置情報があるからってタクシーが神出鬼没的に主人公を追跡出来過ぎ)、ある意味楽しめる作品なのですが、作り手は観客がタクシードライバー側に付くと言う想定では作っていないだろうと思うと、何だかボタンの掛け違いのような気がしてなりません。結果オーライとも言えるかも知れませんが。 そして極めつけはまさかの仕置人誕生物語。想像だに出来ない展開とは将にこのことですね。あっけにとられてしまいました。ルーツは日本にまで遡ると言う飛躍。しかも、後継者には最低ヤローを選ぶという極悪人更生プログラムだったとは。ラストのタクシー(仕置人)大発生には声も出ませんでした。衝撃の展開にあまりにビックリしたので+1点です。[インターネット(字幕)] 6点(2023-04-26 23:54:13)《改行有》 708. 映画「湯道」アナザーストーリー 湯道への道 《ネタバレ》 AmazonPrimeで本編の映画「湯道」に先んじて配信公開された作品。小山薫堂氏がラジオで「湯道」を先に観てから観るべしと言っていたのを聞いていたので本編を観てから鑑賞しました。 なるほど、そう繋がるのですね。本編に出演する俳優さんたちが本人役で登場。所謂スピンオフとはちょっと趣を変えた感じ。そこに至るまでは全く別ストーリーで、こちらは寧ろ映画人のノスタルジーを描いた作品かと思いそうでした。 そして、本編と比べると、こちらの作品はよりベタな邦画コメディ。しかしながら、「湯」の存在を核に置いて描かれる人間模様は、本編同様そっと心を癒してくれます。 この作品を本編を見ずにして単独で鑑賞したのであれば、もしかしたら4点程度かなと思えますが、両方観たことによる相乗効果とも相まって6点献上とします。 それにしても皆さん、良い脱ぎっぷりですね~![インターネット(邦画)] 6点(2023-04-10 23:17:15)《改行有》 709. ノック 終末の訪問者 《ネタバレ》 キリスト教に関しても聖書に関しても知識に乏しい私にとっては、この作品を本質的に理解することは難しいのかも知れません。 迫り来る終末。人類を、そして世界を救うべく神によって遣わされた4人。世界の存亡の鍵となった3人の家族。 唐突に「世界の存亡は君たちの選択にかかっている」と言われても、現実世界に生きる者としては「出鱈目を言うな。そんなトリックには騙されない。」というのは極めて常識的な反応。 更には、暴力的な侵入者であれば「言うことを聞け。聞かなければ1人ずつ殺す。」と言いそうなところを「犠牲者を選べ。選ばなければ仲間を1人ずつ殺していく。」という想定外と言うか、常軌を逸した要求。 シャマラン監督らしい大ドンデン返しはないものの、全てに少しずつボタンの掛け違いがあるような展開。キリスト教的な理解が出来ずとも、想定外の状況に見舞われ究極の選択を迫られた時、人はどのように決断し、或いは決断出来ずとも、どのように行動し生きていくのかという命題を、極めてシンプルに描き切った佳作として受け止めました。 とは言え、万人受けする傑作かと問われれば、子役を含む出演者たちの熱演に支えられながらも、やはり宗教的な色彩が強過ぎることと、そのことに関して少々説明不足と言うか今ひとつ物足りなさを感じたこともあり、6点献上に留めます。 (追記) 長くなってしまったので書くのを躊躇ったのですが、どうにも気になるので腑に落ちない点を追記です。 ・何故主人公家族はゲイのカップル+アジア系少女なのでしょう?結末を原作と大きく変えたことに関係があるのでしょうか?男が二人であればどちらが犠牲になっても問題ないというある意味シンプルな選択なのでしょうか? ・何故養女に口蓋裂の手術跡がある設定なのでしょうか?劇中サラっと触れますがその会話に何か意味を持たせているのでしょうか? いずれも本作の宗教性に関係があるのでしょうか?解りませんでした。[映画館(字幕)] 6点(2023-04-10 00:43:22)《改行有》 710. プラットフォーム 《ネタバレ》 ストレートに受け取れば、この作品は社会の構造的欠陥や資本主義とそこに生きる人間の堕落、歪んだ宗教観等々、いろいろと暗喩しつつ批判的或いは教訓的な色彩を加えているのかなと思いますし、恐らくは作り手はそのような趣旨をもって製作したのでしょう。 