みんなのシネマレビュー |
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781. go(1999) スーパーのアルバイトをしてる男女が休憩室でだべってる。そこから始まる3つのストーリー。ひとつのストーリーが終わると、この休憩室のシーンに戻ってきて追いかけるターゲットを変えて別のストーリーが始まる。一つ一つのエピソードも面白いし、それぞれのエピソードへの伏線も巧い。あまりに巧すぎて映画としての深みが無いというか、ハギスの『クラッシュ』にも似た物足りなさを感じたのですが、この作品はそのあたりをノリで乗り切る(シャレじゃないよ)。そのうえ、とにかく笑える。ほんのちょっとエピソードに手を加えるだけで血みどろの作品になりかねない展開の連続なのに、ギリギリのところでそっちの世界に行かない。エピローグでまたさらに笑わせてくれるので後味も良い。サラ・ポーリーとケイティ・ホームズというキュートな2人に本来のキュートさが感じられなかったのは役柄上仕方なかったのだろうか。いや、まあ、普通にキュートではあるんですけど。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-16 15:11:39) 782. ブロウ どこまでが事実でどこまでが脚色されたものなのか知らないけど、うまくまとまってるというか、全てに意味がありすぎるというか。例えば、ギャングでもなんでもない男が麻薬王へとのし上がってゆき、落ちてゆくお話なのに、少年時代から入ってゆくあたりは正直勘弁してくれよと、前フリはいいよと、思ってたんだけどそこで映された貧乏な家庭環境が麻薬王への足がかりになっているというシーンにもなり、「幸せ=金」という概念を持つ母という図式が将来の自分の家庭に繋がったり、あるいは自分に対する父の想いが将来の娘を想う気持ちに繋がってたり、麻薬王になっても人を裏切らない真っ直ぐな性格が父譲りであり、それでも派手な生活へと突き進んでしまう様が母譲りであることの説明にもなっているという恐ろしく効率的な描写になっている。全編でそんな感じ。ただ「麻薬王の波乱万丈伝」では終わらずに「父と息子の物語」にしてみせたいかにもニック・カサヴェテスな脚本は物語としてはうまいと思うものの、映画としてはもっと削いでやったほうが面白かったと思う。無駄なものは無いが、何もかもが詰め込まれすぎている。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-15 15:10:41) 783. フレンチ・コネクション ニックネームの由来の説明が無くても、乱暴で型破りな男をポパイと呼んでいることになんの違和感も持たせないどころか、他の呼び名は考えられないくらいにまで馴染ませているのはハックマンの容姿によるところが大きいのだろうが、それでもよりにもよってポパイですよ。ハリー刑事がダーティ・ハリーと呼ばれるのとはワケガ違う。ポパイというニックネームにリアルさがあるし、ポパイというニックネームを耳にしても不自然にならないリアルな世界観が作り上げられている。個人的にはイーストウッドやマックィーンのかっこいい虚構の刑事が好きなのだが、ちょうどそんな虚構のヒーロー刑事が活躍していた時代に突如現れた不健康そうで汗臭そうで胡散臭そうで言葉遣い最悪で、それでいていかにも存在してそうなオッサンってのは衝撃だったと思う。相棒のロイ・シャイダーが目立たないのもまたリアルなんだけど、こちらはもうちょっと活躍してほしかった。そんなリアルな世界でのカーチェイスは言うまでもなくシビレル!この作品の最大の魅力であるリアル感は、実在の刑事と実際の事件をモデルにしているというところからも得ているのだろうが、リアルに描こうとする部分と楽しませる部分が相反しないことを証明しつつ、ちゃっかりと豪快なカーチェイスやスリリング且つコミカルな尾行シーンなどの「見せ場」も用意する。これがまた中途半端にならないのがアメリカ映画のソツの無さでしょうか。[DVD(字幕)] 7点(2008-05-14 15:59:38) 784. アメリカン・ギャングスター 最近のリドリー監督の作品の中ではものすごくいい!という噂を聞いて観てみたのだが、たしかにリドリーの昨今、いや、デビュー当時の数本を除いた作品群の中では普通に楽しめる作品であった。でもこのジャンルでこのお話ならこれくらいは見せてくれないと。お膳立ての時間がけっこう長く、そのぶん二人の熱き男の戦いに期待は膨らむばかりで、そういう意味でもこの長いお膳立ては実に効果的に観客を引っぱっていってくれてる。