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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  用心棒 《ネタバレ》 これは、格好良い。日本男児の格好良さが全部詰まっている。そんな気がする男の映画です。 一昔前までの、外国人が想像する日本人の男=侍。それって映像作品で言えば、かなりこの映画から来てるんじゃないでしょうか? 実際には勤勉で真面目で仕事が細かい日本人。その裏で、本作の桑畑三十郎のような日本人像も確かに存在します。 棒っ切れを投げて行く先を決める。悪党が覇権を争う街に、無関係なのに首を突っ込む。この男の行動原理が『楽しいかどうか』。居酒屋に戻っては“飯”を食い“酒”を飲む。大きな体で忍び足して、内緒話に聞き耳を立てる。自分の話題だとぺろっと舌を出す。こんなお茶目な男、女なら惚れてしまうだろう。一瞬で悪党三人も斬り殺す腕っぷしの強さ。こんな男に『おめぇ、強ぇんだってな?』なんて言われて喜ばない男が居るだろうか。ただ強いだけじゃない。寡黙な中に人間の魅力が詰まっている。 回転式拳銃と八州廻りが出てくるので、江戸時代末期の設定だろうけど、どこか異国感がありますね。女郎が踊る時の楽曲も賑やかでどこか南米風な味わいも…。米国の『血の収穫』という探偵小説を下地にしているそうで、そう考えると時代劇を下地とした西部劇『荒野の用心棒』の親和性が高かったのも頷けます。最後の見どころ、丑寅一家対三十郎。卯之助も亥之吉も見せ場もなく簡単に斬り捨てられます。日本の映画界で長年培われた殺陣の手法を廃し、徹底した現実主義を貫いた斬り合いが、時代劇の新時代を切り開いた黒澤作品らしく感じられます。[DVD(邦画)] 8点(2024-05-23 23:12:04)《改行有》

2.  荒野の用心棒 《ネタバレ》 “Per un pugno di dollari”『一握りのドルのために』。夕陽のガンマンの原題に繋がってます。 『西部劇のイーストウッドと言えばこの作品』って勝手に思ってたくらい、例の鉄板のシーンが印象的です。 監督自身が認める黒澤作品のオマージュ映画だったことから、まず用心棒を観ないことには何とも評価が難しいかもしれませんね。 「あっちにバクスター、そっちはロホス。真ん中に俺」意味は解らないけどカッコいい。「俺の馬が怒ってるから謝れ」なんて、メチャクチャな言い掛かりがマカロニ・ウエスタンらしくて良い。ロホスとバクスターの2大勢力を手玉に取って、抗争に持っていく巧みさが痛快。 けど、ジョーに都合よく事が運びすぎる気がするなぁ。兵士2人の死体を墓場に配置するのは良いけど、アレどう見ても墓に伸し掛かった死体にしか観えないのに、両陣営撃ち合い始めるなんて。 ジョーが両陣営にフリーパスなのも、あの狭い街でそんなに器用に出来るのかなぁ?とか。…でも借金の方に取られた女房の監禁先が、親子が住んでた家の向かいにある(だよね?)くらいだからなぁ。ゴロツキのアジト2つと酒場と棺桶屋しかない変な街なのが、生活感を排除したマカロニ・ウエスタンらしいかな。 BTTF2にも登場する鉄板。その辺の適当な板かと思ったら、結構手を掛けて作ってたのね。ラモンが西洋甲冑の胸を綺麗に撃つのが良い前フリになってますね。でもあんなに何発も撃ってたのか。鉄板に当たる音でバレそうな気がしないでもないけど、そのツッコミは野暮でしょうね。[DVD(字幕)] 6点(2024-03-20 20:43:20)《改行有》

3.  特攻大作戦 《ネタバレ》 “The Dirty Dozen”『汚らわしい12人(≒1ダースの囚人兵)』。私がレビューを書くようになってから既に2回もNHK-BSで放送されていることから、結構支持されている映画なんだと思う。リー・マービンにチャールズ・ブロンソン。更にドナルド・サザーランドやら刑事コジャックやらエアウルフのドミニクやら、内容的にも'60年代版のエクスペンダブルズって感じでなかなか豪華。 何より『めぐり逢えたら』の男が泣ける映画として紹介されてたのが印象深くて、変に期待してしまいました。 考え方も罪歴もバラバラの死刑囚たちが、少佐のもと、一つにまとまって大きな作戦に取り組む。少佐への反発が徐々に信頼に代わり、軍事演習で、いけ好かない大佐に一泡吹かせる前半部分は、痛快な戦争スポ根モノって感じで楽しめます。 問題は後半、作戦本番ですね。ヘミネスが台詞のみの説明であっさり死んで、戦争の無情さを感じさせます。そこまでは良いとして、そもそも潜入作戦なのにウラディスロー以外ドイツ語が喋れないってダメでしょ。本部もよくゴーサイン出したよ。 なかなか引っ掛からない登りロープ。抜ける屋根。マゴットたちは米兵の格好のまま建物に侵入(せめて撃ち殺したドイツ兵の服着たらどうだ?)。マゴットの暴走で作戦失敗、からの少佐たちも作戦中に米軍服に着替え(これ必要か?味方の誤射を防ぐため?)。何ともグズグズである。 それに負けじとドイツ軍の対応もグズグズ。女の悲鳴がしても銃声がしても2階に確認に行かない杜撰さ。ロクな抵抗をせずあっさり地下室に閉じ込められる将校と御婦人たち…なにコレ? やはり、主人公側が女性も含む無抵抗な人間を殺害する結末は、いくら戦争とは言え、とてもモヤモヤします。ここで彼らの目的を再確認しましょう。 彼らの作戦は、ノルマンディー上陸作戦に合わせた将校の殺害と後方撹乱。そのターゲットはドイツ国防軍の将校。つまり憎きナチスではなく、どこの国にもいる普通の軍人さん達です。 目的地は軍の保養所…日本で言えばKKRの宿泊施設みたいな場所ですね。フランス領の施設だから、建物の詳細な模型も作れたんでしょう。戦地から離れてる田舎の施設だから、通信施設や弾薬は置いてあっても(他に安全に置ける場所がない)、国防軍の中でも練度の高い兵隊は配備されていません。 Dデイ直前だし、当時のドイツは人材不足。あの施設に居たのは再任官された退役将校と、非戦闘員の文官、動員された予備役兵たちじゃないでしょうか(想像ですよ)?それなら、最初の銃声からドイツ軍の抵抗が少なかった理由も納得。遅れてやって来たどこかの基地の増援部隊が、軍隊らしい普通の抵抗をするのも納得。あのパーティは、退役将校に国のために再度働いてもらう、決起集会のようなものでしょう。言わばKKRで開かれる、奥様同伴の退職者の慰安行事。 そんな、居ても居なくても戦局に影響のない、国防軍の退役将校(想像)をたくさん殺すのが、彼ら囚人兵の仕事です。まさに汚れ仕事ですね。戦局に影響はなくても、ガソリンで無慈悲に焼き殺されたとあっては、ドイツ兵は戦意喪失したことでしょう。 アメリカ軍ももし世論に非難されても『少佐が囚人兵を使って勝手にやったこと』と切り捨てたでしょうし、少佐も『ジェファーソン(黒人)が勝手に暴走した不幸な事故』にしたかもしれません。運良く作戦は成功し、囚人兵の大半は死にました。ウラディスローは恩赦を受けますが、どこかの戦場で口封じされたんじゃないかなぁ…原作読んでないから全部想像ですけど。 詰まらなくはないんだけど、なんか、めぐり逢えたらで詳細に紹介された意味も、BSでよく放送される意味も、この作品がどんな人達に支持されてるのかも、よく解らない映画でした。[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-03-20 15:35:49)《改行有》

