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プロフィール
コメント数 1888
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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61.  ヴォイジャー(2021) 《ネタバレ》 2063年、急速な地球温暖化により人類は滅亡の危機に直面していた。人類の未来を守るため、各国の指導者たちはある計画を立てる。ここから遠く離れた地球に似た惑星に選ばれし30人の子供たちを宇宙船で送り込もうというのだ。だが、その宇宙の彼方への旅路は、到着まで86年もかかるという壮大なものだった――。訓練を受けた30人の子供たちはいわゆる第一世代、宇宙船内で人工授精により子供を設け多くの者は惑星到着を目にすることなく死ぬ運命にある。実際に惑星へと降り立ち新たな地で繁栄を築くのは、彼らの孫にあたる第三世代の子供たちなのだ。何も知らないまま宇宙船へと乗せられ、日々規則正しい生活と一日一回謎の薬を呑むことを義務づけられた子供たち。唯一の大人で彼らの指導教育に当たる教官リチャードとともに、しばらくは平穏な旅路を続けていた。だが、そんな任務に疑問を抱いた一人の少年が薬を呑むことを止めたことをきっかけに、船内に不穏な空気が拡がってゆく……。遠く離れた惑星へと航海を続ける宇宙船内で繰り広げられる、そんな30人の子供たちのサバイバルを濃厚に描いたSFスリラー。イギリスのノーベル賞作家ゴールディングの無人島漂流ドラマの名作『蠅の王』。それを宇宙船に置き換えてSFにしようという発想は良かったと思います。宇宙船内や数々のギミックもけっこうスタイリッシュで、画としては充分見応えありました。タイ・シェリダンやリリー・ローズ・デップをはじめとする今が旬の若手スターたちの共演も華があって大変グッド。ただ内容の方はかなり中途半端。極限状況に追い込まれた青年たちの暴走と破滅を描こうというのであれば圧倒的に深みが足りないし、新天地を求めて遠く離れた宇宙へと旅する主人公たちのサバイバルを描きたいのであればかなりテンポが悪いせいでエンタメ性に欠ける。どちらかに焦点を絞るべきだった。正直、自分はどう楽しんでいいのか最後まで分からず、途中からは眠気と戦いながらの鑑賞となってしまった。アイデアは良かっただけに、なんとも残念。[DVD(字幕)] 4点(2023-08-15 07:54:36)

62.  リコリス・ピザ 《ネタバレ》 1970年代のアメリカを舞台に、恋に仕事に夢にと充実した毎日を送る若者たちの成功と挫折をほろ苦く描いた青春ドラマ。監督を務めるのは、ハリウッドでも今や特異な地位にいる鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。主演には、彼と何度も一緒に作品を創り続けてきた名優、故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマン(これがデビュー作らしい)。特に何事が起こるわけでもない平凡な若者たちの取るに足らない日常を淡々と描いているだけなのに、なんだろう、最後まで心地よく観ることが出来ました。「ここが凄く良かった!」と声を大にして言える魅力は特にないのに、観終わったときには変な満足感。ここらへんはやはりアンダーソン監督の長年培ってきた力量がなせる技なのかな。脇を固める何気に豪華な役者陣――ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーも短い出演時間ながら、心に残る印象的な演技を見せてくれます。正直言って脚本が良かったわけでもないし、映像もそんなキレイでもなかったし、主演2人も特に魅力的だったわけでもないし、ホント何が良かったか分からないけれど、なんか良かったです、これ。自分でもよく分かんないです(笑)。[DVD(字幕)] 7点(2023-08-14 09:51:50)

63.  ライフ・ウィズ・ミュージック 《ネタバレ》 彼女の名は、ミュージック。音楽と日々の散歩が大好きなごく普通の女の子だ。でも、彼女には人と違う個性が一つだけ。それは自らの世界に閉じこもりがちで変化や刺激を極端に嫌がり、何か不安を感じると発作的に癇癪を起してしまう癖を持っていること。そう、ミュージックはいわゆる自閉症なのだ。それでも一緒に暮らす優しいお祖母ちゃんや周りの人たちのサポートで穏やかに暮らしていた。そんなある日、お祖母ちゃんが急な心臓発作で呆気なくこの世を去ってしまう――。連絡を受けたミュージックの唯一の肉親である姉、ズー。急な連絡に戸惑いながらもアパートへとやって来たズーは、久々に会う妹の扱いづらさに戸惑うばかり。とにかく施設に預けて厄介払いしようと目論むズーだったが、彼女もまた人生に深刻な問題を抱えていて……。障碍を持つ女性の日常をリアルに描きながら、そこに彼女の頭の中に流れる音楽をミュージカル調で描いたヒューマン・ドラマ。一言で表すと、ポップ版『ダンサーインザダーク』といった趣きの本作、その試みはなかなか興味深いものだった。世間からは常に好奇と同情の目で見られる社会的弱者にもちゃんとその人にとってかけがえのない生きる喜びや信念があるというテーマをあくまで軽くポップに描き出すことに成功している。彼女をはじめとした役者陣のナチュラルな演技も素晴らしく、特にアルコール依存症に苦しむ彼女の姉をリアルに演じたケイト・ハドソンの熱演は称賛に値する。そんな苦しい日常に突如として挿入される幻想的なミュージカルシーンも違和感なく共存させることに成功している。ただ、これは好みの問題と言ってしまえばそれまでなのだが、自分は肝心のそのミュージカルシーンがいまいち嵌まらなかった。何度も挿入されるカラフルでマジカルなそれら一連のシーンを、自分は正直「ダサい」と感じてしまったのだ。映像の色使いもダンスも演出もとにかく全てがダサい。恐らくダサいけどカッコ良いみたいな絶妙のラインを狙ったのだろうが、あまり成功していないように思う。また、後半のストーリー展開の唐突さも気になった。障碍を持つ妹を施設に預けようとした主人公が大したドラマもないまま急に心変わりするのも説得力に欠けるし、妻を兄に寝取られた隣人青年との顛末もとってつけたよう。あの太ったアジア系少年のエピソードもあそこまで投げっぱなしで終わるくらいなら最初から出さなかった方が良かったんじゃなかろうか。と、そういった欠点が幾つも目立つ作品ながら、社会の中で息苦しさを抱えて生きている人々に暖かなスポットライトを当てるような本作のテーマは好感が持てるものだった。総じて、自分は観て良かったと思う。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-14 09:03:34)

