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プロフィール
コメント数 618
性別
自己紹介 【好きな映画】
★ヒューマンドラマ系
★恋愛
★コメディ
★推理・サスペンス・法廷
★アニメ
★その他、心がほっこりする・ワクワクする・揺さぶられるものなら何でも。

【苦手な映画】
×ホラー・スリラー
×暴力系・ヤクザやヤンキー系
×アクション
×アイドルが主演
×ハードボイルド
×見せ場が女優の裸だけの80年代日本映画
×映画の質よりも興行成績だけを意識したハリウッド映画

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81.  友だちのうちはどこ? 《ネタバレ》 母親の言いつけより、友達のピンチを救うことを選択したアハマッドくん。この国は、子どもは大人に逆らえない・大人は子どもの言葉にいちいち耳を傾けていられない社会であることを強調することで、「そんな中であえて友達の家に行くことにした」アハマッドくんの友達を思う気持ちが、より強く伝わってきました。 子どもの気持ちに寄り添う子育てなどガン無視なオトナ社会でありながら、親の言うことをきかず夜遅くに帰宅、当然キツく叱られるであろうシチュエーションで、子どもを気づかう母親の様子に、ホッとさせられました。そしてその後の、強風の中で洗濯物を取り込む母親の姿・・・何を表現したいのかよくわかりませんでしたが、映画全体を引き締めるスパイス的な役割のシーンのように感じました。 そしてラスト、友達のピンチを救ったという結末そのものより、ノートの押し花に心を全部持っていかれました! こんなに温かくさわやかな気持ちになれるエンディング、自分的にこの映画の価値はすべてここにあると言ってもいいほど、素晴らしい演出でした! 友達にノートを返しに行くというだけの単純なストーリーを、ここまで高いレベルの映画に創り上げるキアロスタミ監督。巨匠と呼ばれる理由がハッキリとわかりました。同時に、儲け主義の商業映画・娯楽映画が、いかに底が浅いかということもよくわかりました。[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-03-14 23:45:25)(良:2票) 《改行有》

82.  聖☆おにいさん 笑えるシーンもあって暇つぶしにはちょうどいい程度。でも一度見れば、旧作DVDレンタル100円でも借りないだろうなあ・・・というレベルでした。原作未読ですが、4コマ漫画を無理やり物語風にしたような感じで、無駄なシーンが多いような印象です。 でももし東京に住むことになったら、立川に住みたいかも・・・と思えるくらい、立川の町の良さ(実際はどうなのか知りませんが)は伝わってきました。[CS・衛星(邦画)] 4点(2019-03-14 23:11:40)《改行有》

83.  暗殺のオペラ 《ネタバレ》 ファシストに殺された父の真実を探る、という解説のまま、サスペンス的な視点で観ていたために「映像はきれいだけど、話がよくわからずつまらない・・・」で終わってしまいそうでした。ラストシーンを見るまでは・・・。 途中いろいろあって、ラストシーン、駅のホームで帰りの列車を待つものの、まったく来る気配ナシ。線路に降り立ってみると、雑草に埋もれたレール・・・。ここで「政治色の濃いサスペンスを美しい映像で見せる映画」というイメージが一変! 記憶を遡って、これまでのシーンの意味がいろいろと気になり始めました。 父の愛人に会ったアトスが、最初は1時間後の列車で、その後、翌日の朝に帰る予定が、なんだかんだで帰れなくなります。途中、馬小屋に閉じ込められたり、愛人の「あなたはもう発てないの」というセリフなど、この映画において彼が「村から出られない」のは、何らかのメッセージだったのかも・・・。 長い間、列車が走っていない廃線を意味する線路。このシーンを見た瞬間「そもそも彼が訪れたタラという村は、彼が出会った村人たちは、実在するのか?」という疑問まで浮かんできます。 父の友人の3人組と愛人の女性が、現在も30年前も同じ容姿。普通の映画では、過去の回想シーンはメイク等で少しでも若く見せるか、似たような若手俳優をキャスティングするところなのに、あえてそのままというのは、過去と現在が絡み合うブラックファンタジーのような話なのか・・・? 他にも、主人公のアトスが父と同姓同名、しかも生き写しのように顔がそっくりというのも意味がありそうだし、銅像の目がなくなったことも、何らかのメタファーなのでしょうが、う~ん、一度観ただけでは、よくわかりませんでした。でもじっくりと掘り下げていけば、「あっ!そういうことだったのか!」に行き当たりそうなので、もしまた観る機会があれば、違った観点から鑑賞することにします。[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-03-14 19:34:29)《改行有》

