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トゥルーマン・ショー - BOWWOWさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 トゥルーマン・ショー
レビュワー BOWWOWさん
点数 9点
投稿日時 2010-02-27 11:18:25
変更日時 2010-03-21 03:03:04
レビュー内容
モニターに映るトゥルーマンの頭を撫でながら、我が子をいとおしむように、年老いたプロデューサーは言う。「君をずっと見てきた。君が生まれた時、最初のヨチヨチ歩き、学校に上がった日、最初の歯が抜けた時。」彼はトゥルーマンにとって創造主でもあり、また父でもあるのだろう。町は大掛かりなベビーサークルだ。その箱庭の中、意のままに息子を操ってきた父にとってたった一つの誤算は、従順な駒として動かし得た息子にもけれどいつしか一個の人間として自発的な恋という感情が芽ばえてしまうということだ。父が選びあらかじめ用意した娘とではなく、父の思惑ではエキストラに過ぎなかったはずの娘とアクシデントのような恋におちるトゥルーマン。それは予定調和の庇護の下、安全に飼い殺されるばかりだった彼に芽ばえるはじめての自我だ。情報はすべてパブリックに管理・操作され、一片のプライベートな秘密すら許されぬ筒抜けのその世界で、それでも彼が胸にひた隠し貫く恋。全てが監視下に置かれているとも知らずこっそりとファッション雑誌を切り抜き、初恋の記憶を辿るままに遥かフィジー島を目指すトゥルーマンの姿が感動的なのは、絶対なる父の手をもってしても決して届かぬ私的なその感情だけが、盤石でありながらすべてが作り物の彼の人生において、ただ一つの、ウソ偽りない「本物」だからなんだろう。そうしてトゥルーマンは絶対的な神の手を、つまりは強大な父の支配を、かいくぐり突き進む。まるで永遠のモラトリアムから脱出を図るように。一方の父は、かつて神が人間にそうしたように、自我を持ち意に背く恩知らずな息子に、罰を下す。巻き起こす天変地異により愛する息子を死の危険に曝してでも、その巣立ちを阻害しようとする。そんなすさまじい父と子の姿から浮かび上がるのは、自立とは決死の闘いであるということ。この一人のいい年をした男の遅咲きの成長譚は、だからこそ意外性に富み、実に感動的だ。ついに遂行されるトゥルーマンの力強い羽ばたき。彼の勇敢なその突破に我々は快哉を叫ぶだろう。だがそんな私たちもまた結局は見世物としてトゥルーマン・ショーを消費しているに過ぎないという痛烈な皮肉が、安直なカタルシスを頑なに拒む。扉の向こうからやってきたトゥルーマンが辿り着くのはハッピーエンドなのか、それとも次なる関門なのか。それを決めるのは、まさに私たち次第なのだ。
BOWWOW さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2019-02-25バーニング 劇場版107.00点
2018-08-12リバーズ・エッジ85.33点
2013-05-25青春神話108.33点
2013-05-02エドワード・ヤンの恋愛時代1010.00点
2013-04-28恋恋風塵97.00点
2013-03-09楽日106.00点
2012-01-24海角七号/君想う、国境の南75.23点
2011-04-02エターナル・サンシャイン96.60点
2011-01-18ソーシャル・ネットワーク76.53点
2011-01-02ファイト・クラブ97.38点
トゥルーマン・ショーのレビュー一覧を見る


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