4.  明日に向って撃て! 《ネタバレ》 “Butch Cassidy and the Sundance Kid”『ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド』。どうしても『俺たちに明日はない』と比較してしまうし、邦題も意識して付けたと思われる。 観終わった後スカッとするでなく、ズウ~んと重たくなってしまうアメリカン・ニュー・シネマ。ベトナム戦争で世の中が暗くなってるから創られたというより、まだ全体的に明るい世の中に『一部暗い影も落ちてるんだよ。』って気付かせる目的の作品。言い換えればまだ世の中に“打たれ強さ”があるから創れた作品だったんだと思う。打ちのめされてたら、暗い結末の作品は敬遠するものね。 その日暮らしの強盗ブッチとサンダンス。どっちつかずなエッタとの関係。流行り物の自転車。将来に夢を抱けないアメリカの若者のような2人。追いかけるピンカートン探偵社。逃げても逃げても追ってくる彼らは、さしずめ当時の若者の、不安な未来の象徴だろうか。 夢のゴールドラッシュに湧くボリビア…とその前に最先端のニューヨークで遊ぶ3人を写真で見せる演出が見事。そして好き勝手やってきた若者が、現実から逃げて辿り着く先に相応しい極貧のボリビア。 結局はケチな強盗に逆戻りしてしまい、エッタも呆れて変える始末。より悪くなった状況に追い打ちをかけるような包囲網。こんな状況でも夢を語る2人に、当時どれだけの人が共感しただろうか?なんかこの2人から漂う「明日から本気出す」オーラが強い。 地元警察を相手に「レフォーズ保安官じゃないなら勝てる」「今度はオーストラリアに行こう」でも警察は軍隊を呼んでいた。飛び出した2人の静止画に、響き渡る多数の銃声。 容赦ない最後の姿を観せた『俺たちに…』に対し、観せなかった本作。まるで世間を知らない半人前(泳げなかったり、人を撃ったことがなかったり)の若者が、突っ走った挙げ句の最後、「カッコ悪い死に様だけは観ないでくれ」って叫びにも思えた。[ビデオ(字幕)] 7点(2023-09-02 18:01:25)《改行有》

5.  サイコ(1960) 《ネタバレ》 “Psycho”『精神病質者』。'60年の日本で“サイコ”って言葉がどれだけ通じたか知らないけれど、原題をそのまま使うとは思い切った決断だったと思います。憶測だけど、この映画の影響で“サイコ”という言葉が日本で浸透したんじゃないでしょうか? 私が小さい頃、テレビで放送される映画はカラー作品ばかりで、これだけ有名な作品でも放送されることはなく、高校に入ってから、レンタルで観たんだと思います。でも観る前からテレビの『ホラー映画特集』とかで、この映画のハイライトシーンは観ていました。 サイコのハイライトといえば『女の悲鳴』シーンと『母親登場』シーン。 DVD特典の当時の予告編から『シャワー中に女性が悲鳴を上げる』シーンがあることは、当時の観客も知っていたと思います。 だけど有名な『母親登場』は、御存知の通りこの映画の最高機密となっていて、きっとリアルタイムで観た人は、意外な犯人に驚いたことでしょう。物言えぬ母親の画。女装したノーマン。最後の精神科医の説明が、一般人の疑問の隙間を埋めてくれます。そしてリアルな母親の死体のショックからクールダウンする時間を与えてくれます。素晴らしい。 映画を観る前から結末を知っている私が、この映画で驚いたのは、序盤からノーマンではなくマリオンが主役で、彼女の突発的な犯罪を、映画のおよそ半分を使って、しっかり追いかけたことです。こんな映画だったなんて知りませんでした。 だけどクライム・サスペンスだとしたら、マリオンの犯罪はあまりに愚図愚図です。具合が悪いと会社を早退したのに路上で会った社長に笑顔。仮眠のつもりが寝過ごして警官に起こされる。逃走の車を買い替えるところをその警官に見られ、試乗もしないで700$もの大金をキャッシュで出す。宿帳に偽名で書いたのに、うっかり実名を伝えてしまう。成功の見込み無しの犯罪。 私にとって予想外だったクライム・サスペンスは、有名な『女の悲鳴』を境に主役が入れ替わり、殺人映画に。そして当時の人にとって予想外だったであろう、サイコ・スリラーに様変わりします。 つまりこの映画の本当に凄いところは、『母親登場』の最後ではなく、その最後に至るまでの過程の方にあるのでしょう。愚図愚図なマリオンの犯行と、4万$の行方にヒヤヒヤし、今度は異常な母親の犯行を隠すノーマンの気持ちになって、マリオンの死がバレないかとハラハラします。だからこその、そして最後は…。になるんですね。 沼から引き上げられる車のトランクには、序盤のキーアイテムの4万$と、後半のキーアイテムのマリオンの死体が一緒に入っています。そのトランクのアップで終わるのもまた、一本の映画としてのパッケージングの上手さ爆発です。[ビデオ(字幕)] 9点(2023-07-04 22:21:03)《改行有》