64.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 《ネタバレ》 もうシリーズの世界観から完全に外れちゃって、もはや『ミッション・インポッシブル(+恐竜)』みたいな感じになってましたけど、これはこれでけっこう面白かった!恐竜に追いかけられながらの街中バイクチェイスシーンは、やぱテンション上がりますなぁ。旧シリーズのメインキャストががっつり大活躍するのも好印象。あと、恐竜だけでなく今回は巨大イナゴの大群に追いかけられるシーンがあったのも自分はけっこう好きでした。イナゴの動きとかめっちゃリアルでなかなかグロかったーー!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容でしたけど、エンタメ映画としては充分及第点。うん、そこそこ面白かったです!![DVD(字幕)] 7点(2023-08-09 09:16:43)

65.  ニューオーダー 《ネタバレ》 娘の結婚披露パーティーを開催中のとある富裕層家族。強固なセキュリティに守られ、政財界の大物を多数招待したパーティーが佳境に差し掛かっていたまさにその時、彼らを予想もしなかった悲劇が襲う。拡がり続ける格差に不満を募らせた貧困層が暴徒化、鉈や拳銃を手に屋敷に雪崩れ込んできたのだ。示し合わせたかのように各地で勃発する暴動に警察の手も追い付かず、高価な財産はことごとく略奪、泣き叫ぶ家族も容赦なく皆殺しにされてしまう。豪邸内は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった――。パーティーの主役である花嫁マリアンは、突然の事態に戸惑うばかり。だが、根が純粋で世間知らずのマリアンは、難病を患う妻を病院に連れていきたいと願うかつての使用人を助けるために街に出てきてしまう。暴れまわる暴徒や軍隊によって大混乱へと陥る中、マリアンは高級車で街を彷徨うことに。何とかして元使用人の元へと辿り着いたマリアンだったが、それもむなしく彼女は軍を裏切った兵士によって誘拐されてしまう。多くの人質とともに劣悪な牢獄へと監禁されるマリアン。果たして彼女の運命は?政情不安に揺れる中南米を舞台に、突如として殺戮と略奪に巻き込まれる一人の女性の運命を終始冷徹に見つめたサバイバル・ドラマ。あくまでリアルに徹した、この殺伐とした空気感は凄かった。まるで戦場カメラマンが現地で撮った映像を繋ぎ合わせたかのようなリアリティで、この息詰まるような世界に終始圧倒されっぱなし。誰が生き残り誰が死ぬのか、全く先の読めない展開はこの世の不条理を容赦なく暴きだしている。ただ、それが映画としての面白さに繋がっているかというと、自分は正直「否」と言わざるを得なかった。ひたすらこの主人公マリアンが不幸な事態に巻き込まれ、何も悪いことをしていない無辜の民がことごとく悲惨な最後を迎えてゆく。そして最後も慈悲などなくただ淡々と……。これが目を背けてはならない現実だと言うのは分かるのだが、映画としてはやはり優れたフィクションの力で観客を魅了して欲しかった。映像や世界観の作り込みは素晴らしかっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 05:02:20)

66.  ビースト 《ネタバレ》 2人の娘とともにアフリカのサバンナへとバカンスにやって来た父親を悲劇が襲う。密猟者に群れを皆殺しにされた孤独な雄ライオンが突然、襲い掛かって来たのだ。現地でガイドを務める長年の友人は真っ先に瀕死の重傷を負わされ、父はまだ幼い娘たちとともに車の中へと命からがら逃げ込むことに。だが、人間に激しい憎しみを持つライオンは決して諦めない。数発しか弾が残っていない麻酔銃だけを手に車に閉じこもる親子を、ライオンは執拗に襲い続けるのだった。果たして親子の運命は?炎天下のサバンナ、狂暴化したライオンと妻を失くした親子との決死のサバイバルをノンストップで描いたネイチャー・アクション。全く期待せずに観たらこれが意外や意外、なかなか面白かった!最初から最後までエンタメ全振りで、とにかくお気軽に楽しんでもらおうというサービス精神が大変グッド。密猟者に群れを皆殺しにされた人喰いライオンにひたすら襲われるだけというシンプルイズベストにも程があるほどシンプルな内容なのですが、家族愛に焦点を絞った脚本が良い感じにベタで最後まで楽しかったです。反密猟者や群れの中での雄ライオンの役割といった分かりやすい伏線が分かりやすく回収されるのもけっこうカタルシスあったし。ライオンのCGも本物と見間違うほどの高クオリティで、こいつが何度も何度も襲ってくるシーンには素直にハラハラドキドキ!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容ではあるけれど、自分はけっこう楽しんで観ることが出来ました。[DVD(字幕)] 7点(2023-08-07 04:33:42)