84.  ファーゴ 《ネタバレ》 偽装誘拐が思ったようにいかない滑稽さを表現するドラマ性と、世間話をしながら淡々と仕事をする警察官の日常性がうまく絡み合った良作だと思います。特に最後の、アホ男たちの末路に対して、夫の3セント切手のデザインで心から喜べる様子、これがこの映画のメッセージの肝なのかなと思いました。 「変な顔」や「ヤー、ヤー」の連呼、「ハンバーガーとミミズ」などのユーモアは好きですが、全体としては、ちょっと苦手な映画かも・・・。[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-03-14 15:02:51)《改行有》

85.  百日紅 ~Miss HOKUSAI~ 《ネタバレ》 ラストの少し前、お栄が天に召された妹に語りかけるシーンの「どうってことない暮らしだけど、結構楽しくやってるよ」というセリフ、この作品の印象を語るのにちょうどいい言葉ですね。「どうってことない話だけど、結構楽しく観られるよ」みたいな・・・(笑) 当時の江戸文化のにおいまで伝わってきそうな、丁寧な描写と小気味いい演出。町の様子や人々の生活などの日常感の中で、絵師として、娘として、姉として、女性として生きるお栄の姿が、作品全体に彩りを与えています。その象徴が、赤く咲く百日紅の花でしょうか。 庭に百日紅が咲く初夏の昼下がりに弁当を食べる親子、日が落ちてから明るく輝き出す花街の夜など、江戸時代の季節感や時間帯別の空気感などが、さりげなく且つ美しく描かれていましたね。特に、雪が降った冬の日、妹をおんぶしたお栄と北斎とがすれ違うところを、長屋と長屋の間から射す光が映し出すシーンは印象的でした。 ジブリの人気作品のように、次から次へと展開するテンポ感や冒険要素などは一切なく、ストーリーそのものは「どうってことない」地味な話なので、子どもや、ドラマ的な展開を期待する人にとっては退屈かもしれませんね。トトロやラピュタよりも「借りぐらしのアリエッティ」が好きという人にはオススメかも。 ただ、ラストの「現在の東京」の実写シーン、あれは不要だったのでは? なんだか、せっかく心地いい夢の世界に浸っていたのに、突然、アタマから水をぶっかけられて現実に戻されたような、シラケ気分にさせられました。これがなければ最高だったのですが・・・ でも鑑賞した数日後、赤い花がかなり印象に残ったせいか、百日紅の木を買ってきて、庭に植えました^^[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-02-15 08:51:49)《改行有》

86.  南極料理人 《ネタバレ》 最初は、変わり映えのしない日常を延々と見させられるのか・・・と不安になりましたが、飽きることなく最後まで楽しめました。 実際は過酷であろう南極での任務を、「家族」をコンセプトに、ほんわかとゆる~い、家族みんなで楽しめる内容に仕上げてくれました。 胃がもたれそうなから揚げを食べて、奥さんのから揚げ=家族での生活を思い出し、泣いてしまうシーン、すごく気持ちわかります! そしてラストの、てり焼きバーガーを食べて「うまっ!」、いいですね! 南極で、伊勢えびやカニやステーキなど、いろいろ美味しいものを食べてきたけど、そんなものより家族みんなで食べるジャンクなハンバーガーの方が何倍も美味しい!ということを、わかりやすく表現してくれました。 また「ペンギン、南極にはいないのに、でも千葉のレジャーランドにはおるんかいっ!」とツッコミを入れたくなるユーモア、自分の笑いのツボにハマっちゃいました! 他にも、伊勢えびのエビフライのアップ、何度観ても大爆笑で、一番好きなシーンです。[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-12-30 14:17:32)《改行有》