6.  大脱走 《ネタバレ》 “The Great Escape”『偉大なる脱出劇』。Greatには『大量の』なんて意味も含んでますが、もう『大脱走』で充分ですよね。 私が観たのは'87年の放送でしょうか?カラッと陽気な古き良き戦争映画として、また脱走モノとしてのハラハラドキドキ&ワクワクを存分に楽しみました。そしてスティーブ・マックイーンの格好いいこと。バイク・スタントのシーンはもちろんの事、独居房で独りキャッチボールする姿がとても格好良かったです。 物語は大きく分けて、収容所生活とトンネル掘り。脱走とその後の2部構成です。単純だけどこの構成が素晴らしい。 オープニングで誰もが知る大脱走マーチと共に、捕虜収容所に向かうドイツ軍のトラックを映します。ここから脱走計画実行まで、ず~~~~~っと収容所の中の話になります。例えばヒルツとアイブスがどんな風に捕まったのかとか、ウェルナー(白イタチ)が、どこでカメラを手に入れたかとか、想像すると笑えそうだけど、収容所の外の話は一切描写しません。 2時間ほど、ずっと収容所とトンネル掘りからの決行当日。息を殺しての脱走劇。この後半1時間に、一気にヨーロッパの風景がなだれ込みます。どこまでも続く牧草地帯、雄大なアルプス山脈、古風な市街地、戦時中とは思えないお洒落なカフェ…収容所で貯めに貯めたストレスが、まるでヨーロッパ観光でもするかのように、開放感となって一気に炸裂します。 実話をモトにしているものの、架空・創作の部分がまた良い味付けになっています。アイブスとヒルツ。トンネル王のダニーとウィリー。偽造屋コリンと調達屋ヘンドリーの友情が、映画らしく印象的に描かれています。またヒルツのバイクチェイスといい、飛行機強奪といい、史実に忠実にするのではなく、後半に向けて娯楽映画としての醍醐味を加える、良い味付けに思えます。 脱走の常習犯を一箇所に集めたにしては、随分と簡単に手に入る物資。あんな大規模なトンネルを3つも掘れたり、密造酒が飲めたり、ドイツの収容所の緩さが、ほのぼのとした当時の戦争映画らしく思えます。そして当時のドイツがゲシュタポのような“悪の象徴のナチス”と、ルーガー所長ら“普通に国を守る軍人さん(国防軍)”が混在していたことが、きちんと描かれています。 脱走した76名のうち50名が殺害。ヒルツもヘンドリーも運良く国境警備の国防軍に捕まったようだけど、ゲシュタポに捕まった捕虜は全員殺害されたようです。史実や原作は解りませんが、緩い警備体制で脱獄成功というヘマは国防軍におっ被せて、ビッグXら脱走常習犯の捕虜を公的に殺害する。というのが、ゲシュタポの目的だったのかもしれませんね。 最後は独居房に響く独りキャッチボールの音と、何か言いたげなドイツ兵(4回とも同じ兵隊さん)。カラッと陽気な古き良き戦争映画だけど、単なる娯楽に終わらない深みも味わえました。[地上波(吹替)] 10点(2023-06-12 17:48:13)《改行有》

7.  続・男はつらいよ 《ネタバレ》 BSなんかで放送された映画は、レコーダーに録画したのをDVDに焼いて、後日それを観てます。男はつらいよは50作もあるので、間違いなくどれが何作目か解らなくなるので、タイトルの他に“○作目”って書いてます。さてシリーズ2作目。当時は本作でシリーズ終了予定だったそうで、寅次郎の過去を広げる作品で、“続”の名が示す通り前作の続き=後編の色合いが強く感じられました。オープニングの歌も2番でしたね。 序盤で涼しい顔してさくらに5,000円札を渡して、見えないところで「痛かったなぁ今のは…」ってボソッと言う寅が人間らしく、訪ねてきた男が息子だと知った菊が、一瞬嬉しそうな顔をしたあと「今頃なんの用事かね、銭か?銭はあかんで」と突き放すのもまた人間らしい。親子だなぁ。 グランドホテルが今で言うラブホテルだったのと、ラブホに女中が居るのも驚いた。女中がお茶持ってきたり浴槽とかバイブとか鏡とかの説明するんだね、カルチャーショック。お決まりのお笑い要素、お母さんとか母親とか言っちゃダメって言ってるそばから次々と言っちゃったり、葬儀の車で藤村先生ととなりになったり。“気まずい状況”を笑いにするのは、寅さんシリーズらしい面白さ。 2作品を前編と後編として考えると、本作の根っこにあるテーマは引き続き“寅次郎の家族との再会”です。そして前編に当たる1作目が妹の結婚に甥の誕生と“若さと生”がテーマだったのに対し、後編に当たる本作のキーパーソン、母と恩師による“老いと死”がテーマでしょう。 京都で再会した散歩先生は寅に「お前の母親もいつかは死ぬ。その時では遅いのだぞ」と会いに行かせる。母との再会は、観ていて辛くなるほど凄まじく重たい結末に。だけどその後、寅が先生と2人で泣いてるのが、映画全体が湿っぽくならない上手い塩梅だと思いました。 今朝、天然のウナギが食べたいと言った恩師が、夕方には静かに死んでいる。死はそれくらい突然訪れる事を身を持って体験した寅。あれだけ凄まじい出会い方をした母親と、仲良く三条大橋を歩いていく。前作の登とのエンディング同様、菊と寅が仲良く歩くまでに至った過程を省く作風が想像力を掻き立てて、私はとても綺麗な終わらせ方だと思いました。 ところで、前作のマドンナが坪内冬子。本作のマドンナが坪内夏子。同じ坪内姓なのって、御前さまと散歩先生って親戚とか遠縁とかなのかな? 冬子に夏子。あと妹がさくら(春の花)、母親がお菊(秋の花)と、『前作がヒットしたから急きょ創られた』みたいだけど、この2作品で見事に完結させてます。[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-06-03 17:16:18)《改行有》

