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プロフィール
コメント数 1888
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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141.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 半地下と呼ばれる、低所得者向けの賃貸住宅に住むとある四人家族。長びく不況のあおりを受け、揃いも揃って失業中の彼らは先の見えない困窮生活を続けていた。便所コウロギや酔っ払いの吐くゲロに囲まれ、スマホも近隣住民の飛ばすWi-Fi頼み、唯一の収入源であるピザ屋の内職も何かと理由をつけて買いたたかれるような屈辱的な毎日。そんな彼らが這い上がるために見つけたとっておきの方法。それは、小高い丘の上の豪邸に住む金持ち家族に〝寄生〟することだった――。浪人中の長男は、娘の英語の家庭教師として。同じく浪人中の美大志望の長女は、幼い息子の美術教師兼カウンセラーとして。失業中の父親は、主に金持ち主人の運転手として。そして母親は、住み込みで働く家政婦として。世間知らずの夫人に取り入り、もともと居た人間を追い出すようにして徐々に家族の中へと入り込む〝寄生虫〟たち。だが、異常を察知したもともとの家政婦が舞い戻ってきたことから、事態は思わぬ方向へと転がり込んでゆく……。韓国映画界を牽引するポン・ジュノ監督の最新作にして、外国語映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した本作を今回鑑賞してみました。冒頭から流れるように続く、徹底的に考え抜かれたであろうストーリー構成は本当に素晴らしかったです。貧困に喘ぐ四人家族が、徐々にこの金持ち家族の中へと入り込んでゆく一連の流れはもはや神がかってました。細部にまで拘ったカメラワークに計算されつくした脚本、変幻自在な音楽の使い方など全てに監督の才気が漲っております。そして元々の家政婦が舞い戻って来てからのあっと驚くどんでん返しも見事にやられました。まさか寄生虫に先客がいたなんて!そこからのドタバタも皮肉が効いていて、ベタながらなかなか楽しい。そして最後はポン・ジュノらしく、貧富の格差という普遍的な社会問題へと落とし込む手腕もお見事。貧困家族がどんなに頑張っても消せなかった「臭い」の扱いなど、監督の視線は何処までも鋭く、そして切ない。エンタメ映画として観客を徹底的に楽しませておいて、最後はちゃんと社会問題についても考えさせられるという、アカデミー賞受賞も納得の良品でありました。[DVD(字幕)] 8点(2020-10-24 00:06:10)

142.  TENET テネット 《ネタバレ》 時間と空間の魔術師、クリストファー・ノーラン監督の最新作を観てきました!!正直、内容の方はほとんど理解できなかったけど、「なんか凄い映画を観てしまった!!」感はビシバシ伝わりました!!その全体的な密度の濃さには素直に圧倒されたので、取り敢えず今は8点!レンタルされたもう一度見て、内容を確認してみます~。それで10点になるか6点になるか、どちらもあり得るのがまた凄い…。[映画館(字幕)] 8点(2020-10-17 22:30:21)

143.  黒い司法 0%からの奇跡 1990年代、警察の杜撰な捜査によって死刑判決を受けた黒人男性の冤罪を晴らすため、執念の活動を続けた若手弁護士を実話を基に描いた法廷劇。監督は、生き辛さを抱えた社会的マイノリティを優しい視線でもって見つめ続ける新鋭デスティン・ダニエル・クレットン。まあ観る前からおおよそ予想はついてましたが、開始10分で「あぁ、またこの感じの内容かー」とその既視感満載なお話に少々げんなり。具体的に述べさせてもらうと、①舞台はまだ黒人への偏見が色濃く残るアメリカ南部で、②警察の杜撰な捜査で冤罪判決を受けた黒人男性のために、③都会のエリート大学を卒業した理想に燃える若手弁護士が、④白人たちの執拗な嫌がらせにも屈せず、⑤無罪を勝ち取るために頑張るというお話。過去に何度も何度も制作されてきたこのパターンをどのような角度で映画化するかがその監督の腕の見せ所だろうけど、本作は真っ向勝負の直球ストレートで挑んでおります。でも、ちゃんと見事に勝利しておりました。ベタベタなお話で結末だっておおよそ予測がつくものなのに、最後まで観客をぐいぐい引き込むこの監督の演出力の高さは相当なもの。なにより特徴的なのは、物語の中盤で死刑囚の執行シーンをかなり詳細に描いているところですね。このシーンのおかげで物語がぐっと引き締まり、最後まで全く気が抜けません。偏見に満ちた白人たちの嫌らしさもしっかりと描いており、特に悪役である検事の如何にも俗物なところもなかなか巧い。唯一惜しいのは、ブリー・ラーソン演じる助手がいまいち活用できていなかったことくらい。総じてこの監督の才能は確かなものだと思います。最初にげんなりしたとか言ってごめんちゃい(笑)。ラスト、エンドロールの合間にさらりと説明されたところによると、主人公の隣にいた死刑囚もまた冤罪で後に無罪となって釈放されたとのこと。ここで話を戻すと、最初に何度も観たようなお話だと書きましたが、そのほとんどは実話を基にしたものだったということを忘れてはなりません。つまり、このような無実の罪で投獄された黒人がいかに多いかということです。アメリカの司法制度がどれだけいいかげんなものだったかが分かり、なんとも空恐ろしい気分になります。エンタメ映画として充分な面白さを有しながら、そんな社会問題についても深く考えさせられる、なかなか完成度の高い秀作でありました。8点![DVD(字幕)] 8点(2020-10-01 01:34:41)

