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何がジェーンに起ったか? - no oneさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 何がジェーンに起ったか?
レビュワー no oneさん
点数 9点
投稿日時 2006-02-10 20:38:30
変更日時 2006-03-05 10:02:21
レビュー内容
『ミザリー』の原型とおぼしきストーリーは、似たような例をいくつか知っているため新鮮味はない(もっともこちらの方が先だけど)にもかかわらず、ベティ・デイビスの圧倒的な演技力にぐいぐいと引っ張られた。あの魚の腹のようにぎとぎとした光を放つ三白眼。 

しかも途中まではありがちに思えた物語は、終盤の逃避行に至って予想外の着地をみせる。あんなにおぞましかったジェーンが、信じられないことにいじらしく、可愛らしくさえ見えてきて、それまでの恐怖と嫌悪が憐れみと哀しみに反転する。 

ラストで明かされる意外な真実。ブランチの無防備すぎる行動にも、姉をいたぶりながらも肝心なところで姉にすがりつくジェーンの行動にも、合理的な説明がついたのには感心した。 

ジェーンは二つのストロベリーアイスを手にして言う「だめよ、これはブランチのなんだから」。この台詞で、彼女が姉を愛していたことがわかる。姉を妬み、憎み、その一方で罪悪感に苦しみつつ、間違いなく姉として愛していた。単純に憎むことも愛することもできない、同じ女優ゆえ、姉妹ゆえの複雑な感情。 

何がジェーンに起ったのか。それを知っていたのは姉のブランチだけだった。いや、本当は、誰も知らなかったのだろう。彼女が人知れないところでどんな苦悩を抱えていたのか、彼女がどんな風に心を病み、狂気の渦に飲み込まれていったのか。ラスト、ジェーンは海岸でみんなに囲まれて楽しげに踊る。彼女を遠巻きに眺める人々の顔には恐怖と嫌悪、嘲笑と好奇だけしかない。何がジェーンに起ったのかは、誰も知らない。その壮絶な孤独に、胸が苦しかった。
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