67.  キャメラを止めるな! 《ネタバレ》 低予算ながら類い稀なるアイデアと優れた脚本の力で日本で大ヒットを飛ばしたゾンビコメディ映画『カメラを止めるな』。そんな大ブームを巻き起こした作品がまさかのフランスでリメイク!しかも監督は、『アーティスト』でアカデミー賞の栄誉に輝くミシェル・アザナヴィシウス。と言う訳で今回鑑賞。世間ではいまいち評判が良くないみたいですけど、自分はこれはこれでけっこう面白いと感じました。オリジナルはとにかくコメディ全振りで最後の方なんて大笑いしながら観てましたけど、こちらはけっこうブラックな皮肉が効いていて思わずニヤリとしてしまう感じですかね。ここらへん、日本とフランスの国民性の違いなのかな。最近の行き過ぎたポリコレを揶揄するようなきわどいネタをサラっとぶっこんでくるとこなんてナイス!冒頭、ゾンビ映画の主人公たちがバリバリ西洋人なのに何故かみな日本名という不自然さの理由が明らかにされたとこなんて普通に笑っちゃったし。なるほど、パール・ハーバーですか(苦笑)。ただ惜しいのは、肝心のそのワンカットゾンビ映画のクオリティが明らかにレベルが低くなってしまっているところ。キレの良さとかテンションの高さとかはやはりオリジナルの方が圧倒的に上ですね。あとこれは好みの問題なのかも知れませんが、主人公の女性が致命的なほどタンクトップとホットパンツが似合ってないのはひじょーーーに残念!!とは言え、オリジナルを忠実に再現しながらも独自のセンスを織り込んだ本作、僕はそんなに嫌いじゃなかったです。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 03:38:28)

68.  アンネ・フランクと旅する日記 《ネタバレ》 『アンネの日記』――。それは第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害から逃れ、アムステルダムの小さな一軒家に家族と隠れ住んでいた一人の少女によって書き綴られた日記だ。作者であるアンネ・フランクという名の少女はその後、謎の密告者の裏切りによってアウシュビッツへと送られ、そこで15年という短い生涯を閉じることになる。彼女の死後に発見された日記はその後、出版。そのユーモアを交えた瑞々しい筆致や鋭い人間観察眼、思春期を迎えたばかりの少女の不安や戸惑い、暗い時代にあっても常に希望を失わない彼女の強さは多くの人々の感動を呼び、世界各国でベストセラーとなる。そして現代、ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的名著としてユネスコの世界記憶遺産に登録されるまでになった。本作は、その『アンネの日記』で彼女の架空の友達として呼びかけられるキティーが現代のアムステルダムによみがえったらという驚くべき着想で描かれたファンタジックなアニメーション。監督は、パレスチナ紛争を題材にした政治的主張の強い『戦場でワルツを』というアニメでデビューを飾ったアリ・フォルマン。『アンネの日記』は昔読んで、そのキラキラとした才能の塊のような文才に感銘を受けると同時に、もし生きてちゃんとした小説を書いていたらきっと世界的大作家となっていただろうと思うと改めて怒りと切なさに打ち震えるような感情を抱いた思い出の一冊。なので今回期待して鑑賞してみた。この監督らしい独自の画のタッチに最初は戸惑うものの、空想上の存在であるキティーが日記のインクから現実世界へと降り立つファンタジックな描写に惹き込まれる。その後、まるで中世ファンタジーに現れる悪の軍勢のようなナチスドイツや彼らに立ち向かってゆく英雄たちがアンネの愛した映画スターたちという発想はオリジナリティ抜群で、アニメ作家としてのこの監督の面目躍如といったところだろう。ただ、それに対してお話の方は僕は疑問に思わざるを得ないものだった。空想上の存在であるはずのキティーが現代によみがえって?作者であるアンネを捜すというこの設定がいまいち腑に落ちない。こういう荒唐無稽なお話こそより細部の設定を細かく詰めるべきなのに、本作はそこが非常に甘いのだ。なので全体的にフワフワとした捉えどころのない作品となってしまっている。また、アンネの足跡を追って遥か異国の地まで旅していたキティーが後半、何故か現代の難民を救うために尽力する展開となるのも強引さが否めない。もう少し脚本を練るべきだった。ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的アイコンとしてもはや象徴的存在となってしまったアンネ・フランクの、その人間的側面に脚光を当てようとする試みは好感が持てるだけに残念だ。余談だが、本作を観終わって本棚の奥に眠ったままだった『アンネの日記』を久々に手に取ってみた。まるで今もどこかでこの現代を見つめているかのような生き生きとした彼女の文章に改めて感動の念を抱いたことをここに記しておこう。[DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 08:09:48)