144.  海を飛ぶ夢 《ネタバレ》 海水浴中の事故によって首から下が一切動かせなくなり、以来寝たきりの生活を余儀なくされたラモン。家族や支援者たちに支えられながら26年もの間、そんな辛く不自由な日々を過ごしてきた彼は、最近ある願いを抱くようになるのだった。それは、自らの尊厳ある死――。「誰にも迷惑を掛けず、静かに自分の人生の幕を閉じたい」。法律的な問題をクリアするため、ラモンはこの問題に詳しい女性弁護士フリアを雇う。何故自分が死を望んでいるのか、どうしてこのような障碍を負ってしまったのか、自らの率直な想いをやって来たフリアに語り始めるラモン。次第に彼は若き日の情熱的な恋の思い出や、長年書き綴ってきたという自作の詩まで披露するようになる。いつしかお互いに特別な感情を抱き始める二人。だがフリアもまた、自らの身体に秘密を抱えていて……。長年の寝たきり生活から自ら死を望むようになった、ある一人の男の秘めたる想いを淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。若き日のハビエル・バルデムがそんな尊厳死を選択せざるを得ない障碍者を演じ、幾つもの賞にノミネートされたという本作、今更ながら今回鑑賞してみました。監督は、ヒット作を連発しノリにのっていたころのアレハンドロ・アメナーバル。〝尊厳死〟と言う非常に重いテーマを扱いながらも、このラモンと言う男の純粋なラブストーリーとしてこの物語を捉えているのが良いですね。変に説教臭くなったりお涙頂戴物語になることなく、最後まで彼の一途な思いに寄り添うような気持ちで観ることが出来ました。特に彼が、想像の世界で空を飛び海を越えて愛しい女性の元へと向かい、そして自らの腕で抱きしめるというシーンは出色の名場面。監督のその演出力の高さには驚くほかありません。物語の後半、この彼女もまた脳に疾患を抱えていることが分かります。そう、フリアも近いうちに身体が動かなくなり、そればかりか記憶すらもなくしてゆくのです。そんな二人がベッドで寄り添いながら、ともに死を誓い合うシーンなどとても切ない。そして、彼らがそれぞれに辿ることになる運命。果たしてその結論が正解だったのか。もちろん人生に明確な答えなどあろうはずもなく、いろいろと考えさせられるその結末に僕は思わず涙してしまいました。生きることの辛さと切なさ、そして愛おしさがぎゅっと凝縮された密度の濃い秀作と言っていい。[DVD(字幕)] 8点(2020-09-08 00:40:18)

145.  スケアリーストーリーズ 怖い本 《ネタバレ》 ホラー好きで学校でも少し浮いた存在であるティーンエイジャー、ステラ。ハロウィンの夜、同じくクラスのはみ出し者の男の子たちと街へと繰り出した彼女は、何かと噂の絶えない町外れの廃墟へとやって来る。そこはおおよそ100年前、家族から監禁された末に自殺した女の子サラが、何人もの子供たちに自作の物語を聴かせた挙句残虐な方法で殺したという恐ろしい言い伝えが残っているのだ。鍵を外し、興味本位で中へと侵入した彼女たちは、そのサラが監禁されていたという秘密の地下室を発見する。そして、そこでサラが殺した子供たちの血で書いたと思しき本を見つけるのだった。ホラー好きのステラは、思わずその本を家へと持ち帰ってしまう。だが、彼女は知らなかった。そこにはいまだ恐ろしい物語が書き継がれていて、そこでつぐまれた物語は現実になってしまうことを――。全米であまりの恐ろしさから図書館へと置くことに論議が巻き起こったという児童書を映画化した本作、制作を務めるのがあのギレルモ・デル・トロと言うことで今回鑑賞してみました。しかも監督は前回、『ジェーン・ドゥの解剖』と言うフェティッシュ・ホラーの快作を撮ったアンドレ・ウーヴレダル。この二人がタッグを組んだというなら、もう観ないわけにはいきますまい。とにかく特徴的なのは、ホラー描写の禍々しさに容赦のないところ。日本的なじわじわ来る怖さとは正反対の、もういちいち人の生理的な部分を逆撫でする描写のてんこ盛り。最初に出てくるかかしのお化けの顔に毎回ゴキブリが這いずり回っていたり、仲間の男の子が食べたシチューの具に人間の足の指が入っていたり、可愛い女の子のニキビから大量の蜘蛛が飛び出してきたり……。いったいどうやったらこんな嫌なエピソードばかり思いつけるんですかね(笑)。極めつけは、廊下の向こうからゆっくりとやって来る太った女のお化け。もうこいつの気持ち悪ーい外見なんて夢に出てきそうなほどです。うん、確かにこれは子供が観たらトラウマになりますわ。肝心のストーリーの方も無駄を削ぎ落したシンプルなもので、最後まで小気味よく観られて大変グッド。ベトナム戦争や移民への偏見と言う社会問題へとさらりと目を向ける視点の幅広さもポイント高いです。主人公が最後に迷い込むことになる、サラが住んでいた洋館のおどろおどろしい雰囲気や彼女の悲劇的な最期なんていかにもデル・トロ的ですね。いやー、なかなか面白かった。やんちゃ盛りのお子ちゃまへの教育用ビデオとしても最適です(笑)。[DVD(字幕)] 8点(2020-08-27 19:16:17)

146.  ベン・イズ・バック 《ネタバレ》 クリスマスイブを迎えたその日、幼い子供たちとともに楽しい祭日を祝っていたバーンズ一家。だが、そんな順風満帆な家族の元に何の前触れもなく長男ベンが帰ってくる。母親であるホリーは満面の笑顔で彼を迎え入れるのだが、ベンの妹であるアイヴィーや義理の父親はあからさまな拒絶反応を示すのだった。何故なら彼はかつて、医者に処方された鎮痛剤のせいで依存症となり、クスリ欲しさに売人となって家族に散々迷惑をかけたから――。「今まですまなかった。でも、俺はもうすっかり真人間になったんだ」。そんなベンの言葉とホリーの説得もあり、家族は渋々一日だけならと彼を受け入れることに。だが、過去の酷い行いは彼を簡単には許してくれない。外出から帰ってきた家族は、家の中が滅茶苦茶に荒らされ、しかも愛犬が居なくなってしまったことを知る。哀しみに沈む家族のため、ベンは母親とともに家を飛び出すのだった。彼のせいで依存症となり命を落としてしまった娘の両親、彼にクスリを横流ししていた教師、そして売人時代の危険な仲間たち。犬を連れ去ったのは、果たして誰なのか?ベンは家族のために自らの過去と向き合おうとするのだが…。かつて些細なきっかけで麻薬中毒となった長男と彼を献身的に支えようともがく母親との特別な一日を描いたヒューマン・ドラマ。ジュリア・ロバーツがそんな母親役を熱演しているということで今回鑑賞してみたのですが、いやはや、これがよく出来た脚本の力が光る佳品に仕上がっておりました。本当にたった一日の出来事しか描かれていないのですが、それでもここにはこの母子の良い時も悪い時も含めた濃密な時間がちゃんと存在している。安易に回想シーンに逃げることも出来ただろうに敢えてそうしなかったのには、監督の覚悟を感じる。きっと過去に何度も裏切られ、そして酷く傷つけあったこともあったのだろう。それでも息子を必死で信じようとする母親の深い愛情に、僕は終始心を揺さぶられっぱなしでした。物語の後半、母子は連れ去られた愛犬の行方を捜して街を奔走するのですが、ここら辺のサスペンスの描き方も巧い。居なくなった息子の行き先を知るために、麻薬中毒のホームレスに敢えて麻薬を渡すシーンは、この問題の根深さを炙りだすことに成功している。そして、タイトルの二重の意味を浮かび上がらせる秀逸なラスト。哀切極まりないメッセージに、僕は思わず涙してしまいました。お薦めです。[DVD(字幕)] 8点(2020-08-18 02:09:07)