87.  続・深夜食堂 《ネタバレ》 ドラマの深夜食堂は大好きで何度も観ていますが、映画となると、人気の深夜番組がゴールデンタイムの放送になった途端につまらなくなるように、「ちょっと違うよね・・・」感が漂っているように思えました。 それでも、渡辺美佐子がタクシーから息子を見るシーンは印象的でしたし、前作の多部未華子が2階で扇風機にあたるシーンも映画ならではの魅力的な映像表現だと思うので、一概に映画化を否定するわけではありませんが・・・。 個人的には、先述の2つのエピソードを合わせて「“映画版・深夜食堂”でいいんじゃない?」と思ってます。[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-12-26 18:34:36)《改行有》

88.  夜は短し歩けよ乙女 とにかくアニメのクセが強い!(笑) なので最初は「これは苦手かも・・・」と思っていたら、意外にもすんなりと入ることができ、途中から目が離せなくなりました! 始まってしばらくは、まるで他人の夢の話を聞かされているような、ひとりよがりの自己満足臭が漂ってきそうな気配でしたが、それはただの食わず嫌いの偏見であることを思い知らされます。 こじらせ男子と恋愛モードが固い蕾のままの乙女の心象風景を描いた、まるで新感覚の「不思議の国のアリス」のようでした。そこに時間の濃さと早さの関係性が加わり、さらに、ハイテンションなテンポ感にも関わらず、根底に流れる恋愛観は意外と古風なままであるため、そろそろ人生の折り返し地点に差し掛かっている世代も楽しめそうなテイストに仕上がっていました。 時計の針が早回りしてそうな大人のための青春童話、電気ブランでも飲みながらまた観たいですね。[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-11-26 18:39:32)《改行有》

89.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ 《ネタバレ》 完成されない映画に引き込まれるという基本設定、そして場末のカスカベ座の不思議な雰囲気、西部劇の舞台、荒野・・・。全体に漂う乾いた雰囲気や世界観が、かなり気に入ってます!  向こうの世界にだんだん慣れて住人になっていく様子、実はかなり大人向けな内容なのでは? スター願望のあるみさえ、「いい子」でいることに疲れてそうな風間くん、好きなネネちゃんと暮らすマサオくん、独自の価値観で俗世間に染まらないボオちゃんなど、日常の世界で抑圧されていた憧れや願望が現実化し、閉ざされた世界でありながらも、ある意味、自分らしく生きる様子に、共感めいたものを感じた人も多いと思います。話の中では「帰りたくない!」を「それは本音じゃない」と扱われていますが、強がりではなく、心からの叫びのように思えます。(本音にしちゃうと、後半のカスカベ防衛隊の活躍につなげるのに面倒なことになるから?) ヒーローに変身してからはいつものしんちゃん映画でしたが、もとの世界に戻ってきてからも、なぜ映画の中に入ってしまったのか、その意味は謎のまま。それは、ラストのひろしの行動にも表れていましたね。最後、みんなで帰ろうとした時、ひろしが「あっ、そういや何でこんなことに・・・?」と言いたげな表情で誰もいなくなった館内を振り返りますが、「まぁ、いいか・・・」とドアを閉めて、暗転終幕・・・。序盤の強制労働させられているシーンで、ひろしとマイクが「“映画”が、我々を呼んだのでは?」という会話があり、「でも何のために?」の答えは結局見つからず、それがラストシーンのひろしの表情につながっているのだと思います。 最後、ひろしがもう笑っていないのは「戻ってきたこの世界には、さっきよりももっとキビシイ“逃げ場のない現実”が待っている。」という大人向けのブラックなメッセージ、謎を解決しないことで「この話にはまだ続きがある」的なニュアンスを匂わせるなど、「謎も解けてスッキリ」という子供映画とは違う、大人向けの後味を残したかったのかも。(子ども向けのアニメ映画なら、しんちゃんがシロと再会して「めでたしめでたし」で終わっているんでしょう) ただ、芸人たちが出てくるシーンは、大人の事情が見え隠れして興ざめ。エンディングのひどい歌には怒りすら覚えました。[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-07-11 17:09:55)《改行有》

