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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123
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変更日付順123

1.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 《ネタバレ》 トム・ハーディの一人芝居で約90分間を突っ走る、ワンシチュエーション心理ドラマ。 ハーディの抜群の演技力に釘付けになると同時に、映画で使用されたBMWにとっては、最高のプロモーション映画になっている。 主人公は私生活の不運と仕事の不運が重なりあい、ロンドンへ向かう車中、さまざまな人物と電話で息が詰まるようなやり取りをせざるを得なくなる。主人公の自業自得といえばそれまでなのだが、主人公はそんな状況でも、なんとかけじめをつけよう、筋道を作ろうとあがくから、なおやるせなくなる。 (幻覚の)父親に語り掛けるシーン、狂気と愛憎が一緒くたになった声と演技はトム・ハーディの真骨頂であり、まさに彼の独壇場であった。またそのあと、息子との会話で涙を浮かべる表情、さながらジェットコースターのような、表情に落差をつける演技も素晴らしい。 決して明るくはないエンディングを主人公は迎えることになるが、 終盤での、同僚からの最後の言葉、息子からの言葉には、ほろりとさせられる。ほんの少しだけ希望があるような気がする。 お母さんには内緒で、一緒にサッカーの試合を見ようぜと声をかける息子、あんたはいい息子だし、いい大人になるよ。[DVD(字幕)] 8点(2022-10-30 10:44:21)《改行有》

2.  スリー・ビルボード アメリカの田舎町を舞台にしたサスペンス。 冒頭に映し出された3枚の広告からどう話が展開していくのか、先が読めないため、グイグイ映画に引き込まれていった。 登場人物のほとんどが、善悪(というか美点と欠点)が混淆した存在として描かれていて、 非常に泥臭い人物造形となっており、これもアメリカの田舎町の雰囲気とマッチしていて、印象深かった。 惜しむべくは、これだけ秀逸な脚本なだけに、物語のオチの部分、 もう少し踏み込んで描くこともできたのではないか、という思いもある。 ある意味で、最後は着地点をぼやかして映画を終わらせたようにも見える。[DVD(字幕)] 8点(2022-02-16 07:13:00)《改行有》

3.  レディ・バード グレタ・ガーウィグの、監督としての評価が一気に高まるきっかけとなった青春映画。遅ればせながら鑑賞したが、なかなか悪くない出来だった。演出、脚本、映像、どれもが高いレベルでまとまっている。物語のテンポの良さ、気の利いたセリフ回しやちょっとした伏線の使い方に、監督の優れた技量が表れている。ちょっと自意識過剰で、ちょっと痛い、でもやや陽キャラで、ブサイクではないから、それなりに人付き合いはできる17歳の女子高生の一年を、過度に美化することもせず、描き切っている。 海外では手放しで大絶賛されている本作だが、個人的にはそこまで完璧な映画か?と思う。数ある青春映画の中では秀逸な出来だが、比較的起伏の少ない物語であるため、スコーンと突き抜けるような盛り上がりはなかったように思う。 大名作というには留保をつけたいのだが、優れた映画であるのは間違いない。故郷への強い愛着が窺える、街の風景のモンタージュが印象的だった。映画内で度々繰り返されるそれらのシーンに、抑えても抑え切れない監督自身の故郷への愛を感じることができた。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-07-14 08:46:12)《改行有》

4.  斬、 《ネタバレ》 低予算で、かつ芸術色が強い時代劇を今まであまり観たことがないため、評価が難しい。とりあえず6点評価だが、再鑑賞したらもしかすると7点になるかもしれない。幕末のとある農村を舞台に、「人を斬ること」という行為について考えを巡らせる映画といっていい。公儀に馳せ参じようとする侍でありながら、真剣をなかなか抜かず、人を斬ることについて最終盤まで苦悩する主人公をどう捉えるかで、この映画の好き嫌いが分かれそうだ。私などは、侍なんだからヌルいこといってないでさっさと戦ってこいよ、それだと今後幕末の動乱を生き抜けないだろ(笑)、と思いながら観ていたのだが、それだとさすがに映画の主題を理解していないことになるか(笑)。ただ、ある意味で優柔不断にも見える主人公にフラストレーションがたまったのは確かだ。真剣の禍々しさが伝わるアクションシーンはなかなかの完成度だが、とはいえエンターテイメントに振り切らないため、映像快感を得ることは難しい。 人を斬る、つまり人を殺すことについての葛藤が、全編に渡って描かれている。ゆえに本作の英題はThe Killingになっているのだと私は推察する。思うに時代劇という形態を採ったのも、日本において人を殺すことの葛藤を描くのに最適なフォーマットだったからではないか。ただ脚本はやや難ありだと私は思う。人斬りについて延々と思考しながら、物語の最後で、人斬りについてどのような結論を下すのか、映画は結局なにも明示しないで終わるからだ。消化不良なのは否めないだろう。[インターネット(邦画)] 6点(2020-11-17 19:24:51)《改行有》