8.  座頭市血煙り街道 《ネタバレ》 シリーズ17作目。しかし5年で17作って、当時の日本映画のハイペースさに驚くばかり。 座頭市観るのは2作目だけど、劇中突然歌い出したのには驚いた。シリーズを重ねるうちにそういう映画になってたのか? 歌は花のさだめ(2番)。歌うは中尾ミエでございます。本作公開が12月、レコードが年明け1月に出ていたようで、何かコラボだったんでしょうかね? 歌には驚きましたが、市のキャラクターは安定して魅力的。前観たのでは「メクラ」「ドメクラ」とイイように言われていたけど、ゲスト俳優からは「目の不自由な人」「おメクラさん」と、ちょっぴり配慮が見られた。 本作は小さな子供とのふたり旅。これがまた結構な悪ガキなもんだから、市相手に悪戯を仕掛けるんだけど、石ころの頃にはお互いに悪戯合戦になっていって可愛らしい。母・おみねの似顔絵を市が庄吉に見せるシーン。良太は悪戯のつもりで市を描いたんだろうけど、使われ方が上手くホロリと来る。 権造一味との殺陣の華麗さは見事。シリーズも回を重ねると、目新しさを出すのも大変だろうなぁ。 実力伯仲の赤塚との真剣勝負。市が庄吉を守るために刀を投げてしまう。他人の親子を救うために無防備で立ちふさがる市が格好いいし、対する赤塚が自身の負けを認めるのも格好いい。[インターネット(邦画)] 6点(2023-05-31 23:30:32)《改行有》

9.  男はつらいよ 《ネタバレ》 寅さんはテレビドラマの最後にハブに噛まれて死んでしまった。って、バラエティ番組で観た記憶がある。そんな主人公が銀幕に蘇り、ギネスに載る長寿シリーズ化するとは、当時のスタッフたちも、ファンたちも、思っても見なかったことだろう。 本作はまだ長期シリーズ化は考えていなかったため、一本完結のまとまりの良さを感じる。…といっても、シリーズの各作品の関連性・連続性なんて、殆ど感じない作品だけど。寅さんは私も、数作品程度は摘んで観てみたことはあるけど、全話CSで放送されるこの機会に、通して観てみようと思い立った次第です。さぁ最後まで完走できるかな? 1作目にして寅さんの基本設定が全部入ってるように思う。寅が帰ってくる。トラブル起こして出ていく。マドンナに恋して気分良く戻ってくる。フラれる。出ていく。更に柴又のレギュラーキャラは、本作で殆ど全員出てくるんじゃないかな?まさか1作目からさくらが結婚して、満男まで産まれるとは思わなかった。このまんま50作突っ走ったのか。やっぱりすごい作品だわ。 1作目は他作品と違って、寅が20年ぶりに柴又に帰ってくる。寅さんと言えば『生まれも育ちも東京葛飾柴又』…って本人言ってたけど、14歳で出ていって以来の帰省だろうから、地方の方が長くなってるぞ? さくらが凄く可愛い。私が観たのは'80年代以降のシリーズだったから、本作の若くて美しいさくらに驚いた。たぬき顔で茶髪で膝上スカートで脚が綺麗で身体細くて。キーパンチャーなんてモダンな仕事してて。キツネ目でいい加減で馬鹿でヤクザな寅と、兄妹なのが信じられない。 本作は冬子がマドンナ・ポジションだけど、真のマドンナはさくらじゃないかな。20年ぶりにやっと会えたら、結婚して離れ離れ。本作以降いつも隣りにいるけど、永遠に距離が縮まることのないシリーズの陰のマドンナ。そんなさくらにスポットが当たったのが、まさかの1作目だったとは。 大企業のBGからお見合い、結婚、出産と、1作の間に大人の階段を登っていくさくらに対し、35歳にもなって麦わら帽子に釣竿持って冬子のところに遊びに行く子供みたいな寅。『生まれも育ちも東京葛飾柴又』あぁ、寅次郎って20年前から、14歳の頃から時間が止まっているんだな。 父との大喧嘩から家を飛び出し、テキ屋稼業で生計を立て、舎弟の登の面倒を見て、可愛い妹は嫁に行き…『男はつらいよ』の意味が、マドンナにフラれるから以外の意味も、しっかり持たせてある1作目でした。 一年後、喧嘩別れ同然に故郷に帰したハズの登と一緒にテキ屋をしている寅次郎にほっこり。[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-05-24 23:48:27)(良:1票) 《改行有》