69.  ブラック・フォン 《ネタバレ》 1978年、デンバーの町は不穏な空気に満ちていた。何故なら〝グラバー〟と呼ばれる、少年ばかりを狙った連続殺人鬼が今もまだ捕まっていなかったからだ。残虐な犯人は、さらってきた少年をしばらく監禁すると酷い拷問を行った末に殺害し、遺体はまるでゴミのように捨てられる。グラバーは今日も町のどこかで獲物を求めて蠢いているだろう――。貧しい父子家庭に暮らす少年フィニーもまた言い知れぬ不安を抱えて生きていた。酒浸りの父は気に入らないことがあるとすぐ暴力を振るい、まだ幼い妹は精神的に不安定で常に目が離せない。そんなある日、恐れていた事態が起こる。ちょっと気を許した隙を突かれ、彼もまたグラバーに誘拐されてしまったのだ。薄汚れた地下室で目を覚ましたフィニー。そこにあったのは使い古されたベッドと年代物の黒電話のみ。「あいにくその電話は随分昔に壊れてしまって何処にも繋がらない」。不気味な仮面を被ったグラバーは、恐怖に怯えるフィニーにそう言い残し、地下室を出ていくのだった。このままじゃ僕も殺される!極限状況に追い込まれた彼に、さらなる不穏な出来事が起こる。電話線が切られたはずの黒電話が突如鳴りだしたのだ。恐る恐る受話器を取ると、受話器の向こうからありえない声が。なんとグラバーに殺された少年たちが彼に話しかけてきたのだ……。けっこう既視感満載のそんなオカルティックなスリラーなのですが、この全編を覆う重苦しい空気はなかなか良かったですね。小さな窓しかない完全防音の地下室に閉じ込められるというこの設定がとにかく最悪過ぎる!しかもそこに何故か置かれてある壊れた黒電話。誘拐された子供がもしかしたら助けを呼べるかもと期待を持たせるために敢えて置いてあると思うと胸糞さマックス。犯人が被る上下分割マスクは余りにも不気味でこの犯人の異常性を見事に視覚化しており、なかなかにセンスがいい。そして黒電話を通して話しかけてくる事件の被害少年たち……。ここら辺のホラー描写もベタながらけっこう怖かった。彼らが主人公に与えてくれるヒントが一見的外れかと思いきや、最後に全て回収される脚本も良く出来ている。ただ、惜しいのは物語の芯となる部分が弱いところ。特にグラバーの目的がいまいち分からないところが残念。何のために少年たちを何人もさらって殺すのか、その動機をもう少し踏み込んで描いていればもっとサスペンスが盛り上がったと思うのに。また全体的にスティーブン・キングの『IT』と設定が被ってしまっているのも残念。とまぁそこら辺に目をつむれば、この鬱屈とした雰囲気や禍々しいホラー描写などは普通に楽しめると思います。6点![DVD(字幕)] 6点(2023-07-19 07:47:11)

70.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 妻と娘を失い孤独に生きてきた舞台俳優と彼にドライバーとして雇われることになった若い女性。ともに生きづらさを抱えていた2人の交流を終始淡々と描いたヒューマン・ドラマ。原作は泣く子も黙る世界的大作家、村上春樹。基となった短編集はまだ読んでないんですけど、主人公たちが交わすセリフをちょっと聞くだけで「あぁ、これはもう完全に村上春樹だなぁ」と思わせるところが凄い。妻が亡くなる前の長いプロローグとも呼べるシーンで、主人公が妻とセックスしながらひたすら意味不明な会話を交わすところなんてまさにそう。片想い中の女子高生が好きな男の子の家にたびたび空き巣に入って最終的には人を殺す話をしながらエッチするってどんな夫婦やねん(笑)。その後、本編が始まってからも登場人物が交わす会話も全く同じ。よく言えば哲学的で深いのにどこかお洒落、悪く言えば空疎で薄っぺらく全編気持ちの悪いナルシズムに満ちている。やはり村上春樹の小説は映像化には不向きなんじゃないかと思わせたものの、中盤からは不思議とこのわざとらしいセリフ回しに心地良さを感じている自分がいました。それはおそらく、主人公たちが現在取り組んでいる多言語舞台という前衛的な劇中劇が功を奏しているからなんでしょうね。舞台稽古をしている俳優たちがそのまま私生活にまで影響を引きずっているというこのメタ構造が、この不自然なセリフ回しを巧く中和している。なかなか考えられた演出と言っていい。内容の方も、村上文学の主要テーマである喪失感からの再生が多面的に描かれており、深い。前述した、さまざまな言語が入り乱れる演出でチェーホフの戯曲を再演しようという舞台の稽古と、心に傷を負った若いドライバーとの繊細な交流を二重写しのように描いたところは称賛に値すると思います。同じテーマをそれぞれ違うアプローチで描いていたものがラストでぴったり重なったのが感動的ですらありました。喪失感を抱えて生きている自分たちの苦悩がほんの少しだけ浄化された、それだけでこの先も生きていける――。心地良いラストの余韻に自分は観てよかったと思えました。カセットに録音された今は亡き妻ともう不可能となってしまった会話を交わす主人公の声を、ただ静かに聞き続ける若い女性とか、なんて切ない構図なんだろう。ただ、不満点も幾つか。まず冒頭、妻が亡くなるまでのあの長いプロローグは正直いらない。中盤の高槻との会話への伏線として必要だったのでしょうけど、それも回想シーンなりの別の描き方があったはず。あの40分はばっさりカットしても良かったのでは。とは言え、人と人とが永遠に分かり合えないことの切なさを美しく描いた上質の物語でした。[DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 09:11:19)(良:1票)

