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ビリー・リンの永遠の一日 - かたゆきさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ビリー・リンの永遠の一日
レビュワー かたゆきさん
点数 6点
投稿日時 2018-09-06 02:57:25
変更日時 2022-11-18 12:35:56
レビュー内容
2004年、イラクの戦場で偶然撮られた一本の短い動画。そこには名もない兵士が危険を顧みず身を挺して仲間を助ける姿が映されていた。兵士の名はビリー・リン、何処にでもいるような一人の若者だった。だが、この映像が全米のテレビで流れたことによって、彼は一夜にして英雄へと祭り上げられてしまう――。そのことを知った軍上層部の命令によって彼とその仲間たちは一時本国へと呼び戻され、戦意高揚とイメージアップのために全米各地を廻らされることに。何処に行っても拍手で迎えられたビリー・リンは、再び戦場へと戻ることにいつしか疑問を抱き始めるのだった。最後の日、アメリカンフットボールの試合会場でのハーフタイムショーへと駆り出された彼は、そこでイラクの戦場とは全く違う煌びやかだけど薄っぺらい世界を目にすることになってしまう…。本作は、そんな一夜にして英雄となってしまったビリー・リンの目を通してアメリカ社会の矛盾や歪みを問う社会派ドラマだ。監督はこれまで数々の賞に輝くハリウッドの名匠アン・リー。僕の大好きな監督の最新作だったので今回鑑賞してみたのだが、正直期待が高すぎたのかも知れない。確かにベテランらしく手堅く纏められた作品に仕上がっていたのだが、何かこうもう一つ深みが足らない印象。テーマの掘り下げ方が若干浅いように感じてしまったのだ。この監督の前作が、神と人間というとても哲学的で深淵なテーマをちゃんとエンタメ映画の枠内で描くという離れ業をやってのけた傑作だっただけに少々物足りなさを覚えてしまった。また、華やかなハーフタイムショーの対比として描かれるイラクの戦場描写も生々しさに欠けており、どんな映像を撮ってもそこにある種の気品のようなものを感じさせるアン・リー監督の美質が裏目に出てしまったように思う。とはいえ、煌びやかでド派手なのに何故か空虚さをも漂わせるハーフタイムショーの一連の映像は、どこか東洋的な無常観を感じさせ一見の価値はある。監督のファンならそこだけでも観て損はないだろう。
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