肝心の構造物については、登場人物の精神世界を具現化したと思えなくもないのですが(単に禁煙道場でマインドコントロールされている主人公の幻覚とか)、やはり単純に矛盾点をSF的に何でもありにしている実体としての構造物なのだと思います。 必要以上にグロく演出しているように思えて好感度は低いのですが、不条理系SF作品としては大きく破綻してはいないかと思いました。 ただ、邦題は「台座」で原題は「穴」というのは少々気になるところ。配給元としては生きるための糧を載せて各階層を上下する「台座」こそがこの作品を象徴していると解したのでしょうけれど、製作者はあくまでも各階層を良くも悪くも繋いでいるルートとして「台座」よりも「穴」をタイトルに選んだのではないかなと思いました。二者は似て非なるもの。邦題には違和感があります。 それからラストシーン。文字通りのどん底で見出した希望の象徴である幼児を、ゼロ階層に届けることが果たしてメッセージなのか。だとしたら、そこに至るまでのプロセスを考えれば随分と綺麗事過ぎるメッセージであり、恐らくは伝わらないでしょう。少なくとも理不尽な構造を改革するきっかけにはなり得ないメッセージではないかと。 そして、最下層で闇に消えた二人は何処に行くのか。地獄なのでしょうね。であれば、待っていたのは希望のフリをした絶望。救いようのない結末と思えました。[インターネット(字幕)] 6点(2023-04-09 12:08:54)《改行有》 711. シェルター 狂気の秘密 《ネタバレ》 ※思いっ切りネタバレです! 何のひねりもない原題(直訳すると「危険な場所」かな?)だと内容がまるで分かりませんが、観終わってみると邦題のサブタイトル「狂気の秘密」には二つ意味がありそうです。 ひとつはビーの「狂気の秘密」。逃げて来た女性への仕打ちですね。一定期間監禁し、おそらくはその後殺害してコヨーテの餌にしてしまう。ただ、詳しく語られることはないので彼女が何故そんな行動に走るのかは想像するしかありません。それはそれで短い尺の作品としては良いのかも知れませんが、ここは多少尺を延ばしてでもビーの心理や背景を描いて欲しかったです。 もうひとつは母娘の「狂気の秘密」。暴力夫殺害後の後始末は描かれているものの殺害シーンはエンディングまで登場しません。登場してなるほど納得でした。 逃亡中の車中もシェルター生活開始後も、二人の間には微妙な距離感というかズレを感じていましたが無理もないことですね。ダーリーンは夫の存在から逃れた後もビクトリアに新たな恐怖或いは不安を抱いていたということでしょう。 一方ビクトリアも、肉切り包丁や果物ナイフを寝床に忍ばせていないと安眠すら出来ない。父が母に暴行を加える家庭内で身に付いた自己防衛手段なのでしょう。なるほどPG12ですね。 短めの尺の中でシンプルに纏め上げられた作品。上に書いたようにもう少しビーの秘密や心理、その背景を描いて欲しかったと思いやや低めの6点献上です。[インターネット(字幕)] 6点(2023-04-04 10:43:05)《改行有》 712. 健太郎さん 《ネタバレ》 短編作品だけに物語は非常にシンプル。ある家族の日常が、ひとつの悲しい出来事によって音を立てて崩れていく。そして、その鍵を握る男「健太郎さん」。 単純にそのまま受け取れば、ひき逃げ事故の被害者である健太郎さんが、加害者の自宅を突き止めじわじわと苦しめていく物語かと。そして、ある日を境に最期の復讐に走る、といった物語なのかなと思えます。健太郎さんは即座に強硬策に走るのか?はたまた、これから先もじっくりと加害者を苦しめるのか? それはそれで結構ベタな展開ながら物語として十分成立はするでしょう。しかし、その解釈で正しいのか自信が持てません。なので、もうひとつ考えてみました。 事故を契機に半ば心神喪失状態にある母親。平和な家庭生活に没頭することで真実から目を逸らしている。しかし、ある日ついに感情の抑圧はピークに達し精神は崩壊してしまう。玄関を訪ねて来た誰かを被害者(健太郎さん)に置き換えてしまい、実体を伴わない健太郎さんを受け入れることに。全ては彼女の妄念。 いろいろと考えを巡らしながら楽しめる作品でした。