147.  トリプル・フロンティア 《ネタバレ》 ここは常に凶悪な犯罪が多発する危険な地、ブラジル。そこでは麻薬取引や殺人が日常茶飯事と化していた。そんな常に危険と隣り合わせの地で日々、犯罪と向き合ってきたアメリカ軍特殊部隊員サンティアゴは、いつまで経っても出口が見えない任務に嫌気が差していた。そんなある日、彼は内通者の女からとっておきの情報を聞く。なんとこの地に長年君臨する麻薬王ロレアの秘密のアジトを発見したというのだ。しかもそこには彼だけでなく、麻薬取引で得た大量の米ドル紙幣も隠されているという。「毎週日曜に教会に行くというロレアの隙を突けば、彼の命を奪うだけでなく、その大金も我が物に出来るはずだ」――。そう直感したサンティアゴは、秘密裏に計画を練り始める。今や退役しアメリカで暮らす元同僚たちと連絡を取り、着実に計画を進めていくサンティアゴ。自らの人生に一発逆転を図るため、彼と仲間たちは密かにブラジルのジャングルへと向かう。危険は承知のうえだった。だが、完璧だったはずの計画は少しずつ綻びを見せはじめ……。鬱蒼と茂るブラジルのジャングルを舞台に、金に目がくらんだ男どものひりひりするような現金強奪作戦を描いたクライム・アクション。主演を務めるのは、人気俳優ベン・アフレックとオスカー・アイザック。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いやー、これがなかなか見応えのある犯罪ドラマの逸品に仕上がっておりました。麻薬王の現金を奪うため、危険をかえりみずに南米のジャングルへと分け入っていく男どもって、やぱ熱いですわ。最初はとんとん拍子で計画が巧くいき、調子に乗った彼らは計画よりもかなり多い額の現金を車に詰め込むのですが、ここら辺の緊迫感の煽り方はお見事。警備の人間が帰ってくるまであと10分、目の前には何億もの金、そりゃぎりぎりまで車に詰め込んじゃう気持ちは凄く分かります。こういう役をやらせるとベン・アフレックは巧いですね~。彼が生活に困っているという前半の描写がここで効いてきます。そして後半、この強欲のせいで重量オーバーとなったヘリが墜落。彼らは大量の重たい現金を前に途方に暮れることになります。現地でロバを調達し、なんとしても現金を持ってこの地を脱出しようとする彼ら。追手は迫り、責任のなすり合いから仲間割れが勃発、徐々に彼らは自滅への道を歩むことになる…。ここら辺のドラマの描き方も非常に丁寧。山腹で夜の冷気に凍えた彼らが、「どうせ持っていけないんだ」と何百万もの金で焚火をするシーンはなんとも皮肉が利いています。金に振り回される男どもの悲哀を充分堪能できました。8点![インターネット(字幕)] 8点(2020-07-24 01:07:14)

148.  最後の追跡 《ネタバレ》 長びく不況の影響ですっかり活気を失ってしまったテキサスの田舎町。ある日、その地でちんけな連続銀行強盗が発生する。目出し帽を被った二人組の犯人は、地方銀行の小さな支店へ押し入ると束ねられていない紙幣のみを奪って逃走。そんな一見、無計画で荒々しい犯行を実行したのは、貧困に喘ぐ前科者の兄と家族を抱えた弟のハワード兄弟だった――。定年を間近に控えたテキサス・レンジャーの老捜査官マーカスは、すぐさま捜査に乗り出す。ネイティブ・アメリカンの相棒とともに地道な捜査を重ね、着実に犯人へと迫ってゆくマーカス。すると、一見無軌道にも見える彼らの犯行には、実は緻密に考え抜かれた計画が隠されていることに気付くのだった……。構造的な不況に喘ぐテキサスを舞台に、銀行強盗を繰り返す無法者兄弟と彼らを執念の捜査で追う老レンジャーの追跡劇を緊迫感溢れる展開で魅せるクライム・アクション。主演にはハリウッドのベテラン俳優ジェフ・ブリッジスと人気若手俳優クリス・パインやベン・フォスター。脚本は、『ボーダーライン』や『ウィンド・リバー』と言った社会性の強い犯罪劇で幾つもの賞に輝くテイラー・シェリダン。いかにも彼らしい考え抜かれた脚本の力が光るクライム・ドラマの逸品に仕上がっていましたね、これ。最初こそ、行き当たりばったりで犯行を重ね、金を得るとカジノへと走るというこの兄弟の破天荒ぶりを強調しておきながら、次第に彼らの緻密な計画が明らかとなる。それは、サブプライム・ローンで土地を奪われた貧困層の声にならない魂の叫び。相変わらずこの人は、経済発展から取り残されたアメリカの地方都市に生きる人々の怒りをその脚本執筆の原動力にしてますね。道端に幾つも掲げられた銀行の融資の看板と、そのそばの「イラクに三度も行ったのに見返りナシ!」と言う落書きが極めて象徴的。クライム・サスペンスとして一級の完成度を誇りながら、社会問題へもちゃんと深い洞察を見せるという高度な技を見事にやってのけている。主演のこの三人だけでなく、ちょい役で登場する食堂のウェイトレスやカジノの娼婦など誰も彼も血の通った人間として描き分けることにも成功しています。良い映画って、こういう細かいところにまで手を抜かない姿勢がやはり大事なんだと改めて思わされました。最後、追い詰められた兄弟がそれぞれ辿ることになる哀しい運命。兄は血を分けた唯一の兄弟のため、弟は愛する家族のため、それぞれの方法でただこの貧困の連鎖を断ち切ろうとしただけなのに…。いやはや、なんとも切なく深い余韻を残してくれました。アカデミー賞ノミネートも納得の非常に完成度の高い社会派サスペンスの秀作と言っていいでしょう。[インターネット(字幕)] 8点(2020-07-02 21:10:21)