しかしいつまで待っても期待に応えた男の戦いは映されない。頭のどこかで『ヒート』を期待していたのだが。ラッセル・クロウは家庭そっちのけのちょっとだらしのない、でもって法令順守の根っからの警察官の雰囲気を出していたが、対するデンゼル・ワシントンは躊躇なく人を殺すのに威圧感とか怖さが無く、黒人マイノリティの成り上がりなのに哀愁とか憂いとかが無く、やたら冷静でやたらかっこいいのに隠れた大物というよりクレバーなチンピラみたいな描き方。いや、クレバーなチンピラを大物ぶった風に描いているのか。対決は無いなと頭を垂れるも、実話といえど、後半は一気に主役がデンゼルからお話そのものへ変わってゆく始末。前半で勝手に期待に胸膨らませたこっちも悪いのだが、この筋でいくなら刑事側でとことんいかないと。[映画館(字幕)] 5点(2008-05-13 15:47:15)(良:1票) 785. ヴァンダの部屋 ペドロ・コスタ初体験。のせいもあるかもしれないけど、こんな映画観たことない。根底の部分において今まで観た映画とは別次元にある。作品の舞台となるスラム街が何故取り壊されるのかはどうでもいいとして(開発の過程で壊されてるんだろうけど)、ギリギリまで立ち退かず、また立ち退いても行く当てのない人たちの日常を切り取っている作品の中で、「何を言いたい」ではなく、ただひたすら切り取ったものを見せているという感じ。こんなにも何も語らないドキュメンタリーを観たことがない。多くは家々が壊される映像と音、ヴァンダという名の女性をメインにとらえた会話、そしてヴァンダも含めた住民のドラッグまみれの日常の描写が占める。朝、昼、晩と順繰りに映される日常に家々が徐々に壊されるという変化以外何も起こらない。たしかに美しい画が時折飛び込んでくる。部屋の光の当たらない片隅は「影」というより「闇」と言ったほうが正しく、そのうち全てのものを被ってしまうのではないかと錯覚するくらいに「闇」自身が自己主張しているかのようだ。その恐るべき「闇」があるから明るい場所がなんとも言えない美しさを勝ち得ている。でも、観ているうちに不安になる。この映画、いつ終わるの?と。なぜならいっこうに終わる気配が無いから。結局のところ、唐突に(映画の)終わりは来て安堵したのだが、いったいなんだったんだろう、、、と。何かを「観た」という手応えだけがあって、何を見たのかさっぱり解からない。私はいったい何を観て、何故手応えを感じたのか、、それを理解するにはもっと映画を観なければならないのだろう。[映画館(字幕)] 6点(2008-05-12 15:48:40) 786. 裸のランチ 《ネタバレ》 これがバロウズの世界観なのかどうかはバロウズの書籍を読んだことがないのでよく分からないが、クローネンバーグの世界観であることは間違いない。クローネンバーグは他の作品を見ても解かるとおり、虚構の世界の中から真理なり真実なりを見出そうとする作家であるから、バロウズのドラッグによる幻覚から産み落とされた虚構の世界に何かを見出そうとするのは自然な成り行きと言える。そこに有機物(昆虫)と無機物(タイプライター)の融合という気持ち悪いクローネンバーグ印が虚構の世界を彩る。虚実の境がはっきりしているのも彼の作品の特徴のひとつだと思うが、個人的にその親切はいらないと思うことが多々あり、これもそう。この映画で主人公の作家はモデルとなっているだろうバロウズが実際にそうしたように「実」の世界で妻を殺す。そして「虚」の世界でもう一度妻を殺す。妻殺しは事故なんかじゃなく動機ある殺人だったというお話ととれなくもない、こともない? もちろん映画内(虚構の世界)のお話である。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-09 15:51:45)(良:1票) 787. ドラッグストア・カウボーイ ガス・ヴァン・サントはキレイな顔の男にそのキレイな顔に見合った哀愁を漂わせることに長けている。精一杯の虚勢と優しい瞳。マット・ディロンがいい。ドラッグストアの襲撃も病院襲撃も警官だらけのモーテルからの脱出もイマイチ盛り上がらず、ひたすら同じトーンを維持する。物足りなさはあるけれど、スタイリッシュとかクールとか言うんだろうか、そんなちょっとシャレた感覚を生んでいる。ドラッグと共生しているかのようなジャンキー神父にあまりにもはまり役すぎなウィリアム・バロウズ。なんか、うわぁ~本物だ~って感じ(笑)。