[インターネット(字幕)] 6点(2023-03-10 21:40:04)《改行有》 713. パラドクス 《ネタバレ》 難解ですね。作り手が予め抱いていたひとつながりのイメージに肉付けしていった感じ。 ラスト近くで一気に種明かしをするわけですけれど、一種の運命論なのか?それとも変種のパラレルワールド論なのか?正直今もって見出せません。 非常階段の9フロア行ったり来たりや田舎道行ったり来たりという小さなループが、35年間というもう少し大きなループに包含され、更には一人の、と言うより人間誰しものと言った方が良いのかも知れませんが、若い頃の幸福が年とともに不幸へと遷移していく流れへと繋がっていく?この監督さんの脳内イメージには置いてけぼりにされてしまいそうです。 正気と狂気の境界を行ったり来たりの難解なループ。この監督さんの次なる作品「ダークレイン」も併せて観ることをお勧めします。イカレタ世界観にハマるかどうかはアナタ次第。私は今のところ片足ハマって藻掻いてます。なので今のところ6点献上に止まります。[インターネット(字幕)] 6点(2023-03-05 23:52:09)《改行有》 714. ダークレイン 《ネタバレ》 如何にも低予算な雰囲気。アイディア勝負のユニークなホラー。殆どモノクロのような色褪せた色調と、登場人物のオーバーアクションな演技がレトロ感を醸し出しています。 冒頭の30分ぐらいは何だか訳が解らない展開。予備知識なしで観始めたので、コメディなのか生真面目なのか先の読めない展開に呆然。ところが中盤から矢鱈アクティブでスピーディに物語が進んで行き、髭面大発生という果たして笑っていいのかどうか良く分からないカオスな展開に。正直なところ苦笑から大笑いに転じてしまいました。特に人面犬には意表を突かれましたね。 そして終盤にかけての種明かし的展開。まさかの悪魔系だったとは。そうなると何でもありですね。あれよあれよという間に主役に転じた病弱少年の、文字通り悪魔的な微笑みで締めてくれました。 製作者が意図しているのかどうかは分かりませんが、何気にパロディ的な要素も含んだ本作品。最後まで観てみれば、思いのほか楽しめるB級娯楽作品でした。ただし、悪魔的な存在を持ち込んだことで何でもありになってしまった部分は減点要素かな?髭面大発生というオリジナリティ溢れる笑劇の作品だけに、もう少し奇抜な種明かしだったらな、と若干残念な気持ちが残ってしまいました。[インターネット(字幕)] 6点(2023-02-25 23:13:35)《改行有》 715. 守護教師 《ネタバレ》 マ・ドンソクさんとキム・セロンさんのための作品と言っても過言ではないような作品。二人の魅力が画面いっぱいに溢れた作品ですね。行方不明のスヨン役のシン・セフィさんの切なく健気な雰囲気も良かったです。あ、あと主人公の後輩で警察官役の俳優さんの、頼りないようで頼りになる感じも良かったな。 物語としては、サスペンス或いはミステリーとしてのツボをきちんと押さえた上でラストにはサプライズも用意されており、適度な尺とも相まって間延びしたりすることなく楽しめました。が、とは言え小さく纏まった感があり、総じて言えば可もなく不可もなくと言ったところでしょうか。 それにしても、鈍器で殴られようがハサミで刺されようがクルマがクラッシュしようが無敵のドンソクさん。あの二の腕で脇腹にフックを入れられたら、肋骨は勿論のこと内臓関係は大変なことになってしまいそうです。あぁ怖い。[インターネット(字幕)] 6点(2023-02-10 17:34:00)《改行有》 716. マッド・ダディ 《ネタバレ》 1970年代初頭、週刊少年マガジンに永井豪さんの作品で「ススムちゃん大ショック」という短編が掲載されました。後に同氏の「デビルマン」でも同様のプロットが登場しますが、それがまさに本作に通じます。親子の絆が切れてしまった瞬間、そこには当たり前であるかの如く殺意が芽生え、無感情に我が子を手にかけてしまう。当時トラウマ級に衝撃を受けました。テーマとして同作品と本作が通じているかどうかは断言出来ないまでも、観始めてすぐにプロットの共通性に気付いた次第です。 