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ヤコブへの手紙 - 港のリョーコ横浜横須賀さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ヤコブへの手紙
レビュワー 港のリョーコ横浜横須賀さん
点数 8点
投稿日時 2011-11-17 00:40:06
変更日時 2020-10-11 02:12:19
レビュー内容
短時間の作品だが、内容は非常に濃い。
人が生きる意味や生死観と重い題材ではあるが、悲壮感はなく、静謐で温かい空気が流れている。フィンランドの田舎町の風景がそれを手伝っているのだろう。聖書の言葉が与える神秘的な優しさの影響も大きい。

物語は、殺人により終身刑に処されていたレイラが、恩赦によって出所する所から始まる。彼女は唯一の身内である姉の元には戻らず、刑務官に紹介されるまま、片田舎の教会の牧師・ヤコブの元に届く「手紙」を読む仕事に就く。ヤコブは盲目ゆえ、レイラに手紙の代読と返信の代筆を頼むのだ。

興味深かったのは、光と闇の使われ方。
陽の光に照らされて生い茂る木々や草花。
そんな外の風景とは対照的に、ヤコブの家の中は暗く、老朽化によって傷みきっている。
悩める子羊たちに優しい言葉と安らぎを与えるヤコブとは、まるで正反対の様相。これは単にヤコブが盲目であるからではなく、家が「彼の心の闇そのもの」なのだと思う。

彼は言う。「自分の役割は『神の教えを説くことだ…』と幼い頃から思っていた」と。
彼に救いを求める手(手紙)を優しく導くこと。それこそが彼の生き甲斐で、人生で、存在意義なのだ。
しかし、それはあまりにも脆い。

確かに隣人愛は素晴らしい。
しかし、人から必要とされる事が生きる目的と化したヤコブは、それらを失う不安や恐怖心に心を蝕まれていたのだろう。ヤコブの家の暗さに、そんな哀愁が漂っていてとても印象的だった。

レイラの心も、溢れる自然美(ヤコブの家の外)とは裏腹に暗闇に満ちている。
しかし、ヤコブと日々を共にすることで彼の心の闇に触れ(ヤコブの家の中)、彼女自身も心の扉を開いていく。彼女はヤコブの為に、彼女自身の「恥部」をさらけ出す決意をする。これは、キリスト教的には「自己犠牲」の一種ではないかと思う。

孤独を抱えていたレイラは、自己犠牲により新たな救いと希望を見出す。同時にヤコブも、「隣人愛」によって、彼自身の命を以ってレイラを救済し散ってゆく。レイラは「生への希望と活路」を、ヤコブは「使命と充足に満ちた死」を、互いに与え合ったのだろう。

人は人の心の闇に触れた時にこそ、本当に優しくなれるのかもしれない。たとえその闇が深くても、いつか必ず光は差しこむ。
誰かに必要とされたいと思うのは、人としての純粋な欲望である。だからこそ、私たちは愛し合えるのだと思いたい。
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投稿日付邦題コメント平均点
2020-10-11ナイトクローラー97.24点
2018-12-01男はつらいよ 寅次郎夢枕97.00点
2018-11-30続・男はつらいよ77.30点
2018-11-30男はつらいよ 噂の寅次郎96.72点
2018-11-28男はつらいよ87.98点
2015-11-18自虐の詩106.26点
2015-01-29劇場版 PSYCHO-PASS/サイコパス64.92点
2015-01-19バンクーバーの朝日55.18点
2012-04-28大日本人24.69点
2012-04-28シティ・オブ・エンジェル33.97点
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