71.  ニトラム/NITRAM 《ネタバレ》 90年代、オーストラリアのタスマニア島で実際に起きた無差別銃乱射事件。多くの死傷者を出したそんな凄惨な事件を基に、犯行へと至るまでの犯人の心情を終始淡々と見つめたクライム・ドラマ。ほとんど音楽も使われず、ドラマティックな展開なども皆無、ただひたすらこの精神に重大な問題を抱え、恐らくは軽度な知的障碍もあったであろう主人公の次第に追い詰められてゆくさまが冷徹に描き出されてゆく。主人公を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの真に迫った熱演もあり、この最後まで緊張感を途切れさせない展開は見応え充分だった。社会から疎外され孤立してゆく息子をただ見守ることしか出来ない両親の葛藤もリアル。そんな青年を何故か受け入れる大富豪の老女の存在も違和感がなく、ともに社会から疎外された者同士で通じ合う部分があったのだろうという説得力も感じさせる。この老女が大金持ちで、彼女の善意がのちに大きな悲劇を生んだと思うとなんともやるせない。彼と事件の被害者を救う術はなかったのか――。周りに何人も「おかしい」と思う大人がいたのに母親も息子を常に気にかけていたのに誰も事件を防げなかったことを思うと、やはり社会の無関心も事件の原因の一つだと改めて痛感させられる。これは決して遠い国のお話ではなく、日本でも自分事として捉えるべき問題なのだろう。ただ、そのように深く考えさせるところは確かに良かったのだが、一本の映画として観ると残念な点もちらほら。一つ言えるのは、とにかく演出のキレがすこぶる悪い!果たしてこのシーンは必要であったのかと思えるような無駄な場面が余りにも多く、かと思えば父親の自殺などもっとそこを掘り下げて描くべきではと思えるところは意外にあっさり流したりする。もっと脚本を練るべきだった。見るべき部分も多い作品だっただけに残念だ。[DVD(字幕)] 6点(2023-07-07 09:32:06)

72.  アンチャーテッド 《ネタバレ》 世界を股にかけて活躍するトレジャーハンターのその誕生秘話をダイナミックな映像で描いたエンタメ・アクション。まあぼちぼちこんなもんじゃろって感じの内容でしたね、これ。まさに可もなく不可もなく。充分お金を掛けたであろうアクションシーンはさすがの迫力だったけど、3日も経てばすべて忘れてしまいそう。そーゆーもんだと割り切って観れば、トム・ホランドををはじめとする役者陣も華があるし、二転三転する脚本も分かりやすかったしで、ぼちぼち楽しめると思います。終わり。[DVD(字幕)] 6点(2023-07-05 08:02:37)

73.  選ばなかったみち 《ネタバレ》 認知症に苦しむ初老の作家と彼の娘であるキャリア・ウーマン。父である作家は混濁する記憶の中で重大な選択を迫られた人生の岐路を回想し、娘は現在取り組んでいる大きなプロジェクトに心をすり減らしている。そんなある日、父親の病状がもはや保護が必要なほど悪化していることが判明し、娘は大事なプレゼンを遅らせ父の元へと向かうことに。駆けつけた娘に父は幾つもの知らない名前を告げ、急に大声をあげたり涙を流したりするのだった。離婚した母親に連絡を取るもとてもじゃないがほったらかしには出来ない。だが、このままプレゼンをキャンセルすれば大事なプロジェクトから外されてしまう。果たして彼らが選んだ道と選ばなかった道とは?これは、そんな人生の重大な岐路を迎えたとある親子の一日を終始淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。名優ハビエル・バルデムと人気若手女優エル・ファニングが共演ということで今回鑑賞。監督は、過去に『ジンジャーの朝』という微妙な作品を撮ったサリー・ポッター。個人的な感想を述べさせてもらうと、「中身の薄い雰囲気ごり押し映画」。それ以上でもそれ以下でもありません。認知症を患う父を病院へと連れて行こうとする娘の悪戦苦闘と、そこに父の回想シーンを意味ありげに織り交ぜてるだけでそれ以上に深化していかないのがこの作品の弱いところ。特にこの回想シーンが、いくつかの時代を織り交ぜて描いているのに、監督の力量が追い付いていないのか、父のいつの頃の話なのか極めて分かりづらい!!ここらへんをもっとちゃんと描くべきだった。最後も、「パパがどうなろうと私はパパの娘だから……」と泣きながら娘が心情を吐露して終わるという、何とも薄っぺらい結論。いやいや、これ、父親の過去の物語となんにも繋がってませんやん。まあ映像的には品があって良かったのとすっかり大人になったエル・ファニングちゃんが相変わらず奇麗だったので、5点。[DVD(字幕)] 5点(2023-07-05 07:27:47)