90.  ヘンゼル&グレーテル テンポ感とシンプルな内容で、何も考えずに最後まで観ることができました。ただ、終始アクションシーンばかりだったという印象で、殴り合いのシーンは「なんだか、昔の仮面ライダーみたい・・・」と思いながら見ていました。ヘンゼルとグレーテルをはじめ、登場人物の描き方に深みがないからか、みんなゲームのキャラのようで、登場人物に対して何の感情も湧きません。まぁ、この類の映画に、そういったものを期待する方が間違いなんでしょうけど・・・[CS・衛星(字幕)] 4点(2018-04-16 22:57:10)

91.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 エニグマの解読機、ついに成功! でも物語の焦点はここからでした。 解読して、すぐに対応策を実行に移すと、敵に暗号を解読していることがバレてしまうため、助ける命と見捨てる命を選別。その結果、戦争を早く終結させることができ、多くの人の命を救いました。現代に生きる私たちからすると、その判断の良し悪しよりも「戦争を起こしたこと自体が悪」という結論を下すかもしれません。ですが、その当時の人々にとっては、命を選別することも、この事実を機密事項としたことも、同性愛を犯罪として扱ったことも、すべて「正しい判断」だったのだと思います。 過去の選択を「過ち」と判断するのは、現代という時代性。その価値基準や行為も、数十年後・数百年後から振り返ると「とんでもない過ち」なのかもしれません。正しい判断というのは「時代に合っている」ということなんでしょう。 いつの世も、必要なのは、天才よりも天才を上手に活かすことのできる人なのかもしれませんね。アランのような天才的頭脳を、この時代は「暗号解読」にしか使えなかったバカバカしさ、同性愛者ということで心身をボロボロにされて、果ては自殺させてしまう愚かさ。 いろいろなメッセージを、興味深くしっかりと感じさせてくれる本作品は、映画として非常に優れていると思いますが、個人的には、彼の功績が後の社会に大きな影響を与えていることの救いよりも、時代の巡り合わせが悪かったとしか言いようのない彼の人生の哀しさがズッシリと胸に残り、重苦しい気持ちにさせられました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-03-05 18:39:11)(良:2票) 《改行有》

92.  暗殺の森 《ネタバレ》 原題のIl conformistaとは、「順応者・同調する者」というような意味らしいです。つまりこの映画の主人公も、子供時代の特殊な体験から「自分もみんなと同じでありたい」という心理によって、ファシストとなり、結婚もしますが、決して心から望んだわけではなく、所詮は代償行為。「普通・みんなと同じ」ということと「流される」ことがイコールであると思い込んじゃった人の悲劇です。 行動の動機が「逃れたい」という心理で、思想に裏打ちされたファシストではないため、体制が崩れれば自分の支柱もなくなり、心から魅かれる女性に出会っても最後は見殺し。一度壊れた冷たい心の温度を「青」という色で表現したのかなと思います。その対極として、この映画に登場する「赤」は、殺された女性の顔など、人間らしさの象徴のように感じました。ですが、自分にとっては、むしろ「白」が印象として強く残っています。精神病院の白、森に降り積もった雪の白など、この映画の白は、とても怖かったです。 女性同士のダンスのシーンも、主人公の対極のひとつとして描かれたようにも思えます。女性同士でタンゴ、最初、周りの人たちから好奇の視線を向けられますが、そんなことはお構いなし。そういう態度が人々を惹きつけ、最後は主人公の男性を包み込んでしまいます。タブーを犯した者は異質とする主人公と、自由であることの美しさで人々を魅了する女性二人との違い。これって、ファシスト政権下のイタリアと、自由の象徴・パリを表していたのかも。 自分には、ファシズムや当時のイタリアの時代背景に対する知識がなかったため、理解することはできても実感することはできず、映画として消化し切れない部分も残ってしまい、ベルトルッチ監督の傑作と評されている作品だけに、ちょっと残念でした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-27 20:41:16)《改行有》