5.  i 新聞記者ドキュメント ネットフリックスにアップされており、映画『新聞記者』を観ていたこともあって鑑賞。作品が訴えたいことはわかったが、質が高いとは思えなかった。とりわけ後半の意図不明かつ悪意的なアニメーションや監督による脈絡の無いモノローグによって、作品がドキュメンタリーからプロパガンダに堕している気がしてならない。 題材そのものは興味深かった。オールドメディアの閉鎖性や独善性、日本の左派・リベラルの限界性が露呈していたのは印象的だった。記者クラブの閉鎖性を非難する森監督も、望月記者も、自身の内部に潜む閉鎖性や独善性に気づいていないのは、なかなか示唆的である。官僚や警官に食って掛かる傲然で攻撃的な姿勢は、リベラルを自認する彼らのハイド的(隠された)側面である。 望月記者本人が、悪い人間ではないと私は思う。沖縄の市民団体に取材し、記事を書く約束を誠実に守る姿は立派である。しかし一方で、権力は常に悪意的であり、ゆえに権力は追及しなければならないとする彼女の考え方、取材対象がリベラル層に偏っており保守層へ取材する様子があまりない姿勢を観ていると、私は危うさも感じた。記者は民主主義的プロセスを経て選出された存在ではない。民主主義的プロセスによって選ばれていない記者が、あたかも国民の代表、民意の体現者の如く振る舞い、極めて攻撃的な姿勢で権力を追及する。望月記者が典型例だが、メディアという自らの立ち位置の曖昧さに自覚的でない部分に、私はメディアの独善性を視る。その一方で、部外者を締め出し、権力と奇妙な馴合いになっているのもメディアなのだ。こうした閉鎖性と独善性に対し、メディアがより自覚的になって改革を施さない限りは、オールドメディアの衰退を止めることはできないし、国民からの信頼を取り戻すこともできないだろう。 映画『新聞記者』を観ても感じたのだが、制作者側が反権力に凝り固まり過ぎていて、せっかくいいテーマを扱っているのに、肝心なところで権力=悪と決めつけて、悪い相手にはどういう描き方をしてもいいとばかりに、悪意的な描き方に走ってしまっている。望月記者の動向を地道に追いかけて、その功罪も含めて淡々と描けばいい作品になったかもしれないのに、結局反権力への思いが勝ってしまって空回りをする。…中立性や客観性を見失う、自らの正当性を過信して敵対者へは過激な対応に走る、その閉鎖性と独善性に多くの人はついていけなくなる。本作品そのものが日本の左派の悪い部分や限界を、制作者が気づいていないところで、提示してしまっているようだ。だからダメなんだけど、本人たちは気づいていないんだよなぁ…(苦笑)。[インターネット(邦画)] 3点(2020-08-05 11:24:59)《改行有》

6.  ジョジョ・ラビット 《ネタバレ》 ユーモアとシリアスを巧みに織り交ぜた、素敵な寓話的映画だった。子役たちのキュートな演技もさることながら、美人で肝っ玉なお母さんを演じたスカーレット・ヨハンソンの好演が光る。少年と母親との愛情あふれる、ユーモラスなやり取りを経た上での(だが一方で母親は息子のナチスへの熱狂ぶりを警戒しているというのがいい塩梅になっている)、後半の靴のシーンは大変衝撃的で、まさに肺腑を抉られるようだった。ぶら下がる母親の足に縋りながら、涙する少年の悲壮な表情は痛ましく、涙が出そうになった。 少年と年上の少女との交流も微笑ましい。感受性が強く、純粋ゆえに残酷でもある少年が、少女との交流でそれまでの偏見を捨て去っていく過程は印象的だ。特にゲシュタポが憎悪と偏見に溢れた少年の日記を朗読したときの、少年と少女の視線のやり取りが秀逸。ゲシュタポの醜悪な笑い声、かすかに涙ぐむ少女、少年の痛切なまなざし。少年はここにおいて、自分の行いがいかに少女を傷つけたのかを知ったはずだ。少女の身元が割れてしまうかもしれないという緊迫感ある場面だが、同時に少年の残酷な仕打ちが明らかになって、少年が反省と成長を見せるという、非常に高度な展開がここではなされている。 完成度の高い本作だが、ケチをつけるとしたら、主に二点。他の方も指摘されているが、BGMの使い方がややあざといところがある。I wanna hold your handのドイツ語ver、ラストのデイビッドボウイ(しかもベルリン三部作からの選曲)など、選曲があまりに安直過ぎるのはいかがなものか。また、重要なシーンや戦争の悲惨さを感じさせるシーンではお決まりのように映像がスローになり、マイナー調のバラードを流す演出も一本調子でどうかとは思う。ここも音楽の使い方があざといと感じた。 さらに違和感を感じたのが、ヒトラーの細かい描写だ。少年の妄想だから、どれだけ奇天烈でも荒唐無稽でもいいとは思うのだが、この時代のヒトラーは喫煙をしないはずだ(むしろ嫌煙家であり、周囲に禁煙を勧めていた)。本作は寓話的ストーリーなので、リアリティは二の次というのは理解できる。ただ、悲惨な時代を背景に、ナチスの蛮行を描いた作品であるからこそ、悪役を担う存在にも丁寧な考証に基づく描写があってもよかったのではないか。 全体的には伏線が非常に巧みに張られた映画で、ユーモラスな世界観に、過酷な時代情勢を盛り込み、伏線も素晴らしい、という傑作と呼ぶべき作品だった。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-07-06 10:46:59)《改行有》