74.  ゴヤの名画と優しい泥棒 《ネタバレ》 彼の名は、ケンプトン・バントン。職場を定年退職した後、長年連れ添った妻とともに気儘な年金生活を送る平凡な老人だ。だが、僅かな年金だけではとてもじゃないが生活できず、年老いた身体に鞭打って今も夫婦ともに働いている。真面目な性格の妻は裕福な家庭のメイドして僅かばかりの収入を得ているが、気難しい性格のケンプトンはどの職も長続きせず、常に職安通いが欠かせない。生活費は毎月ギリギリ、公共放送であるBBCの受信料すら払えない。そんな折、彼はテレビでイギリス政府がゴヤの名画とされる『ウェリントン公爵』を1400万ポンドもの大金をはたいて購入したという事実を知るのだった。自分たちはこんなにも金に苦労しテレビすら見せてもらえないのに、いったい政府は何に金を使っているのだ――。めらめらと怒りが湧いてきた彼はある日、突拍子もない計画を思いつく。それは、国立博物館に忍び込んでそのゴヤの絵を盗み出し、高齢者のBBC受信料を無料化させるための取引に使おうというものだった……。実話を基に、そんな前代未聞の名画盗難事件を起こした老人をコメディタッチで描いたヒューマンドラマ。この監督らしい終始ほのぼのとした雰囲気は相変わらず健在。決して幸せとは言えない貧困家庭や過去に娘を亡くしたことを未だ引きずっている老夫婦、そして理由はどうあれ明らかな犯罪行為である名画窃盗……。ともすれば深刻になりがちなこれらのお話が最後までのほほんとした空気で描かれてゆきます。事件を起こした主人公の老人も常に減らず口が止まらない偏屈親父なんだけど、不思議とそこまで嫌いになれないのも魅力の一つですね。ぼやきツッコミを入れる妻との掛け合いなんてまるで夫婦漫才を見ているよう。ただ、僕はちょっと物足りなさも感じてしまいました。この監督の前作が、「尊厳死を選んだ難病女性とその家族」という深刻なテーマを同じく軽いタッチで描くという手法がバッチリ嵌まっていたのとは違い、本作ではそこまで効果を発揮していないような。最後の真犯人を巡るどんでん返しももっとドラマティックに描けたのでは。けっこう興味深いお話だっただけに、惜しい。以下余談。このケンプトンという人、まかり間違えたら今の日本の某N〇Kをぶっ壊すみたいな政党を作ってたかも?まだ名画窃盗で良かったよー。[DVD(字幕)] 6点(2023-07-05 06:52:20)

75.  マーベラス 《ネタバレ》 世界を股にかけて暗躍する凄腕女アサシンの戦いをダイナミックに描いたクライム・アクション。なんというかゆるーーーい映画でしたね、これ。よく分かんないまま始まってよく分かんないままお話が進んでよく分かんないまま終わっちゃいました。一番よく分からなかったのは、主人公演じるマギー・Qと悪役であるマイケル・キートンがそれまで命をかけて戦ってたのに、何故か急にエッチしちゃうところ。「俺たち、このまま殺るかそれともヤるか、どっちにする?」ってなんでやねん(笑)。冒頭であっけなく死んじゃうサミュエル・L・ジャクソンが中盤で「実はどっこい生きてました」って再登場するのもテキトー過ぎてもはや失笑レベル。なんか、シリアスでいくのかコメディによせるのか、最後までどっちつかずの中途半端な感じでいまいち面白くなかったです。[DVD(字幕)] 4点(2023-07-01 02:19:02)

76.  異端の鳥 《ネタバレ》 第二次大戦時、ナチスのホロコーストから逃れるために地方へと疎開したあるユダヤ人少年の苦難の旅路を全編モノクロ映像で描いた不条理劇。ほとんど音楽も使われずセリフも必要最低限、ただひたすら主人公の少年が頭のイカレタ登場人物たちに酷い目に遭わされ続けるというお話で、しかもそれが170分続くというもはや苦行と言ってもいい映画でした(笑)。楽しいだけのエンタメ映画とは真逆に位置するいわゆる芸術系の作品なんでしょうけど、こーゆー作品の評価のポイントとなるのは監督のセンスに自分の感性が合うかどうか。正直言って、自分は全く合わなかったです。疎開先の自分を虐めていた叔母さんが心臓発作で急死してから、ただひたすらこの少年を好奇の目で見たり暴力を振るったり性的搾取の対象にしたりとさまざまな頭のおかしい人々が出てきては自ら破滅してゆくという展開が延々と繰り返されてゆきます。リアリティはあまりなく、なんだか寓話に近いエピソードがひたすら羅列されてゆくというその内容に、自分は昔読んだ大岡昇平の『野火』を思い出しました。あの小説も何がいいのかさっぱり分からなかったけど、次々と繰り出される強烈なエピソードに頭がくらくらして良くも悪くも印象には残るなという感想を持ちましたが、本作も同じような鑑賞後感。確かに芸術性は高いのでしょう。突発的に描かれる暴力的でエロティックなのにどこか美しいシーン、妙に心に残る個性豊かな登場人物たち、人間的な魅力を一切感じさせないまるで世界を写す鏡のような主人公、そして最後に明かされるのは彼の名前……。3時間もあるのに、最後まで観客の興味を捉えて離さない深いテーマがきっとそこにはあるのだろう。でも、自分はもういいです(笑)。[DVD(字幕)] 6点(2023-06-22 08:39:21)