93.  シェルタリング・スカイ 《ネタバレ》 ツーリストではなく、トラベラーであり続けたキット。ほとんどセリフもなく、字幕もない後半こそがこの映画の見どころだと思います。一組の夫婦に男がもうひとり絡んで、男女関係云々という前半は、本題を表現するための前フリのようなもので、ストーリーがどうの、と論じる類の映画ではありません。 アメリカに帰れば、タクシーの中で大使館員とタナーを待っていれば、普通に生きることさえ難しい状況からは逃れられますが、キットはその選択肢に背を向け、どこかへ去ってしまいます。私たちが「快適」とする白人社会に戻ってしまえば、キットにとってそれは「ふりだしに戻る」ということだったんでしょう。山のような荷物を抱えて移動する「ツーリスト」から、トランクひとつの「トラベラー」となったキットは、物質第一主義の欧米文化に対する皮肉の象徴なのかもしれません。豊かさの象徴である山のような荷物=しかしそれは生きていく上でのお荷物=そんなものを生み出す欧米文化、ということでしょうか? その欧米文化の副産物が差別社会。 オープニングのモノクロの映像には、発展していくニューヨークの様子が描かれ、快適、快楽、経済的発展、物質的な豊かさをイメージしたシーンが、都会的な雰囲気のジャズとともに流れます。そして、豪華客船から小さなボートで上陸した先では、一転して土着的な民族音楽。オープニングが終わり切らないここまでのシーンだけで、欧米と対極する文化圏が舞台であることが強調されています。たくさんの荷物を、家のない貧しい子供たちに運ばせるアメリカ人は、大きな荷物から帽子を取り出し、カメラで写真を撮り、スピーカーから西洋音楽が流れる酒場で、ドリンクを飲みながら子供たちに靴を磨かせるなど、アメリカの富裕階級とアラブ圏の当時の事情がくっきりと描かれています。 ラストシーン、タクシーから消えたキットは、最初3人で立ち寄った酒場に現れます。店内にはやはり西洋音楽が流れ、新聞売りの子供など、店の様子は変わらない。変わったのはキットの心。その心が「迷ったのかね?」「人には無限の機会がある」ことを、無言のおっさんから感じ取ります。おっさんの声はキットの感情そのもの。映画はそこで終わりますが、キットがその後もトラベラーとして生きていくだろうということは容易に予想できます。 グランドホテルから出てくるタナーが欧米文化の象徴、かつてはその文化の中で生きてきたものの、別の生き方を模索するキット。この二人のコントラストが、差別社会への批判なのだと思います。オープニングとエンディングを見比べると、この映画の意図がよくわかりますね。 後半の砂漠も、俯瞰的に眺めている私たちにとっては「美しい」風景ですが、そこで生きるアラブの人々にとっては日常の当たり前の風景。「ほ~ら、きれいな景色でしょ」と見せるだけでは、まさにただのツーリスト的映画になってしまいますね。静けさ・美しさと同等の激しさ・重苦しさが伝わってくる、それがこの映画の価値だと思いました。 それにしても、男と女の関係をこれほどまでに描き切ることができるベルトルッチ監督の手腕に、ただただ驚くしかありません。「シャンドライの恋」のラストシーンの衝撃も、なるほど、この監督だからこそ作れたんだと、改めて納得です。[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-02-25 22:31:43)《改行有》