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-08 17:13:00) 788. トレインスポッティング 実は麻薬常習者の主人公が一番まともだったりする。仲間内で最も異常な性格をしてるのが麻薬を絶対しない男だったりする。麻薬を一度断ち切って真っ当な生活を送る主人公のスーツ姿は実にかっこ悪い。薬を打ってダラダラぐだぐだしてる主人公の顔は幸せそうでバックの音楽はかっこいい。間違っても麻薬を推奨している映画じゃない(赤子の悲惨な死や麻薬に金を使い込んで生活に支障をきたす仲間の描写、あるいはHIVの検査という最悪を仮定できる描写もある)けど、麻薬撲滅を謳ったものでもない。むしろイギリスが国をあげて勝ち得た「安定」というものに対する若者の苛立ちと疑問が投げかけられている。麻薬が出てくるからややこしくなる。でも麻薬が青春と切っても切れないものになってしまっているという事実があるということ。けっこう深いかもしれない映画。便所シーンは勘弁してほしい。いや、便所が映されるだけならまだ笑えるんだけど、座らないでほしい。キツイものがある。ウンチが彼女の母ちゃんの顔に!ってのもキツイぞ。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-07 18:18:10) 789. ガメラ 大怪獣空中決戦 ガメラは作品はともかくガメラ自体がものすごく魅力的であったため人気があったのだ。おそらくこの平成ガメラを作ったスタッフもそんな魅力的なガメラを放ってはおけなかったのだろう。新しい世代によって作られた「ガメラ」はガメラの出自まで変更し、ハリウッドでも通用し得るような大人の辻褄合わせをすることによって、ハリウッド映画世代の大人にも通用する映画としている。そのことでガメラ第一作の『大怪獣ガメラ』同様に説明のためのセリフが使用されることになるのだが、ストーリーの面白さと本当はこんなのが見たかったのだと誰もが思っていたに違いない、おとぼけのない怪獣同士の真剣勝負や鳥の化け物でしかない人食い怪獣(つまり怪獣は怖いということ)に目を輝かせずにはおれないのである。人間のために戦う怪獣という不自然な行為もけしてガメラがそのことを擬人化された挙動で訴えるわけではなく、ここでこそ使われるべき必要最低限の説明セリフによって理解させている点がいい。ただ、子供向けを意識しているせいだろうが漫画チックな単純なキャラとしてしか描けない人間の描写は、もう少しなんとかならんのだろうか。あと、ガメラの顔が、目ん玉がいかにも作り物って感じなのがちょっと・・。[DVD(邦画)] 6点(2008-05-02 13:44:07)(良:1票) 790. 大怪獣ガメラ 子供の頃はゴジラより断然ガメラ派。でも怪獣の好き嫌いであって作品は別問題。ガメラが南極で氷漬け状態から目覚めてしまうくだりが無駄に長い。丁寧に説明してくれているのだが、そんなの曖昧にしてても誰も文句は言わん。その後世界各国で目撃される飛行物体の正体がガメラに繋がるまでの長い道のりはそれなりのサスペンス効果とガメラのしてやったり感を盛り上げるじゅうぶんな伏線となっていて良かった。しかしやっぱり全体的に説明が過剰にされ、説明意外は誰もしゃべらない。だから自衛隊のガメラ攻撃も現場で「ガメラを喜ばすだけ」という学者の一言であっさりとやめてしまう。みんながちゃんと説明を聞き、そして理解する。大人向けの内容を子供に何度も言い聞かせているようなくどさ。それでもガメラが好き。ガメラを考えた人はえらいと思う。あの飛び方を考えた人はえらいと思う。[DVD(字幕)] 3点(2008-05-01 13:33:11) 791. GODZILLA ゴジラ(1998) だいたい予想どうりのGODZILLAだった。恐るべき怪獣であった初代『ゴジラ』のリメイクでありながら、ハリウッドらしく豪勢に、リアルに、そして見所を随所に散りばめたモンスター・アクション映画としてなかなか頑張っている。予想どうりであって、予想を超えてくれないのが残念だが。ニューヨークのビルの間をヘリが追いかけるシーンはシュミレーションゲームの画面みたいでココは見ていてバカバカしくなってくるのだが、マジソン・スクエア・ガーデンでちびゴジラ共(ミニラのような可愛さゼロ)に追いかけられるところはけっこう面白い。そしてアメリカ軍が弱いだけじゃなく徹底しておばかさんなのもいい。ほとんどコメディのノリ。巨額を投じてこんな悪ふざけしちゃうハリウッドはやっぱり凄い。