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響 HIBIKI - 鉄腕麗人さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 響 HIBIKI
レビュワー 鉄腕麗人さん
点数 7点
投稿日時 2018-09-15 17:17:08
変更日時 2018-09-20 09:32:10
レビュー内容
今年、36歳にして初めて“アイドル”にハマってしまった。
アイドルという存在そのものに対しては、軽んじているつもりはなく、むしろ広義の意味の“エンターテイメント”としてリスペクトしている。
ただ、“モーニング娘。”も、“AKB48”も、興味がなかったわけではないけれど、没頭するなんてことはなかった。
が、今現在、「欅坂46」には絶賛没頭中である。このアイドルグループが表現するエンターテイメント性は、少なくとも僕の中では、エポックメイキングなものとなっている。

その特異なアイドルグループの中でも、特に異彩を放ち続けている存在が、「平手友梨奈」である。
つまるところ、今作は、個人的にはジャストなタイミングでの、平手友梨奈の初主演映画というわけである。

結論から言うと、この映画は、れっきとした“アイドル映画”として仕上がっている。と、思う。

前述の通り、アイドルはもちろん、アイドル映画というジャンルについても揶揄するつもりは毛頭ない。
往年の、薬師丸ひろ子、原田知世、宮沢りえらの主演映画はもちろん、現在に至るまでアイドル映画の忘れ難き名作は山のようにある。
今作も、その系譜の中に確実に記されるであろう。平手友梨奈というアイドルの“現在地点”を切り取った作品であり、その「価値」は大きい。

主人公「響」の強烈なキャラクター性と、平手友梨奈のアイドルとしての特異性も、奇妙なまでに合致していたと思う。
ただそこに存在しているだけで醸し出される“異彩”と、故に生じる周囲の人間関係と社会における“不協和音”的な存在性は、この二人の少女の間で発生したシンクロニシティのようにも感じた。
17歳の平手友梨奈が、「響」を演じたことはまさに必然的なことだったろうと思える。

欅坂46のファンとして、そして平手友梨奈のファンとして、この映画のバランスは極めて絶妙で、満足に足るものだったことは間違いない。
が、しかし、映画ファンとしてはどうだったろうかと、本編が終了した瞬間にふと立ち返った。
面白い映画だったとは思った。ただし、もっと“凄い”映画にもなり得たのでないかと思わざるを得なかった。

サイレントな世界である「文学」という舞台に降り立ったバイオレントな「天才」という題材と、主人公のある種の悪魔的なヒーロー感は、アンビバレントな価値観と独自性に溢れている。
その天才のエキセントリックな言動の周囲で右往左往せざるを得ない我々凡人の生き様にこそ芳醇なドラマが生まれたのではないかと思う。
そういったドラマ性の片鱗は確かにあった。
芥川賞候補止まりの売れない作家も、傲慢な新人作家も、天才小説家の娘も、越えられない壁(=才能)を目の当たりにし、失望と絶望を超えて、己の生き方を見つめ直す風な描写は少なからずある。
ただそれらは、あまりに表面的で、残念ながら深いドラマ性を生むまでは至っていない。

「天才」の強烈な個性と、不協和音としての彼女の存在が巻き起こす社会風刺と人間模様の混沌。
それが、この映画が到達すべきポイントだったのではないかと思う。もしそれが成されていたならば、この映画自体がエポックメイキング的なエンターテイメント映画になり得た可能性は大いに感じるし、監督の狙いもそういうところだったのであろうことは垣間見える。

でも、出来なかった。その要因もまた「平手友梨奈」に尽きる。
17歳のアイドルの稀有な存在感に、監督の演出も、映画全体の在り方も、引っ張られている。
必然的に、このアイドルがそもそも放っている表現力の範疇を出ることなく、「平手友梨奈のアイドル映画」として仕上がっている、のだと思う。
それこそ、もっと天才的で破滅的な映画監督が、この作品を撮っていたならば、既存のエンターテイメントの枠を超越したとんでもない映画になっていたのではないかと、映画ファンとしての妄想は膨らむ。
しかし、もしそうなった場合、平手友梨奈自身も、現時点のアイドルとしてのガラスを割られ、表現者としての次のステージに進まざるを得なくなっただろう。
無論、それはそう遠くない将来に確実に迎えざるを得ない場面だろうけれど、それが今でなくて良かったと思う。
好意的な見方をするならば、月川翔監督も、現時点のアイドルとしての平手友梨奈の価値を鑑み、彼女の自然な在り方を優先すべきと判断したのかもしれない。

というようなことを巡らせながら、エンドロールを見始めた。
すると、この9ヶ月間聴き馴染んだ「声」がこれまたエモーショナルな歌詞を発している。主演アイドルが未公開の主題歌を歌っているということを知らなかった僕は、途端にいつもの“一言”に埋め尽くされた。
ああ、なんて“エモい”んだ。
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