94.  TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ 《ネタバレ》 ツボにハマって大笑いするシーンは「少年メリケンサック」ほどではなかったものの、音楽的にはこちらの方がいいですね! 個人的な趣味ですが、木村充揮の「閻魔をたたえる唄」は、もっと長く聴きたかったです。 あのハイテンションな悪ノリ、普通なら途中で飽きてしまうでしょうが、映画として破綻する寸前で引き締めていたおかげで、最後まで楽しめました! 特にラストのキスシーンは良かったです。 刺激がいっぱいの地獄にあこがれ、天国の退屈さは地獄よりも地獄・・・というのは、オッフェンバックのオペレッタ「天国と地獄」や、桂枝雀の「茶漬えんま」など、いつの時代も変わらないということでしょうか?(笑) キャラとしては、「死神」のなおみさんが魅力的でした。でも、女子部屋に侵入したことを知っていて、その上で「私のこと、好きでしょ」と言ってしまうヒロインの、かわいいけどちょっとエロいところは、若造からおっさんまで、オトコなら心わしづかみにされそうですね(^^; 日本映画、こういう映画ばかりだと困りますが、こういう映画も、無いと困ります![CS・衛星(邦画)] 7点(2018-01-10 22:23:09)《改行有》

95.  偉大なるマルグリット 《ネタバレ》 この話の基となった、実在した音痴なソプラノ歌手の歌声、以前レコードで聴いたことがあり、あの歌声で巻き起こる、ジャイアンのリサイタル的なコメディと思っていました。早々に、予想を上回る「夜の女王のアリア」に爆笑! 外れた音程に合わせて揺れる頭の羽根飾りが、まるで笑いに拍車を掛けているそうです。 でも笑ったのはここだけで、後は意外にも夫との愛を中心とした、切ないストーリーでした。 夫は浮気相手に「妻には女を感じない」と言い、妻の歌にはうんざり。サロンの音楽会にもわざと遅れて帰り、「大成功らしいね!」と褒めちぎりますが、その時の彼女のなんとも悲しそうな表情・・・。彼女は誰よりも、愛する夫に、好きなオペラを聴いてもらいたかったんですねー。 そしてとうとうリサイタルを開いてしまいます。ひどい歌に客は大笑い。戸惑う彼女・・・でも愛する夫が聴いてくれている・・・。すると、いつもの音痴じゃなくて、突然、めちゃ上手な歌声に生まれ変わります。おいおい、朝ドラ「あまちゃん」の薬師丸ひろ子じゃないんだから・・・とツッコミたくなった瞬間、血を吐いて倒れてしまいます。 勝手な想像ですが、ここは「歌が急に上手くなった」奇跡が起こったシーンを描いたのではなく、彼女の幸せいっぱいな心情を美しい歌で表現したシーンではないでしょうか? 実際の歌は、客にはせいぜい「相変わらずヘタだけど、あれっ?何かちょっと心に伝わるものがあるぞ」くらいだったのでは? 哀れにも彼女はその時から妄想と現実との区別がつかなくなり、入院。「治療」という名目で、録音した自身の歌を本人に聞かせようとします。しかし直前になって、夫は「そんなことをしたら彼女は・・・」とやめさせようとしますが・・・・。 そしてラスト。執事の思ってもみなかった行動に「えっ!?」と驚かされます。彼女が主役のオペラ「マルグリット」の幕はここで閉じられた、という意味でしょうか。他にもいろいろ解釈があるようですが、あまりあれこれ考えず、素直に観て、素直に感動することができれば、それがベストな解釈だと思います。[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-10-26 09:20:59)《改行有》