149.  ビースト・オブ・ノー・ネーション 《ネタバレ》 神様、今日僕は人を殺しました。人として最も許されざる罪です。でも、僕はこうも思うのです。きっとこれは正しい行いだと――。舞台は西アフリカの何処とも知れぬとある小国。そこに暮らす年端もいかない少年アグーは、貧しいながらも心優しい両親や兄弟たちと充実した日々を過ごしていた。だが、そんな彼にも徐々に戦火の波が近づいてくる。数年前から始まった内戦により、国は真っ二つに分断されていたのだ。突然やって来た政府軍によって、スパイの疑いを掛けられた家族はアグーの目の前で銃殺されてしまうのだった。身寄りのない孤児となったアグーは、行く当てもなくただ森の中を彷徨い歩くことに。近いうちに彼も天国へと召されることになるだろう。そんな時、たまたま通りかかった反政府軍により、彼は〝幸運にも〟拾われることに。「お前の家族を殺した政府の人間に復讐する手伝いをしてやる」――。その日から、アグーは反政府ゲリラの少年兵として銃を手に戦場へと駆り出されるようになる。来る日も来る日も殺し合いの手伝いをさせられた彼は、やがて立派な兵士へと成長してゆく……。内戦に揺れるアフリカの貧しい国を舞台に、そこで過酷な運命に翻弄されるある少年兵の悲劇を描いた戦争ドラマ。一時期、静かなブームを呼んだ、いわゆるアフリカ内戦ものの一つですが、本作はその中でもトップクラスを誇る生々しいリアルさに満ちたものだと思います。まさに〝国家なき野獣ども〟のモラルや倫理など欠片もない残虐行為の数々。冒頭から、主人公の家族が彼の目の前でゴミのように殺されるシーンに始まり、その後少年兵となった彼が最初の殺人を強要されるまで、まさに目をそむけたくなるほど血腥い空気に満ちています。極めつけは、レイプされる村人の若い女の悲鳴が気にくわないからと急に主人公が射殺するシーン。レイプしている当事者や順番を待っている兵士が、彼に「まだ終わってないのに、何するんだ!」と悪態をつくところなんて本当に反吐が出そうになります。でも、それが戦場の現実。ゲリラの司令官に見いだされ、訓練を受けて成長し、やがて仲間と友情を育んでゆく主人公の姿は、日本に居る普通の子供と何ら変わらない。環境や周りの大人たちによってこれほどまでに人は変わってしまうものなのかと、改めて戦慄させられてしまいました。主人公を兵士として導く、ゲリラのカリスマ的司令官を演じたイドリス・エルバの鬼気迫る役作りにも圧倒されます。最後、主人公はこの司令官の洗脳を乗り越え、国連軍に保護されるのですが、それでもこの悲惨な過去を変えることなど出来ない。人間の愚かさと戦争の恐ろしさを改めて考えさせられる、非常に優れた戦争ドラマでありました。[インターネット(字幕)] 8点(2020-05-11 13:14:52)

150.  7月22日 《ネタバレ》 2011年、7月22日。それはノルウェーの人々にとって、忘れられない悪夢の一日となった――。ネオナチに感化された一人の極右青年によって、凄惨極まりないテロが実行されたのだ。まず首相官邸の近くで車爆弾を爆発させた犯人は、現地の混乱を尻目にそのまま保養地として有名なウトヤ島に向かった。そこではちょうど労働党青年部によるキャンプが開催されており、多くの若者たちで賑わっていた。島に辿り着いた犯人は持っていた自動小銃を構えると何の躊躇いもなく、たまたまそこに居合わせただけの若者を次々と襲い始める。数十分にも及ぶ凶行の結果、77名もの何の罪もない市民が犠牲となるのだった…。本作は、そんな実際にあったテロ事件を背景にその日、その島でいったい何が起こったのか、犯人は何故そんな残虐な犯行を実行したのか、そして事件はノルウェーの人々にどのような影響を与えたのかを丹念に描いたものである。監督は臨場感あふれるリアルな作風で知られるポール・グリーングラス。かつて911同時多発テロで唯一自爆攻撃を阻止した旅客機の乗客たちを描いたこの監督らしく、冒頭のリアルなテロ描写には目を見張るものがある。全く躊躇することなく、目に付いた若者たちをただ淡々と銃殺し続けるこの犯人の底なしの狂気には戦慄させられるほかない。いったい何があれば、ここまでの憎しみを心に宿すことが出来るのだろう。物語はその後、この犯人の裁判の過程と彼を弁護することになった弁護士の心の葛藤、そして事件によって瀕死の重傷を負い一生消えない後遺症を負わされた青年のドラマを丁寧に描いてゆく。そこで炙りだされるのは、犯人の思想の脆弱性である。大言壮語なだけで中身は空っぽ、自身の不幸な境遇を全て社会のせいにして、テロを実行した自身を英雄視する気持ちの悪いナルシズム。見れば見るほど反吐が出そうになるこの犯人の薄っぺらい実像とは対照的に、次第に明らかとなる弁護士と生存者である青年のその信念の強さには心揺さぶられるものがある。特に最後、犯人の前で自らの想いを力強く述べる被害青年の言葉には思わず涙してしまった。「僕は生き残った。だから、生きる。仲間や家族のため、そして殺された親友たちのために」――。世界に蔓延する憎しみの連鎖はこれからも続いてゆくのだろう。不寛容の精神は、これからも人々の心に壁を築き続けるのだろう。だが、彼のような言葉があればこの世界に絶望することなく生きていける。そう思わせずにはいられない、切実な希望に満ちた秀作であった。[インターネット(字幕)] 8点(2020-05-07 01:44:10)