7.  ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ 《ネタバレ》 ボーダーラインシリーズ第2作目。前作よりエンタメ寄りになったので、見やすかった。点数としては6.5点くらいで前作よりは劣ると思うが、四捨五入で7点とする(結局、前作と同じ点数になるな笑)。 前作はエミリーブラント演ずる若いFBI捜査官が主役でありながら、クライマックスでデルトロ演ずるCIAの殺し屋が事実上の主役に躍り出て、意外性に富む物語になっていた。本作は前作ほどの意外な展開はないものの、前作よりもストーリー上でストレスを感じる部分(若い捜査官の倫理的葛藤、周囲との衝突)が減っており、それが見やすさに繋がっていた。 前作からわずか数年の経過で、米墨国境上では、麻薬密輸だけでなく不法入国が問題化している描写は印象的だ。麻薬戦争でメキシコが政情不安になればなるほど、アメリカへの不法入国も増え、それがまた犯罪組織のビジネスになる悪循環。現実では国境上に壁を作る話も出ているが、これも不法入国ビジネスをさらに助長することになるのだろうか。不法入国の描写だけでも、国境の現状とその闇を知ることができて、興味深かった。映画では国境上の問題が、テロリズムにも繋がる可能性まで盛り込んで描いている。劇中では結局テロと国境上の出来事は無関係だったとされたが、その結論に至るまでの過程がなかなかスリリングで面白い。ブラックサイトでの容赦ない拷問、偽装と扇動工作、理不尽な証拠隠滅。アメリカだとやりかないというか、俄然説得力が出る(笑)。 見どころの多い映画だが、それでも点数があまり高くないのは、やはり前作と同様、全体として手堅い出来だが、一方でパンチのある描写が足りない。麻薬戦争が我々の常識では考えられないほどの惨状になっているのは周知の事実だ。老若男女問わず、あらゆる人間が巻き込まれて犠牲になっている。翻って本作の描写は、まだまだぬるい。本作ではイザベラ、ミゲルという少年少女が登場するが、彼らもストーリー上運よく生き延びる。客に極度のショックを与えない配慮だと思うが、個人的には彼らにもっと過酷な運命を与えた方が、映画としての質は上がったのではないかと推測する。武装を解除させ、無抵抗になったギャングたちを平然と射殺し、その上でとどめの銃撃も加える冷たいリアリズムが光っていたのに、そこにミゲルを巻き込ませなかったのは、ぬるいというしかなく、残念だ。[インターネット(字幕)] 7点(2020-06-03 08:52:34)《改行有》

8.  渇き。(2014) 《ネタバレ》 いろいろな意味で問題作なのだが、個人的にはそこまで嫌いになれなかった映画だ。ノワール調の小説や映画を自分が好んでいるからだろう。中島監督によるアニメーションやアイドルソング等を用いたカラフルでアヴァンギャルドな演出も、日本のくたびれた郊外で右往左往する狂った人間たちを描くという意味で、そこそこ成功していたようにも見える。 しかし、嫌いになれないからといって、高評価するというわけでもない。 映画作品としては全体的に粗が多いのは事実だろう。劇中のファムファタールである小松奈菜の演技はデビュー作ゆえに非常に硬いし、その他の人物描写や設定も、彼らが狂っているからおかしいというわけではなく、彼らの設定があまりに現実味がなさ過ぎて、陳腐で突飛に見えて仕方がないのだ。不良グループはまだいいにせよ、腐敗した警察や裏社会の大物、殺し屋までもが、さも当然のようにこの映画では登場する。しかし舞台は現代の日本だ。アメリカの犯罪多発地帯ではない。彼らのような存在に説得力を持たせるには、彼らがどういう事情のもとに腐敗しているのか、どのような仕事を手掛けて権力を維持しているのか、どうして平然と生活ができているのかを描かないといけないが、映画はその点を見事に省略している。設定に現実味がないのはそうした背景説明に手間暇をかけなかったからだと思われる。 他にも粗はあるのだが、本作最大の欠点は、そもそも原作小説の出来が悪いということだ。原作は、ジェイムズエルロイの名著ホワイトジャズの日本版を目指して作ったと思しき三文小説に過ぎない。原作は映画以上に陳腐な設定が頻出する(エルロイの作風を目指しているのがわかるから、余計に目も当てらられない出来だ)。翻って映画版の方が原作の稚拙な部分をある程度改変し、客が不快感を抱く性描写・暴力描写も加減をしていることがわかる。監督の手腕やキャストの演技が悪いという以前に、脚本家や本作の映画化を企画した人間の責任が一番大きいような気がする。たぶん本作が名作になるとすれば、原作設定をより現実的に変えて、娘を捜索する過程をもっと丁寧にして、…でもそうすると原作とはまるで別物になるから、やっぱり原作の選定がそもそもおかしかったということだな(笑)[インターネット(邦画)] 5点(2020-05-31 09:58:56)《改行有》