77.  オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 《ネタバレ》 第二次大戦下、ナチスドイツを欺くためにイギリス政府が極秘に行った特殊作戦、その名も「オペレーション・ミンスミート」。それは偽装されたイギリス将校の死体を地中海に漂流させ、敢えてナチスの手に渡そうと言うもの。あらかじめ死体に持たせておいた偽造文書によって、敵の目を自軍の上陸作戦から逸らそうというのだ。あまりに無謀な作戦だったが、首相の決断により実行にうつされることに。失敗すれば2万人もの若き英国兵の命が危険に晒される。作戦の責任者として任命されたモンタギューは、集められたごく少数のメンバーとともに着々と計画を練ってゆくのだが……。実話を元に、そんな無謀とも言える極秘任務に従事した英国諜報部員たちの奮闘を描いたスパイ・サスペンス。監督は、『恋におちたシェイクスピア』で有名なジョン・マッデン。名優コリン・ファースが主演を務めたということもあり今回鑑賞してみました。題材は物凄く良かったと思うんですよ、これ。ドイツの同盟国であったイタリアのムッソリーニ政権を倒すためにシチリア島に進攻しようというイギリス軍。敵の目を島から逸らすために偽造文書を持たせた死体を海に流す(海流が変わって違うとこに流されたら終わりですやん!)なんて、常人にはとても成功するようには思えない作戦を実行に移したというだけでも凄いのに、ましてやそれが実話なんて!なのに、なんだろう、この最後まで付きまとう微妙な空気……。映像が終始暗くて地味だし、お話も無駄にややこしいのがその原因じゃないですかね。特に敵が死体を見つけてからの展開が、いったいどうなったら作戦が成功なのかいまいち分かりづらい!さらにそこに無駄としか思えない主人公のロマンス要素も加わって、まぁサスペンスが盛り上がらない盛り上がらない。もう少しお話を整理してもっと分かりやすく見せてほしかった。この監督の前作がけっこうお気に入りだっただけに残念![DVD(字幕)] 4点(2023-06-19 08:51:31)

78.  インフィニット 無限の記憶 《ネタバレ》 体験したことのない思い出や習ったことのない専門知識、夜毎見る悪夢の中では自分とは違う人間となっていつも殺される――。幼い頃からそんな謎の記憶に悩まされる中年男性エヴァン。統合失調症と診断され、何度も施設に出たり入ったりを繰り返した彼は、結婚も定職に就くことも出来ず常に最底辺の生活を強いられていた。そんなある日、彼の目の前に「インフィニット」と名乗る謎の組織が現れる。彼らはエヴァンに到底信じられないような衝撃の事実を告げるのだった。なんと全人類は輪廻転生を繰り返していて、自分たちのような限られた人間だけはこれまでの前世の記憶を全て憶えているというのだ。世間の好奇の目を避けるため、ずっと密かに生きてきた彼ら。だが、そんな永遠の生を否定し、安らかな無を望む人々も存在していた。彼らの名は、「ニヒリスト」。全人類を滅亡させればこの輪廻の輪を終わらせることが出来ると信じていた。エッグという最終兵器を開発した彼らは、今まさに計画を実行しようとしている!組織の女性戦闘員ノーラとともに、エヴァンは人類を救うために行動を起こすのだが……。これまでリアルな設定の男臭いアクションを幾つも手掛けてきたアントワン・フークア監督が恐らく?初めて挑んだであろう、そんなSF作品。冒頭から存分にお金を掛けた手に汗握るアクションシーンの連続に掴みはバッチリでした。SF的ギミックもけっこう格好良くて、ドローンやハンドルが2つ付いた車などどれもスタイリッシュで大変グッド。特にクライマックスの飛行機上での敵味方入り乱れる攻防はフークア監督らしいキレの良さで素直にハラハラドキドキ!とは言え、肝心のお話の方は余りにグダグダ過ぎて観てられませんでしたけど(笑)。突っ込みどころ満載の荒唐無稽な設定もそーゆーものだと割り切ってみれば良いんでしょうけど、さすがに無茶苦茶すぎて後半はかなり置いてけぼり状態。特に悪役の世界を終わらせる理由が、もう生きるのに疲れたからというのはさすがに説得力がなさすぎる!だって悪役のボスを演じたキウェテル・イジョフォーが生きるエネルギーに満ち溢れてて、とても自殺願望を抱えているように見えへんという…。ここは文字通りもっとニヒルな根暗系の役者さんをキャスティングしてほしかった。んで物語のキーとなる、人類を破滅させる最終兵器「エッグ」の隠し場所もそんなしょーもないとこに隠してあったんかいと自分はずっこけそうになっちゃいました。しかもそれを簡単に敵の皆さんに知られちゃうという脇の甘さ。こんな人たちに人類の存亡を知らぬ間に託されてると思うと背筋が寒くなっちゃいますね。てか、そもそもこの輪廻転生のことを政府なり科学者なりに公表しない理由は何?とまあ突っ込みどころは満載ながら、アクションシーンも迫力あったしストーリーのテンポも良かったしで暇潰しで観る分にはぼちぼち楽しめると思います。[DVD(字幕)] 6点(2023-06-16 08:06:30)