10.  太陽がいっぱい 《ネタバレ》 “Plein soleil”『炎天下』。いやもう『太陽がいっぱい』って素晴らしい邦題じゃないですか。'60年にこの邦題付けるセンス。酒場の女店主に「リプレーさん、電話ですよ」と呼ばれ、笑顔で向かうところで終わるのも、その先どうなるか私たちは解っているのも、素晴らしい。 中学生くらいの頃、親戚のおじさんが「Kちゃんは映画が好きなのか!おじさんのオススメは太陽がいっぱいかな!」って言われた作品。聞いたことはあるけど、古い映画だし観る機会がなくて… でリメイク作から先に観ました。しかもこの映画のリメイクと知らずに。その後本作を観て「・・・あれ?これリプリーに似てない?」って。 そのお陰か、リプレーがフィリップに近づいた過程が理解しやすかったし、改めてフィリップへの思い・感情を深読みしてしまいました。フィリップの服を着て鏡にキスするいところって、そうだったのか?って。 私の中でリメイク作はそんなに評価高くなかった(当時)んですが、オリジナルのアラン・ドロンはとても魅力的でした。OHPに移したサインをなぞるシーンがすごく格好良かった。甘いマスクと運の良さであのポジションを手にしたのではなく、人知れず努力をしているのが伝わってくる名シーン。 ニーノ・ロータの音楽と地中海の景色は映画だからこそ。短時間の観光ツアーでは味わえないであろう、時間が止まっているような感覚を体験できました。そして最後の衝撃。絡まったワイヤーを観て「あああっっ!!」って声が出てしまった。いや映画って素晴らしい。[ビデオ(字幕)] 10点(2023-04-16 16:14:17)《改行有》

11.  悪名(1961) 《ネタバレ》 河内弁というのか。軍鶏の博打のシーンなんて、みんな勢いあって早口だから何喋ってるのかサッパリわからん。 ヤクザって何だろう。貞みたく組に属していればヤクザで、朝吉みたくフリーだとカタギ?…そうなん?そういう、区分なん? 松島一家にペコペコする吉岡の親分。なんか急にサラリーマン社会っぽい上下のしきたりを観せられ、モヤモヤするところモートルの貞がガツンと言って聞かせるのがスカッとする。あ、モートルってモーターの事らしい。発電機みたいなモン? 続く朝吉と松島の子頭とのやり取り。銃を持ってるフリでアッサリ騙される辺り、組織モンのヤクザって格好悪いなぁって印象を与え。一方で貞に兄弟の杯を“猿芝居”と言い放ったあとの「仲良しの兄弟でエエやないか」の格好良さ。やっぱり組織の子飼いより一匹狼って格好良いよなぁ。 お絹と朝吉の起請文。映画が後々現実になるような不思議な気持ちになる。だけど朝吉は他の女(琴糸)を助けに因島に旅立つと。行った先のカネを手に入れに昔の女(お千代)を頼る。今の感覚だと難しいところだけど、コレもまた男気なんだろう。 逃げようとすれば逃げれたところ、わざわざイトの元に戻って、甘んじて怒りのステッキを受ける朝吉。う~ん、これまた格好良い。腕っぷしはある朝吉だけど、貞との一戦以外暴力を使わない。男が憧れる男とは、こういう人物のことを言うんだろう。[インターネット(邦画)] 6点(2023-03-26 19:36:06)《改行有》

12.  地下鉄のザジ 《ネタバレ》 “Zazie dans le métro”邦題まま。聖闘士星矢にハマっていた時に『雷鳴のザジ』って漫画を読んだから、こんな小さな女の子が主役のコメディだったことに驚いたわ。それもトムとジェリーのようなドタバタコメディ。 ザジの目線で'60年のパリの街を観光するのが楽しい。さすがパリ、当時からオシャレの最先端。今の時代でもBSで放送されるくらいだし、この映画の影響って大きかったんだろうな。 一番大きな影響って“小さくて生意気な女の子が大人相手にイタズラをする”ってキャラ設定だったりして。おかっぱ頭にオレンジのシャツが特徴的なザジ。映画を観ていて思ったのがザジの既視感。おかっぱの女の子。あぁクレラップのCMだ。ザジに赤い服着せたらクレラップちゃんだ。影響?受けてないっす。なんて言わせないぞ。ちびまる子ちゃんは前髪ギザギザだし、ワカメちゃんはもみあげが跳ね返ってる。ザジの影響受けてる後継者はきっとチコちゃんだろう。 ただコメディ部分は良く解らないってのが正直な感想。当時はウケたのかなぁ?ドリフみたいなのは解る。おじさんとの追いかけっこからカーチェイスまで。かなり気合が入ってるのは伝わる。 けど、人の位置が瞬時に変わってるの…とか、婦人の頭ぶん殴ってカバン盗む泥棒に一切触れないの…とか、ザジに話し掛けるおじさんと古着屋のオヤジが同じ人だったり…とか、靴屋が一瞬黒人になったり…とか、それってどういう種類の笑いを狙ってたんだろう?不条理ギャグでいいの? 最後の大乱闘なんか意味不明。ザジほとんど寝てるし。でもなんか、最後の「歳取ったわぁ」って決め台詞と、のどかな音楽が、レトロな映画を味わった、ちょっとした満足感を与えてくれたよ。[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-03-25 23:02:54)《改行有》