9.  ヘルプ 心がつなぐストーリー 《ネタバレ》 60年代アメリカ南部の人種差別という重いテーマを、万人が楽しめるような手堅い脚本と演出で描いた作品。特に黒人のハウスメイドたちに対する差別に焦点が当てられており、女性たちが主役という点で、これまで人種差別をテーマにした映画とは異なる切り口の作品だと思った。 本作の素晴らしいところは、コメディとシリアスのバランスが絶妙なところだ。明るく笑える部分は多いが、完全にコメディに振り切れるわけでもなく、最後はややほろ苦いエンディングを迎える。作品の主題を考えれば、そして鑑賞した多くの人が差別について思いを巡らせることまで考えると、ある意味で差別の歴史を喜劇化しない、この苦いエンディングは妥当なものだろう。 減点要素としては、ジェシカ・チャステインのキャラクターと、ヒール的扱いをされる白人女性たちのキャラクターの掘り下げがやや足りないところか。チャステインのキャラは、この手の映画にありがちな、「おバカだけど良心的な存在」を地で行くものであり、正直意外性はなかった。あと、役者と役にミスマッチが起きていると気もする(それにしてもチャステインはよくこの役を引き受けたものだ。ブレイク前だったからだろうか)。ヒール役の女性たちについては、完全な悪役ではないのはもちろんわかっているし、悪人ではないと示唆する演出も盛り込まれていたが、特にヒリーの描き方については、もう少し彼女の複雑な人間性を提示した方が映画的にはよかったかもしれない(差別が個人の人格の問題だけでなく、社会構造的な問題でもあるというのを示唆する意味で)。 あと個人的に本作が凄いというか、ハリウッド映画が凄いと思ったのは、このような社会的なテーマをもつ作品にちゃんと予算をつけてあげて、上質のエンタメ作品として世に送り出す点だ。悲しいかな、日本だと、この手の作品はどうしてもこじんまりとしたものになっているだろう。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-05-10 16:47:50)(良:1票) 《改行有》

10.  アイリッシュマン 老人版グッドフェローズといった作品。それにしても長い長い(笑)。明らかに配信前提の作品であり、客が自発的に何回かに分けて鑑賞することを意識して作品が作られている。つまり3時間半にわたって観客を釘付けにするような展開や創意工夫はあまり盛り込まれていない作品ともいえる。ずっと静かで、乾いた、即物的なトーン、つまりいつものスコセッシ調で作品は終始する。映画作品としてみた場合には、これでは満点評価は難しい。 アメリカンマフィアの栄枯盛衰、長年の謎であるジミーホッファ暗殺を描いた超大作で、かつデニーロ・パチーノ・ペシ・カイテルという、名優たちの出演。かなり期待して見たのだが、ちょっと肩透かしだったのは事実だ。最新技術でデニーロを若返りさせたそうだが、アクションシーン等では粗が目立っている。無理してそこに資金を使うよりは、他の役者に若かりし頃を演じさせた方がまだ自然だったのではないか。まあ名優たちの集結ということで、少し甘めの7点とする。[インターネット(字幕)] 7点(2020-05-05 01:15:07)《改行有》