ありきたりなシナリオにもう一工夫ほしかったところ。[DVD(字幕)] 5点(2008-04-30 15:48:13) 792. ゴジラ(1954) その後人気者になるとは到底考えられないほどゴジラは「怪獣」であり、核の化身であった。この映画は原爆を唯一落とされた国の悲痛なまでの叫びそのものだ。人が死に、街が破壊される描写をもって「反戦映画」とするなんて子供っぽい発想で終わらない。この映画は原爆を作った科学者たちをも許さぬと言っている。特撮もゴジラの造形もゴジラの鳴き声も、そしてゴジラのテーマもとんでもなく素晴らしいから「ゴジラ」がその後一人歩きしてゆくのだが、この第一作は作り手のメッセージというにはあまりに痛切な想いが詰まっていて、たぶんその強烈な思念が画面に漂っていて作品に風格をもたらしている。この異質ともいえる風格は、今後どんなに素晴らしいゴジラ映画が生まれてもけして真似のできない代物である。[DVD(邦画)] 7点(2008-04-28 19:08:01)(良:1票) 793. トレマーズ 《ネタバレ》 初めて観たのはテレビの吹き替え版なんだけど、いかにもテレビの吹き替え版でじゅうぶんというチープな映画。もともとこの映画のポスターが思いっきり『ジョーズ』のパクリなんだけど、中身もどこかで観たような展開が次々と映される。ただ、見所の寄せ集めにしては異様に見所が多くて観ているあいだはけして飽きることがない。銃器マニアカップルの怒涛の銃弾の嵐なんてまさに見所を一つを作るためだけに存在する。アイディアも豊富で車ごと地中に引きずり込むとかその引きずり込まれた車を土の中に見つけるところとか棒高跳びとかドミノ倒しで屋外に放り出されるとかただ一人の若い女のズボンを脱がざるを得ない状況にするとかポンピング少女とか怪物だと思ったら一部でしかなかったとか落とし穴とか爆弾の投げ返しとか、もうこれでもかってくらいにてんこ盛り。チープさと旺盛なサービス精神がいい感じのBテイストを出している。[DVD(字幕)] 6点(2008-04-24 11:53:16) 794. グエムル/漢江の怪物 怪物の姿がいきなり現れたときの唐突感が素晴らしい。怪物がぜったいいそうにない空間に怪物がいるという不自然さが素晴らしい。その後の徹底した家族のストーリーも悪くはない。むしろ徹底しているから良い。でも初顔見せが素晴らしかったのに、怪物が一向に怖くならないのが致命的。恐怖演出が弱い。弱すぎ。怪物が出てくるだけで実は社会派映画だからとか家族の絆こそをメインに描いた映画だからとか、そんなの理由にならん。怪物なんだから怖くないと話にならん。[DVD(字幕)] 4点(2008-04-23 14:16:10)(良:2票) 795. キング・コング(1933) 1976年版を映画館で観た世代ですから、「キングコング」といえば美女とラブラブなのにその恐ろしい容姿のために悲恋に終わるラブストーリーというイメージを持っていたのだが、オリジナルを観てビックリ。全然違う。初代の『キングコング』がこんなにも面白い作品だったなんて!!まずなんてったって怖い。その怖さは最後まで変わらない。そしてアップになったときの顔が怖い。顔が面白いって人もいるみたいなんだけど、たしかにちょっと間の抜けた顔なんだけど、それがかえって怖い。コングのやることなすこと全部怖い。怖いというか獣として自然な振る舞い。けして擬人化されない。崖のくぼみに隠れた男を手探りしてるとこなんか妙にリアルでめちゃ怖い。1933年という時代を考慮せずとも面白いと思う。惜しむらくは、パニックを盛り上げる演出でもあるのだろうが延々とかかる音楽が耳障りな点。音楽無いほうが絶対怖いのに。[DVD(字幕)] 6点(2008-04-22 14:17:50) 796. クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 9・11(アメリカ同時多発テロ事件)の衝撃映像は誰もがまるで映画のようだと思い、同時に映画はしょせん作り物であることを思い知った。この作品は9・11のような「映画のような本物」を再現しようとする。ビルが倒壊し、その数秒後にあらゆる光をも飲みこむ粉塵が襲ってくる描写はまぎれもなく9・11を偶然にも収めた映像そのものであった。回し続けるカメラが全体像を掴めずに右往左往する中で偶発を装って予期せぬ映像が飛び込んでくる。恐怖と緊張の途切れることのないライブ感は凄まじいものがある。そして「映画のような本物」を目指す映画は、限られた空間しか映さないカメラが徐々に全容を映し出すようにカメラと同行する人間にドラマを与え、空にも飛ばせ、死まで与える。