96.  ぼくの伯父さんの休暇 ドタバタ喜劇とは違って、おしゃれな雰囲気の音楽は楽しめたものの、コメディとして見るにはさすがにちょっと厳しかったです。喜劇のお手本のようなシーンもたくさんありますが、どうにも退屈で・・・。違った気分の時に観れば、印象も変わるんでしょうか?「クスッと」よりも「イラッと」させられる方が多かったです(^^; ところで、タイトルは「ぼくの伯父さんの休暇」ですが、肝心の「ぼく」って誰??? 途中からボヤ~ッとしか見ていなかったので、見逃したかな?[CS・衛星(字幕)] 4点(2017-10-07 22:28:27)《改行有》

97.  妻は告白する 《ネタバレ》 真実が徐々に顕わになっていくような法廷サスペンスとしての面白さはさほどないものの、ザイルを切った本当の理由、そして雨に濡れて会社にやってくるあの名シーンのつながり方がすごいです! それに、無罪判決の瞬間をあんなにあっさりと・・・。このシーンを「無罪!ジャジャ~ン!」と安い2時間ドラマのように妙に盛り上げないのは、この映画の鑑賞ポイントは、無罪だろうが有罪だろうが、そんなことはどっちでもよくて、彩子の愛情表現こそがこの映画のテーマだからなんでしょうね。こういう見せ方、作り手の意志がしっかりと伝わってくるし、とても印象に残ります。 個人的なことですが、映画はいつも、誰が出ているかではなく誰が作ったかで観る観ないの目安にしていますが、若尾文子だけは別。映画としての評判はさほど高くなくても、この人が出演しているとわかれば、まず観ます。観客にそう思わせる力のある俳優さん、今はほとんどいないのではないでしょうか。[DVD(邦画)] 7点(2017-10-07 21:34:06)《改行有》

98.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 カッコつけたがりの多襄丸タイプ、プライドだけは人一倍の侍タイプ、女としてのイメージと自分の都合が大事な侍の妻タイプなど、現代にも、似たような人たちがたくさんいますよね(笑) 人間って、社会や時代背景によって考え方や価値観が変わったりしますが、本質は昔も今も大差ないってことですね。 死体が発見され、殺したのは誰かを明らかにする取調べシーンでは、3人(死んだ人も含めて)とも証言がバラバラ。「自分がやったのではない!」ではなくて、みんな「自分がやった!」と言い張ります。何のために・・・? それがこの映画の主題である「人の心が信じられなくなる恐ろしい話」なんですね。 その救いの意味を持たせようとする、ラストの捨て子をめぐる三人のやりとりは蛇足のような気がしましたが、小説の面白さを映画的な面白さへと変換させた脚本は素晴らしいと思います。 始まってすぐ、内容もまだよくわからない段階で、いきなり音楽にやられちゃいました! 木こりが森にたきぎを切りに行くシーンで、ボレロ・羅生門バージョンですかー!(笑) 個人的には、これだけでこの映画に満点を差し上げたい気分でした♪ モノクロ映画だから、という理由なのか、森の中の光のコントラスト、かなり意識して作った感じですね。これも黒澤監督のこだわりなんでしょうね。 また、三船敏郎といえば、多襄丸のような「豪傑!」タイプのイメージがありますが、この映画の終盤、女にタンカを切られてツバかけられて「トホホホ・・・」という表情、これは最高でした! この作品を含めて、昔の日本って、かなりの映画先進国だったのでは? 今の時代からは決して生まれてこないような、骨太の作品がたくさんあるように思います。[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-03 22:08:50)《改行有》