13.  招かれざる客(1967) 《ネタバレ》 “Guess Who's Coming to Dinner”『夕食には誰が来るか、当ててごらん』。公開当時、人種の違うもの同士の結婚という、近い将来あっちこっちで起こるであろう出来事を、とてもわかり易くシミュレートした映画です。 映画の尺も長くないし、映画の中でもその日の夜中までに結論を出さなければいけないとあって、とても無駄のない構成になっていると思います。 前提としてドレイトン夫婦が、娘の選択に対しとても理解のある両親であり、きっと白人の男を連れてきたなら二つ返事で了承したであろうこと。そのため夫婦が悩むのは、娘の連れてきた彼氏が黒人な事の一点。ジョーイがそんな娘に育ったのは「僕の影響ではなく、あなたの教育の成果です。」なんて素敵な青年だろうか。ジョンを世界を飛び回る医師という非の打ち所のない人物にしているのも、問題点を黒人の一点に絞る意味で素晴らしい。 ジョーイの両親の出した結論も、しっかり考えた末の理想的な結論。まさに模範解答だったんじゃないでしょうか? 当時の白人たちはこの映画を“もしも自分の子供が…”と考えながら観たことでしょう。アタマの中では近所のガラの悪い黒人だったり、犯罪ニュースで見る黒人を、先入観丸出しでイメージしながら、“たとえ黒人でも、ジョンのような文句なしの青年であれば…”なんて思いつつ“こんな結論を出せる立派な親になれていれば、いいなぁ”とか、思ったりしたんじゃないでしょうか? 冒頭の、割と長く映るジャンボジェット。ジョンの両親がロスからサンフランシスコまで650kmを40分で来る時代。今朝ハワイから来たジョンは、4時間後にはニューヨークへ、そこからジュネーブに飛ぶ。その日のうちに州や国境の壁を越えられる時代。人種間の壁は、どのように越えるのか?を考えさせらた事でしょう。 上で“無駄のない構成”って書いたけど、ドロシーとアイス屋(ちょくちょく出てくるウェイトレス)のシーンの必要性は謎だった。2人ともとても美人で、何か当時の“売出中の美人ワク”とかだろうか? ドロシーはバーバラ・ランドルフってソウル歌手。ウェイトレスはアレキサンドラ・ヘイって、デビューしたての女優さんだったわ。[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-03-12 19:57:31)《改行有》

14.  座頭市喧嘩旅 《ネタバレ》 初・座頭市。いや面白いわ。勝新太郎といえば丸々っとした中年男の印象しかなかったけど、思ってたのとぜんぜん違う。最初の賭場から格好良い。「暗闇ならこっちのもんだ、見当付けて斬ってきな!」台詞もバシッと決まってて、痺れるわぁ~。 続き物で、前作と繋がりがあるのか、各話単体の話なのか解らないけど、この話だけでも市がどういう人物か充分に理解できる単純設計。普段の穏やかな口調と、啖呵を切る迫力の落差が凄い。 居合斬りの格好良さだけが売りではなく、籠屋の親分とのお美津を取り返すやり取り。堂山の彦蔵との値段吊り上げのやり取りから、市の一筋縄ではいかなさが滲み出ていてまた面白い。 そしてお久がなんか良いなぁ。悪者側の女だけど、つくづく男運が悪いというか要領が悪いというか。憎めない人物像が好感。 驚くほど出てくる『メクラ』って言葉。私の子供の頃は、まだあった言葉だなぁ。反対の言葉は『メアキ』って言うのか。「やぁ~い、メクラだメクラだぁ~」って追いかける子供、それ見て笑う大人。…こりゃ今の世の中じゃ地上波でも衛生でも放送できないか、こんなに面白いのに。『胡麻の蠅』とか普段聞かない言葉も出てきて、勉強になるなぁ。 本作は五作目。座頭市は作品数も多いけど、他の作品もこれくらい良く出来た娯楽映画なのかな。観てみたくなった。[インターネット(邦画)] 8点(2023-03-04 12:48:38)《改行有》

15.  網走番外地 北海篇 《ネタバレ》 このシリーズ初めて観たけど、4月に第1作が公開されて、7月、10月、そして4作目の本作が12月と、とんでもないハイペースで作られています。当時はまだカラーテレビが普及しきってなくて、本作のような娯楽アクションは映画館の大画面で観るのが当然な時代だったんだろう。どう考えても楽しそうな時代でした。 トラックで荷物を運ぶ代わりに高額の報酬が入るなんて、“恐怖の報酬”っぽいし、行きずりの人たちが同じトラックに乗り合うのは“駅馬車”っぽいな。 この作品のお約束が解らないんだけど、刑務所の中が案外短いのが意外だった。ペンケセップ?鹿走内町?オポチョッカ?ワッカ?北海道っぽいけど聞いたことない地名。「道北イチの難所」を“東北”と聞き違えてたところで私は小混乱のここどこだ?状態。 フルヤのガムの包みに入れた『誘拐されています』のメモ。あれ?誘拐されてたんだっけ?逃げようと思ったらいつでも逃げられる緩~い状態な気が…。 しかし、なんであんなトコに葉山の女房と敵の親分がいるんだ?東北と勘違いしてたのはあるけど、荷物の運び先ペンケセップに向かう途中に居るのは、たまたま?あんな事件になっちゃって、葉山のお母さんの仕送りはどうなるの?? 謎の男の正体はナルホドだったけど、骨折した子と母親、自殺未遂の美女の結末がアッサリし過ぎ。もう少し回収してほしかったかな。 ポスターのキャッチコピーが『・・・オホーツクの飛沫をあびて 追跡200時間の追撃戦』…またテキトーなこと書いて。 でもこの映画、巧くイジり直したら歴史に残る名作になるぞ? …なんて思いながら、このいい加減な感じ、劇場で一発上映のために作られた“撮り棄て”な感じが、まるで私達が子供の時代の週刊連載マンガのようだわ。鬼寅があんなところで出てくるトコなんてまさに!だわ。同シリーズで年に4作。マンネリにならないようにアイデアを捻り出しながら映画を創っていく感じが、熱々のライブ感を感じさせる。ホント楽しそうな時代だわ。 本年が映画デビューイヤーの大原麗子。ショートカットがまた似合ってて可愛い。やせ我慢で真冬の大雪原で上着を脱ぐ健さんがカッコいい。本作のように、最後何となく事件が解決した感じで終わって、その時それで満足して劇場を後にできれば、それで良い気がしてくる。[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-01-21 10:44:15)《改行有》