テーマの共通性が見出せないと言うのは、本作がニコラスさんのキレ芸の延長線にあるからでしょうか。オープニングやエンドロールがインディペンデント感と言うかグラインドハウス感と言うかそんな雰囲気がたっぷりなことも含め、社会派作品という印象ではなくてバイオレンス或いはホラー寄りのB級SFエンタテインメントと言った感が強いですね。 なので堅いこと言わずに笑って楽しめば良いのかも知れませんが、やっぱり「親が我が子を殺す」というのは笑えないですね。予想はしていましたが、終盤訪ねて来るニコラスさんの親役ランス・ヘンリクセンさん(何歳になってもシブい男前!)を交えた親子三代の乱戦には笑ってしまいましたが。 予告編でニコラスさんは「最近の出演作では一番のお気に入り」みたいなことをおっしゃってますが、ファンとしては「いいの?そんなこと言っていいの?」と思わずにはいられない作品でした。 ちなみに、私も邦題には大いに疑問です。原題ではレディーファーストでマムが入ってるのに、何故今の時代にダディだけにしてしまったのか?しかも形容詞まで付けて。このセンスは謎です。[インターネット(字幕)] 6点(2023-02-08 00:16:14)《改行有》 717. ザ・キャビン 監禁デスゲーム 《ネタバレ》 シチュエーションとしては、本作が初めてではないにせよ某有名作にヒントを得たと思えてしまう既視感のあるものですが、現在と7年前を織り混ぜながら犯人像を浮かび上がらせていく流れは、必要以上に捏ね繰り回して雑然とすることもなく、どちらかというとシンプルに展開していくし尺も適度なので思いのほか作品世界に引き込まれました。 と言うことは、逆に言えば面白いけれど深みは今ひとつ感じられず、いくつか用意されているサプライズやどんでん返しも衝撃の事実とは言えないようなものかと。唯一、ラストシーンだけが予想外でした。もしかして、自らの後ろめたさを払拭するための殺意だったのでしょうか。 と言うことで、トータル的には非常に無難に仕上がった作品。強いて野暮なことを言えば、死体を残してロッジを脱出した3人は何事もなかったかのように元の暮らしに戻ったようですが、果たして真犯人は心の平安を得られるのでしょうか?仮令オオカミが死体を食い尽くしても、絶対バレるだろうし、その後はどう展開していくのか…。 それから、7年前のロッジでの乱痴気騒ぎの場面にストレートなセックスシーンを盛り込んでいなければ、全く18禁にする必要のない作品。敢えて挿し込んだのは何故なのでしょう?そんな疑問が無きにしもあらず。 もうひとつ。邦題はミスマッチ。事実上の「監禁」かも知れませんが監禁されていないし、まして「デス・ゲーム」はしていないような?[インターネット(字幕)] 6点(2023-02-06 10:44:43)《改行有》 718. テール しっぽのある美女 《ネタバレ》 太古の昔には人類を凌駕する勢いだったある種族。人類が地球上を制覇した後は、絶滅を逃れ静かに生き延びて来た種族。彼らはノルウェーの山中で静かに生き続けていた。 がしかし、ある時種族の巣穴から一体の赤ん坊が独りの軍医によって連れ出される。軍医はその子を連れて組織を離れ隠れ住む。やがて赤ん坊は美しい少女へと育っていくが、軍医の死去によって状況は大きく変わっていく。 たまたま彼女を見つけた二人の特殊清掃業者。彼女に追い迫る軍関係者。そして、彼女を連れ戻そうとする謎の種族。三つ巴の争いの後、彼女は森へと帰って行く。 プロットを簡単に纏めるとそんな感じかなと思います。 個人的に、北欧の伝説をモチーフにした作品は好むところです。美しい風景と悲しみを纏った伝説。まさに幻想的。この作品も基本的にはその路線にあり、ヒロイン・ターレの美しい姿はノルウェーの草原と森林に溶け込んでいます。 物語的には少なからず説明不足な部分はありますが、高得点を献上したくなる仕上がりだと思います。 しかし、何故6点献上止まりかというと、その理由は以下のとおりです。(長くなってすみません) ・冒頭の嘔吐シーンは繰り返しが多く、吐瀉物まで映さんでも状況は十分表現できる筈。二人の男のキャラと関係性を表したいとしてもやり過ぎでしょう。 ・ターレは人間ではないにせよ妖精とも思えない。