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タイトル名 |
華氏911 |
レビュワー |
合言葉は埜波と軍曹/埜波(のなみ)さん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2004-09-05 11:15:10 |
変更日時 |
2004-09-05 11:40:42 |
レビュー内容 |
マイケル・ムーアは寿司職人だ。ネタを見抜く目利きのよさは断然優れている。銃社会をにぎりにして差し出した「ボウリング~」で一躍日本でも知名度がアップしたが、どうもサビを効かせすぎる嫌いがあって、それが賛否両論を巻き起こすもとになるのは想像に難くない。そしてまた、世界でおそらくもっとも関心を持たれているあろうこと---世界中の人間が食べたがるネタから、まるでヒラメからエンガワを切り取るように、あまり知られていない美味しいところを切り取って、また例によってサビ(編集・モンタージュ)をたっぷり効かせ「へい、お待ち」---だが今回のネタはどうも脂が乗りすぎているのか、見終わった後どうも胃がもたれてしまう気がする。アメリカの「岸壁の母」はホワイトハウスで叫ぶ。しかしこれもまた、この寿司の単なるネタでしかない。シャリ。ネタの風味を殺すことなく、しかしそれ自体もまた味と食感が損なわれては寿司の完成度を下げてしまう。だが、ネタは変わることもあるが、シャリを替えるということはまずないと思う。ムーア映画3本、その都度用意された客の飛びつくネタに隠れ、替わることのないシャリがしっかりとある---ムーアは自分自身を愛国者と語るが、それ以上に生まれ故郷のミシガン州フリントを愛しているのだと。「ロジャー~」で始まったフリントの不遇に対する義憤。大義なき戦争へと駆り出される若者たちにも、GM工場閉鎖による失業の影が付きまとう。ブッシュとサウジのつながりという陰謀論的な話やアメリカ版岸壁の母の陰で、ムーアの映画作品の中で常に変わらず描かれているのは、屋台骨を失った生まれ故郷の叫びである。だからこの「華氏911」も、ムーアが今まで作りつづけていた映画のシリーズ作品として見るべきものではないだろうか。戦争、陰謀、犠牲---それらに憤りを感じることも人間として大切だ。しかし、そればかりに囚われるとムーアが伝えようとしている本質を見失ってしまうと思う。「書を読みてとごとくそれを信ずれば書は無きに如かず」ムーアは確信犯的に、映画を作ることによって情報を鵜呑みにすることの危うさを問うている。前作で語られた「恐怖の文化」は、ムーア作品を見る上でも観客側が忘れてはならない戒めであろうから。人は考えることを忘れてはいけない---それは奇しくも、タイトルのネタ元である華氏451のテーマにも繋がるものである。 |
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