151.  オクジャ/okja 《ネタバレ》 スーパーピッグ――。それはアメリカの大企業ミランド社がチリの農場で偶然発見した新種の豚だ。最小限の食料で何処までも大きく育ち、しかも排泄物は少量、何より「美味しい」その豚は、世界の食糧危機を救う奇跡の豚として世間の注目を集める。将来の安定供給を目指すミランド社は、発見された27頭の子豚を世界各国に配布し、どの国の飼育方法がもっとも優れているかをなんと10年間モニターする計画を立てる。そして、10年後…、ミランド社が世界に配られた27頭のスーパーピッグを調査してみると――。韓国の人里離れた山の中で、小さな女の子ミジャに育てられたオクジャ。丸々と太っただけでなく、豊かな自然の中で伸び伸びと育ったその豚は誰が見ても見事な豚だった。ニューヨークで大々的に発表されることになったオクジャは、ミランド社のトラックに乗せられ、そのまま首都ソウルへと搬送されることに。だが、幼いころから家族同然に暮らしてきたミジャは到底納得いかない。何としてもオクジャを取り戻すため、すぐさまソウルへと向かうミジャ。そこにミランド社を敵視する過激な動物愛護団体も現れ、ソウルは大混乱へと陥ってしまう。果たしてオクジャとミジャは無事に再会を果たすことは出来るのか?韓国映画界を牽引するポン・ジュノ監督が、豪華キャストを揃え、そんな愛くるしい食用豚を巡るバトルをノンストップで描いたエンタメ大作。とにかくこのオクジャと言う巨大豚のフォルムがとても魅力的でした。となりのトトロとクマのプーさんとダンボを足して割ったような愛くるしい見た目でありながら、ちゃんとリアルさも感じられる絶妙な匙加減で大変グッド。そして、この豚と友情を育む女の子もその素朴な見た目とは裏腹に行動力抜群で、こちらも負けず劣らず魅力的。彼女がオクジャのためにソウルの街を疾走する前半部分はテンポも良く、演出もキレッキレで普通に面白かった!トラックの天井に摑まった女の子がトンネルにぶつかりそうになるシーンなんて手に汗握っちゃったし。途中からこのチェイスに参加する動物愛護団体のメンバーもなんだかとぼけた味があり、オクジャを乗せたトラックを運転する若者が変にクールなのも見ていて楽しい。そして舞台がニューヨークに移ってからは一転、一気にシリアスさが増すのも素晴らしい演出でした。何処かアウシュビッツを髣髴とさせる暗い飼育場で、ただ屠殺されるために並ぶ豚たち――。食べられるために生まれてくる命は自然の摂理として正しいのか?激しいカーチェイスやオクジャの愛くるしい造形で前半はたっぷりと楽しませ、後半は他の生物の命を頂いてその生命を維持する人間の業についてちょっぴり考えさせられる、素晴らしいエンタメ作品でありました。[インターネット(字幕)] 8点(2020-04-26 00:30:46)

152.  ショート・ターム 《ネタバレ》 ショート・ターム12――。それは、短期滞在型の児童福祉施設だ。そこでは、家庭に問題を抱えた様々な子供たちが暮らしている。育児放棄や児童虐待、家庭内暴力や貧困などそれぞれに深刻な問題を背負った子供たち。彼らの世話や健康管理を担当する施設職員グレイスは、そんな子供たちが日々巻き起こす問題に忙殺されていた。彼らの切実な思いに満足に応えられないというジレンマに悩むグレイス。彼女の唯一の心の支えとなっているのは、同僚で一緒に暮らしている恋人メイソンの存在だった。そんなある日、グレイスに予期せぬ妊娠が発覚する。だがグレイスは、素直に喜ぶことが出来ない。何故なら彼女自身もまた、幼いころ実の父親に虐待を受けていたというトラウマを抱えていたから。そこに同じく父親から虐待を受けていると思しき女の子、ジェイデンがやってきて…。小さな児童福祉施設を舞台に、そこに暮らす様々な子供たちや職員たちの心の葛藤を描いたヒューマン・ドラマ。自傷行為やドラッグ、衝動的な暴力や精神疾患等々、ここで取り上げられる子供たちの実態はかなり深刻で、ともすれば非常に暗い作品になりそうなのだが、そうさせない魅力がこの作品にはある。きっとそれは、登場人物誰一人として希望を失っていないところだろう。親からの虐待やネグレクト、中には実の父親からの性的虐待などと言う心が挫けそうになる深刻な事態に陥りながらも、それでも彼らは明日を見つめることを止めない。それはグレイスをはじめとする施設職員も同じで、ここで暮らす誰もが時に反発しあいながらも絶えず前を向こうと努力している。そんな彼らを、この監督はまるでこの施設に一緒に暮らしている一員かのような目線で見つめている。物語の進行とともに、観客はいつしか彼らの仲間の一人となっているかのような感覚に陥ってくるのだ。この監督の豊かな才能のなせる技なのだろう。主人公を演じたブリー・ラーソンもそんなトラウマに悩む施設職員を等身大に演じていて、とても魅力的だった。彼女と父から虐待を受ける少女ジェイデンとの間に芽生える友情には心揺さぶられるものがある。特にジェイデンが創作した童話「友達のサメのために足を差し出すタコ」という哀しいお話に、彼女がじっと耳を傾けるシーンには思わず涙してしまった。この世は辛く悲惨なことばかりだけど、それでも前を向いて生きていこう。自分のことを理解してくれる仲間のために――。そう思わずにはいられない、とても優れた物語だった。[DVD(字幕)] 8点(2020-04-23 00:01:10)

153.  キング・オブ・コメディ(1982) 《ネタバレ》 マーティン・スコセッシ監督&ロバート・デ・ニーロ主演、この黄金コンビの映画ほぼ全て観てきたつもりだったけれど、その中でも意外に見落としていた本作を今更ながら今回鑑賞してみました。どうして今まで手を出していなかったかというと、このド直球なタイトルから、才能あふれるコメディアンの卵が努力と下積みの末にトップに成り上がるサクセス・ストーリーだと僕が勝手に思い込んでいたせいでいまいち興味を惹かれなかったから。でも、意外や意外、これって全然そんな話じゃなく、むしろ『タクシー・ドライバー』のブラック・コメディ版のようなかなりイタいおっさんの妄想炸裂映画じゃないですか!本作の魅力は、もうとにかくこのロバート・デ・ニーロ演じるルパート・パプキンの強烈な印象に尽きると思います。勝手に自分に才能があると思い込んで、夜な夜な自分がスターになる日々を妄想し、師事するコメディアンにストーカーまがいの付き纏いを続けた挙句、最後はあり得ないほど暴走しちゃうというとにかく全てがイタイ奴。いやー、でもなんか嫌いになれないんですよね、この人。きっと何処かでこのおっさんの気持ちに共感しちゃってる自分が居るからなんでしょうね。ここらへんはやはり名優ロバート・デ・ニーロの類稀なる演技力による部分が大きい。特に、勝手にスター・コメディアンの別荘に乗り込んじゃうシーンは、そのイタさ爆発という点で出色の出来でした。後半のキチ〇イ金持ち女との名コンビぶりなんてかなりキレッキレで、もう爆笑。スコセッシってコメディを撮る才能もあるんですね。そしてこの主人公、なんだかんだやらかした挙句に最後は好きな女にええかっこして本懐を遂げる……。スコセッシ、こういうモテない男の気持ちがよく分かってらっしゃる(笑)。うん、『タクシー・ドライバー』より断然こっちの方が面白かった!8点!![DVD(字幕)] 8点(2020-04-14 22:01:06)(良:1票)