16.  大怪獣ガメラ 《ネタバレ》 昭和ガメラをしっかり観たこと無くて、ガメラが敵の怪獣の背中を木琴代わりに叩いて『強いぞガメラ』を演奏していた記憶が薄っすらあるだけ(どの作品か不明)…記念すべき第一作ということで観たけど、最初はガメラも人類の敵だったんだねぇ。 オープニングからもったいぶらずにガメラがしっかり映ってて、どんな顔してるか良く観えるわ。バストアップはなかなか迫力あるんだけど、引きの画で観ると、思いのほか甲羅が薄いのね。なんか胴体がペタンとしててアタマがデッカイ印象。目の電球と火炎放射器が入ってるからなのかな? 登場する航空機は拘りを感じさせる。アメリカ軍のF-102(またマニアックな…)は木型から造ったっぽいし、アラスカ基地(?)のF-104は基地から離陸するだけでなく、隅っこに滑走路に向かってタキシングする機体を再現するなんて芸が細かい。ガメラが飛行しながら空港を破壊するシーンは、想像以上の大爆発。飛び散る火の粉が飛行機に引火する表現はなかなか…飛行機愛溢れる作品です。 銀座に現れるガメラ。天井が壊れたビルの中を逃げ惑う人々に容赦なく火炎吹きかけるガメラが怖い。一番感心したのはTowaビルを襲うシーンで、窓の中に逃げる人が見える。影絵の応用だって解ったけど、こんなアイデアよく思いついたものだわ。 Zプランの巨大なカプセルの本来の使い道が気になって仕方ない。“人類の手に負えないから火星に放り出してしまえ”って結末もエゴ丸出しでブッ飛んでる。 アトランティス大陸とガメラの伝説とか、後の平成ガメラって、昭和ガメラの適当な初期設定を上手にフォローした名作だったんだなって、改めて思った。 人間なんてお構いなしにちどり丸や銀座を破壊する中で、なぜか俊夫くんを助けたガメラの謎。平成ガメラ3の助けられた子供のシーンは、ここに掛かってたんだろうな。子供の思い込みをあっさり捨て流したガメラ3に対し、“ガメラはチビの生まれ変わり”“ガメラはいいヤツ”って思い込みで突っ走るクソガキ俊ちゃんに焦点を当てたのが本作で、この子がすんげぇウザったい。 怪獣が出てきたのに灯台に登る。時間稼ぎのガソリン電車に勝手に乗る。伊豆の大島行きの船に密航する。周りの大人の寛容さも含めて、どうして誰もこのガキをビンタしないんだろう?と疑問ばかりが膨らんだ。 俊夫の切れ長の目、特徴があるなぁって思ったら、この前観た“高校生ブルース”の昇じゃないか! このクソガキがわずか5年であんなクソガキになるなんて。子供の教育って大事だわ…[インターネット(邦画)] 4点(2023-01-14 18:39:29)《改行有》

17.  あいつと私(1961) 《ネタバレ》 ヤー!!ヒッップ ヒッップ ヒップラー♪初めて観たときは、あのオープニング曲にズッコケそうになったけど、2回め観ると意外と癖になるね。歌はともかくイントロの高揚感は今の時代に聞いても素晴らしい。 '60年辺りの大学生のドラマなんだけど、まるでアメリカの学園コメディのようなノリ。会話のテンポの良さが、どことなくシン・ウルトラマンの会話に近い感じがした。そういや、けい子の一人語りはまるでエヴァの赤木リツコみたい。 セックス、赤線、ザーメンと、オブラートに包むことなく日常会話で出てくる性表現にビックリする。当時の若者、こんなだったのかな?『処女と童貞のままで 九月にまたこの丘の上であいましょう』…ってなにそれ。温泉マークがラブホテルの意味だったなんて、勉強になりました。 そしてパワフル。友達の結婚式に出て、安保闘争に参加して、レイプされた女友達を介抱して、次の日はデーゲーム野球観戦。早朝に3人並んで瓶牛乳ガブガブ飲むとこ大好き。軽井沢の別荘からママに呼ばれての食事も、みんな食べる食べる。日本が裕福になった時代なんだな。 この映画の主役は芦川いづみ。彼女と裕次郎の、嵐の中のキスシーンはとても綺麗。ここのシーン、三郎の過去を聞いてけい子が飛び出してズブ濡れになるんだけど、ここ三郎をプールに突き落としてズブ濡れにしたのと対になってるんだろう。お互いの家の食事も。けい子が三郎宅に泊まる時の、モトコ・桜井のものと思われるブカブカのネグリジェ姿が可愛い。これも三郎がけい子の父のブカブカの服を借りたのの対になってる。ついでに三郎は女装したんだから、けい子の男装も観たかった。 思春期の三郎に性の相手を与えたのはママ。そのせいで恋愛感情が歪んでも、ママを恨むどころかママが好きな三郎。 そんな三郎を不潔と言い、強引にキスされても、翌朝には車と別荘があるから友達を続けるというけい子。 家にまで愛人を呼び込むモトコ・桜井。嫌気が差して荷物まとめて出て行こうとするけど、結局出ていかないパパ。 彼らと、安保反対と叫びつつ、朝鮮特需の恩恵を受けて平和で贅沢な暮らしはしっかり謳歌する、当時の日本の大学生が重なってしまう。[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-12-10 00:06:50)《改行有》