11.  レヴェナント 蘇えりし者 アメリカの美しい原野の景色が印象的な作品だった(ロケそのものはカナダや南米の高地でやったそうだが)。イエローストーン川流域が舞台ということは、ワイオミング州やモンタナ州、サウスダコタ州、つまりアメリカ北西部が舞台ということでもある。これらの土地で植民者とネイティブアメリカンが収奪と虐殺の応酬を繰り広げていた血みどろの時代が、この映画の背景にある。植民者である白人がネイティブアメリカンたちを虐殺し、犯す一方で、ネイティブアメリカンたちも報復として白人を殺し、その頭皮を剥ぐ。人間を突き放すかのように美しく過酷な世界の中で、人間たちは旅をし、殺しあう。アメリカの原風景の一つでもある壮大で残酷な世界を圧倒的な映像で提示したところに、この映画の価値はある。156分という長大な作品の中に、山岳や森林の神々しい景色が何度も登場する。 修正西部劇小説の大家、コーマック・マッカーシー(ノーカントリーやザ・ロードの原作者)の作品世界をヴィジュアル化したような、壮大な作品だった。風景描写と並び、冒頭における銃弾と矢が飛び交い、異人種同士が血みどろになって殺しあう戦闘シーンは特に秀逸だ。ただ映画作品としては、上映時間は長いものの、話の筋がシンプル過ぎること、復讐や報復のテーマ性を掘り下げが不十分であることといった欠点もあり、それで7点評価とした。本作は史実をベースにした作品ではあるが、ヒューグラスの妻や家族についての設定は完全にフィクションである。グラスたちを追跡するネイティブアメリカンについても、おそらく史実とは異なる。話の筋をもう少しエンタメ寄りにすることはできたはずだが、あえてそうしなかったために、物語としての面白さが薄くなっているのは否めないだろう。 役者の演技についても最後に一言述べておこう。レオ様よりトム・ハーディの演技の方が素晴らしかったと私は思う。粗暴だが、神について一言述べるなど達観した男でもあるフィッツジェラルドを演ずるにあたり、その野性味と知的深淵さを目の演技で的確に表現しているのには唸らざるを得なかった。ぶっちゃけ、レオ様と役を入れ替えた方が、もっと面白くなったのではないかと個人的には思っている。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-05-05 00:58:52)《改行有》

12.  ラ・ラ・ランド 《ネタバレ》 ちょっと甘いかなぁと思いつつ、9点評価で! なるほど、この作品を好きか嫌いになるかの大きな分かれ目は、「夢を追いかける人」に共感できるかどうかなのだと、他の方々のレビューを見て感じた。私は、「夢を追いかける」主人公2人にかなり共感ができたから、この作品を好意的に見ている。アカデミーでウケがよかった本作だが、それはアカデミー(つまりは映画産業)に関わる人々全員がなにかしら「夢を追いかける人」だからであるのは間違いないだろう。 はっきりと指摘しておきたいのは、「夢を追いかける人」=「真面目で誠実、常識のある人」ではない、ということだ。主人公たちの価値観や考え方に共感ができないという人は、もしかすると彼らにもっと真面目で誠実なキャラであってほしいと勝手に願ってはいないか?それこそ古い映画の中にしか出てこない、夢に向かってひたむきに頑張る真面目な若者。夢を追う人をそのように定義づけていないだろうか? だが世間を見渡せば、実に浅い考えで夢を追う人はたくさんいるし、浅い考えのまま、大して芸もないのに成功してしまう人だってそこそこ存在するのが現実だ。それはハリウッドを見なくても、日本の芸能界を見ればよくわかることだ。 セブとミア。2人が完璧な人間でないのは確かだ。類い稀な才能を持っているのかも、はっきりとはわからない。2人は考えが浅はかなのかもしれない。欠点も多かろう。ただ、そうした人物たちが繰り広げる物語には、どこか厭らしいリアルさ、現実の泥臭さが綴じ込まれていて、むしろ私はそういう物語の方がリアリティを感じることができて好きだ。完璧な主人公たちがいてもいいし、完璧でない問題だらけの主人公がいてもいいのである。 なににせよはっきりしていることは、主人公2人は成功すること、夢を追うことに対して猛烈に執着し、飢えていることだ。たとえ欠点だらけの人格でも、彼らは夢にしがみつき、チャンスに食らいつく。この点だけについては、主人公2人とも極めて真摯なのである。本作の素晴らしいところは、そうした2人の執着や飢えを、賞賛はしないまでも、明確に肯定しているところにある。ラストシーンにおける二人の視線と表情の交錯に、それははっきりと表現されている。2人は夢にしがみついた。2人が結ばれることはなかったが、それぞれの夢は叶えた。彼らは再び出会い、互いに見つめあった。そして互いを認めあった。それぞれの道を突き進め、というように。やはり映画の最後でも、2人は、夢にしがみつくことに真摯であるのがわかる。2人の無言のやり取り、万感の思いが籠った視線と表情、それを映し出す映像に、夢にしがみつくことへの肯定を見出すことができる。そこには余計な説明も台詞もないけれど、欠点だらけであっても、夢にしがみつき、追いかけ、執着しろ!と映画が熱く訴えかけている。 「セッション」では観客を突き放すかのようなエンディングだったが、本作は、主役2人が自分たちだけの世界に没入するという点では共通しているが、主役2人と映画そのものが観客に主題を訴えかけるエンディングになっている。だから切なくなるのだが、どこか暖かい気持ちで映画を見終えることができた。そして映画の訴えかけに大いに共感できた。こうなったからには、高評価をつけなくてはならない。というわけで、9点評価で。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-04-06 22:23:33)《改行有》

