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タイトル名 |
善き人のためのソナタ |
レビュワー |
ボビーさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2008-05-31 19:12:14 |
変更日時 |
2012-09-04 14:29:22 |
レビュー内容 |
超国家主義のもとで、国粋に徹していたシュタージのヴィースラーは、孤独だった。仕事場は光の届かぬ暗い部屋で一人。仕事が終われば待っているのは、誰もいない夜の部屋。彼の人生はあまりにも寂しく冷たいものだった。人は、立場によって善悪の見方は変わる。ヴィースラーが正義と信じた世界は、あまりにも冷たい世界だったが、ヴィースラーはそれを当たり前と信じて疑わなかった。だが彼は、明るく透明な太陽の光が差し込む、暖かなゲオルクとクリスタの部屋に温もりを感じてしまった。儚く消え入りそうな不自由の中の情熱的な自由。一曲のソナタ。彼の心にジワジワと今まで感じたことのなかった温もりが、全身に広がっていく。自分の意思とは反比例するように、身体はその温もりを欲していた。失うことを恐れていた。だから彼は守ったのだと思う。だから彼は見失ったのだと思う。彼は、それを行っていた間、幸せだったのだろうか?ぼくにはそれはわからなかった。だけど、彼が最後に手にした一冊には確かに温もりがあった。間違いなくあの一冊は、彼の人生に幸せを刻んだに違いない。孤独な彼を救ったのは、他人の人生の温もり。彼はあの後、どうなったのだろう?それが気がかりだけど、そんな心配は無用なのかもしれない。ラストに彼が言ったあの台詞。あれが全てのような気もする。 (蛇足ではありますが)演出、ライティング、カメラは本当に素晴らしかった。特に、ソナタを演奏する場面のシーンバック。孤独と二人、抜けの画の暗闇と、対称的に明るい照明、無機質な盗聴器を入れ込んだ画とピアノを入れ込んだ画。全てが似ているサイズで撮られているが、そこに映っているもののあまりの違いに芸術を感じました。 |
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