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クライマーズ・ハイ (2005)<TVM> - delft-Qさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 クライマーズ・ハイ (2005)<TVM>
レビュワー delft-Qさん
点数 10点
投稿日時 2013-08-08 12:59:59
変更日時 2018-12-14 00:04:29
レビュー内容
この「クライマーズ・ハイ」は案外奥が深い作品である。最大の山場は、事故原因についてのスクープを掲載するかしないかという局面である。だが、この場面を見たとき、私は微妙な違和感を覚えた。あの場面で悠木はある遺族の母子が新聞を買いにきたときのことを思い出している。「どうか真実を伝えてくださいね」と悠木の手を握って懇願して帰った母子だ。ところが、「どうか真実を」と願った母子のことをわざわざ悠木に思い出させながら、結局はスクープ不掲載という結論に達しているのだ。スクープを掲載することこそが母子の願いに沿うことになるはずなのに、そうはしないという矛盾したシナリオなのである。ドラマに酔いながらも妙な印象を覚えた。

ところで、現実の日航ジャンボ機墜落の原因について、みなさんはどう理解しているだろうか。おそらくほとんどの人は「圧力隔壁の修理ミス説」を認識しているかと思う。だが、安易な陰謀説に加担する気はさらさらないが、いろいろ調べてみるとおかしな点があるのも事実である。日航機事故のあとタイ航空機がまさに圧力隔壁の破損事故を起こしている。細かい話になるが、そのときは機内の与圧が破れ、気圧が急激に低下したため、乗員乗客89名が瞬間的に航空性中耳炎になっている。だが、日航機では奇跡的に生き残った落合由美氏や川上慶子氏らの証言からもそうした話はまったく出てきていない。

また、急激な気圧低下に対応するため、タイ機ではパイロットによって緊急降下が行われているが、日航機の場合、それがなされていない(操縦不能になった事故機であったが、緊急降下することはできた)。あるいは、日航の乗員組合や整備士たちも「圧力隔壁説」は絶対に違うと主張している。圧力隔壁説の証拠として、煙草のヤニが垂れるほど付着したリベットが見つかったとされたが(当時の飛行機は禁煙ではなかったため、隔壁に破壊の元ととなる亀裂が生じ、そこから煙草の煙を含んだ空気が流出した結果、ヤニの付着したリベットが生じたとされた)、そんなリベットがあったら、整備作業で必ず発見しているはずだという。

さらに、この事故では結局、すべての関係者が不起訴となっているが、不起訴を決定した担当検事(山口悠介検事正)も微妙なことを述べている。「(墜落原因が)圧力隔壁の修理ミスかどうか疑わしい」というのだ。そのために案件としては不起訴とせざるを得なかったのであって、検事自身、事故調査委員会が出した圧力隔壁説という結論には疑念を抱いていたのである。

では、ほかにどんな原因がありえるのか、ということになるが、それこそがこの作品の核心であり、隠されたメッセージだと私は解釈している。当初私は、悠木はジャーナリズム論として不掲載を決断したと思っていた。しかし、「圧力隔壁説」の真実性に疑問があるという観点に立ってみると、「圧力隔壁説」を掲載しなかったことこそが「真実を伝える」ことになるという逆説的な図式が見えてくる。悠木にスクープ不掲載という不作為をさせることで、ドラマは「圧力隔壁説」とは異なる「墜落原因X」の存在を暗黙のうちに示唆しているのではないか。よくよく考えれば、「圧力隔壁説」を掲載しなかった理由について悠木は何も語っていない。

墜落の真の原因が何かは私なんぞにはわからない。しかし、あの事故では何かが隠蔽されているということだけはまず間違いないという心証を抱いた。あのとき123便と交信した管制官がその後何の事情聴取も受けていないという事実を知り、心証は確信になった。「クライマーズ・ハイ」は人間ドラマやジャーナリズム論を表面にかぶりながらも、寡黙なうちに欺瞞を告発し、真実は何も明かされていないと強烈に訴えているのではないだろうか。恐るべき作品だと思う。そういう隠された狙いを秘めたうえで本作は制作されているのではないか。
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