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フラガール - イニシャルKさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 フラガール
レビュワー イニシャルKさん
点数 8点
投稿日時 2016-10-01 16:06:44
変更日時 2016-10-01 16:16:45
レビュー内容
最初は「シコふんじゃった。」や「ウォーターボーイズ」、「スウィングガールズ」のようなよくあるタイプの映画かなと思って見始めたのだが、とにかく中盤あたりの紀美子(蒼井優)とその親友・早苗(徳永えり)の別れのシーンあたりからのめり込んでしまい、それまではどこか傍観者的立場で見ていたのにそこから一気に引き込まれてしまった。炭鉱の事故で家族に犠牲者が出て、急遽帰ることを決めたまどか(松雪泰子)たちだったが、小百合(山崎静代)の一言でみんなの前で笑顔で踊ることを決めるシーンももちろん泣けるし、その結果、小百合の父の臨終に間に合わずに責められてまどかがすべて自分の責任ですと東京へ帰ろうとするシーンは、まどかのフラガールたちを思う気持ちが伝わってきてやはりここでも泣ける。このシーンと(前後するんだけど)早苗が父親(高橋克実)からフラのことをめぐって暴行を受け、許せないとまどかが風呂屋で入浴中の父親に殴り込みをかけるシーンは、まどかの非常に情に厚い性格をうまく表現していて、見ているこちらもついまどかを慕いたくなる。だからこそ今まさに列車に乗って東京へ向かおうとするまどかに向かって「私はあなたを心から愛しています。」という手話の意味を持つ踊りで自分たちの思いを伝えるシーンはこちらもフラガールたちと一緒にまどかに思いを伝えている気持ちになって見ることができ、大感動してしまった。(思い出しながらこれを書いていても泣けてくる。)娘のやりたいことについて頭ごなしに否定し、理解しようとしない紀美子の母親(富司純子 初めて登場したときにどことなく東映任侠映画の姉御のように見えてしまった。)がフラを練習する紀美子のところへ早苗からの郵便を届けに来て、フラを練習しているところを見て娘の思いを理解するシーンもベタといえばベタなのだが、二人ともこのシーンでは一言のセリフもなく、二人の表情だけで思いを語らせる演出が利いていて、そのおかげか、この二人にじゅうぶんに感情移入することができ、思わず感動してしまった。本作の中ではこのシーンはいちばん心に残るシーンだったし、このシーンを見るだけでまさにこういうのを映画というんだと実感できる名シーンだと思う。クライマックスのフラのショーは圧巻で躍動感があり、見ごたえじゅうぶんでこのクライマックスも感動的だった。しかし、本作はフラを練習して上達していく過程以上に、フラガールたちと周囲の人々との人間ドラマが深く丁寧に描かれていて、その点で最初に挙げた三作品とは一線を画すような印象があるが、その完成度は高く、人と人との絆の美しさや大切さ、そういったものを見事に描き切っている。正直見る前はあまり期待していなかったが、素直に傑作だと思えるような映画で、本当に見て良かったと感じられる良い映画だった。
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