なのに浴槽に長時間潜っていられたり、殆ど食料もなしに何年も生きていたり、テレパシー(?)で心を伝えたり受け止めたり、更には病気を治したり。超人的過ぎる生物。 ・ターレ役は美しい女優さんと思いますが、この役にしては成熟し過ぎの感あり。全裸シーンを下着姿程度にして少女程度の年齢の女優さんを起用した方がキャラに合っているように思えます。 ・軍医ともあろうものが、彼女の尻尾を切除したことで追手が来るのを防げると思う根拠なき短絡さ。 ・追手の軍関係者は何をどうしたかったのか?防護服は何から身を護るためなのか。 ・極めつけはポスターやDVDジャケットの尻尾姿。これは見てのお楽しみにしておいた方が絶対に良いと思いました。 ・とどめは邦題。「ターレ」を音的に「テール」にしたのか、それとも単純に尻尾があるから「テール」なのか、しかも副題で追い打ち掛けて「しっぽのある美女」とは。とほほ感が炸裂です。 ※ちなみに、「Thale」は北欧では一般的な男女どちらにも付けられる名前で、意味としては「高貴さ」といったところ。「tail」とは関係ないものと思います。 繰り返しますが全体としては好きな作品。それ故なんとも勿体ない。[インターネット(字幕)] 6点(2023-01-16 23:17:49)《改行有》 719. 睡蓮の人 《ネタバレ》 わずか16分の尺で、寂しく生きる一人の男が一匹の亀との出逢いを契機に考えまいとしていた思い出の世界に自ら入って行き、失われつつあった温かみを取り戻していく姿が表現されています。 リアリティを排除しつつも細部にまで拘ったラフなクレイモデル。特に主人公と亀は随分とデフォルメされています。そのラフさが逆にストーリーの深みを照らし出すのに功を奏していて、表情らしい表情は作らずとも主人公の感情の移ろいが伝わって来ます。 なにせ尺の短い作品、ある意味大いに説明不足ですが、予備知識なしに観るといつの間にか主人公のこれまでの人生とこれからの人生に思いを馳せている自分がいました。 強いて言わせていただくとしたら、16分とは思えないゆったりとした時間の流れに少々退屈してしまうかも知れません。とは言え、これ以上エピソードを詰め込むのも如何かなとも思え、ショートムービーであるからこその作品なのだと理解しました。[インターネット(邦画)] 6点(2023-01-10 11:11:28)《改行有》 720. ドライブ・アングリー3D 《ネタバレ》 ニコラス・ケイジという人は非常に興味深いです。男性的とも中性的とも思える魅力的な容姿と、俳優としての確かな演技力を持ちながら、名作と称するべきような作品に出演するかと思えば、本作のようなトンデモ作品も引き受ける。 それが世に噂されているような借金のために止むを得ず受けている仕事だとしても、出演する以上はキッチリ最高レベルに演じてくれることは間違いなし。ある意味、彼の作品を観て「彼に」失望することはありません。 本作もまたしかり。期待通りの暴れっぷり、切れっぷりを大いに堪能させてくれました。それだけで良いのだと、妙に納得。 ただし、本作については他のキャストでも大いに満足させてくれました。アンバー・ハード、ウィリアム・フィクトナー、トム・アトキンス、デヴィッド・モースなどなど。それぞれに魅力的でした。 オープニングとエンディングだけ見せられてしまうと、色調と特殊効果の雰囲気から「ゴーストライダー」と見紛うところですが、そのことよりも言いたいことは、近年ニコラスさんの出演作品は宗教とか悪魔とかに関わる作品が多めになりつつあるような気がして(いや実際そうかも)、もっとシリアス路線やヒューマンドラマ路線の作品で頑張っていただき、誰もが認める名優と呼ばれて欲しいなと願うところです。 このままでは、ヴァンダムさんの「ヴァンデミング・アクション」(某地上局のコピー)みたいに「ニコラス・ケイジ・アクション」(いいコピーが思いつきません)とカテゴライズされてしまいそうです。(いや既にされているのかも)[インターネット(字幕)] 6点(2022-12-22 15:16:15)《改行有》
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