18.  潮騒(1964) 《ネタバレ》 三島由紀夫の原作が'54年に刊行されて、同年(早っ!)映画化されているそうな。5回も映画化された中で小百合ちゃん版は2作目。こちらも百恵ちゃん版を先に観ている。原作から10年後、同じ神島でロケをしているので、文明に侵されていない村での素朴な暮らし、三島が島で見てきたものそのままが観られるというのは有り難い。 新治と初江のことが悪い噂になって広がるのも、娯楽のない閉塞な村社会らしく、海女のご意見番のお春婆が「正真正銘の処女の乳や!」と言い切った所で、噂をやめて丸く収めるしか無くなるところもまた村社会らしい。 とは言え原作未読。この映画の目玉の一つは「その火を飛び越して来い!」のシーンなのは間違いないだろう。 嵐を待ちわびる新治に対し、快晴が続いてヤキモキさせる演出、焦らされ具合を浜田光夫がオーバーにならずに演じていた。待ちに待った嵐。海の荒れ具合と、新治に湧き上がる期待の笑顔が実に良い。 雨に濡れた初江の髪が、普段のお下げと違い、グッと大人な雰囲気を出している。濡れた白いシャツから透ける白い腕もまた良い。スカートを脱ぐ初江の隅っこに、眠りこける新治の画もいいし、全裸になった二人の目の輝きがまた綺麗なんだ。 かなり力を入れた「その火を飛び越して来い!」のシーンだけど、不満が無くもない。どこかでセリフを聞き逃したのか、初江が海女をしていたのを、この後のシーンで知ったくらいだったので、嵐を待ちわびて空を見上げる初江の画も、入れてほしかったかな。。 原作に忠実に狭い監的哨内で撮ったためか、焚き火が小さい。二人の目の輝きのシーンは、焚き火越しにお互い真っ直ぐに見つめ合うイメージだから、小さな焚き火に視線を落とすのが勿体ないような。 焚き火を飛び越える瞬間と、抱き合う瞬間。スター俳優が裸で抱き合うシーンはさすがに制約もあったろうけど、台詞が無いと、何が起きてるのか分らない。 新治が嵐の海に飛び込むところも迫力が伝わらず。焚き火と荒波は潮騒の映像化の山場だと思うので、もう一つ迫力を出してほしかった、かなぁ。[インターネット(邦画)] 5点(2022-11-20 12:03:29)《改行有》

19.  8 1/2 《ネタバレ》 フェリーニにとって“8と1/2作目の監督作”って意味とのこと。読み方が“はっか”なのも、知らなかったわ。若い子とDENONの読み方でお互い??マークが出たのを思い出した。 出だしの大渋滞、視線、すし詰めのバス、息苦しい出られない、開放感からのロープ。あぁ、これ夢なんだ。このあたりの“伝わる表現”は、きっと多くの人にも理解しやすく、凄いものが始まった感がした。 目覚めのシーンから温泉療法(海外の温泉お使い方が面白かったけど)のシーンへ。新しい映画の脚本を読ませた知り合いの感想『映画全体が訳の分からぬ挿話の羅列だ』が、まさに私が今見ている映画の感想。物語がどこに向かっていて、着地点も注目すべき点も意味不明で、ただ流されて観続ける感覚を覚えた。 「わっかんないわ・・・。」が観終わった感想。次から次と出てくる女。友人に家族。映画のスタッフと思わしき連中。初見、仕事の疲れもあって私は寝てしまった。翌日途中から観直そうと思ったけど、どこまで観たか思い出せず、2回めも睡魔に。この時はアサニシマサ辺りだったから、かなり早い段階でリタイアしていた。3度めでようやく完走。夢と現実、思い出が交差する複雑な構成なので、初見は戸惑うのは仕方ないだろう。複数回観ることで理解も深まりそうだけど、まだ完走一回の私にはサッパリだ。 巨大な宇宙船発射台のセット。新旧入り混じりの欲望丸出しワガママの極地なハーレム。現実が極端なら虚構も極端。 追い詰められて逃げ出したいなか、自分の意志とは関係なしに進む制作現場。逃げ道は右のポケットに入っている。自殺からの最後の大団円が、序盤の知り合いの脚本家の感想とともに、この作品が世間に受け入れられない場合の逃げ道にも思える。 でも世間に評価された。フェリーニの最高傑作とも言われる本作。 でもこんなの創っちゃって、評価もされたら、もう後戻りできなくなって、次から何を創っていけば良いのか、解らなくなりそう。[インターネット(字幕)] 5点(2022-11-19 19:59:13)《改行有》

20.  霧笛が俺を呼んでいる 《ネタバレ》 面白い。なんかジャズ調の音楽がいい感じ。 カメラワークも工夫が見られて、ビルの高所の撮影では一段高いところから俳優と地面を入れてる。窓拭きのゴンドラなんて、正直そんなに狭くなくて安定感ありそうだけど、地面の車や人の動きを入れて緊張感ある画になっている。エレベーターが降りる画とか、今でこそダイ・ハードとかでよく見る画だけど、当時の邦画でこういうのって、あまり無かったんじゃないかな? 当時の懐かしいビル群を流れるように映したり、お決まりの酒場の賑わいなんかが、日本なのにとてもお洒落。 モノクロの写真と家庭崩壊の映像で、当時ペイと呼ばれていたヘロインの恐怖をこれでもかと描いている。日本でのヘロイン被害のピークは'61年とのこと。リアルに社会問題を考えた映画だったようだ。 赤木圭一郎の映画は初めて見たけど、足が長くスタイル抜群。今の目で観てもハンサムで、最後の海員制服もビシッと決まってる。この翌年に亡くなってたのか。ご存命なら日本映画界に華やかな功績を沢山残しただろうに。 相変わらず綺麗な芦川いづみは『彼氏が自殺したクラブの歌手』という役なので、明るい笑顔が観られないのは残念だけど、船乗りモノ映画のまさに“港の女”ってイメージ通り。真知子巻きがまた似合うんだ。その後の杉がロープを探しに海に潜る所で、海風でセットが乱れた風のナチュラルな髪型も素敵。 そして私が観た中で最初期の吉永小百合主演作。芦川いづみが大人の魅力を出している代わりに、年相応の若くて明るい浜崎の妹役(ただし術後のリハビリ中)で、笑顔がホントキラキラしている。浜崎の隠れ家に連れてこられて、赤木が降りた後の車で待つシーン、後頭部だけ映ってるところから、きちんと横顔をカメラに収める技。そして『どうしよう…そうだ景色を楽しんでる演技でもしてみよう』と思ったのか、やや視線を上に向けるぎこちなさが初々しくて可愛い。 そうだったのか、名作『第三の男(まだ観てない)』のリスペクト作品なんだ。 いやでも、とてもカッコいい'60年代の日本を代表する娯楽映画だと、思うんだけどなぁ。[インターネット(邦画)] 7点(2022-10-23 13:42:13)《改行有》

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