154.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 彼の名は、オスカー・グラント。まだ22歳のどこにでも居るような平凡な若者だ。カリフォルニアの小さなアパートにまだ籍は入れていないが優しい恋人と一緒に暮らしている。そして、二人にはかわいい盛りの幼い娘タチアナもいる。愛する家族のためにも、オスカーはこれからますます頑張らなければいけない。でも、現実は厳しく、彼自身の遅刻によりスーパーの仕事は2週間前に首になったばかり。過去にちんけなヤクの取引でムショに入った経験もあり、先行きは厳しいがそれでもオスカーは愛する娘のために真人間になろうと誓ったのだ。恋人も母親もそんな彼を精いっぱい支えてくれている。周りに誘惑も多いが、それでも一歩ずつ人生を立て直そうと必死に頑張っていた。そう、あの日あの時に、〝フルートベール駅〟で降りるまでは――。大晦日の夜、オスカーはたまたま乗った電車で過去に因縁のあった知り合いと乱闘騒ぎを起こしてしまう。通報を受けてやってきた白人警官に彼は無理やり電車から降ろされ、ホームで拘束されることに。何も悪いことはしていない。俺が黒人だからか。当然のように抗議するオスカー。騒然としていく駅のホーム。やがて、興奮した警察官によって……。実際にあった、無抵抗の黒人青年を警察が駅のホームで射殺したという事件を基に、彼の人生最後の1日を丹念に追ったヒューマン・ドラマ。のちに幾つものハリウッド大作を手掛けることになるライアン・クーグラー監督らしく、ことさら人種差別の問題を強調しなかったところにまず好印象。お互いに相手のことをそこまで敵視していたわけではないのに、ちょっとした思い込みから起こった悲劇として事件を捉えている。きっとこの監督のスタンスは、人種差別に「怒っている」のではなく、「哀しんでいる」のでしょうね。人種間の対立を必要以上に煽る作品が巷に溢れる昨今、この冷静な視線は素晴らしい。そして、この完璧なまでのストーリーテリングの巧みさ。オスカー・グラントと言う平凡な若者の人となり、そしてこれまで歩んできたであろう人生を過不足なく観客に伝えることに成功している。確かに若さゆえの過ちは幾つも犯してきただろう。仕事をクビになったのも彼の自業自得。でも、だからと言って駅のホームでたくさんの乗客が見守る中、射殺されるほどの罪は犯していない。ある日突然、理不尽にもその人生を絶たれることになった若者の哀しみが静かに伝わってきて、胸が締めつけられそうでした。よくテレビのニュースで流れるようなありふれた事件の一つ一つにも彼のような人生があり、哀しむ人たちがいる。そんな普遍的な事実に改めて思いを馳せられる、良質の人間ドラマでありました。[DVD(字幕)] 8点(2020-04-07 00:01:06)

155.  ピーターラビット 《ネタバレ》 舞台は自然豊かな田園風景が拡がるイギリスののどかな田舎町。そこでは祖先より代々受け継いだ庭を巡り、性悪じじいと熾烈な闘いを繰り広げる小さな動物たちがいた。青いジャケットを羽織った動物たちのリーダーの名は、ピーターラビット。彼の指揮の下、うさぎたちは性悪じじいに対していつ果てるとも知れぬゲリラ戦を展開していた。そんなある日、唐突にじじいが心臓発作で死亡する。闘いは彼とその仲間たちの勝利で終わったかに思われた。だが、庭を相続したじじいの甥が新たにやって来たことから、長い闘いの第二幕が切って落とされるのだった。さらにはうさぎたちと同盟関係にあると信じられていた画家のお姉さんがその甥と恋に落ちてしまったことから、争いはますます混迷の度を深めてゆく。不毛な闘いの果てに人間と動物たちは何を見るのか?イギリスの有名な児童文学を原作に、うさぎたちと人間との小さなお庭を巡るバトルをスラップスティックに描いたファンタジー。原作のことはよく知らないまま、さして期待せずに今回鑑賞してみたのですが、これがなかなかブラックな内容でいい意味で期待を裏切られました。なんたって冒頭から、ピーター・ラビットのお父さんは敵のおじいさんにパイにして食べられたと説明されるんですから!そして心臓発作で死んだおじいさんが〝アイス販売車〟で運び去られると、動物たちが家の中で狂喜乱舞のパーティーを開くというハチャメチャぶり。いや、いくら敵とは言え、おじいさん死んでますから(笑)。そしてやって来る甥の潔癖症男との闘いも狩猟用の罠やら電気網やら果ては爆薬まで使ってのもはや殺し合い。『パディントン』も裸足で逃げ出すようなそんな不謹慎な内容に僕はかなりテンション上がっちゃいましたわ~。甥が電気ショックでいちいち吹き飛ばされたり、ニワトリが朝一で鳴く理由が実は昨日の不満を爆発させていたり、ミュージカル担当の鳥たちが毎回酷い目に遭わされたりと、細かなネタの数々もいちいち笑えます。何も知らない画家のお姉さんの目の前では仲良くしてるうさぎと甥が、彼女が居なくなった瞬間にボコボコに殴り合うというのはベタですけど、やぱ面白いっすね~。何気におじいさんが死んだことを最後まで誰も悲しまなかったのもけっこうツボでした。んで、最後は無理やりなハッピー・エンドで気分爽快!いやー、内容のブラックさとうさぎたちのもふもふ可愛さのギャップに萌えました。8点![DVD(字幕)] 8点(2020-03-23 02:51:41)