けっきょくのところ嘘の世界でしかない映画と折り合いをつけなければならないのだが、その折り合いのつけ方がうまい。ただし疲労感も相当のものであった。疑似体験アトラクションとしての(満足の後の)疲労感と考えても、残念ながら満足感を大幅に超えている。けして揺れる画面に酔ったというわけではないのだが、それでも全編ハンディカメラの画面というのは知らず知らずのうちに私に相当の打撃を与えていたのだろう。あと、この作品の場合、男女のドラマなんて些細なものでしかないのだろうが、その些細なものでしかないって感じの描き方になってる。[映画館(字幕)] 5点(2008-04-21 18:50:16)(良:1票) 797. ガートルード 無駄なものが一切無いってことがこんなにも気味の悪いものだとは思わなかった。モノクロ映画だが、映されている部屋の壁は染み一つ無い真っ白である(そう見える)。飾られる絵や蝋燭が完璧に配置され、画面に映る全てのものが記号化し、現実の世界には絶対に存在しない異空間を作り上げている。一見すると舞台劇っぽいとも思えるんだけど舞台劇ともちょっと違う。SFの世界のよう。目を合わせない男と女も記号化する。映画は現実世界の模写でありながら、けして現実世界に同化しない。そう、これは現実のコピーであって生命を持たない。これが「映画」なのか。衝撃的でした。[映画館(字幕)] 9点(2008-04-18 15:14:18)(良:1票) 798. 近松物語 《ネタバレ》 構図だとかカメラワークだとか、かのコンビなんだから言うまでもないし、モノクロの画面は終始美しいことは美しいのだけど、どのシーンがってんじゃなく全部が当たり前のように美しいのでかえって画としての印象が弱かったりする。むしろこの作品は画よりも女優・香川京子の凄まじさに圧倒される。もちろんその凄まじさは溝口の演出なんだけど。香川はこれまで明るい娘役ばかりだったのが、この作品でいきなり女の色気を爆発させている。抱き合う姿は抱きしめるというよりも、何が何でも離れまいとしていると言ったほうがいいほどにその必死さと苦しさが漲っている。誰かが迷惑してようが構わない。離されることが耐えられない。苦渋の表情と叫びと嗚咽。二度と離されることのないという満足顔のラスト。愛に狂った女の色気。ここまで色っぽい香川京子はそうは見れない。[映画館(邦画)] 8点(2008-04-17 16:50:59)(良:1票) 799. マディソン郡の橋 べつに恋愛は何歳になったっていいと思うし、一生に一度の愛が不倫というカタチで訪れてしまうことだってあるだろうし、熟年の性欲だって否定はせん。でもわざわざ映画で観たいとは思わん。と思ってて実際、あぁ年をとっても女なんだなあ、あぁ年をとっても男なんだなあ、という繊細な男女のときめきやらドキドキやらはストーリーの要であっても個人的にはどうでもよかったんだけど、屋根付き橋の涼しそうな陰に入ってゆき又出てくるメリル・ストリープに当てられる光とか、突然カメラに撮られることのうれしはずかし顔の決定的ショットとかけっこう惹かれる画があるからイーストウッドは侮れない。土砂降りの中に佇むしかないイーストウッドとか前の車に見えるイーストウッドの何も語らない人影とか、ニクイ演出も多い。現代のシーンが凡庸というか、兄妹がイマイチ映えないというか・・。[ビデオ(字幕)] 6点(2008-04-16 12:32:24) 800. 赤いアモーレ 一番の驚きは『バニラ・スカイ』と同じになっちゃうけど、ペネロペの語学力。今回はイタリア語。容姿もえらいおばさんぽいんだけど、貧しい暮らしとそれゆえに培った男に媚びる風貌のケバケバしさが本来の美貌を覆い隠してしまっているという可愛そうな女を見事に表現している。赤の使い方がけしてケバさを助長することもなくいい感じの配され方をしている。男と女がそういった関係になる最初の第一歩があるわけだが、もうちょっと劇的というか意味深く出来なかったのだろうか。酒に酔った勢いってのはわかるし、意味なく唐突にってのもそれはそれでいいのだが、画面はその後の物語に影響する運命の瞬間であることを伝えるべきシーンだと思うのだが・・。ベストセラー小説の映画化ということらしいが、キリスト教的なバックボーンが無ければイマイチのれないかも。[DVD(字幕)] 5点(2008-04-15 11:30:16)
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