99.  ドニー・ダーコ 《ネタバレ》 これはいったいどのように観ればいいの? サイコ系? SF? ミステリー? デヴィッドリンチ?・・・と、なんだかよくわからないままに観ましたが、大筋のようなものがわかってくると、謎だった部分も「あっ、(たぶん)そういうことかー!」と、作り手の意図がいろいろと見えてきて面白いです! 内容を簡単に書くと、ドニーは「10月2日、この日に自分が生き延びると、10月30日に恋人のグレッチェンは車に轢き殺され、母親と妹は飛行機事故で死んでしまう」ので、彼は10月2日まで戻って愛すべき人たちのために笑顔で死を選択する、という話。そこに、物理の先生、死神オババ、精神科医などのセリフがうまく絡んで、話全体に深みを与えています。 もし10月2日にドニーが、飛行機エンジン落下事故で死んでいたらどうなるか。 次の日に転校してくるグレッチェンと出会わないため、彼女が死神オババの家に行くこともなく、従って彼女は死ぬことはなかったでしょう。また、自己啓発の人の家も放火されることなく児童ポルノもバレないので、ダンスコンテストの引率はおばちゃん先生が行き、母親も飛行機事故にも遭わず、母親がドニーを心配してコンテストが終わってすぐの深夜便に乗ることもなくきっと翌朝の便でゆっくり帰るので妹も死なない・・・。 さて、こういった「もしも」のストーリーを、どのように見せれば面白くなるのか。いろいろな演出アイディアを盛り込んだ結果、「あれれっ?ちょっと難解な感じになっちゃったかなー?」的な印象で、決して「狙った難解路線」ではないような気がします。個人的にはタイムトラベルなんか持ち込まないでほしかったですけど・・・。 最後にドニーに撃ち殺されるウサギ(フランク)以外は、おそらくドニー自身の精神状態を具現化したものでしょう。水道管を壊したり放火したりする自分の行動を正当化させたい意識の象徴だと思います。 まあ、こういう内容を説明的にわかりやすく見せたりしたら、ただの安っぽいSFヒューマンドラマになっちゃいますよね。画面に描かれたシーン、役者が語るセリフを、自分の中でどのようにつなぎ合わせるか。その組み合わせ方から、作り手の意図を感じ、理解する。そういう映画の醍醐味が味わえる作品だと思います。 「映画は映画館で観る」しか手段がなかった時代だとこういう作品は向きませんが、DVD等、自宅で簡単に鑑賞できる環境が定着化した現代、つまり「いつでも・何度でも・気になるシーンは繰り返して」観ることができるという新しい鑑賞環境が根付いたからこそ、こういう映画が生まれたのかもしれませんね。[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-28 14:39:23)《改行有》

100.  ファム・ファタール(2002) 《ネタバレ》 これはかなり面白いですね! もしあの時、こんな行動をしていたらという『if』の話、その表現手段が夢オチ・・・となると、普通はトホホな内容になってしまいますが、これはその類の映画の中でも群を抜いて面白いです! 窃盗団を裏切って仲間に殺されかけた女・ロールが、どうやら主人と子供を亡くしたらしい女性・リリーの家のベッドで目を覚まします。テレビのニュースが「夢で未来を見たら人生は変わるでしょうか」という、この映画の主題のセリフが流れ、そしてお風呂に入ると・・・。 その時の時間が3時33分。その後、結婚式が行われている教会の時計も3時33分、パパラッチが警察に捕まって取調べを受けている部屋の時計も3時33分。つまり、「これは夢の中のストーリー」であることを示唆しているのでしょう。また、窃盗団のリーダーが7年の服役を終えて出所すると、例の事件の日と同じ服で、シャツには血がついたまま・・・。これは、ロールが最後に見た彼の姿。これで明らかに「現実ではない」ことが示されています。 作り手が「これに気付く人はいるかな?さあ、これでわかったかな?」とニヤニヤしながら作っていた様子が手に取るようにわかります(笑) ロールがリリーの自殺を止めた結果、リリーはニューヨークで新生活を送ることになり、引越しトラックの運転手にペンダントをプレゼントします。それが運命を大きく変えるラストへ。そして最後に、転んだロールをパパラッチが助けて「あれ?どこかで会ったような・・・」「夢の中でね」。映画におけるこういう遊び、大好きです![CS・衛星(字幕)] 8点(2017-09-20 01:07:28)《改行有》

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