156.  500ページの夢の束 《ネタバレ》 彼女の名は、ウェンディ。何処にでも居るような平凡な女の子。でも、一つだけ人と違うことがある。それは人と話すのが大の苦手で、自分の思い通りにならないことがあると思わず“かんしゃく”を起こしてしまう困った癖を持っていること。そう、彼女はいわゆる自閉症なのだ。唯一の肉親である姉の結婚を機にウェンディは福祉施設で暮らすようになり、今はパン屋さんで働き自立している。でも、本当の願いは思い出がたくさん詰まった自分のお家に帰ること。そんな折、姉の勝手な判断で大切なお家が売却されてしまうことを知るのだった。到底納得いかないウェンディはまたしてもかんしゃくを起こしてしまう。食事が喉を通らないほど落ち込んだ彼女が、考え込んだ末に思いついた解決法。それは、映画会社が主催する、自分の大好きなテレビドラマ「スタートレック」の脚本コンテストに応募し、賞金10万ドルを手に入れることだった。寝る間も惜しんで書き上げた500ページにも及ぶ原稿はすでに完成してある。だが、締切は明後日。とてもじゃないが、今から郵便局に預けにいってては間に合わない。仕方なくウェンディは、たった一人ロサンゼルスへと向かうバスへと乗り込むのだった。愛犬のピートを相棒にして――。自閉症と言う個性を抱えた一人の女性が、自らの夢を叶えるために遠く離れたロサンゼルスまで旅する姿を描いたロードムービー。前作で、障碍者と性と言う難しい問題をあくまで軽く爽やかに描いたこの監督らしい、ほのぼのとした空気に包まれた心温まるお話でしたね、これ。とは言ってももちろんキレイごとばかりではなく、当然そこには障碍のある人の生き辛さや家族の葛藤、世間の無関心やそんな弱者を食い物にする悪人の存在もちゃんと描かれる。でも、そこまで深刻になる一歩か二歩手前で引くこの監督の絶妙な匙加減は見事としか言いようがありません。特に居なくなった彼女を追って奔走する、トニ・コレット演じる施設職員には好感持ちまくりです。バスの運転手や医者、融通の利かない映画会社の事務員など嫌なやつも沢山出てくるのですが、それ以上に彼女のような魅力あふれる人々がいっぱい出てくるのがとてもいい(宇宙の言葉を突然話し出す、あの警官マジサイコー!)。そう、どんな人にだってちゃんと手を差し伸べてくれる優しい人が居ることを改めて教えられました。主演を務めたダコタ・ファニングも自閉症を抱えた若い女性をリアルに演じていてとても良かったです。最近妹の方が何かと話題になることが多いのですが、彼女にはこのまま演技派の道を歩んでいって欲しいものです。今回の結果は残念だったけど、必ず認めてもらえる日がきっと来るよ。そう思わずにはいられないヒューマン・ドラマの佳品でありました。お勧めです。[DVD(字幕)] 8点(2020-02-18 22:39:07)

157.  ハッピー・デス・デイ 《ネタバレ》 彼女の名は、ツリー。自他ともに認める下半身ゆるゆるの女子大生、いわゆる“ビッチ”だ。その日の朝も昨日の酒が残った状態で目覚めたツリーは、自分が見知らぬ同級生の部屋のベッドに寝ているのを発見する。「あっちゃー、またやっちゃった」。酷い二日酔いの頭でそう後悔しつつも彼女は、今夜のパーティーのためにすぐさま自分の学生寮へと急ぐ。何故なら今日は誕生日だから。今日こそ最高にハッピーな一日を過ごすため、ツリーは嫌みなルームメイトや不倫の関係にある大学教授たちをやり過ごし、約束のパーティー会場へと暗い夜道を歩いていた。すると、彼女の背後に忍び寄る不穏な影。不気味なマスクを被った謎の男に、ツリーは呆気なく殺されてしまうのだった――。だが、次の瞬間、ツリーはまた見知らぬ同級生の部屋のベッドに寝ている自分を発見する。見覚えのある人と見覚えのある会話。戸惑いつつもパーティー会場へと向かった彼女は、またしても謎の男に殺されることに。でも、次の瞬間、ツリーはまた見知らぬ同級生の……。原因不明のそんな悪夢の無限ループへと迷い込んだビッチは、果たして無事に誕生日を乗り越えることが出来るのか?最近流行りのループ物に青春ホラーをミックスしたというそんな本作、いやー、これがなかなか面白いじゃないですか!最初目覚めてから謎の男に殺されるまでの一回目が若干長くてループ物としてどうかと思ったんですが、二回目三回目とループが繰り返されるたびにどんどんとスピード感が増してゆくのが観ていて爽快。ツリーの殺され方も、ナイフで刺殺から割れたガラスで顔面串刺し、バッドで殴打、噴水で水死、バスで轢死、ガソリンで爆殺とバラエティに富んでるのも大変グッド!あまりに殺され過ぎて、もはや開き直ったツリーが裸で学内を歩いたりするシーンなんていかにもビッチでナイスでした(笑)。きっと原因は自分の自堕落な生活のせいだと思い込んだ彼女が、真人間になろうと努力する中盤の展開なんてすんごく薄っぺらいんですけど思わず応援しちゃってる自分が居ました。うん、頑張れ、ビッチ(笑)。そして真犯人が明らかにされるクライマックスもけっこう脚本が練られていて普通に面白い。ラストシーンなんてなかなか技ありで思わず拍手しそうになっちゃったし。いやー、この監督、けっこうセンスあるんじゃないですかね。このタイムループの原因をもう少し納得できる形で説明して欲しかった気がしなくもないですが、エンタメ映画として僕は充分楽しませていただきました。うん、8点![DVD(字幕)] 8点(2020-02-08 23:03:38)

158.  ビューティフル・ボーイ(2018) 《ネタバレ》 息子を見ていると時々不思議に思うんです、「いったいこの子は誰だろう」って――。ニックとその父デヴィッドは何処にでもいるような平凡な親子。離婚した実の母はNYで暮らし、今は新しい母親とまだ幼い弟たちと暮らしている。デヴィッド・ボウイやニルヴァーナをこよなく愛し、持ち前の頭の良さから名門大学へと進学することが決まっていたニック。これから無限の可能性を秘めた充実した未来が待っているはずだった。そう、その薬と出会ってしまうまでは――。始まりは害のないマリファナからだった。そこからニックは、コカイン・LSD・ヘロイン・覚醒剤と瞬く間に手を出し、最後は強い依存性を持つという強力なドラッグ“クリスタル・メス”へと手を出してしまうのだった。当然私生活にも影響をきたし、大学進学は延期、家庭内は荒み、ニックはとうとう幼い弟の貯金にまで手を出してしまう。辛抱強く彼を見守ってきた父デヴィッドも手をつけられなくなり、仕方なくニックを施設へと預けることに。だが、ドラッグは予想以上に彼の身体や神経を蝕んでいて……。実話を基に、ドラッグによって人生を破壊されてしまった親子の葛藤と哀しみを淡々と描いたヒューマン・ドラマ。元は純粋無垢な青年ながら心の弱さから瞬く間に堕ちてゆく息子を演じるのは人気若手俳優ティモシー・シャラメ、息子を献身的に見守りながらも次第に神経を擦り減らしてゆく父親役には実力派俳優スティーブ・カレル。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが予想外に重く切ない物語でありました。何度も更生を誓いながらもその度に周りの人間を裏切り続けどんどんと地獄に堕ちていってることに自分で気づいていながらそれでもドラッグを止められない息子の姿に、この悪魔の薬の恐ろしさを改めて知る思いでした。そんな息子に何度も傷つけられながらそれでもなお信じようとする父親の気持ちも痛いほど分かり、胸が絞めつけられます。ときおり差し挟まれるまだ幼かったころの親子の幸せな姿がまた切ない。警察沙汰を起こし、もはやどん底のニックからの悲痛な電話に対して、「駄目だ、もう救えない。自分で人生を立て直してくれ」と言わざるを得なかった父の言葉には思わず涙してしまいました。そんな父親の気持ちを踏みにじるように、新しい薬欲しさに自宅へと盗みに入る息子。逃げ出した彼を追って車を出した継母が、途中で泣きながら追うのを諦めるシーンは強く胸に刺さります。とても重いお話ではありますが、胸を打たずにはいられない優れた作品でありました。[DVD(字幕)] 8点(2020-01-27 02:33:48)(良:1票)