13.  ビューティフル・デイ 暴力的で病的な雰囲気ながら、美しく詩的なシーンもあるし、最後はなんだかんだハッピーエンド。良いところはたくさんあるのだが、映画全体に漂う、主人公の不安定な精神を表現したような病的な雰囲気が、あまり心地よくはなかったため、7点評価とする。ただこの雰囲気を高く評価する人が、少なからずいることは理解できる。カンヌで高評を得たのも、本作の病的かつアート的な部分が評価されたからではないだろうか。 タクシードライバーと比較する人もいるようだが、個人的にはタクシードライバーは病的でハードな部分とメロウな部分(バーナード・ハーマンによる、ジャズ調の優しいスコア)が上手く調和していて、どこか心地のよい物語になっていたのだが、本作はメロウな部分が少ないため、アートで病的、そうしたハードな部分が際立ってしまったという印象がある。したがって、完成度についても、タクシードライバーよりは下だろうと評価する(じゃあどうすればよかったんだ?といわれるとなかなか難しいのだが)。 ちなみに観賞していて、なんかインディーズのオルタナ系音楽の香りがするなぁと思っていたら、案の定、音楽はジョニー・グリーンウッドが担当していた。そりゃ音楽も尖った感じになるわな。[レーザーディスク(字幕)] 7点(2020-04-04 14:01:58)《改行有》

14.  ミッドナイト・イン・パリ 当時の文学者や芸術家の描写はわりかし細かいのに、タイムスリップの手法はすさまじく雑なのが笑える。 ヘミングウェイ、フィッツジェラルド夫妻、ガートルード・スタインなど、いわゆるロストジェネレーションの文学に詳しかったり、ダダイズム以降のアートに詳しい人なら、いろいろクスクス笑える要素がたくさん盛り込まれているように思う(ヘミングウェイの面倒くさいマッチョな感じや、ダリのキテレツな雰囲気は、個人的にはツボだった)。笑いどころがわからないという方は、とりあえずヘミングウェイの初期作品や回想録を読んでみると、当時の世相やパリの雰囲気を掴むことができるので、そちらの読書をおすすめする。 世の中には知識があると格段に面白くなる映画が確かに存在するが、今作はまさにそれだと思われる。 あと主人公がマリオンコティヤールやレアセドゥといい感じになるなんて、なんてうらやましい。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:22:48)《改行有》

15.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 天才数学者アラン・チューリングの人生を、時間軸を交錯させながら巧みに描いた作品。 カンバーバッチの演技はさすがの一言。というか、カンバーバッチ自身、チューリング同様に名門パブリックスクール出身のエリートであるから、共通点がたくさんあって、演技がしやすかったのではないか。 主に3つの時間軸が交錯する脚本だが、筋の破綻もなく、有機的に機能しており、実にお見事な出来栄え。脚本、演技は素晴らしかったが、演出面はやや平凡か。特に戦闘機や軍艦が出る場面のCGはちょっとちゃち過ぎないか。パンチの効いた画面作りはあまりなかったような気がする。そういう意味では、満点評価はあげられないというのが本音のところだ。 映画全体を通して、当時のイギリス中・上流階級の様子がよく活写されていたと思う。オックスブリッジの閉鎖性、エリート人脈の中で蔓延する共産主義、同性愛…。余談だが、当時、諜報関連の仕事に従事する人間の多くはエリートの出身で、かつ他人には言えない秘密(共産主義シンパ、同性愛傾向)を抱えていたという。当局も半ば承知の上で、そういう人間を採用していたらしい(秘密を頑なに守ろうとするから利用しやすい、もしくは何かが起きたときに使い捨てがしやすいから)。結局のところ、チューリングも、当局にとっては利用しやすい人間の一人だったのかもしれない。 戦後、チューリングの貢献・功績は徹底的に隠匿され、彼自身は同性愛の告発、その後の投薬治療で心身を害し、遂には自ら命を絶ってしまった。 大変な功績のある人物に対して、当時の社会や国家がした仕打ちはあまりに冷淡だった。それと同時に、戦争や諜報というものがいかにシビアな世界であるのかを感じた。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:00:47)《改行有》

16.  ベイビー・ドライバー 《ネタバレ》 カーアクション×ミュージカル映画という、異色の組み合わせを実現した作品。冒頭のカーチェイスシーンがすさまじい完成度で、思わず引き込まれた。 選曲のセンスも素晴らしく、冒頭のジョンスペからのハーレムシャッフルの流れには興奮するしかなかった。 キャスト陣も豪華な顔触れ。主役二人は大変キュートだし、ケビン・スペイシーとジェイミー・フォックスはさすがの貫録で映画を盛り上げている。ジェイミー・フォックスがここまでわかりやすい悪役をやっているのはなかなか珍しく、面白い。 コメディ、アクション、音楽や映像、ほとんどすべての面で高いレベルにある作品だが、難点もある。クライマックスのチェイスシーン以降から、力を使い果たしたのか、最後のドタバタアクションは、いつものエドガーライト映画と変わりがない。せっかくカーアクション×ミュージカルという異色の切り口で映画を盛り上げてきたのだから、最後もスタイリッシュにそれで押し切ってしまえばよかったのにと思った。比較的良心的(?)な悪役であるバディが何度も登場して、ラスボスを務めるのはちょっとくどいような。 というわけで、後半までぐっと引き込まれていたが、クライマックスの難点により、7点評価で。でも引き込まれる要素もたくさんある、秀逸な作品だ。[インターネット(字幕)] 7点(2020-03-29 13:40:35)《改行有》