79.  ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ 《ネタバレ》 1950年代、長年音楽業界の第一線で活躍してきた伝説的ジャズシンガー、ビリー・ホリディはある困難な事態に直面していた。黒人を中心にロングセラーを記録していた彼女の代表曲にして人種差別を告発する問題作「奇妙な果実」。激しい公民権運動に揺れるアメリカ政府はこの曲を問題視、社会の秩序を乱すとしてコンサートでは歌わないよう彼女に圧力を掛けてきたのだ。だが、幼い頃から黒人たちの理不尽な現実を目の当たりにしてきたビリーは、政府のそんな圧力にも負けず、堂々と歌い続ける。次第に黒人差別闘争のシンボルへと祭り上げられてゆくビリー。業を煮やした政府は、彼女を麻薬不法所持の容疑で逮捕するのだが……。実話を基に、そんな反骨の女性シンガーの生涯を力強く描いたヒューマンドラマ。監督は、デビュー以来黒人としてのアイデンティティを追求し続けてきたリー・ダニエルズ。確かに描きたいテーマも分かるし、この不遇の生涯を生きた女性の魂の遍歴を現代に蘇らせたいという監督の想いも充分に伝わってきました。ビリー・ホリディを演じたアンドラ・デイの真に迫った熱演も素晴らしく、本来は歌手である彼女の魂のこもった歌声も胸にくるものがある。アカデミー賞ノミネートも納得。ただ、純粋に一本の映画としてみれば、自分は正直微妙と言わざるを得ませんでした。とにかく説明不足。冒頭から、彼女が歌手としてどれほど成功しているのか、またどのような政治的立場にあったのか、基本的な部分がいまいち掴めず物語にうまく入り込めません。彼女が刑務所から出所したあと、如何にして全国ツアーに出るに至ったのかもその経緯がよく分からない。政府からの圧力を逃れるため?単純に人気に陰りが出たから?たくさん出てくる登場人物も誰が誰なのかさっぱり掴めず、またその相関関係も極めて分かりずらいため、自分は中盤からほとんど置いてけぼり状態でした。特に、語り手なのか何なのかよく分からない、あの潜入捜査官みたいな黒人男性はいったいなんだったのでしょう。もう少し丁寧な演出を心掛けてほしかった。興味深い題材だっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 5点(2023-06-12 08:39:46)

80.  コーダ あいのうた 《ネタバレ》 彼女の名は、ルビー・ロッシ。寂れた港町で漁業を営む家族とともに暮らす平凡な女の子だ。勉強やスポーツが特に出来るわけでもなく、人が羨むような特技もない。見た目だって普通、交友関係もいたって人並。だけど、彼女には他の人とは違う特徴が一つだけ。それは、彼女以外の家族全員が耳の聞こえない、いわゆる聾者だということ――。そう、両親はもちろん彼女の兄も一切耳が聞こえず、言葉を話すことも出来ない。家族との会話は全て手話、食事のときも食器の音以外何も聞こえない。どうしても他の人とコミュニケーションを取りたいときは、唯一の健常者であるルビーの力を借りなければならなかった。彼女はいわゆる〝コーダ(聾者の両親に育てられた子供)〟。それでも家族とともに充実した日々を送っていたルビーは、ある日、ふと思いついて高校の合唱クラブへと入部することに。緊張しながら初めて人前で披露した歌声。顧問の先生は、指導を続けてゆく中で粗削りながらも彼女の歌声に秘められた可能性を感じるようになる。ボストンの音楽大学への進学を薦められるルビー。でも、私がいなくなれば家族の生活はますます大変なものに。思い悩んだ末にルビーが出した結論とは?耳の聞こえない家族の元で育った17歳の女の子の青春を瑞々しく綴ったヒューマンドラマ。アカデミー作品賞受賞ということで今回鑑賞。感想は、良くも悪くもとにかくオーソドックス。全編通じて、何処かで見たような映像と何処かで聞いたようなお話のてんこ盛り。主人公カップルが崖の上からキレイな森の湖に飛び込むシーンなんて、この手の青春ドラマでもう何回見てきたことか。誰もいない湖面で2人泳ぎながらキスするとか、トム・クルーズの『カクテル』ぐらいから受け継がれてきたもはや青春映画のテンプレなんでしょうね。クライマックスの両親が見守る中での発表会なんかも、まぁ~~既視感満載。でも……、このベタさ、自分はけっこう嫌いじゃない。それはやはり、主人公をはじめとする登場人物誰もがみな魅力的だからでしょうね。この家族、障碍を持っていても誰も自分を憐れんだりしていない。自分たちだけで健常者と普通に渡りあおうとするし、頼るべきところはちゃんと頼るしたたかさも持ち合わせている。そんな両親を愛していながらも世間に引け目を感じてしまう主人公も気持ちが分かるぶん切ない。何かと言うと家族の責任を前面に出し娘に依存しようとする両親も最初はちょっとウザかったですけど、最終的には娘を清々しく送り出すところは素直に感動しました。妹にちゃんと自立した道を歩んでいって欲しいと願う兄も凄くいい奴。妙に下ネタが多いところも、障碍者を必要以上に美化しないという決意が感じられて好感持てますね。自分は最後まで清々しい気持ちで観ることが出来ました。ルビー、これからもっと幸せになれよーー![DVD(字幕)] 7点(2023-06-12 07:40:39)

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