159.  アナと世界の終わり 《ネタバレ》 彼女の名は、アナ。何処にでもいるような平凡な女子高生だ。数年前に母親を亡くしてから過保護な父親の鬱陶しい過干渉に頭を悩ませ、なんとなく付き合っている冴えない彼氏にも不満爆発、頭の固い学校の校長先生なんて早く死んじゃえばいいと思っている。唯一の希望は、高校を卒業してから旅立つ予定のオーストラリア一周ヒッチハイク旅。そんな彼女が迎えた高校生活最後のクリスマス。だけど、アナは自分でも分かっている。今日もきっと退屈な一日が始まるはずだということを――。だがその日、爆発しそうなエネルギーを何故か歌にして発散していたアナが目にしたのは、ゾンビに支配された世界の終わりの光景だった!原因不明のウイルスによって生ける屍が大量発生した世界を、アナとその仲間たちは持ち前の若いエネルギーと歌だけを武器に乗り越えようとするのだが……。ゾンビ・パニックと青春ミュージカルの奇跡の融合というアイデア一発勝負のそんな本作、「どうせ、イロものなんじゃろ」と大して期待せずに今回鑑賞してみました。なんですけど、え、意外にも僕はけっこう面白かったんですけど、これ。キラキラと輝くようなアナのミュージカルな日常に血みどろゾンビが同居するというマジカル・ポップなこの世界観は個人的にめっちゃツボでした。顔に返り血をつけたままクリスマスツリーの飾りの杖を武器に戦うアナをはじめ、彼女の仲間たちもそれぞれにキャラが立ってるのも大変グッド。あのクリスマスツリーのセーター(スイッチ入れたらイルミネーションつく!笑)を着たアナの彼氏の絶妙のダサさ具合いなんて思わず笑っちゃいました。他にもレズビアンな女の子やマッチョな元カレもみんな個性的で、彼らがそれぞれの方法でゾンビと戦うシーンもテンポが良くて普通に楽しい。全体を通して適度にグロく、適度にシニカル、そして適度にポップ。この絶妙な匙加減なんて監督、なかなかいいセンスしてるんじゃないですかね。そして後半はゾンビ映画としてちゃんと(?)仲間たちが次々犠牲になってゆくのもセオリー通りでいい。お互いゾンビに噛まれたリア充カップルがキスしながら最期を迎えようとするシーンなんてけっこう切なかったですし。後半になるにつれ、どんどんとぶっ壊れてゆく悪役の校長先生もナイスな仕事してます。そして、最後までミュージカルとしてそれぞれの楽曲のクオリティが下がらないのも普通に凄いと思います。うん、賛否両論あるみたいですけど僕はけっこう面白かった。8点![DVD(字幕)] 8点(2020-01-22 00:33:45)

160.  マローボーン家の掟 《ネタバレ》 「成人になるまでは屋敷を離れてはならない」「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」「血で汚された箱に触れてはならない」「“何か”に見つかったら砦に避難しなくてはならない」――。自らに課した、そんな五つの掟を守りながら、慎ましやかに暮らしているマローボーン家の四人兄妹。イギリスからアメリカ郊外の山の中に佇む古びた洋館に越してきた彼らは極力外部との接触を断ち、恐ろしい何かから身を隠すように静かに暮らしていた。そんな折、持ち上がった館の相続問題。期日までに親権者である母親のサインがなければ、兄妹は離れ離れになってしまう。だが、彼らの母親はアメリカへの旅路で体力を使い果たし、帰らぬ人になっていた。何とかして事態を打開しようともがく兄妹たち。同じころ、末の弟が館の中で不穏な何かを目にするようになり……。果たしてこの館に隠された驚くべき真実とは?どうして彼らは鏡を覗いてはならないのか?そして、兄妹は無事に成人になる日を迎えることが出来るのか?古びた洋館でひっそりと暮らすマローボーン家の兄妹を襲う、そんな数々の不穏な出来事をダークに描いたゴシック・ホラー。制作を務めるのは同じくゴシック・ホラーの傑作『永遠のこどもたち』を撮った、J・A・バヨナ。いかにも彼らしい不穏な空気に満ちた、なかなか見応えのある作品に仕上がっておりました。取り敢えず、「何か裏がある」というのは冒頭から分かるのですが、観客を導くミスリードの仕方が抜群に巧く、最後まで全く気が抜けません。ことの真相は途中で半分くらいまでは予想できるものの、完全には分かりませんでした。この屋根裏の〇〇は〇〇で実は〇〇ていたというのは何とか予想できたものの、〇〇たちは実は〇〇の〇〇だったとは……って決定的なネタバレを避けるあまりもはや検閲文書みたいになってしまいましたが(笑)。それはさておき、普通にホラー映画としてかなり高い水準に達しているのが素直に素晴らしい。館の中に居る何かが徐々に兄妹たちを追い詰めていく描写の禍々しさといったらない。最後までずっと不安感が拭い切れないのはいいホラーの証ですね。そして、最後は切なく哀しい余韻を残してくれるのもこの監督ならでは。なかなか完成度の高いゴシック・ホラーの良品でありました。[DVD(字幕)] 8点(2020-01-03 04:01:07)

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