17.  女王陛下のお気に入り イギリス史を少し齧った者から見ると、なかなかどうして本作は、史実の取捨選択が巧みだと感じた。マールバラ侯爵夫人は確かに女王アンと極端に親密であったのは史実であり、同性愛関係についても、その真偽はともかくとして、同時代の人たちが書簡等で彼女たちの関係性を噂する程度には有名だった。アン女王の夫、王配ジョージの存在がまるまるオミットされているのは、彼は政治的野心が皆無で、作中の設定年代ですでに彼が晩年にさしかかっていたため、女同士の政治劇・権力闘争を主題とする本作においては、省略しても構わないという判断があったのだろう。他にも史実との相違を挙げればきりがないが、本作は極端な違和感を抱かせない程度で、史実に緩やかに基づき、女たちの政治的コンゲームを描くことができていたのではないだろうか。 コメディではあるが、ところどころグロテスクで底意地の悪い演出が盛り込まれる、非常に癖がある作風のランティモス監督。本作は英米資本が入っているために、グロテスク要素は抑え気味だときく。確かにぞっとする演出は多いが、ほどほどに手加減が効いていたように思う。 しかし本作の白眉は、女優三人の演技合戦だろう。まさに三位一体となって、映画を盛り上げている(ただし観ていてどんよりとするような方向性で。なんて意地の悪い映画だ笑)。三人の中でオリヴィア・コールマンがオスカーを獲得したが、個人的には三人の協働でオスカーをもぎ取ったようにも思う。エマ・ストーンはアメリカ出身だが、けっこうイギリス英語も似合うと感じた。キャストがイギリス人ばかりで、エマ・ストーンだけアメリカ出身。これは物語登場時におけるアビゲイルの異質感、ある意味でのエイリアンであることを強調するキャスティングだったのだろうか。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-02-05 19:13:46)《改行有》

18.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノ作品にしては珍しく、レオ様とブラピの2大スターを擁していながらも、とても静かで比較的穏やかな(?)映画であった。 タランティーノが子供のころに見ていたハリウッドを懐かしむような映画に仕上がっていて、映画通を自称する人々にはウケがいいのは間違いないだろう。しかし現代の人が見たときに、ある程度知識が必要な映画でもあると思う。シャロンテート、マンソンファミリー、ヒッピー文化、スパゲッティウエスタン…これらの背景の解説が必要最低限にとどめられているため、知っていればクスっと笑える場面や運命の皮肉を感じる場面も、何も知らない人はスルーしてしまうか理解できないまま、ある意味起伏の少ない非常に静かな物語を追いかけることになる。人によっては何が面白いのかわからないという人が出てくるのも、仕方がないことだろう。自分も何も知らない状態では、この映画に高めの点数をつけられたかどうか怪しいものだ。とはいえ、上記の背景を理解していると、確実にクスっと笑える場面が増えるだろうと思う。 個人的にはもう少し主役二人がアクション的な意味で大暴れしてもよかったのではないか。タランティーノはアクションを追求する監督ではないので無理な話だろうが、たとえばブルースリーとのシーンは、もっとリーをボコボコにしてもよかったんじゃなかろうか(笑)。いつも通りサスペンスを煽るシーンの緊張感、緊迫感は素晴らしい出来であり、お決まりのように出てくるスタンドオフシーンにも興奮したのだが、その上でさらにアクションシーンを追加すれば、映画的にはより良くなった気がする。 しかしそれにしても、やはりブラピはどっかイカれた役をやらせると、めちゃくちゃ光る役者さんなのだと再確認。ヒッピーやブルースリーをボッコボコにするシーンは容赦なさ過ぎて思わず笑ってしまった。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-19 22:10:46)《改行有》

19.  ザ・アウトロー(2018) 雑に本作を説明すれば、ヒートとGTA5をベースにして、最後はユージュアルサスペクツ風味を加えた映画だった(笑) 冒頭からとにかくヒートとGTA5へのオマージュがだだ漏れで笑う。ただオマージュがあまりにも強過ぎるせいで、独自性をあまり感じることができない映画になっているのは否めないだろう。独自性を出す意味で最後に盛り込んだどんでん返しも、ユージュアルサスペクツ感が強いせいで、新鮮味を感じることはなかった。名作へオマージュを捧げる、それによってその映画も名作になるわけではないというのを実証したような映画だった。 独自性のなさに加えて、キャスティングも難点だろう。おそらく予算の関係であまり有名でない俳優たちを選んでいるわけだが、どうも魅力に乏しい。悪い連中だが何とか危機を切り抜けてほしい、捕まらないで逃げ切ってほしいと客に思わせるような演技は誰もできていなかったように思う。後半のどんでん返しのために、強盗チームの魅力を意図的に乏しくした可能性はあるにしても、しかしどうも物語にのめり込むことができなかった。細かいところでいえば、家族のストーリーが消化不良なところや、全体的にどうもB級映画臭というか日本で言うVシネ感が強い点も難点か。ヒートのようなガンアクションと最後のどんでん返しに全精力を注ぎこみ過ぎて、シネマトグラフィや演技がスカスカになっているような気がしないでもない(笑) まあヒートやGTA5への愛は確かに伝わったので、それに免じて6点とする(笑)[インターネット(字幕)] 6点(2019-12-19 21:38:18)《改行有》

20.  新聞記者 《ネタバレ》 映像の撮り方、カット割り、スピーディで切れのあるカメラ回しはなかなかの完成度だが、いかんせん脚本が弱い。リアリズムが皆無で、人物造形や展開する人間ドラマも非常に薄っぺらく、ついに作品に共感することができなかった。ときの政権が密接に関与する新設大学で、生物兵器研究が行われようとしている…。映画の核となるこのストーリー展開は、いかにも陰謀論的かつ妄想的で、リアリティが欠如しており、ついていくことができない。映画がモチーフにしている現実の某大学問題で、生物兵器研究を裏付ける証拠も証言も現状はないため、なおさら映画内での展開の突飛さに違和感を覚える。あと主人公の取材過程の描写も雑。専門家や関係者へ聞き取りをしたり、文献を調べたりする過程が少な過ぎて、この主人公はまともに裏付けを取ろうとしないのかと不安さえ覚えた。ちなみに英単語を書き込んだ付箋に注目するシーンがあるが、ただの英単語を書き込んだだけのメモになんの意味があるのやら(笑)。あれで取材していますという風景を描きたかったのなら笑止千万だ。悪役となる内調・政府の描き方も、非常に一方的な描き方で、私の好みではなかった。最も違和感を覚えたのは、内調のあまりに暗過ぎるオフィス風景(笑)。あんな照明の暗さで仕事に集中できるのか甚だ疑問。そのような描写にもリアルを感じられず、またそれによって政府や権力側を都合の良く脚色しているなと感じた次第。不偏不党たるべきジャーナリズムをテーマとするこの映画が、こうした偏りを盛り込むというのはいかがなものか。 現実世界の事象をモチーフにし、ときの政府や権力を批判して風刺してやる!という意気込みが強く伺える本作。だが、その意気込みが強過ぎて、政府や権力は過度に悪役化されているし、現実から乖離した妄想的展開も目立つ。若干(…というかかなり)新聞記者たちも美化して描かれている。すべてが中途半端に脚色され、都合の良い物語に堕している。これで高評価を与えることは私にはできない。 追記:鑑賞後にもやもやが残ったため、原案本も読んでみた。他の方も指摘されているが、原案本には当然ながら生物兵器研究の記載はなく、やはり映画は想像が飛躍し過ぎだ。原案本と映画で共通しているのは、事象への裏取り作業が不十分である点だ。政府の陰謀や圧力はどこまで存在するのか、ある人物の醜聞の真偽はどこまでが事実でどこまでが虚飾なのか、事実を客観的かつ中立的に検証し、分析する行為が映画にも原案本にも不足している。本作のモデルになった記者も、事実の検討が不十分なままで、犯罪被害者”とされる”女性や、醜聞をでっち上げられた”とされる”元官僚に肩入れしている節がある。自分はこう思う、こうあってほしいという願望や思い入れ、思い込みに対して真摯で客観的な検討もせず、陰謀や圧力があったと騒ぎ散らし、権力や政権を一方的に非難するというのは、正しいジャーナリズムなのだろうか。結局のところ、本作は実際の事案をベースにした真面目な映画を装ってはいるが、肝心の部分では根拠や裏付けが曖昧な情報や主張を訴える不誠実な映画になってしまっている。 既存メディアの衰退とSNSの発展で、都合のよい情報、根拠が曖昧な情報、陰謀論が飛び交う世の中で、本作はそうした時流や風潮に立ち向かう映画なのかと思いきや、むしろ陰謀論や論拠曖昧な情報を拡散する映画になってしまっているとは、なんとも皮肉なものだ。[DVD(邦画)] 5点(2019-11-25 21:14:27)(良:2票) 《改行有》

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